310: 弥次郎 :2022/02/24(木) 20:32:56 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「The Wild Arrows」6
アロウズという組織が結成された理由は、何も政治的なモノからだけではなかった。
即ち、衛士や兵士たちの質の問題が付きまとっていたのである。
それこそ、戦闘教義やメソッド、ドクトリンなどが時代の変遷とともに変化しており、衛士たちに求められるところが変わっていたのだ。
戦術機は、第一世代においては分厚い装甲によってBETAの攻撃に耐久するもの、と定義されていた。
これは黎明期であるがゆえに技術的に反応速度などをあげられなかったのも付きまとっていたが、ともあれそういうものだったのだ。
だからこそ、第一世代機では戦術機には装甲が施され、さらにはBETAの攻撃を受け止めるシールドなどが装備されることが多かった。
しかし、第二世代以降は第一世代の反省点から「機体出力や駆動系の強化による機動性の向上でBETAの攻撃を回避する」に基本が移っている。
このころからあえて戦術機全体をトップヘビー気味に設計することによる初動の速さを実現するなどの設計の工夫も加わり始めた。
よって突撃級の突進は跳躍などの回避運動でかわし、要撃級なども動くことによって回避して反撃するというのが前提となったのだ。
この時点で、衛士に求められるものが真逆になったことが窺えるだろう。
転移してきた跳躍者達の割合からすると、第一世代戦術機が全盛期という頃の衛士が全体から見ると多い。
つまり、それだけの衛士に対してこれまでの操縦とは真逆の、動き回って回避することを重点とする操縦を教えなくてはならないのだ。
システム面のアップデートや改善などを合わせて教えていくことを考えると、重量級マニュアル車と軽量級オートマチック車くらいの差があるとさえ言える。
無論、第一世代戦術機でも動きが悪くて回避ができないわけではない。
F-4ファントムがあえて設計の余地を大きくとって開発されたことから、改修さえすれば同じような動きができるのも確かである。
そのおかげもあり、第二世代戦術機が主体となり、第三世代開発に注力される中にあっても第一世代機は今なお現役なのだ。
その為時間と設備と資源さえあれば戦術機の方はなんとでもなる。問題なのは、それを動かす衛士、そういうことになったのである。
さりとて、十数万という衛士を一気に育成するというのは骨が折れるどころではない。
元々の跳躍者達数十万人の住居や食料の問題などで手一杯なところのEUに、その余裕は乏しかった。
そこで手を挙げたのが大西洋連邦、ついでに言えば技術交流を行い始めていた企業連合であった。
β世界EUからすればピンと来ない話なのであるが、企業連合というのは警備部門という形で独自に軍備を備えている。
そんな彼らの仕事には自前の向上や施設の防衛のほかにも、傭兵として雇われ、仮想敵などを担当するといった業務も含まれていたのだ。
元々、交流が始まった後から技術交流も含めて行っており、このβ世界の機動兵器である戦術機についても知見は十分に積み上げていたのだ。
如何に発展していると言えども、技術レベルの基礎は西暦年間のモノ。西暦を置き去りに、C.E.へと移っていた企業にとっては過去の枯れ果てた技術だ。
そして、客観1999年8月23日。欧州連合軍関係者をAF「ラピュータ」へと招待して、企業連の戦術機のお披露目が行われた。
企業連合が出したのは標準的な第一世代機であるF-5E IDSをベースとしたF-5EV。
対するは、比較対象となるF-5E IDSの近代化改修型。
もうお分かりかもしれないが、これはいわゆるAH(対人戦闘)である。
対BETAの兵器ということである以上、対人戦で比較するのは適切とは言い難いかもしれないが、動きを比較する必要があるとの判断からこれが選ばれた。
乗り込む衛士はどちらもβ世界の衛士が選ばれている。ただし、企業連側の衛士は事前に企業連によって訓練を受けている。
つまり、戦術機と衛士の教育、その両方を比較しようというわけであった。
一組だけでなく、複数の組で対戦させて比較検証を行うという形となったこれは、今後の技術交流の在り方を決定するものとして注目された。
311: 弥次郎 :2022/02/24(木) 20:33:33 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
結果だけを言うならば、従来の戦術機、すなわちEU側の出した戦術機達はいずれも完敗した。
おまけに、同じ戦術機を土台としているにもかかわらず、動きに歴然とした差が見受けられたのだ。
ならばという形でF-15やF-16という戦術機もEU側からは繰り出されたのであるが、これまた返り討ちにされた。
AH、戦術機の差、衛士の差など、色々とあげられる点はいくつかあっただろう。しかしながら、この演習ではっきりしてしまったのだ。
地球連合や企業連合の抱えている技術や運用ノウハウはEUの現行のそれをはるかにしのいでいる、ということを。
そして、演習の結果を受けて欧州連合はその演習の検証と分析に追われることになった。
どこに差があったのか。どこに勝負を決定づける要素が存在したのか。それを実現した技術の差はどこにあったのか?
衛士に対しての聞き取りも行いながら、その要因を見つけようとしていた。
なぜ、これほど慎重なのか?一つには、欧州連合としてのプライドの問題があった。第三世代機を開発できたのだから、という自信があったゆえに。
そしてもう一つ、この時点においては、まだ未知の勢力である地球連合への不信が少なからずあったことが由来していた。
窮地の自分達に親切さを装いつつも利益をかっさらっていく可能性が否定できなかった。そう、アメリカ合衆国のように。
今のところは
アメリカは国債の買取や米国軍の派遣などでこちらと共同歩調をとっている。
しかし、それはあくまでもアメリカの利益にかなっているうちでの話というのは暗黙の了解。
同じように戦後に毟られるようなことがあっては困る、ということである。借りは作りすぎては溜まらないのだ。
だからこそ埋められるところは自力で埋める努力をしよう、ということになったのである。
しかし、それから状況は急変することとなる。
即ち、9月14日未明に各地のハイヴから一斉にBETAの大規模侵攻が確認されたのだ。
融合惑星への転移と共に墜落して役立たずとなっていて、急遽復旧を進めた人工衛星からの観測であった。
空前絶後のそれは、100万を超える数が確認されており、さらにユーラシア大陸内陸からも吐き出されていることが確認された。
これに際し、欧州に駐留していた米軍および国連軍はなんと撤収を一方的に通告。我先にと逃げを打ち始めたのであった。
当然の如く欧州連合はこれに抗議して引き留めようとしたのであるが、米国および国連からの返答はなしのつぶて。
つまるところ、欧州は見捨てられた、ということである。
しかし、捨てる神あれば拾う神ありというべきか。地球連合は、大西洋連邦は欧州連合に対して救援を約束。現地の戦力を展開させた。
そしてその結果についてはここで語るまでもないだろう。
さらにここで一つ証明されたものがあった。
即ち、地球連合や企業連の支援を受けて生み出された戦術機と衛士たちの活躍である。
EUがその戦力を出して協力して対処にあたったのは言うまでもないことだが、その中でも彼らの活躍が目覚ましかったのだ。
無論、既存の戦術機という括りには収まるものである。光学兵器もなければレーザーを弾く装甲もないし、超音速飛行ができるわけでもない。
そうだとしても、彼らのあげたスコアはとびぬけていたのだ。奇しくも、コンバットプルーフが取れてしまった、というわけである。
欧州連合としては、最早否定材料は存在しなかった。あったとしても、それはもはや意味をなさない。
これから先の国家の行く末を考えるに、米国と縁が切れた以上、地球連合の助力は必須なのだ。
むしろ、積極的に取り込むことさえ考えなくては。
こうして、実利と感情の両面から、欧州連合は地球連合の手を取ることとしたのだ。
9月20日になり、BETAの侵攻が止まったのが確認されたその日のうちに、EUは連名で地球連合との間に防衛協定などの締結を打診。
加えて、これまで保留としていた技術交流や民間レベルも巻き込んだ交易なども実施し、ぐらついた国体の立て直しを進めることとした。
これを地球連合は歓迎、即日の内に外交官など必要な関係閣僚などを動かし、協力体制の構築を急いだ。
そしてそこには、イギリス特別外人部隊「アロウズ」の編成と錬成への協力も含まれていた。
これが、大きな分岐点。EUは、欧州は、これまでの枠組みを超えて動き出したのだった。
312: 弥次郎 :2022/02/24(木) 20:34:08 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
一先ず「The Wild Arrows」は終わりとなります。
後は設定集とかを予定しておりますね。
最終更新:2022年02月28日 11:15