572: ホワイトベアー :2022/03/18(金) 17:01:13 HOST:222-229-56-17.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
日本大陸×ワルパンネタ 短編 バトル・オブ・ブリタニア 前
「我らは故郷の地を護り、戦争の嵐を乗り越え、ネウロイの脅威に耐え抜く。それが何年でも、例えわが国のみになっても、例え何があろうともやってのける」
「我々は最後まで戦う。我々はガリアで戦う。海で、大洋で戦う。我々は日々増す自信と力をもって空で戦う。如何なる犠牲を払おうとも我等の島を護る。我々は砂浜でも敵の上陸地点でも戦う。野で、街路で、丘で戦う。断じて諦めたりなどしない」
ーーブリタニア首相、チャーチルの演説より
1941年初頭、ガリアを陥落させたネウロイは、ドーバー海峡を挟んだ対岸に存在しているブリタニア連邦を次の目標として定めたかのように大量の航空型ネウロイを巣と呼ばれる彼らの根拠地周辺に集結させつつあった。
ドーバー沿岸地域に整備したレーダー施設群と偵察機による強硬偵察でこの事実を把握したブリタニア軍と国連大西洋方面第1軍は、欧州反攻の要にして欧州戦線の補給網の要衝でもあるブリタニアを死守する事を決定。ブリタニア本土にいる全軍の防衛基準体制を最大まで上げると同時に、リベリオン本土のリベリオン大西洋艦隊や日本領アイスランドのレイキャビックに駐留する日本海軍大西洋艦隊をブリタニアへの救援として送り込む準備を進め、ネウロイの行動の時を待つ。
国連軍とブリタニア軍の作戦は明確かつ簡潔なものであった。その内容はドーバー海峡を越えようとする全てのネウロイを撃退すること。ただそれだけだ。
そして、1941年3月12日、ネウロイの大軍はガリアの巣を離れ、ブリタニアを目指してドーバー海峡の越境を開始、ブリタニア軍ならびに国連大西洋方面第1軍はこれを迎撃するために全力出撃を敢行するに至り、後にバトル・オブ・ブリテンと呼ばれる一大航空決戦の幕が開いた。
『我、決戦の火蓋を切り、勝利への号砲となす』
戦端を開いたのはドーバー海峡に布陣したライオン級戦艦6隻、キングジョージ5世級5隻、守護聖人級4隻、ネルソン級2隻とブリタニア軍が誇る水上打撃部隊とビスマルク級戦艦2隻、シャルンホルスト級戦艦2隻、リュッツオウ級装甲艦4隻、ガスコーニュ級3隻、リシュリュー級2隻、ダンケルク級2隻の国連大西洋方面海軍部隊による対ネウロイ用空対空榴散弾の一斉射撃であった。
計28隻の戦艦と4隻の装甲艦から放たれた対ネウロイ用対空榴散弾の雨は小型ネウロイを消滅させていき、当たりどころが良ければ大型ネウロイすらも撃破していく。
水上打撃部隊によるネウロイの漸減後には国連軍ジェット戦闘機部隊の中距離空対空ミサイル攻撃が行われ、小型ネウロイを一定まで削り切れた事を確認したブリタニア軍と国連軍は、航空ウィッチやジェット戦闘機部隊、数的主力を担うリタニア空軍および国連軍レシプロ戦闘機部隊を用いてネウロイの迎撃を開始する。
国連軍とブリタニア軍は3000機程の戦闘機と300名を超える航空ウィッチを揃えており、対するネウロイは大小合わせて3000から4000近い航空ネウロイをガリアの巣に集結させていた。
流石に双方とも一気にこの大軍を投入することはなかったが、それでも双方合わせて3000以上の航空機・航空ネウロイがドーバー海峡の上空で激突。ドーバー海峡上空は大量の飛行機雲が入り交じり、戦闘機と航空ウィッチ、それにネウロイが激しい空戦を繰り広げていく。
573: ホワイトベアー :2022/03/18(金) 17:02:20 HOST:222-229-56-17.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
碧い海の上ではブリタニア軍自慢のレシプロ戦闘機であるスピットファイアが太陽を背に動力降下をしかけ、自慢のイスパノ 20 mm 機関砲でラロス改と呼ばれている単発戦闘機型の小型ネウロイを撃破する。
東アジア戦役後に日本から国連軍やブリタニアに供与が開始され、ブリタニア軍初のジェット戦闘機にして期待の新鋭機であるF-38(※1)がネウロイの背後から対ネウロイ用短距離空対空誘ミサイルで、もしくは20mmリヴォルヴァーカノンでラロス改を撃破し、国連軍も92式戦闘機やBf-109、Fw-190、VG39などでラロス改や中型ネウロイの迎撃を行っている。
無論、ネウロイもやられてばかりではない。国連軍の戦闘機が上空から降下してきたラロス改の放ったレーザーで主翼を破壊され、回転しながら海に落ちていく。
中型ネウロイのレーザー攻撃で複数の戦闘機が一瞬で撃墜される等の光景もこの時のドーバー海峡の上空では珍しいものではなかった。
国連軍・ブリタニア軍の戦闘機部隊とラロス改との戦いは一見すると拮抗しているように見えるが、数で勝るラロス改がジリジリと押していく。
戦闘機部隊がラロス改を中心とした小型ネウロイ部隊を相手にする一方で、航空ウィッチ達は戦闘機群が護衛の小型ネウロイを引き付けている間に大型ネウロイの撃破に向かっており、大型ネウロイはウィッチを撃破しようと激しくレーザーを放ち続ける。
「うわぁ~っ!凄い空戦ですね!私、こんなの初めてです」
額に手をかざし、下で行われている激しい空戦を見た黒髪の少女、扶桑皇国陸軍中尉黒田那佳中尉はどこかのんきそうにそう呟いた。
「どうした、恐れでもしたか」
目を細めて挑発するように笑うのはハインリーケ・プリンツェシン・ツー・ザイン・ウィトゲンシュタイン国連軍大尉。泣く子も黙る国連大西洋方面第1軍第506統合戦闘航空団ノーブルウィッチーズの戦闘隊長だ。
「まさか、一機いくらになるのか考えていたんですよ」
「どうやらいつも通りのようだ。なら安心じゃ。・・・一匹たりともブリタニア本土に近づけさせぬぞ!戦闘配置。わらわに続け!」
新たに8名のウィッチが戦場に飛び込んでいく。
上空からお手本のような一撃離脱でエイのような形をした大型ネウロイの速力を落とした彼女たちは、レーザーを悠々と回避しながらその火力を用いて大型ネウロイの装甲を次々とはぎとっていき、ネウロイの弱点であるコアを探す。そして、コアの位置を突き詰めると時間をおかずに那佳の20ミリ機関砲から放たれた弾丸がこれを破壊する。
「1機撃墜!次に移るぞ!」
ハインリーケの指示の下に彼女らは次の大型ネウロイ(エモノ)に向かっていく。
2体のラロス改が彼女らを迎撃しようと迎撃に出るが、那佳がホ 5 20ミリ機関砲の引き金を引くと吸い込まれるように弾がラロス改に命中し粉砕。部隊が大型ネウロイに接近する道を作る。
彼女の作った道を通って他の隊員がネウロイの全身に満遍なく弾をバラまいてコアを探していき、コアが発見されるや否や待機していたハインリーケのMG151/20がコアを破壊する。
「これで2体め」
短時間での2体の大型ネウロイを倒せる練度は流石は統合戦闘航空団。人類の希望を担う少女達である。
だが、全体として見れば戦況はネウロイに傾きつつあった。
574: ホワイトベアー :2022/03/18(金) 17:03:04 HOST:222-229-56-17.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
ラロス改とブリタニア、国連軍連合のレシプロ戦闘機の性能は基本的に大差は存在しないが、ラロス改の方は一撃で戦闘機を破壊できるレーザーを主兵装としているため攻撃力には雲泥の差が存在している。そして数も多い。
人類側の当初の予想より戦闘機部隊の損害の拡大が早く、そして小型ネウロイを引き付ける戦闘機部隊の縮小は中・大型ネウロイの討伐を担当するウィッチ部隊の負担の増加に繋がっていく。
艦隊も積極的に攻撃を加えていくが、大型艦艇はまだいいがネウロイのレーザーを前に中小艦艇を中心に被害は着実に増えており、その戦力を低下させていた
ネウロイたちはジリジリと、だが着実にブリタニア本土に近づいていた。
ロンドン ブリタニア空軍防空総司令部
「ジリジリとだが押されているな」
段々と近づいてくるネウロイの反応にブリタニア空軍戦闘機軍団司令官ダウディング空軍大将は苦虫を噛んだような顔を浮かべる。
ネウロイのドーバー海峡の渡航開始はブリタニア本土に大量に築かれたレーダーサイトを通して、時間をおかずにロンドンはブリタニア空軍省の地下に設けられた空軍防空総司令部に知らされ、以後の詳細な戦況や情報はレーダーサイトやブリタニア上空に展開する国連軍の早期警戒管制機、洋上の艦隊からの無線や有線通信によりこの防空総司令部に蓄積され、地図やアクリル板に目に見えるように整理されていく。
「グラーフ・シュペー大破!ブラック・プリンセス轟沈!」
「第601飛行隊、反応喪失!」
そこに写し出された情報は控えめに見てもあまりよろしくない情報だった。
「予備の第1巡洋戦艦戦隊をドーバー海峡に突入させろ。空軍第13戦闘機グループの部隊もドーバー防衛に送り込め!」
ブリタニア空軍戦闘機軍団司令官のダウディング空軍大将の声も次第に大きくなっていく。
だが、困難の中にあっても彼らには希望があった。それはネウロイの戦力も有限だと言うことだ。
ネウロイは彼らの戦力の半数近くを撃破されると撤退を選び、一度大損害被るとしばしの間、その活動を停滞させる事がこれまでの戦訓から浮かび上がっていた。
そして、ブリタニア軍と国連軍は小型種を中心にだが、既にネウロイ全体の2割、ドーバーに侵入したネウロイの4割に当たる800機程は撃退している。
また、海峡に侵入した大型ネウロイも第501統合戦闘航空団と第506統合戦闘航空団を中核とした国連軍航空ウィッチ部隊とブリタニア空軍航空ウィッチ部隊によりその6割を撃破しており、ドーバー海峡沿岸には国連軍の地対空中距離ミサイル部隊とブリタニア軍の高射砲部隊も布陣している。
現状は確かにやや不利ではあるが巻き返せないことが決まったわけではないのだ。
何より、大西洋の西から強力な騎兵隊が急行していると言う事実が彼らの大きな希望となっていた。
575: ホワイトベアー :2022/03/18(金) 17:04:12 HOST:222-229-56-17.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
大西洋
ドーバー海峡でブリタニア軍と国連軍がネウロイを相手にして死闘を繰り広げている中、太平洋の覇者であり老練なる超大国日本と、新大陸の覇者にして新たなる超大国リベリオン、その両国の大西洋艦隊で構成される連合艦隊は東、ヨーロッパにその船先を向け、出せる限りの速力で大西洋を進んでいた。
その規模は超大型空母(スーパーキャリアー)8隻、正規空母28隻、軽空母11隻、戦艦17隻、その他艦艇400隻、航空機数は3000機を超え、航空ウィッチも日本から40名、リベリオンから100名の計140名が配備されている文字通り世界最大の空母機動部隊である。
「ブリタニアの状況は?」
「ネウロイの大軍がブリタニア本土に向かい渡航を開始。すでにドーバー海峡にて戦闘が発生しているとのことです」
連合艦隊旗艦である航空母艦 白鳳の艦隊指揮所に座る連合艦隊司令長官山本五十六大将は、幕僚からの報告に間に間に合わなかったかと呟く。
リベリオンと日本は国連大西洋方面総軍からの救援要請を受けて即座に艦隊を手配したが、それでもネウロイの方が一手早かった。
「我々の航空機部隊が交戦範囲に入るまで後どれ位だ?」
「現在のスピードで航行を続けてもあと6時間はかかります」
艦隊に配備されている航空機の全スペックと大西洋の地理を頭に入れている航空幕僚は、艦隊の現在位置を確認すると直ぐに答える。
「推定最大数4000のネウロイを相手に国連軍とブリタニア軍は耐えられますかね」
幕僚の1人が不安そうな顔で眼鏡に指をやる。彼の気持ちはこの艦隊の司令部にいる人間すべてが共有しているものであった。何せ、国連軍とブリタニア軍は数で劣っており、さらに彼らの主力は日本軍から見たら旧式のレシプロ戦闘機で質的にもネウロイの方が上なのだ。
「チャーチル首相の演説を聞いただろ。彼らなら耐えてくれるさ」
山本は幕僚に言い聞かせる様に、だが、その実自分に言い聞かせる為に断言する。ブリタニアなら大丈夫だと。
日の昇る国と正義の国の艦隊は進んでいく。彼らの助けを求める戦友達を救うために、地獄の様な戦場に向かって。
(※1) F-38
日本での正式名称は38式戦闘機。史実アメリカ合衆国のF-5をモデルに開発した軽戦闘機。
東アジア戦役でのネウロイの進化に対応するために欧州に供与する対外支援用戦闘機として11式高等練習機を母体に急ピッチで開発された。
576: ホワイトベアー :2022/03/18(金) 17:05:02 HOST:222-229-56-17.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
以上、
日本大陸×ワルパン版BOBネタでした。ちなみに正史かIFかは決めかねています。
wikiへの転載はOKです。
余談ですが、国連軍大西洋方面第1軍の航空戦力はリベリオン陸軍航空軍第8航空軍を主力にカールスラント、ガリア、ベルギカ、ネーデルランド等の亡命軍航空部隊で構成されております。
最終更新:2022年03月20日 12:29