823: ホワイトベアー :2022/03/01(火) 20:46:01 HOST:sp1-75-213-55.msb.spmode.ne.jp
日本大陸×ワルパン 第4話 初動準備
1936年7月 扶桑皇国 首都新京 

オラーシャ・扶桑皇国国境付近での戦いの結果は即座に扶桑皇国首都新京の政府・軍上層部に伝えられ、政府・軍上層部を震撼させた。

「前線部隊は何をしていたんだ!?そろいもそろって昼寝でもしていたのか!!」

扶桑皇国の首都新京にある首相官邸では扶桑皇国内閣総理大臣毛利泰宏は陸軍大臣・陸軍参謀長を始めとした陸軍上層部を怒鳴りつけていた。


「国境防空の重要陸上基地全てへの奇襲攻撃を許して、戦闘機320機、軽爆撃機120機、その他航空機58機が大破!重傷を負ったウィッチが計12名!これだけの被害をうけた挙句、敵を撃退できたのはバイカル基地のみとは、西部方面軍はサボタージュでもしていたのか!?それとも将兵すべてが無能揃いだったのかね!?」

そう、攻撃を受けたのはバイカル基地のみではなかった。
バイカル基地以外の国境防空用の航空基地も軒並み奇襲攻撃を受けており、基地施設や滑走路、それに作戦機に大きな被害を受けていた。
特にミールヌイ航空基地ではスクランブルのために誘導路を進んでいたウィッチ部隊のすぐ近くに爆弾が直撃、一個中隊12名が重傷を負う大惨事が発生し、他の基地でもウィッチは無事だが格納庫ごとストライカーユニットを吹き飛ばされるなど航空ウィッチ部隊にも大きな被害を受けていた。

こうした被害状況があるからこそ、毛利泰宏の一方的な怒声をうけてもなお、その場にいた陸軍上層部は反論をせずただ黙り耐える事しかできなかった。
レーダー網が整備され、さらに要警戒を中央から命令されていたのにも関わず、西部方面軍が犯した失態の大きさは、彼らから言い訳を行える道理を奪っていた。

「首相、今はそれよりも今後の対応を協議するべきでは?」

それからしばらく首相の一方的な詰問が続くが、副総理から陸軍に助け船が出されると落ち着きを取り戻し始めた

「・・・それもそうだな。それで、バイカル基地を始めとした国境防空を担う基地と航空部隊が壊滅的被害を受け、さらに怪異共が復活したわけだが、君達は今後どのような対応をとっていくのかね?」

「大半の航空部隊は機材こそ被害を受けましたが、人員は無事であります。ゆえに基地機能の回復を最優先し、それと同時に予備の航空機をもって通常戦力の回復を図ります。また、ウィッチ部隊に関しては飛行第32戦隊に被害が集中しておりますので、これを後方の飛行第11戦隊と入れ替えをおこないます」

「予備機だと?国境に配備していた機体は最新鋭の36式戦闘機だぞ。予備機なんてどこにあるんだ?」

「西部方面軍以外に配備されている機体および配備される予定だった機体を全て集めます。また、長島飛行機を初めとした国内のメーカーに緊急増産を命じ、補充に入っております」

「航空機の増産にどれだけ予算と時間ががかかるか・・・いや、この際それはいい。前線部隊の回復までにはどれだけかかる?」

いくら扶桑皇国の工業力が同年代の頃の史実日本を上回っているといっても、戦時体制に入っていない状態での航空機生産能力など微々たるものであり、本格的に増産を行うためにはラインを整備する為の時間と予算が必要である。
こうして首相と陸軍大臣、陸軍参謀総長がやり取りをしている最中にも、裏では陸軍省と陸軍航空本部と大蔵省とメーカー側が必死に動いているのだ。

「機体の補充はそれほど時間はかかりませんが基地の復興に1カ月から1カ月半はかかります。ただ、最低限の施設や設備のみで良いのなら1週間、いや5日で終わらせられる見通しとの事です」

「・・・わかった。それと地上部隊の展開は?」

「すでに西部方面軍所属の歩兵第6師団、歩兵第8師団、歩兵第13師団、歩兵第17師団、歩兵第55師団、戦車第7師団、戦車第8師団の7個師団はすでに動員を完了し、国境の防衛にあたっております。また、計画に則り増援として戦車第1、第2師団が西部方面軍管区に急行中です」

824: ホワイトベアー :2022/03/01(火) 20:50:17 HOST:sp1-75-213-55.msb.spmode.ne.jp
毛利首相の問いかけに陸軍大臣に変わり、それまで黙っていた陸軍参謀総長が応える。
彼が挙げた部隊はオラーシャとの国境に接している西部方面軍に所属している部隊であり、90㎝砲を主砲とする35トン級戦車である九五式中戦車を初めとした最新の兵器・武器と、それを十分に操れる練度の高い兵士を擁し、完全に自動車化されている最精鋭部隊であった。
また、同じく戦車第1、第2師団も同様に九五式中戦車を装備した部隊で、西部方面軍所属部隊以外では唯一完全自動車化されている精鋭師団でもあり、さらに両師団合わせて総勢300名の陸戦ウィッチが所属する扶桑皇国陸軍最大の打撃力を有する部隊でもあった。

「それでネウロイ達の攻撃を防げるのかね?」

「20万近い兵力と700名近い陸戦ウィッチがおります。また、中央軍所属の14個師団や、他の方面軍に属する26個歩兵師団と5個戦車師団、13個航空師団も準備が整った部隊から増援に送ります。
さらに各航空基地では通常航空機の運用は不可能ですが、航空ウィッチの運用は可能ですので敵の侵攻を許す可能性は低いかと」

「ここまでの規模の軍の動員にどれだけの予算がかかっていると思う。それなのにゼロとは言わないのだな。」

「軍事に絶対はありませんので。それとも小官らの罷免をお望みですか?」

しばしの間、首相と陸軍大臣、陸軍参謀総長がにらみ合う。
先に折れたのは首相のほうであった。

「・・・貴様ら以上に政権にとって有用な人間がいない事がわかっているからそう言えるんだろうな。結構だ。諸君らが職務に励むことを期待したいよ」

「陛下と関白殿下の為に全力を尽くします」

1936年7月末 大日本帝国首都 東京

東アジアにおいては1904年から1905年まで続いた扶桑戦役以来初めておきたネウロイの出現彼らによる奇襲は、それがおきた扶桑皇国国境地帯から遠く離れた帝都東京でも大々的に報道され、世論をにわかながら戦争の空気が包み始めた。
ネウロイによる襲撃の発生を知らされた為、都内にあるとある高級料亭に緊急の会合を開くために夢幻会会合のメンバーたちは集まる。

「ついに始まってしまったか・・・しかし、初戦でこれだけの被害をうけるのか」

「来るとはわかっていたが、まさか奇襲を許した挙句現場が大混乱に陥るとは・・・」

「ほぼ初撃で扶桑皇国のオラーシャ方面の航空戦力と極東オラーシャ軍の航空戦力が大打撃をうけるとは・・・」

「後方基地を奇襲で潰して援軍を遅らせた後に大軍をもって攻め入る・・・か。まさかソ連というかロシア帝国をモデルとしたオラーシャにネウロイが縦深攻撃を図ってくるとはな。皮肉すぎるだろ・・・。それで、戦況は?」

「最悪に近いです。すでにオラーシャ極東軍の指揮系統は完全に瓦解。各地の部隊が個別に抵抗するしかない状況です」

室内各地で行われている雑談を流しながら、会合の司会役の1人である近衛の問いに中央情報局から参加している人間が応える。
人類にとって不幸な事に、この時のネウロイの攻勢は実に見事なものであった。
第一撃として行われた扶桑皇国ならびにオラーシャ帝国東部航空基地への奇襲攻撃が完遂された直後に、大量の地上型ネウロイがオラーシャシベリアに大挙して侵攻を開始、奇襲攻撃により混乱するオラーシャ極東軍の抵抗を排除しつつ、東進を進めていた。

もともと、オラーシャ軍は第一次ネウロイ大戦で最初にネウロイが出現し、最後までネウロイの策源地であった黒海と面していた欧州方面にウィッチを集中配備しており、極東オラーシャ方面のウィッチ戦力は国連極東ネウロイ監視航空団に頼っていた。

825: ホワイトベアー :2022/03/01(火) 20:51:06 HOST:sp1-75-213-55.msb.spmode.ne.jp
そんな状況下でネウロイの奇襲によりオラーシャ軍主力のいる欧州方面から分断され、さらに即応可能な航空戦力とそれを運用する航空基地の大半を失ったオラーシャ極東軍は絶望的な状況にあっても1人でも多くの国民が逃げられる時間を稼ぐために遅滞戦略により時間を稼ぎつつエニセイ川に防衛線を敷き、持久戦を図ろうとする。
しかし、犠牲を厭わないネウロイ群の波状攻撃と空からのインフラや移動中の部隊への攻撃により、防衛線の敷設は間に合わず、わずか数日でネウロイのエニセイ川の渡河を許してしまい、指揮系統は崩壊。その後は組織的抵抗は不可能となり、シベリアの各地で各個撃破を許していた。。

「扶桑皇国や中華帝国は援軍を出さないのか?」
「扶桑皇国は初戦での被害が回復するまで国境から部隊を前進させるつもりは無いようです。中華帝国に関しては部隊の動員がいまだ改善改善」

無論、オラーシャ軍とてバカではい。彼らは早々に自軍のみでの事態の解決を諦め、後方に位置する中華帝国や扶桑皇国に援軍を要請していたが、初戦での奇襲を許した扶桑皇国やその報告を受けていた中華帝国は自国防衛を優先、中華帝国は大モンゴル帝国にこそ兵を出すが、制空権をネウロイにとられているオラーシャ方面には援軍を出さずに国境の防衛を固めるのみである。
もっとも、これには援軍要請後すぐにエニセイ川の突破を許し、極東オラーシャ軍の指揮系統が崩壊してしまった事も大きな要因であったが。

「正直、オラーシャ領シベリアの防衛は不可能でしょう。それより問題は扶桑皇国と中華帝国がこのネウロイの快進撃を食い止められるかです」
「その点は心配には及ばないでしょう」
「?どういうことですか?」
「敵ネウロイの機甲戦力は史実4号F2型相当が主力の様でして、BT-7やBT-5、T-26などの軽装甲戦車しか有していない極東オラーシャ軍はともかく、61式戦車や四式中戦車、M4A3E8、M36相当の戦車や駆逐戦車を大量に配備している扶桑皇国軍や中華帝国軍なら十分に耐えられるでしょう」

文官から挙げられた質問に、陸軍将校の1人がそう返した。
実際に、長年大日本帝国陸軍を仮想敵国にしてきた扶桑皇国や、そんな扶桑皇国を仮想敵国としてきた中華帝国の陸軍力は強大なものであり、極東オラーシャ軍とは数、質ともに比べ物にならなかった。

「なにより投入可能なウィッチの数が違います。扶桑皇国でも四桁、中華帝国に至っては5桁のウィッチを戦線に投入可能としております」

陸軍将校からの応えに満足したのか、文民は口をとじる。

「なるほど、両国陸軍の防衛が十分な事は理解しました。それで、我々の状況は?」
「それについては私が応えよう。」

辻の質問に対してはそれまで応えていた陸軍の将校ではなく、内閣総理大臣である榊がこれに応えた

「すでに知っているだろうが、扶桑皇国、中華帝国から連名で漢城協力協定に基づいた東アジア協力機構軍の編成要請が打診されたため、以前からの方針にしたがい部隊の派遣準備に入っている。
第一陣の部隊は資料に記載されている通り、朝鮮半島、いや、失礼。扶桑半島南部に駐留中の5個歩兵師団と1個機甲師団、本土の2個海兵師団、それに空軍航空戦闘総軍から3個航空師団を、戦略航空総軍からⅠ個航空師団を予定している」
「地上部隊は8個師団、さらに4個航空師団ですか。付随部隊も合わせれば60万人クラスの派兵ですね」
「ウィッチ戦力は?」
「通常戦力だけでは不安だからな。議会がうるさいが、派遣する。第一陣では陸戦ウィッチを一個連隊108名、航空ウィッチは1個航空団36名を予定している。」

なるほど、一応満足したのか、そうつぶやいた後に辻は引き下がった。

826: ホワイトベアー :2022/03/01(火) 20:51:39 HOST:sp1-75-213-55.msb.spmode.ne.jp
「問題はどこまで我々の通常兵器がネウロイに通じるかですね・・・」
「中型種までは十分通用するだろう。ミサイルがあることを考えると一方的に狩れるぞ」
「それより問題は扶桑皇国国内や中華帝国にある我々のジェット戦闘機を運用できる飛行場の数だよ。」
「それは問題ない。我々のダミー会社が作ったジャンボ用の飛行場を転用可能だからな」

「問題は中盤から出てくるコア持ちやヤマにはこれらの通常兵器が通じないことだ。あれ対策に開発を進めている列車砲群に期待するしかないなが・・・」

「もしくは空軍が開発した対戦艦用対艦ミサイルを改修した巡航ミサイルですかね。最悪は核兵器の乱射だな」

この戦争の半ば以降から出てくるコア持ちやヤマへの対策を考えるとそれだけでどんどんと会合内の空気が重くなっていく。
それも仕方ないだろう。何せ敵は最終的にコアを破壊しないと永久に再生し続け、高出力レーザーをガンガン放ってくる化け物になるのだから。
会合が終わりに近づいてもなお空気が重くなっていくことを感じた1人の政治家が話題転換の為に別の話題を切り出した。

「そういえば、今日は嶋田さんがいませんが、かれはどうしたんですか?」

「さあ」

「そういえば今日は見てないな」

「まさか過労で倒れてしまったのでは?」

「なにか物足りないと思っていたら嶋田さんがけっせきしているのか」

ガヤガヤガヤ、
静まり返りつつあった会合の場が再び声で溢れていく。

「そういえば私も嶋田さんを見てませんね。お二人は何か知りませんか?」

辻(魔王)から話しかけられた山本と南雲は友との友情よりわが身をとった。
魔王からは逃げられないことはすでにいくつもの経験で知っていたのだから
彼らは次回の会合でつるし上げられるであろう嶋田に心の中で合唱すると同時に白状する。

「・・・嶋田なら陸空海合同ウィッチ親睦合宿の責任者として部下たちと共に北海道に合宿に行っている。」

「ちなみに参加者の中には扶桑海三羽烏や北郷少佐、江藤中佐などがおります」

会合の場は一気にシンとなり、数秒後、夜の帝都には怒号が響き渡ったと言う。

827: ホワイトベアー :2022/03/01(火) 20:53:27 HOST:sp1-75-213-55.msb.spmode.ne.jp
以上になります。
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最終更新:2022年03月11日 10:37