316: ホワイトベアー :2022/03/07(月) 13:30:50 HOST:sp1-72-8-69.msc.spmode.ne.jp
日本大陸×ワールドウィッチーズ 第7話 絶望の進軍
「これだけの航空機とウィッチがいるとは・・・壮観だな」
オラーシャ極東軍司令官ヴァシーリー・ブリュヘル元帥はイルクーツクに設置した臨時司令部から見えた光景にそんな言葉を漏らす。
彼の視線の先には空を埋め尽くさんとする莫大な数の航空機や航空ウィッチが西に進路をとり、絶え間なく進んでいた。
「俺達の分も残しておいてくれよーーーー」
外では恐れを知らないのだろう、幾人かの若者たちが彼女らに手を振り下士官や同僚たちに注意されている。
ーーああした若者を1人でも多く生き延びさせたいものだ。
叶わぬ願いと分かっていても何かにそう祈りたくなる。
イルクーツクは、オラーシャ帝国と扶桑皇国の国境に位置し、ロシア極東地域とウラル・中央アジアをつなぐシベリア東部の工商および交通の要衝である。
アジアと欧州の玄関口という側面を持ち、古くから交易で栄えてきた商業都市で
もあった。
そのような本来なら平和の下で繫栄してきた都市は、今やネウロイにより滅亡の淵へと追いやられようとしていた。ネウロイの第一梯団がイルクーツクの防衛線に到達したのだ。
むろん、東アジア協力機構軍やオラーシャ極東軍も何の対策もとっていなかったわけではない。彼らはこのネウロイの第一梯団の勢いと数を少しでも削ぐために《嵐作戦》、8個空軍12000機を超える航空機をもって激しい攻撃を、世界の軍事史に残るであろう有史以来最大の航空攻撃作戦を立案・実施していた。
日本軍の運用している26式戦闘機や28式汎用戦闘機、14式戦闘攻撃機、26式攻撃機、24式戦略爆撃機などのジェット機群や扶桑皇国の双発爆撃機である九六式軽爆撃機、双発攻撃機であり九一式双発襲撃機、急降下爆撃機である八九式襲撃機、
中華帝国軍の92式急降下爆撃機や双発攻撃機である92式対地攻撃機、89式対地攻撃機 などが爆弾やロケット弾、対地ミサイルなどを持てる限り抱えてネウロイに襲い掛かっていたのだ。
無論、ネウロイもただ黙って爆撃をされるわけがない。当然のごとくこれを迎撃しようと大量の戦闘機型ネウロイを繰り出してきた。
しかし、26式戦闘機や28式汎用戦闘機、14式戦闘攻撃機など高速を誇る日本軍攻撃部隊への要撃を図ろうとしたネウロイ群はその速度差から間に合わず、扶中連合部隊の迎撃に向かったネウロイ達は今回の決戦の為に最低限の防衛部隊以外をかき集めた2000人近い航空ウィッチ達の手厚い歓迎を受けることになる。
こと東アジアにおいて数の暴力はネウロイの専売特許ではないのだ。
『レッドイーグル3がまた落としたぞ』
『これで4機目だが、今日は君のおごりで決まりかな?ホワイトソード2』
『まだまだ、ゲームはここからが本番よ』
オラーシャを相手に無敵を誇ったネウロイ側の航空戦力は、一方的なまでの性能の差によりウィッチたちに落とされていく。いや、ウィッチたちだけではない。
彼女たちと共に爆撃機部隊を護衛する扶中両軍の戦闘機部隊も圧倒的とは言えないものの互角以上に戦えていた。
この時、扶中両軍が投入した戦闘機は2000馬力エンジンを採用し、20mm機関砲を4門搭載している九四式戦闘機や2200馬力エンジンを採用し、12.7mm機関銃を6門搭載している92式戦闘機など1撃離脱戦を得意としていた戦闘機群であったが、それは格闘戦を戦えないことを意味してはおらず、さらに高度な連携戦術を駆使してウィッチ隊が単葉機型の相手に集中できるように複葉機型を撃破していった。
単葉機を相手にしているウィッチ隊の装備しているストライカーユニットも、宮藤理論を全面的に採用して設計された新型ストライカーユニットばかりであり、その数も有史以来最大のものであった。
317: ホワイトベアー :2022/03/07(月) 13:31:26 HOST:sp1-72-8-69.msc.spmode.ne.jp
オラーシャ軍のI-15やI-16や少数の国際ネウロイ監視航空団を相手に圧倒的な戦闘力を発揮できたネウロイも、食いつこうとすれば速度差からあっさり逃げられ、後ろに受けても相手の両機に撃破されるか、運動性の違いから振り切られる状態で護衛の戦闘機群やウィッチ群を抜け、東アジア協力機構軍の爆撃機・攻撃機連合に喰らいつける訳がない。
日扶中連合爆撃・攻撃機部隊にネウロイの牙は届かず、彼らは大した損害を受けることなく地上ネウロイ群の第一梯団へと向かっていた。
開戦以来初の最大規模の航空作戦であり、最低限の予備部隊を除いた全てのウィッチ部隊が動員されている以上、若松雪美の属する飛行第64戦隊も当然ながら攻撃部隊の護衛役として動員されていた。
「史上最大の航空部隊・・・か・・・」
扶桑皇国陸軍航空隊の最新鋭爆撃機である九六式軽爆撃機《飛龍》や九四式双発襲撃機《屠龍改》九一式双発襲撃機《屠龍》、旧式ながらいまだに第一線を張る九〇式軽爆撃機、八七式軽爆撃機、八九式襲撃機などを主力とする航空機部隊を見ているとそう声が出てきてしまう。
波状的な航空攻撃よりネウロイの勢いを削ぐことを目的した嵐作戦ではいくつもの攻撃部隊が同時並行的に動いており、私たち飛行第64戦隊が護衛を担当する部隊は扶桑皇国陸軍航空隊所属機で大半が占められている部隊であった。
『10の時の方向よりネウロイ60機が接近中。飛行第64戦隊および飛行第18戦隊各隊は迎撃を開始せよ』
日本軍の管制機から命令がはいると私たちは戦闘機部隊と共に私たちと第18戦隊のウィッチ隊総勢72名がこれの迎撃に向かう。
戦闘自体はあっと言う間に終わる事になった。当然だ。数で勝り質で勝る私たちにネウロイが抵抗をできるはずもない。
「贅沢がすぎやしないかな」
圧倒的な結果につい言葉がもれてしまう。
『贅沢ができるという事はそれだけ余裕があるということですわ。いいことではないですか』
『そうだそうだ。贅沢は素敵だだよ』
『まったく、これだから質より量とかいって安いジャンクフードが大好きな人間は・・・』
どうやらマイクが拾っていたようで周りからそう突っ込みが入る。あと、ジャンクフードが好きナノは関係がないだろ
その後も攻撃部隊を迎撃しようとネウロイ達が次々と現れてくるがその全てを叩き落とし、爆撃機や攻撃機に一切の損害を与えず、地上ネウロイ群まで到着する。
そこで私たちが見た光景はまさに絶望であった。
『・・・何・・・あれ・・・』
誰かの言葉がインカムから鼓膜を通して脳に届くが、それを処理できるだけの余裕は存在しなかった。
ブリーフィング上で写真では知らされていたが、実際に見るのとただ言葉でわかった気になっていた事の差がここまで大きいとはこの時初めて気が付いた。
地上はとこどころを除いて銀色一色、地面のほぼすべてを中小様々なネウロイが染め上げていた。
その数は確実に千以上、下手をしたら万単位だろう。
『戦闘機部隊、ウィッチ隊護衛に感謝する。引き続き、戦闘機型ネウロイの迎撃を頼む。全機攻撃を開始せよ』
『入れ喰い状態だな。外す心配はしなくていい』
双発襲撃機達は機種に付いている30mm機関砲を発射していき、爆撃機が小型クラスター爆弾をばらまき、単発襲撃機は急降下爆撃で爆弾を叩きつける。
大地を埋め尽くすほど密集していた事から、攻撃機による攻撃や爆撃機からのクラスター爆弾によりネウロイは面白いほど簡単に消滅していくが、その程度の攻撃で止まるほどネウロイは甘くはない。彼らはその被害を無視して前進を進めていく。攻撃により空いた穴は後方のネウロイたちによって即座に埋め合していく。
『数が多すぎる・・・爆弾がいくらあっても足りないぞ!!』
『とりあえずありったけをばらまけ。くそ、これなら富嶽や連山を持ってきた方が効率的じゃないか』
『御託はいい。爆弾と砲弾をばらまけ!!波状攻撃で砲兵隊のキルゾーンに入るまでにノルマ分は削り切るぞ』
どれだけ爆弾を投げ入れようとも、機関砲で砲撃しようとも止まららぬ銀色の津波を前に私たちの中にあった慢心はこの光景により木端微塵に吹き飛ばされた。
318: ホワイトベアー :2022/03/07(月) 13:31:56 HOST:sp1-72-8-69.msc.spmode.ne.jp
本当にこんな化け物の大軍に勝てるのか?
この場にいた誰もが頭の片隅で思ってしまう。
こうした光景は今回だけではなく、その後も、繰り返し何度も何度も行われた航空攻撃で見せつけられていった。日本軍により発表された最終的な戦果報告では、こうした航空攻撃により当初の数の半分は削れたとされていたが、それを信じられる人間はこの場にはいなかった。
結局、ネウロイたちはその勢いを保ったままイルクーツク防衛線に到来。私たちは後に第一次イルクーツク防衛戦と呼ばれる激しい戦いに叩き込まれていく。
イルクーツクは極東オラーシャ軍に残された最後の主要拠点であり、それがゆえに極東オラーシャ軍残存部隊全てが集結その護りに入っていた。その数は10個師団約30万人。額面上は極めて大きな数である。
しかし、その実態は大半が敗残兵と民兵の寄り合い所帯であり、自国製の装備は退却時に放棄せざるを得なかった事から、使い慣れない供与された大日本帝国や扶桑皇国製の兵装を装備する者も多く存在した。
特に装甲車、火砲などは重装備や火砲、対戦車兵器は日扶のものがほとんどである。
本来なら、時間的余裕があるのなら正規の訓練を行わせたいところであるが、このような状況でそんな贅沢が許されるわけが無かった。
幸いだったのはこれらの装備品の扱いが比較的簡単であった事、それに整備など気にしていられない状態であったことだろう。もはや後のないオラーシャ軍は使えるものは全て使ってここを防衛しなければならないのだ。
『第一防衛線の奴らは何をしていたんだ!! もっと弾幕をはれェッ!!』
『大型四つ足が多数接近!! 対戦車部隊、吹き飛ばしてやれ』
『弾の心配はしなくていい!!!ありったけを撃ちまくれ!!』
『第4装甲車中隊!!、第31歩兵中隊通信途絶』
『敵の攻撃が激しい!! 至急援護が必要だ!!』
戦局は絶望的であった。ネウロイは遠距離砲撃型の砲撃支援の下に、装甲の厚い中型を盾にイルクーツクへの突入をはかろうとしていた。
対してオラーシャ軍はあえて市街地にネウロイを入れる事で市街地戦を展開、東アジア協力機構軍の航空支援と複雑な市街地の地形を活かしてネウロイの衝撃を殺し、持久戦を図っていた。
ブリュヘル元帥は部下の顔を見渡した。副官、機甲師団長、歩兵師団長たち、市長やそして各民兵隊の隊長たち、全員が野戦服を身に纏い疲れ切った顔をしているが、その眼だけはぎょろぎょろと光らせ会議室のテーブルに座っている。
彼らの前には紅茶が用意されているが誰も手を出さない。
「すでにイルクーツクの防衛は不可能だ。扶桑皇国との連絡線が繋がっているうちに部隊を後退させるべきだ」
1人の将校が撤退を主張している。幸いにして航空優勢は日扶中の航空支援により確保できるており、今はまだ扶桑皇国とイルクーツクをつなぐバイカル本道や鉄道も無事である。しかし、扶桑皇国領とイルクーツクを結ぶ路や鉄道もいつネウロイの手により封鎖されるかわかったものではなかった。
「・・・それはできない。君もわかっているだろう」
「しかし、地上兵力の隔絶は大問題です」
師団長の一人までもがそう言った。
オラーシャ軍の主力戦車はBT-5の改良型であるBT-7快速戦車、重量約14トン、最高速度装軌式の場合は375km、最高装甲厚20ミリ、武装としては45 mm戦車砲1門と7.62 mm機関銃1丁を装備する当時としては一線級の戦車であり、小型以下のネウロイに対しては有効的に機能していた。
しかし、中型となると相手にならなかった。
彼らの推定装甲厚は最低でも30ミリ、前面に関しては80ミリと言うものであり、BT-7の主砲では100メートルと言う近距離から側面を撃ち抜く事でようやく撃破できる相手であった。
対して、彼らが搭載している48口径75ミリ砲は遠距離から一撃でBT-7を撃破することができる。
319: ホワイトベアー :2022/03/07(月) 13:32:34 HOST:sp1-72-8-69.msc.spmode.ne.jp
中央で開発されていると言う重戦車が完成していれば、それが配備されていれば話は違ったかもしれないが・・・。
ブリュヘル元帥はそう思わずにいられなかった。
それでもオラーシャ軍が奮闘できているのは日扶から大量に供与された対戦車兵器、95式対戦車ロケット砲やそのライセンス品である八四式七糎噴進砲などの携帯型対戦車兵器や90ミリ対戦車砲などの存在や、
圧倒的かつ絶対的な航空優勢の下に適切な航空支援を受けれていることが大きかった。
特に倉崎が史実AH-64をモデルに開発した29式回転翼攻撃機と中島がA-10をモデルに開発した26式攻撃機、扶桑皇国陸軍航空隊など空の砲兵として活躍する攻撃ヘリコプター隊や攻撃機隊の支援は大きく、彼らなしではここまでの奮闘は難しかっただろう。
ーー中央の科学者や兵器開発者がヤポンスキーの半分でも仕事をしていたら・・・
この場にいる誰もがそう思わずにはいられない程の活躍を日扶の兵器は見せてくれていた。
「そんなことはわかっている。だが、イルクーツクの陥落はオラーシャ極東部の陥落を意味する。それが許容できないのは君達もわかっているだろう」
「しかし!!増援の来ぬ籠城戦なんて無意味な時間稼ぎにしかなりません!!」
「すでに本国が欧州から反攻作戦を実施している。ここで耐え、ネウロイを挟み撃ちにすると言うのが本国の方針だ」
この時、欧州ではオラーシャ皇帝アレクセイ・ロマノフの命令の下にオラーシャ欧州軍とオラーシャウラル軍が総力を上げて反攻作戦を開始、300万近い兵力と2万両を超える機甲戦力がシベリアを奪還すべく東進を開始していた。このオラーシャ軍主力がネウロイ群を撃破するまでイルクーツクを防衛するように本国から命令が降りていたのだ。
無論、挟み撃ちにするだけなら扶桑皇国国境以降で東アジア協力機構軍と共同で行っても同じなのだが、イルクーツクでネウロイの数を減らして以降の戦いを有利にしたい東アジア協力機構の思惑もあり、東アジア協力機構の信用に答えようとする皇帝の意向もありこの命令が下ることになる。
「・・・耐えれるとお思いで?」
「耐えるしか我々が生き延びる道はないぞ」
会議室で撤退が退けられていた時、市内では戦場ではネウロイとの死闘が繰り広げられていた。
「増援はまだか!?」
「現在、全戦線においてネウロイ攻勢が激しく、予備兵力も出払っていると」
「あいつにはBT-7の主砲じゃ通じない。対戦車兵!!」
「了解した」
ロケット砲を装備した兵士たちが建物だったものや瓦礫の山を盾にしながら中型ネウロイに向かい一斉に攻撃を行いこれを撃破するが、その後ろにいた小型ネウロイの猛攻にさらされる。
「第12対戦車小隊から戦車隊へ。中型は撃破した!!繰り返す中型は撃破した」
「了解した。全車前進。敵を叩くぞ」
中型の主砲を警戒して建物を遮蔽物として隠れていたBT-7が顔を出し、小型ネウロイに砲撃を開始する。
中型には威力が足りない45ミリ砲でも小型ネウロイが相手なら十分な威力を発揮可能であった。
別の戦場では、オラーシャ軍の要請を受けた26式回転翼攻撃機が空軍が航空優勢を握るゆえに反撃を受けない空の上から対戦車ミサイルや30ミリチェーンガンで地上のネウロイに一方的に攻撃を加えていく。
『オラーシャ陸軍第3歩兵大隊から上空の支援機へ、近接航空支援を感謝する!!。無事に生き延びれたらウォッカを奢らせてくれ』
「シュータ1から第3歩兵大隊へ。そいつは楽しみだ。無事に生き残れよ」
EACO(東アジア協力機構)軍の支援を受け、さらに複雑な市街地の地形を利用する事で一見するとネウロイに対応できるようになったと言っても、中型を盾に押し寄せるネウロイと民兵を中心とせざるをえないオラーシャ軍の間には大きな差が存在していた。
当然、損耗率はオラーシャ側の方が遥かに高く、戦況は加速度的に悪化していく。
320: ホワイトベアー :2022/03/07(月) 13:34:41 HOST:sp1-72-8-69.msc.spmode.ne.jp
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最終更新:2022年03月11日 10:42