114: ホワイトベアー :2022/03/05(土) 16:04:22 HOST:115-179-80-59.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
日本大陸×ワールドウィッチーズ 第6話 蜘蛛の糸

1937年 大日本帝国 新潟空軍基地

新潟空軍基地は日本海防衛の重要拠点の1つとして整備された航空基地であり、大陸への派兵が決まった現在では大陸への輸送中継拠点としての機能も期待されていた。

そんな基地内のブリーフィングルームでは 胸にウィングマークをつけ、フライトジャケットを纏う軍人たちが集まっていた。
彼らが視線を向けている先には投射機から投影される青い画面が、ユーラシア東部の地図にかわる。

「数時間前、オラーシャ帝国外務省から東アジア協力機構に対して正式な外交ルートを通してある要請があった。」

どこか重々しい口調でブリーフィングが開始した

「諸君も知っての通り、これまで20年間その姿を見せなかったネウロイが5日前に出現すると同時にその活動を活発化させた。出現が確認されたのと同時に行われた奇襲攻撃により我々はもちろん、オラーシャ軍も同様に大きな被害を受けてた。そこにネウロイが地上でも大攻勢を開始、混乱の最中にあったオラーシャ極東軍は初戦で撃破され、オラーシャ極東地域はわが国との国境付近と取り残されたオラーシャ軍が決死で防衛している一部地域以外はネウロイによってほぼ制圧されている。」

ネウロイの勢力圏を示しているのだろう。ユーラシア東部の地図が西から東にドンドン赤く染められていき、我々の国境近くと都市だったのだろう一部のネウロイ勢力圏内で孤立した地域以外のオラーシャ領シベリアは真っ赤に染まる。

「そんなネウロイ勢力圏内に孤立している都市の1つであるブラーツクにシベリアを視察中だったオラーシャ帝国第一皇女であるエカチェリーナ・ロマノフ皇女が現在でも取り残されている。それを我々に救出してほしいそうだ」

この場にいる全員が猛烈にいやそうな顔をした。
それはそうだ、ここまで聞かされてこの後の展開がわからない様な頭の回転が遅い人間が航空パイロットになれるはずもない。

「この要請に対して東アジア協力機構軍総司令部は救出作戦の実行を決定、我々、帝国空軍新潟基地飛行隊もブラーツク救出任務部隊の戦闘序列に入ることになった」

おお、神よ何処におりや何処におりや全世界は知らんと欲す。

「現在、ブラーツクには皇女殿下の他に約2000人の避難民が居ることがオラーシャ帝国政府により確認されている。当然、彼らを無視して皇女殿下だけを救い出すわけにはいかない。そこで東アジア協力機構軍総司令部は我軍の大型輸送機である35式大型輸送機を使った空中輸送作戦を立案した」

スクリーンの一部に史実のC-17と瓜二つなデブッチョな4発の輸送機が移され、元々移っていたユーラシア東部の地図ではこの新潟基地からブラーツク基地までの日本軍航空部隊が通る飛行ルートが移される。

「つまり、我々の任務は無事に避難民と皇女殿下を日本にお連れする事だ」

敵の勢力圏に輸送機を突っ込ませるか。いくらネウロイ達の速度が輸送機以下と言っても危険じゃないか。
この場にいるパイロット達は一抹の不安を捨てきれないでいた。

「今回の作戦では扶桑皇国陸軍第64飛行戦隊が先遣隊として先発する。彼女らが基地上空の航空優勢を確保次第、輸送機部隊がブラーツク航空基地に着陸、皇女殿下と避難民を救出する」

第64飛行戦闘部隊、所属するウィッチの大半がエースである扶桑皇国陸軍航空ウィッチ部隊の虎の子だ。すでに主戦場となっている国境地域防空からこいつらを引っこ抜くとは、それだけ扶桑皇国側は乗り気ということだろう

「本作戦での注意事項だが、ブラーツク周辺空域ではIFFを搭載していないオラーシャ軍航空機がネウロイの迎撃戦闘中である為、同士討ちを避けるために攻撃は相手を視認してから行え。視界外攻撃はこれを厳禁とする」

115: ホワイトベアー :2022/03/05(土) 16:05:30 HOST:115-179-80-59.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
「待ってください!! まさかわざわざ危険性を伴う格闘戦を行えと言うんですか?」

日本空軍の対ネウロイ戦の基本戦術であるファーストルック・ファーストショット・ファーストキルの3F戦術の否定である長距離射程ミサイルの使用制限、流石にこれには現場のパイロット達から不満が上がる。

「高度に政治的な判断というものだ。これは東アジア協力機構の決定だ。他に何か質問は・・・ないようだな。諸君らの健闘を期待している」


1937年7月 オラーシャ帝国領シベリア上空


先発した扶桑皇国陸軍第64飛行戦隊の活躍により、日本空軍部隊はブラーツクまでネウロイの襲撃を受けずに到着する事に成功。

『マジックよりゴーレム隊と航空ウィッチへ。作戦空域に到着した。敵飛行型ネウロイの掃討に入れ。ウィザード隊とスピア隊は近接航空支援を実施、爆撃機部隊は敵増援の足止めを実施しろ』

『了解した。ゴーレム隊各機、ランチの時間だ。残さず喰らい尽くせ』

『了解したマジック。ウィザード隊各機、オラーシャの呑んだくれ共に本当の近接航空支援とは何かを教えてやれ』

『スピア了解。各機、行くぞ』

対空兵装を搭載した日本空軍の28式汎用戦闘機と36式戦闘脚を履く航空ウィッチ達がネウロイに喰らいつく。

『FOX2』

そう無線が発せられると同時に28式汎用戦闘機から放たれた短距離空対空ミサイルが航空ネウロイを吹き飛ばし霧散させていき、
航空ウィッチ達や28式汎用戦闘機が装備する12.7ミリ機関銃や20ミリ機関砲が火を吹きネウロイを撃破していた。

このときの航空ネウロイの主力は推定最高速度約330 km/h、7.62ミリ機関銃クラスの実弾攻撃を行ってくる複葉戦闘機型と推定最高速度約670 km/h、20ミリ機関銃クラスの実弾攻撃をしてくる単葉戦闘機型のニ種類で、少数のI-16を除いて、大半の機体がI-15で構成されていたオラーシャ軍にとっては極めて強力な難敵であった。

しかし、日本・扶桑連合戦闘部隊の主力を担う日本空軍の戦闘機はF-16C Block 30/32相当の性能を誇る28式汎用戦闘機32型であり、ウィッチ隊の装備するストライカーユニットは宮藤理論を採用することで国連ネウロイ監視航空団の装備するホーカーハリケーンよりかも遥かに強力なエンジン出力と運動性を実現した36式戦闘脚だ。

『友軍機か!? 助かった』
『ウィッチもいるぞ』
『なんて機体だ・・・。あの化け物を振り切りやがった』
『あれが噂のジェットか、速度も運動性も段違いじゃないか』

空では今までブラーツクへの侵入を防ごうと死ぬ覚悟を決めて空を飛んでいたオラーシャ軍や国連極東ネウロイ監視航空団の戦闘など児戯でしかない。そう口外に言われているかのような圧倒的な戦闘、いや狩りが繰り広げられていく。

日本空軍の敵は空だけではない。当然、地上にもおり、これらへの攻撃も開始されていた。

『こちらは日扶連合航空部隊よりオラーシャ帝国軍全部隊へ。これより支援攻撃を開始する。航空支援が欲しい部隊はこの回線で要請を出してくれ』

後方の早期警戒管制機から流暢なオラーシャ語での無線通信が流れる。

『こちらオラーシャ軍第51戦車大隊、前方の敵ネウロイを叩いてくれ!!。こちらの火力じゃ歯が立たない』
『こちらはブラーツク第8民兵連隊、敵の攻撃が激しい。火力支援を要請する!!』
『こちら第31海軍歩兵大隊、このままだと敵の浸透を許してしまう。支援をくれ』

オラーシャ軍地上部隊の要請を受けたウィザードの28式汎用戦闘機は搭載する対戦車ミサイルを使用して対地攻撃を開始する。

116: ホワイトベアー :2022/03/05(土) 16:06:03 HOST:115-179-80-59.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
『ウィザード3、ライフル』

瞬間、28式汎用戦闘機から搭載していた22式対戦車誘導弾が発射され、それまでオラーシャ軍が倒すのに苦労していた中型ネウロイを一撃で吹き飛ばした。

『BT-7でも歯が立たなかったあいつを一撃だと・・・』
『もう一体も撃破したぞ!?』
『助かったぞヤポンスキー。今度ウォッカを奢らせてもらう』
『やるじゃないかヤポンスキー』

『アベンジャァァァァァ!!もっとだ、もっと復讐者の恐ろしさを教えてやる』

別の場所ではスピア隊の26式攻撃機が自慢の30ミリ回転式機関砲が地上を這うネウロイに容赦なく劣化ウラン弾の裁きを下しており、日本空軍の到来によりオラーシャ地上部隊にかかる圧力をいくらか緩和していた。

『日本軍、南西部方面にもっと火力をくれ。このままだと防衛線が破られる』
『第35歩兵中隊、通信途絶。』
『これ以上の防衛は無理だ!!予備陣地に後退!!後退!!』
『指揮官代理が戦死!!次席指揮官は誰だ!?』
『中型だけでも敵が多すぎる!!これじゃあミサイルが足りないぞ』
『撃て!撃て!撃て!撃て!部隊の後退を支援しろ』
『怯むな、男の意地を見せつけろ!!』
『援護してくれ、対戦車地雷で吹き飛ばしてやる』

もっとも、航空支援により生き延びれた地上部隊から感謝を伝える通信も入るが、ネウロイの数が多すぎた。
航空部隊の被害を押しのけて進撃をするネウロイ達の攻勢により、それ以上に悲痛な内容の通信が飛び交っていた。


同日 大日本帝国空軍 新潟県 新潟空軍基地 作戦司令部

「支え切れる・・・訳もないか」

戦場から遥か遠く、新潟空軍基地の作戦司令部で作戦の指揮をとる相模嘉明空軍大将は早期警戒管制機や遥か上空を飛ぶ高高度偵察機などから送られてくる情報を見ながら1人そうつぶやいた。

「司令、保護対象を含めた避難民の収容した輸送機が全機離陸しました」
「わかった。全機を引き上げさせろ。以後の後方攻撃は戦略爆撃機部隊と地上の巡行ミサイル連隊に任せて、攻撃機および戦闘機はネウロイ第一、第二梯団への攻撃に集中させろ」

彼は冷徹にオラーシャ軍の残存員への死刑宣告をくだす。

「よろしいのですか?」
「かまわない。我々の主戦場は扶桑ならびにモンゴルの国境地域だ。すでに死ぬことが確定している人間を延命させるために使える弾薬や燃料は存在しない。」

すでにネウロイの第一梯団主力はイルクーツクやレナ川沿岸部、モンゴル国境部への攻撃を開始しており、オラーシャ極東軍と東アジア協力機構軍三軍(扶桑皇国軍、大日本帝国軍、中華帝国軍)との間で激しい戦闘がおきていた。
そして第二梯団がチュンスキー周辺をイルクーツクに向かい東進している以上、大日本帝国空軍の主要攻撃目標はこの第一梯団と第二梯団であり、相模が言う通りそれ以外に攻撃を仕掛ける余裕など存在していなかった。


「わかりました。そのように手配します。」

ここから発せられた指令は電波を通して時間をおかずに現場の早期警戒機および戦闘中の航空部隊に伝わる。

公的記録上ではこの蜘蛛の糸作戦は成功したとされる。救出目標は皇女殿下を含めて全員無事に日本本土にたどり着き、さらに生存の可能性が低かった国連極東ネウロイ監視航空団所属の航空ウィッチ8名も追加で救出できたのだから。

その裏ではブラーツク守備軍の文字通りの意味での全滅という被害が出ようとも、日本軍を初めとした東アジア協力機構軍からしたら元々全滅を前提とした時間稼ぎの為の捨て駒であり、政治的な理由を達成したのみならずその中から宝石よりも貴重な航空ウィッチを救出できた事からそう判断を下した。

117: ホワイトベアー :2022/03/05(土) 16:06:33 HOST:115-179-80-59.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
以上、大陸×ワルパン第六話となります。
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最終更新:2022年03月11日 10:41