703: ホワイトベアー :2022/02/27(日) 20:01:12 HOST:157-14-173-202.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
日本大陸×ワールドウィッチーズ
第三話 始まりの笛音
ーーああ、そうだ。あの頃の私は昨日まで続いてきた日常がこれからも続いていくと何の根拠もなく本気で信じてた。
嘘みたいに聞こえるかもしれないけど、所属していた基地で航空機やウィッチが増強され、基地の対空兵器の数もどんどん増やされていたのに、大半の人間が戦争なんて遠い異世界の、それこそテレビの向こう側の事と他人事のように考えていたんだ。
それがどれだけ馬鹿げた考えだったかを気づけたのは日常が完全に崩壊した後だったよ
1937年7月14日 扶桑皇国 バイカル航空基地
扶桑皇国陸軍飛行第64戦隊飛行第1中隊第3小隊
それは突然のできごとであった。
突然、爆発音が聞こえてきたかと思うと警報が基地の各所で鳴り響き、高射砲や対空機関砲が空に弾をばらまく音が少し遅れて聞こえてきた。
スクランブルを知らせる警報が聞こえるや否や私たちは掩体壕で待機状態にあったストライカーユニットに飛び乗り、すぐに魔力を魔導エンジンに流して機体を起動させる。
同時に武器である12.7ミリ重機関銃を手に取り、腰のパイロンには予備のベルト式弾薬が入ったボックスを取り付ける。
部下達も準備が完了しており、それを確認すると無線を繋げた。
『複数の所属不明機を上空に確認!!スクランブルを急がせろ!!』
『国連極東ネウロイ監視航空団から救援要請が届いただって!?』
『爆撃だと!?バカな!?対空監視は何をしていたんだ』
『対空火器、迎撃を急げ』
『総員戦闘配置、これは訓練にあらず。繰り返す、総員戦闘配置、これは訓練にあらず!!』
『被害状況を報告しろ!!』
『爆撃による被害甚大、電探設備沈黙!!』
無線から無秩序な情報の津波が押し寄せてくるが、それを一旦無視して管制塔につなげる。
「レッドイーグル3より管制塔、出撃準備OK。いつでも出れるぞ!!」
『了解した!直ちに一番滑走路に向かってくれ』
掩体壕の扉が開き、誘導員の指示に従い掩体壕を離れて指示通り滑走路に向かう。
扉が開かれたゆえに見えた掩体壕の外の光景は、少し前までの平穏が幻だったかのような戦場へとその姿を変貌させていた。
空では迎撃機が存在しないことをいいことに、爆弾を胴体に抱えた戦闘機型が格納庫を始めとした基地施設に爆弾を投下し、すでに投下した後なのであろう爆弾を抱えていない戦闘機型が対空砲や車両などのソフトスキン目標や対空砲、駐機場に置かれていた航空機などに機銃掃射を浴びせていた。
地上では至るところから煙が空に立ち上がり、少しでも敵の攻撃を逸らそうと、基地の各所に設置されていた対空機関砲や高射砲や待機していた自走高射砲が空に向かって激しい砲火を放っている。
高射部隊の攻撃により、目の前を飛び去ろうとした何機かの戦闘機型が致命傷を与えられたようで、ガラスの割れた様な音と共に霧散する。
しかし、空を飛び回る小型の戦闘機型は激しい対空攻撃やそれに仲間が撃破されたことを意に介さないように低空に降下し続け、地上目標への攻撃を行い続けていた。
大半の戦闘機型は屋外駐機されている戦闘機に攻撃を浴びせていたが、そのうち一機が滑走路に向かう私に向かって機銃を放ってくる。
幸い、反射的に行っていたシールドの展開が間に合ったので攻撃は私に当たることはなかったが、それでもズボンを少し湿らすには十分な衝撃だった。
『バイカルコントロールよりレッドウィング3、レッドウィング10へ。第一滑走路への侵入を許可する。進入後、止まらず離陸せよ』
管制塔からの指示がインカムを通して耳に伝わる。
『ウィッチの離陸が最優先だ!戦闘機は最悪飛べなくてもいい!』
『第3滑走路に輸送機が緊急着陸する。滑走路周辺の機体は待避しろ!消火班は出動準備』
『高度が低すぎる落ちるぞ!!』
『救助と消火をいそげ』
『上げれるウィッチは全部上げろ!全部だ!!』
『イエローアローを第2滑走路に向かわせろ』
異常な事に本来なら入るはずのない無秩序な通信も同時に耳に入って来る。
704: ホワイトベアー :2022/02/27(日) 20:01:44 HOST:157-14-173-202.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
『こんな状況で止まらず離陸しろ!?正気!?』
『こんな状況だからだ!!止まったら狙い撃ちされるぞ!!』
後ろを走るレッドイーグル10が管制塔と言い合っているが、そんな時間はないし、管制塔側の指示も今に限れば正論だろう。
「レッドイーグル3よりコントロール。了解した。このままいかせて貰う。レッドイーグル10、私たちならいける。そうだろ?」
心の中の恐怖心を落ち着かせて、部下に不安を感じさせないように落ち着いた声で言葉を発する。
『タイチョー…了解。続きます』
滑走路に到着し、そのままフルスロットルで離陸を開始。途中、離陸前に落としてやるとでも言いたげに前方からきた戦闘機型が機銃を放ってきたが、それをシールドで防ぎながら空に上がった。
私の後ろにいたレッドイーグル10、レッドイーグル11、レッドイーグル12も同様にシールドで攻撃を防ぐか、攻撃がそれたおかげで無事に飛べたようだ。
『良く飛び立ってくれた。高度制限を解除する。後は頼んだ』
これでようやく舞台に上がることができた。
真っ先に空に上がった第64戦隊飛行第1中隊第3小隊に与えられた任務は、後続として滑走路に侵入し、飛び立とうとしている戦友たちを空から援護し、無事に空に上げる事であった。
彼女らもそうであったように、いくら強力な航空ウィッチでも空に上がらなければ無力なものであり、飛び立とうと地を這うウィッチたちは彼女らを狙う敵にとっては恰好の獲物である。
ゆえに、何としても彼女らが空に上がるまでの間、滑走路と彼女ら自身を敵の脅威から護り切る必要があった。
「レッドイーグル12とレッドイーグル11は第2滑走路とイエローアローの護衛につけ!! レッドイーグル10は私と第1滑走路と残りのレッドイーグルを護るぞ」
『『『『了解』』』』
状況は圧倒的なまでに不利である。今、こちらでまともに対空戦闘可能な航空戦力は第64戦隊飛行第1中隊第3小隊の4名の航空ウィッチのみ。対して敵は基地上空で対地攻撃を続ける戦闘機型42機の部隊と、一度基地を爆撃し、再度の基地爆撃の為に再アプローチをかけようとしている爆撃機型12機とその護衛機であろう戦闘機型20機の計77機。
幸い、相手はヒスパニア戦役と同じ複葉戦闘機型と複葉爆撃機型であり、単機での性能は宮藤理論を採用し、全金属単葉型戦闘脚である36式戦闘脚を装備するこちらが圧倒的に優れており、
さらに爆撃機型とその直衛の戦闘機型は一度爆撃をしかけた後で一時的に離れているが、それでも圧倒的なまでに手が足りない。
若松雪美は目に付いた編隊を組んでいた3機の戦闘機型を反撃する暇を与えずに喰らったあと、数の暴力で押されているレッドイーグル11とレッドイーグル12の目を盗んで、第2滑走路にて離陸中のウィッチに機銃攻撃を浴びせようと機首を下げようとした戦闘機型2機を12.7mm重機関銃の狙撃で撃破しながら防空司令部に無線を繋ぐ。
「レッドイーグル3より防空司令部。こちらは数が圧倒的に足りない。私たちには気にせず、地上部隊には対空攻撃を継続させてくれ」
『こちら防空司令部。対空弾幕を張っているところで空戦をするのか!?それは危険すぎる。』
「多少のリスクは承知の上だし、この程度の弾幕で落ちるほどぬるい鍛え方はしていない。それに、私たちだけじゃ全部をカバーできない」
自走高射砲のエスコートを受けて滑走路に向かっていたレッドイーグル2率いる第二小隊の上空で護衛に入った瞬間、嫌な予感がした若松がシールドを張る。すると、彼女と彼女の下にいるウィッチたちを狙ったのだろう。太陽を背に急降下をかける2機の戦闘機型による攻撃がシールドにあたる。
「レッドイーグル10!!」
『了解だよ』
返事が帰ってくるのと同時に戦闘機型にレッドイーグル10の12.7ミリ機関銃から放たれた2発の銃弾が戦闘機型を貫き、彼らはガラスの割れたような音と同時にこの世から霧散する。
705: ホワイトベアー :2022/02/27(日) 20:02:17 HOST:157-14-173-202.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
『レッドイーグル3、レッドイーグル10助かった。戦闘が終了したら一杯奢るわ』
『お返しはPXのブルーベリータルトでいいですよ。ね、タイチョー』
「そうだな。あと、お前の秘蔵のダマン・フレールの紅茶で手を打とう」
『…あなた達は少しは遠慮というものを持つべきね。終わったら優雅なティータイムで淑女というものが何なのか教えて上げるわ』
そう話すレッドイーグル2に率いられた飛行第64戦隊飛行第1中隊第2小隊も無事に空に上がる事に成功した。
先ほど離陸を助けた部隊も含めると新たに三個小隊12名の航空ウィッチが空に上がっており、イエローアロー所属のウィッチ達は再度の基地爆撃を狙うような挙動をしている爆撃機型の対処が命じられてたため、この場を離れたが第一中隊第二小隊が援軍として参戦したことでだいぶ楽になるだろう。
『貴官の進言が承認された。高射砲部隊には対空攻撃を継続させる。注意せよ』
「感謝します」
防空司令部の返事から時間をおかずに弱まりつつあった対空砲火が再び勢いを増していき、弾幕の弱まりに油断して機銃掃射を行おうとしていた戦闘機型が複数撃破されていく。
この時点で戦況は加速度的に扶桑皇国軍に傾きつつあった。
『レッドイーグル3、離陸部隊の直衛は担当は我々が引き継ぐわ。盛大にひっかきまわしなさい』
「お言葉に甘えさせてもらう。第3小隊各位、第2小隊がメインディッシュを譲ってくださった。怪異共にイーグルの狩りを見せつけろ」
『『『了解』』』
そこからおこったのは戦闘ではなく、一方的な狩りであった。
第二小隊が役割を変わってくれたおかげで自由な行動ができるようになった第1中隊第3小隊は、
今までの鬱憤を晴らすかのように36式戦闘脚が与えてくれる圧倒的なスピードと運動性活かして戦闘機型に喰らいつき、彼女たちの持つ12.7ミリ機関銃から放つ攻撃で次々とネウロイを撃破していった。
無論、戦闘機型ネウロイも得意の巴戦に持ち込んで反撃を行うべくと必死に動くが、スピード、上昇限度、上昇速度、運動性、防御力どれをとっても勝る36式戦闘脚相手にそれが通じるわけもな、一方的に数を減らしていった。
それでもいまだに50機近いネウロイが戦闘空域に展開しているが、単機性能の差もありここまでウィッチが空に上がってしまった以上は残りの航空ウィッチの離陸を妨げるのは困難である。バイカル航空基地では残り20名の航空ウィッチがレッドイーグル中隊所属の2個小隊の護衛の下に次々と離陸しており、時間が経過すればするほど空に上がったウィッチは増えていき、逆にネウロイの数は急速に減っていった。
そして、イエローアロー隊が爆撃機型を全機撃墜した時点でネウロイたちは撤退を開始。奇襲攻撃から始まったウデ上空での戦いは扶桑皇国側の勝利で幕をとじた。
706: ホワイトベアー :2022/02/27(日) 20:03:08 HOST:157-14-173-202.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
以上になります。
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最終更新:2022年02月28日 11:44