146: 弥次郎 :2022/03/05(土) 22:23:17 HOST:softbank060146116013.bbtec.net


憂鬱SRW GATE 自衛隊(ry編SS「平成世界の兵士たちの憂鬱」


  • 特地 アルヌスの丘 日本国自衛隊拠点 某会議室


「---以上が、検証作戦D-17からD-24までの結果を統合した結論となります」

 プロジェクターの稼働が止まり、照らし出されていた映像が消える。
 それとともに部屋の中に明かりが戻り、科学の結晶たる電灯による光で部屋が満たされた。
 同時に、出席者たちの間からはため息が漏れ出ていた。

「つまるところ、デモンゴーレム相手には有視界戦闘になった時点で不利、というわけか」

 狭間陸将は、つぶやきを漏らすのがやっとだ。
 他に並ぶ特地における幕僚たちの顔色も悪い。

「90式の戦車砲による砲撃でダメージは与えられ、集中砲火を浴びせれば撃破も可能となる。
 ただし、一体に対して複数車両で同時攻撃をかけてようやく相手の再生能力を上回れる、と。
 そして尚且つ正確に狙うには動きを止めざるを得ないこちらに対して、相手は90式以上の速度で接近できる、こちらの数以上を以て」

 それらの意味するところは、明白だ。
 十全な火力を発揮したところで、90式戦車ではデモンゴーレムを止められない、ということになる。
 無論、理論上は的確に集中砲火を順番に浴びせることによって排除し続けることはできるだろう。
 だが、早々にうまくいかないことはよくわかっている。理論と実践では違うからだ。

「ヘリや自走砲による支援を持ちこんだE-18から始まる検証作戦でも同様でした。
 つまるところ、アレの相手は時間稼ぎでいっぱい、としか」
「だが、前線を受け持ってもらえば戦果を挙げられるのは確かなのでしょう?
 ならばその存在意義までも揺らぐことはないのでは?」

 幕僚の一人が言うが、狭間はそれを一笑に付す。

「行われた検証作戦で、多くの場合連合の戦力による救援が入らざるを得なかったケースは46%にも及んでいる。
 その時に救援が入らなかった場合の被害は合計で8個戦車中隊相当。随伴する歩兵や自走砲も含めればもっとだろう」

 つまり、計算上はほぼ2回に1回は危険な状況に追い込まれることになるし、その被害はとてもではないが自衛隊が受け止めきれる被害ではない、ということ。
 そも、この検証作戦---デモンゴーレムらを群れから意図的に分離させ、指定されたエリアに誘導して自衛隊戦力とぶつけ合わせる---は連合の発案でもあった。
自衛隊の戦力が真っ向からぶつかることがいかに危険であるか、そして機動兵器でない存在が如何に無力化を理解してもらうためのものだ。
これには機動兵器についての情報収集を担当していた間宮やリーなどからの援護射撃もあった。

「ともすれば、我々が現在錬成を進めているカタクラフト隊などが主軸となってもらう必要がある」
「ですが陸将。機動兵器部隊は未だに錬成途中で、おまけに既存兵科との連携は未だに不安定ですが……」
「人死には避けねばならない。殊更、この特地での戦闘においてはな」

 狭間の言葉に、幕僚の一人は言葉を詰まらせるしかない。
 そもそも自衛隊というのは戦死者というものを忌避する傾向にある。成り立ちやその後の世論などの観点からも、それは非常に強い。
ましてや、今回は侵略を受けた後の報復として、またゲートの向こう側の調査という名目で自衛隊が展開しているのだ。
つまるところ侵略戦争という、今の世論では受け入れがたい側面を秘めているといっても過言ではない。

147: 弥次郎 :2022/03/05(土) 22:24:08 HOST:softbank060146116013.bbtec.net

 そして現在、ヴォルクルスという、巨大災害級の被害をもたらす存在が現れ、特地を脅かしている。
 ここで阻止しなければゲートを通じて自分たちの世界にまでなだれ込んでいくことは明白だ。
 まさしく、かつての満州という立地を再現しているといっても過言ではない。
 旧日本軍と違うのは、それでもなお、戦闘や死者を避けざるを得ないという縛りが存在していることか。

(儘ならない、な)

 つまるところ、自衛隊や米軍は現状お荷物ということである。
 唯一の例外としていえるのはカタクラフトを要する部隊であるが、その部隊さえも練度不足が指摘されている。
とはいえ、シミュレーションにおいては戦車部隊などで戦うよりもはるかに低い損耗率で撃破数を稼げるというのも事実だ。
デモンゴーレムらに有効打を与えつつ、攻撃を柔軟に回避し、至近距離に潜り込まれても逃れられる唯一と言っていい戦力。
 問題は、今のところ他の兵科との連携が乏しく、連合に依存しない戦力としては使いにくいことか。
 いや、その自衛隊内や米軍内での連携においても、機甲化戦力がお荷物にしかなっていない。
 展開速度、火力、運動性や回避などにおいて置いてけぼりにされる。
 実際、検証作戦においても退避が間に合わないとの理由から、機動兵器に戦車が抱えられて逃げる、という事態が何度も発生しているのだ。

(しかし、それでは連合だけに頼ることになり、この特地における任務を果たしきれていないということになる)

 加えて、国家としての体面もだ。少しは貢献しているという自負はなくもない。
 だが、結局は連合の力を借りているに過ぎないものだ。
 張り合うのが間違っている国家規模なのだから、しょうがないという面もなくもないのであろうが。

「ともあれ、だ」

 ガヤガヤと話が続いていた中に、狭間は声を届かせる。

「現状のところ、自衛隊及び米軍ではとてもではないがヴォルクルスに敵うことはない。
 我々ができることはいかに自分達のみを自分たちで守るかだ。それを第一義として、行動してほしい」

 それは決定事項でもある。
 防衛省にも問い合わせ、通信で会議を行って改めて決めたことでもある。

「連合は遠からずヴォルクルスとの決戦を行うとのことだ。
 我々の力は微力に過ぎない。だから、せめて死なないように、この特地に現れた驚異のことを伝えてほしい。
 そして---いつ何時我々の生きる世界にも脅威が現れるかわからないということも、把握しておいてほしい」

 その言葉は、果たして重たい。
 連合はそのことにも言及したのだ。
 いつの日か、そちらの世界にも人類に敵対的な存在が現れ、侵略してくるかもしれないと。
 冗談だと一笑に付すところであるが、実例があるだけに否定しきれない。帝国の侵略などその最たる例だろう。
たまたまそれが現代の軍隊で対処しきれるレベルの文明と軍隊だったから被害はまだ小さかったのだから。

「そして、目下の課題はいかにヴォルクルスやその眷属と戦うかだ。
 遺憾ながらも我々だけでは勝てない。連合と共に共同で戦い、生き残らなくてはならない。
 各員にはそれを徹底するよう通達してくれ」

 以上だ、と若干の憂鬱な気分を抱えつつも、狭間は解散を告げる。
 ああ、なんとも、情けない話だ。兵士たちに、自衛官たちに、他者を頼って生き残れとしか言えないとは。
今回の件は政府も市ヶ谷も霞が関もだいぶ気をもんでいると聞く。とはいえ、現状の対処だけで手一杯なのも確か。
 だが、目を背けても、目をそらしても現実が変わるはずもない。
 自分も少しは機動兵器の運用についての学習を進めるべきか、と重たい気持ちを引きずりながらも歩むことにした。

148: 弥次郎 :2022/03/05(土) 22:25:12 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
ヴォルクルス戦の話はそろそろ一区切りにして、怪獣事変までとその後を書きましょうかねー

239: 弥次郎 :2022/03/06(日) 09:54:22 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
文章がおかしかったので修正お願いします
146
×そして尚且つ正確に狙うには動きを止めざるを得ない相手に対して、
○そして尚且つ正確に狙うには動きを止めざるを得ないこちらに対して、
+ タグ編集
  • タグ:
  • 憂鬱SRW
  • GATE編
  • 証言録
最終更新:2023年10月15日 00:58