514: 弥次郎 :2022/03/10(木) 00:44:12 HOST:softbank060146116013.bbtec.net

憂鬱SRW 未来編鉄血世界SS「角笛よ、黄昏に響け」2


  • P.D.世界 地球 アーブラウ領 エドモントン


 その日は、ついに訪れた。
 エドモントンの国会議事堂にて、次期アーブラウ代表選挙が実施されるのだ。
 つまりこの日こそ、火星連合とギャラルホルンの間での雌雄を決する戦いが発生する日ということになる。
エドモントンの現地司令部にはギャラルホルンの統制局局長であるイズナリオ・ファリドが総指揮官として入っており、すでに準備が整っていた。
また、エドモントンを囲うように展開する陣地には各々指揮官が配置されるとともに、各種戦力が配置され、準備を整えた。
そこにはMS、復活させたMA、MW、歩兵、砲兵などあらゆる戦力が、ギャラルホルンの総力がそこに存在していた。
 彼らに慢心の色はない。エドモントンに展開し始めた当初に遭った楽観ムードは、少なくとも存在しなかった。

 というのも、すでに戦端が開かれ、残存していた宇宙艦隊が蹴散らされたという報告が入っていたためだ。
 火星を発した地球連合の監察軍と火星連合の宇宙軍の連合艦隊が、ギャラルホルンの宇宙艦隊と激突したのは数日前のこと。
それはセントエルモスを援護するための増援艦隊であり、同時に一時的にしろ衛星軌道上を制圧するための戦力の派遣だった。
 しかしながら、その艦隊に対してギャラルホルンは余りにも稚拙な作戦に出てしまった。
つまるところ、相手の戦力の過小評価による慢心から発した奇襲とも呼べない奇襲を連続する飽和攻撃に出たのだ。
確かにエイハヴ・ウェーブによるレーダーの障害によりレーダーで艦艇を宇宙でとらえるのは難しい。
だが、それはあくまでもP.D.世界での話。レーダーの性能が段違いであり、さらには光学観測装置、潤沢な偵察機による哨戒でそれらは悉く察知されたのだ。
 あくまで決戦がエドモントンと考えていたために戦力を地上に下ろしていた、というディスアドバンテージはあるだろう。
とはいえ、その報は地上に想定以上の戦力が展開されるかもしれないということを意味していた。
 そして現在、アーブラウに突入可能な低軌道の制宙権をめぐる決戦が始まっていた。
残った戦力をほぼそっくり投入した全力出撃で時間だけは稼いでで見せる構えであったのだ。

 そんなわけで、選挙の実施に合わせて戦端が開くという予想から、いよいよ緊張が高まっていたのだ。
 そして、そんな極限状態の内側にあるエドモントンでは着々と選挙の準備が整いつつあった。
 間接民主制を採用するアーブラウでは、国民が議員を選び、その議員が投票する形で代表が決定される仕組みだ。
無論、議会で多数派を握るために政党があったり、派閥があったり、超党派の連盟があったりとここは複雑である。
 だが、重要なのは、少なくとも火星連合として重要なのは蒔苗東護之介がアーブラウの議員の籍を持ち、選挙に出馬できるかどうかであった。
その点に関して言えば、蒔苗は抜かりなく手配とした準備を進めていたので、難なくクリアできた。
問題となるのは問題なく議事堂に突入して送り届けることができるか、である。

 そして、セントエルモス旗艦であるエウクレイデスからギャラルホルンに対し、自分たちを通すか否かを問う通信が飛んだ。
これは形式的なモノにすぎない。お互いそのつもりで戦力を展開しているわけであり、すでに戦端は開かれている。
 当然の返答として、ギャラルホルン側の総指揮官であるイズナリオはこれを拒否する通信を流した。
 同時に、火星を独立させたクーデリアをテロリストと非難、降伏するならばそれで良しとする。
しかし降伏しないのであるならばあらゆる手段をとってでも生死問わずにクーデリアそして協力者を逮捕すると明言した。
 これに対し、当然の如くクーデリアはこの降伏勧告を無視。万難を排し、突入すると宣言した。
 斯くして、地上における先端は開かれた。
 双方の戦力が、双方の指揮官の命令を受け、一斉に動き出した。エドモントン会戦がここに幕を開けたのである。
 それは、エドモントンに夜明けが訪れるほんの少し前。澄んだ北米の空気を震わして、巨人たちの激突が始まったのだ。

515: 弥次郎 :2022/03/10(木) 00:45:08 HOST:softbank060146116013.bbtec.net

  • アーブラウ領 エドモントン郊外 ギャラルホルン陣地 前衛


 戦端が開かれて真っ先に始まったのは砲戦だ。
 市街地を背後に取っている関係上、ギャラルホルン側の方が遠慮なく打ちまくれる。
相手が航空戦艦というものを使ってくることは想定されていたので、大型砲やレールキャノンなども遠慮なく投じての砲撃だ。
それこそ、ダインスレヴさえも用意されて、遠慮なく打ち込まれている。まさしくギャラルホルンの用意した総火力だろう。

 だが、それを受けるのが地球連合の戦力である時点で、無意味であった。
 エウクレイデスらの艦艇はディメンジョンフィールドをはじめとした各種バリアを装備しており、この程度の攻撃では抜けない。
それこそ、こんな弾幕とも呼べない単なる射撃で抜かれるほどに弱くはないのだ。悉くが弾かれ、地面へとその弾丸や弾頭が落ちていくだけ。
一見して砲撃でやられているように見えて、その実は弾薬の消耗を誘っているのだった。
敢えて反撃していないのも、ギャラルホルン側の行動を誘発させるための行動だった。

 陣地防衛を担当するグレイズらは、その装備をいわゆるアーティラリー仕様へと変更していた。
 即ち、弾着観測のために頭部センサーの拡張、突破してくるかもしれないMSへの対処のためのライフルの携行。
更には地上戦用のホバーユニットに加えて追加装甲を各所に配置することによって、通常のグレイズよりも高い防御を獲得している。
さらにはMSの身の丈を超える大型のシールドを保持しており、これらが隊列を並べることで個人や集団の防御力を上乗せしている。
それだけ最前線という配置が危険だということであり、人的損耗を抑えるための工夫でもあった。
 だがら、そんな彼らだからこそ観測できることがあった。

『くそ、あの艦艇にダメージが届いていないな……』
『これだけ打ち込んでいてもかよ?』

 激しい砲撃と射撃の中でも陣地の自分たちの攻撃がどうなっているかを観測で来ていた。
艦隊の前に展開している光の壁あるいは膜の様なもので、攻撃が悉く受け止められているのだ。
正面から、砲陣地の奥に置かれている砲台などからは、あるいは指揮所などからは見えにくいだろう。
 だが、ちょっと近づいて視点が変われば、こちらの攻撃がどういう結末なのかがわかる。
 その証拠に、砲撃を受けている艦隊の直下には大量の砲弾や弾頭などが山の様に積み重なっているんが見えるのだ。

『見ろよ、あの山を……こっちの弾丸が全然届いていない。じゃなきゃ、なんであんなに積もっているんだよ……』
『全部弾かれている……!?』
『ああ、おそらく……戦闘が開始されてからこれだけ持ちこたえている時点で理解しなきゃならないってのにな……!
 おい、後方に連絡しろ、今すぐに!画像も含めてな!』
『りょ、了解です!』

 幸いにして、光学センサーにはカメラ機能も付いている。
 最前線でグレイズが撮影した映像と画像は、優先事項として後方へと、指揮所へと送られていった。


  • アーブラウ領 エドモントン郊外 ギャラルホルン陣地 指揮所

「砲撃が届いていない……!?どういうことよ!」

 前線からの報告に、カルタ・イシューはその非現実さのあまり叫んでいた。
 だが、その内容を真っ先に信じたのはマクギリスとガエリオの二人だった。

「やはりか……」
「イオク・クジャンの件でも明らかになっていたが、防御能力はやはり健在だったみたいだな」
「知っていたの?」

 当然、カルタはそんな対応を見せた二人に問い詰めるしかない。
 これまでに地球連合の戦力についての情報は明らかになっているモノは共有されていたのだ。
ドルト・コロニーでのアリアンロッド艦隊の敗北からは特にそうだ。何しろ最精鋭が破れたのだから、自分達ではなおのこと苦戦すると考えて。
そして、この数か月の間にギャラルホルンはそれへの対抗策を考え、用意し、今日という日に備えてきていたのだ。
 そして指揮官クラスでは当然の如くその手の情報というのは共有され、周知されているべきものであった。
 だが、そんなことを聞いたのはカルタさえも初めてだった。

「……一応、私やガエリオらの連名で上層部には報告してあったことだ。
 原理については不明だが、ダインスレイヴさえも弾く防御機構か何かが存在している」
「じゃあ、今行っている砲撃は!?なんでそれが共有されていないの!?」

 混乱するカルタだが、ガエリオはあきらめ顔だ。

「ダインスレイヴさえも効かなかったという事実は報告された。だが、その方法が何かがわからないままだった。
 そして、不確かな情報ということでこれについては『余計な不安を煽る』との判断からこれは伏せられているんだ」
「一体誰が……!まさか、ファリド公が……!」
「そうだ。私からの訴えさえも退けてな……」

516: 弥次郎 :2022/03/10(木) 00:46:03 HOST:softbank060146116013.bbtec.net

 苦虫を?み潰したような表情を隠さないマクギリスに、そのことを信じられないカルタは表情をゆがめるしかない。
そんなのは、まさしく怠慢ではないか?相手が強いならばそれに合わせた対応策を考えるべきだ。
日々鍛錬を重ね、研究を重ね、如何なる相手であろうと対処する能力を持つべきがギャラルホルンであろうに。
 しばし混乱したカルタだが、呼吸を一つ入れて、詳細を知る二人へと問いかける。

「……それで、どうするの?」
「どうしようもないことだ。相手が防御に徹している以上、こちらがいくら打ち込んでも効果はない。
 おそらく相手はこちらの消耗を誘っているのだろうな。砲撃のペースを抑えるように通達するべきだろう」
「口惜しい……!MSで取り付ければ……!」
「だが、相手は空に浮かんでいる。迂闊にMSを前線に出せば、今度は相手の砲撃のいい的にされるだけだろう……」

 打つ手なしだ、と諦め顔の二人に怒りがこみあげてくる。
 彼女のプライドも、性根も、そんな程度の状況で諦める二人を許せはしなかった。
 だが、同時に二人は最も地球連合について知っているとギャラルホルン内部でも知れ渡っているのだ。
それくらいの分別をつける程度の能力はカルタとて備えていた。本音としては、麾下の戦力と共にMSで飛び出したいくらいなのだが。

「しかし、相手はいつまで逼塞するつもりだ?選挙に蒔苗を送り込むのが目的ならば、いつまでもあのままというわけにはいかないだろうが……」

 ガエリオはカルタの癇癪が爆発する前に話を強引に変えた。
 それは、三人だけでなく、指揮所にいた幕僚らも疑問に思っていたことだ。
 ものすごく乱暴に言えば、時間はギャラルホルンの味方だ。こうしている間にも時間は無情にも過ぎている。
アーブラウとていつまでも来ない候補者を待って選挙を遅らせるわけにもいかないわけであるし、最悪投票が実行されてしまうかもしれない。

「確かにそうだな……」

 マクギリスもそこは気になっていたことだった。その気になれば強行突破もできるはずなのに、なぜ動きを見せないのかが。

「ファリド特務一佐、意見の具申をよろしいでしょうか?」
「許可しよう」

 そこで司令部に詰めていた人員の一人が手を挙げた。

「こちらの砲撃で動きが取れないというのではないでしょうか?
 何らかの防御手段をとっていると仮定するなら、それの間反撃ができないという可能性もあるのでは」
「うむ、それは私も考えた。だが、それならあれだけいる艦艇が何ら動きを見せないのはおかしい。
 前衛を担当する艦艇と、後衛として攻撃を担当する艦艇に分かれればいいだけの話だ」

 つまり、それ以外に何か理由がある。いったいなぜ?
 それについて思考を巡らせたとき、続けて報告が上がってくる。

「前線よりついで報告が!敵艦、MSらしきものを発艦させた模様」
「今更MSを出してきた……?」

 その違和感はカルタさえも分かる。この状況下で機動兵器ができることなど限られている。
 まともに考えるならば、砲撃の的になっておしまいだ。それに耐久出来るならば話は別であろうが、状況の打破にはつながらない。
 司令部の誰もが首を傾げた。相手の行動の意図は、一体なんだ、と。

「……しまった!」

 そして、真っ先に気が付いたのはマクギリスだった。

「『時間を与えすぎた!』迂闊だった!先制攻撃をしているつもりで、こちらの手の内を明かしていたんだ!」
「どういうことだ?」
「今すぐ前線に伝えろ!これは……!」

 血の気の引いた顔で、必死ささえも、そして絶望を湛え、マクギリスは続きを叫ぼうとした。
 だが、ギャラルホルン内部で最速で気が付けた彼さえも、あまりにも遅すぎた。
 その直後に、とてつもない衝撃が、エドモントンを揺るがした。
 それは、設営されていた防衛陣地を兼ねた砲陣地が、致命的な一撃を立て続けに食らう、その幕開けとなる衝撃だった。

517: 弥次郎 :2022/03/10(木) 00:46:52 HOST:softbank060146116013.bbtec.net

  • ピュタゴラス級ISA戦術対応全域航行戦艦「エウクレイデス」指揮所

 ギャラルホルンによる砲撃が始まってしばらくたつころまで、時は遡る。

「相手もなかなか物量で来ているものだな、ブラフマン」
「ああ。流石に総力を挙げているだけはあるな」

 エウクレイデスの艦橋で、セントエルモス戦隊の総指揮官であるクロードは戦術指揮官のブラフマンと状況を見ていた。
想定されていたいくつかのパターンのうちの一つである、対艦飽和砲撃と言う手をギャラルホルンは取ってきた。
空中艦艇戦力というものを迎え撃つのに極めて単純で、それでいて正しい選択肢だった。
防空・防御を重視した陣形で浮かぶセントエルモス艦隊の動きを抑制するという意味では、そして市街地を背後に取っていることを生かす意味では、だが。

「だが、こっちも準備は整いつつある、そうだろう?」
「だな。分析班、データはいいか?」
「はい、当該エリアの地形及び砲陣地の測距と分析は完了いたしました」

 結構だ、と言うとブラフマンは声を飛ばした。

「さて、反撃開始だ。期待しているぞ、ネクスト部隊!」


  • ピュタゴラス級ISA戦術対応全域航行戦艦「エウクレイデス」格納庫


 ドゴン、という音が連続して遠くで発生していた。
 展開しているフィールドやバリアに砲弾がぶつかり、音を立てているのだ。
 強力な防御機構であるとはいっても、音や衝撃まで完全に殺しきることはできない。やれなくもないが、そこまでやらなくてもいいのだから。
 戦闘開始が通達されてからほどなく始まり、もう一時間は続こうかというその砲撃は、未だに衰えを見せない。

『なんか、抜かれないと分かっていてもちょっと怖いね』
『振動とか衝撃までは完全には消せないって言っていたし…』

 タービンズからの出向組であるアジー、ラフタらはエウクレイデスの格納庫内で固定されている愛機の中でそんな声を漏らした。
彼女らだけでなく、鉄華団のMS隊も、セントエルモスのMS隊もまだ発艦はしていない。何せ下手に出てもハチの巣だ。
そんなことは分かってはいるが、撃たれっぱなしでいるのも心理的には影響はないわけではない。
フラストレーションがたまるというか、本当に大丈夫なのか、という気になってしまうわけだ。

『しかし、ギャラルホルンの連中、流石に金持ちだなぁ。お手本通りの砲撃にしても、すげえよ』
『うん、ものすごい量』

 同じく出番を待つシノ、三日月も外部カメラの映像を見て呆れるしかない。
 何重にも敷かれている砲撃陣地に防御陣地。そこから放たれる幾多の砲。いずれもが金持ちの戦術の極みと言えるものだ。
定石どおりに火力で敵の動きを抑制し、あわよくば損傷を与え、機動兵器による致命傷を狙う。
それを躊躇なく、そして弾薬費などを気にせずできるというのはやはりギャラルホルンらしいというべきか。

『けど、ただ撃たれっぱなしじゃないな』
『そうだね……あれだけ派手に撃っていれば、いずれは弾薬も減ってくるし、疲れだって出てくる。
 それに、敵の砲陣地の構造の解析もそろそろ終わるんじゃないかな?』

518: 弥次郎 :2022/03/10(木) 00:47:32 HOST:softbank060146116013.bbtec.net

 そして、本命である蒔苗やクーデリアらを護衛する突入部隊に編成されているMT「カガリビ」のコクピットでオルガとビスケットはそう分析した。
果たして、それは正しかった。鉄華団やタービンズの戦力がいるのとは別の格納庫で動きがあり、その振動が伝わってきたのだ。

『お、動いた……』
『この音は……上のカタパルトデッキか?』
『そうだね。映像が回ってきたから、転送するよ』

 ビスケットのAMSを通じた操作は一瞬だ。各機のコクピットに表示された映像には、それが映っていた。
 装備を整え、カタパルトに固定されたその機動兵器が並んでいたのだ。
 アーマードコア・ネクスト。セントエルモスに配備されている3機が出撃しようとしているのである。
さらに後方には、順番待ちをしているMS群には共通項というものが存在している。

『セントールさんを筆頭にネクストと可変飛行MSか……』
『どういうことかわかるか、ユージン?』
『ったりめーだろ。要するにあれだ、えーと……強襲と浸透だな。
 固い防衛陣地を崩すための、浸透突破戦術ってやつだ。歩兵じゃなくてMSやACでやるのがミソだな』

 オルガの問いにユージンは完結に答えた。
 そう、それこそが防衛陣地を構成し砲撃を続けるギャラルホルンへの対処方法だ。
 古来、西暦年間においてこういった砲撃や弾幕を張る陣地の防御性は強力無比であった。
何しろ突破するためには戦力を近づけなければならなかったが、それをするにはあまりにも危険が伴っていたためだ。
迂闊に近づこうものならば、用意されている重火力によって撃たれてしまうか、あるいは塹壕に籠る歩兵により処理されてしまうのである。

 だが、それが絶対だったのもわずかな間だ。
 敵が砲撃による兵力の排除に固執することは、敵の射撃地点の露呈につながる。砲撃と言えども、堅牢な陣地を吹き飛ばせるとは限らないのだ。
 さらに、その砲撃や重火力を抑えている間に小さいユニット、すなわち攻撃を潜り抜けて接近して敵の弱点を叩くという戦術が生まれたのだ。
固い陣地を無理に抜こうとするよりも、地形や配置によって生じる弱点を見つけ出し、そこを襲って突破することこそが肝要というわけである。
これらは説明しだすと長くなるので端折るが、要するにこれが浸透戦術、というものである。

 そして、ブラフマンが策定し、選択したのがこれの応用だ。
 まずは砲撃や火力投射をあえて受ける。相手の弾薬消費や疲労を刺そうと同時に、相手の陣形などの把握に努めるのだ。
砲台の配置は?どこに重火力が置かれているのか?どこが防御を重点としているか?予備の弾薬などはどこにあるのか?
MSの配置は?MWは?歩兵などが移動するための通路などはどうなっているのか?それらを観測するのだ。
 これらが終わった後に、ウィークポイントを、あるいは要所を少数戦力で叩き、相手の動きを麻痺させるのだ。

『ネクストやTMSの機動力と火力、ついでに言えば防御力なら、そこを的確に叩ける。
 そうすれば、相手の戦力の動きを弱めて、こっちの戦力が安全に展開できるようになる、だろ?』

 散々勉強させられたからな、とマホロビのコクピット内のユージンは鼻息も荒く言う。
 その返答にオルガは満足げにうなずいた。

『そういうことだな。相手は防衛をする必要がある。つまり自由に動けねぇわけだ。
 なら、こっちはそれを逆手に取ることができる』
『勉強しているじゃん、オルガ』

 エーコの言葉にオルガは少し照れつつも、しっかりと返事を返した。

『ちょっとでも勉強しないと役に立てませんからね…』
『うん、いいんじゃない?アタシたちも勉強になったしね』

 ともあれ、とオルガはこの後生じる結果がたやすく想像できた。

『固まって陣地に籠っていれば安全---そう思っている連中には、特大の一撃になるな』

 そして、出場した浸透強襲部隊により、オルガの想像通りの結果が生じようとしていた。
 戦局が、一気に動いたのだ。

519: 弥次郎 :2022/03/10(木) 00:48:07 HOST:softbank060146116013.bbtec.net

以上、wiki転載はご自由に。
返信は明日になります。

520: 弥次郎 :2022/03/10(木) 00:57:07 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
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514
×残った戦力をほぼそっくり投入した全力出撃で時間だけは火星で見せる構えであったのだ。
○残った戦力をほぼそっくり投入した全力出撃で時間だけは稼いでで見せる構えであったのだ。
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最終更新:2024年03月05日 21:32