666: モントゴメリー :2022/03/10(木) 00:21:28 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
日本連合ネタ——日常戦線、異常なし

令和2年(2020年)1月6日、月曜日。
この年の4・5日は土日と重なったため、ほとんどの日本人にとっては本日が「仕事始め」である。
曜日の巡り合わせで普段よりも多く手に入った正月休みを喜び、堪能して、そしてそれが終わったことを残念に思いながら各々の職場に向かうのである。

——例年通りならば。

今年は普段の新年とは大きな違いがあった。およそ70年ぶりの出来事が起こったのである。
……日本が「占領」されたのである。
去年の6月、相模湾に巨大な「何か」が何の前触れもなくそびえ立った。
現在では「ゲート」と呼ばれるソレから出てきたのは「鏡の中の世界」——平行世界の住民たち。
オーウェルやアシモフの作品がとうとう現実になったか、「彼」の第一印象はそれだった。
まあ、こんな印象を持つのは一部の古典SFファンくらいで世界大多数の人間は混乱・狂乱するばかりだったが。
さらに言うなら、日本人たちの多くは異世界へ行けるかも!?と興奮する者多数という平常運転であった。
政府からの公式発表がなされても、事態は収束する気配を見せなかった。
「鏡」の向こうは未だに大日本帝国が存続している。そして、「鏡」は数十の平行世界が接続する「ターミナル駅」であったと。
平行世界は帝国主義まっしぐらか、確かスタートレックにもそんな話があったな。
「彼」の反応はそれくらいであったが、「ある種の」人間たちは正に発狂状態となっていた。
だがそれは「いつも通り」の事であるので、「彼」の始めとする一般の日本人たちは気にしなかった。
また「鏡」自体への興味も段々と薄れていった。「熱しやすく冷めやすい」という日本人の特徴はここでも発揮されたのだ。
「お偉方」同士では交渉が継続中らしいが、我々「庶民」には関係ない話だ、と。
美少女エルフが遊びに来るわけでもないし、オークの軍勢が攻め込んで来ることもなかった。
精々「観光名所」が一つ増えたといったところか。

667: モントゴメリー :2022/03/10(木) 00:21:59 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
そうして夏が過ぎ、秋も終わり年の瀬がやって来た。
超常現象やら新型ウイルスやらが起こった令和最初の年も、何だかんだ平穏無事に終わったな。
そう思った矢先、「鏡」から大艦隊がやって来た。
そしてその艦隊は「彼」ら日本国民が驚く暇も与えずに「最後通牒」を突き付けてきたのである。
唐突、「彼」ら一般国民からしたら本当に唐突にである。
これには流石に皆驚愕したが、世間は年末休暇に入っていたため、取り敢えず自宅に引きこもった。
政府は24時間もかからずに最後通牒を受託し、大晦日の夜に「異世界」の軍勢が東京以下各地の大都市へ進駐してきた。
その光景はあまりにも現実離れしており、逆に国民たちの混乱は沈静化していった。
「彼」もまたそんな一般人の一人である。

そして時間軸は冒頭に戻る。
彼は普段通りの時間に起床し、普段通りの時間に家を出て、普段通りの電車に乗ろうとした。
早めに出るべきかとも考えたが、各種インフラは通常通りに運航すると「大本営発表」がなされていた。
流石に「降服」したの30日と翌日の大晦日には混乱し遅延・欠航が相次いだが、元日には終息の兆しが見え、休み明けには完全復旧すると。
それに、電車が止まっていたら10分程度早出したとしても意味がない。
むしろ止まっていたら、会社を休む大義名分が手に入るのだが……。
大本営は日本国民に普段通りの生活を送るように「布告」して来た。経済活動も止めるつもりはないと。
それを全面的に信じたわけではないが、日本人たちは「普段通り」に出勤しつつあった。
これも日本人の悲しい性であろうか。
「彼」の家から駅までは徒歩で15分ほどである。いわゆる「首都圏」であるが、この街には「占領軍」はやって来なかった。
そのため街並みに目だった変化はない。「普段通り」だった。
駅に着くと、こちらも見た目は普段通りであった。駅前の混雑具合もこんなものだろう。
ホームへ上がると、時刻表通りに電車はやって来た。「彼」はその電車に乗り込み吊り革を掴む。
ドアが閉まり、電車は駅を出発した。
こうして今日も「彼」の日常は始まったのである。

668: モントゴメリー :2022/03/10(木) 00:25:53 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
以上です。
ウィキ掲載は自由です。

…何やらこの掲示板で私の印象が

「『女神』の光に心を焼かれ、『少女』のブラックホールが如き漆黒の瞳に魂を奪われた」

という「なぞのふうひょうひがい」に汚染されているように思われましたので
他の世界線の話も観測できるやで!!というのをわかってもらうために執筆いたしました。

解説・感想返しは明日で願います。

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最終更新:2022年03月11日 11:09