139: モントゴメリー :2022/03/16(水) 23:42:59 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
日本連合ネタ——日常戦線、異常なし②——「異常…なし?」

電車に揺られることおよそ30分、県境の川に差し掛かる。あの橋を渡ったらもう東京都である。
普段の「彼」ならその事について特に思うことはない。晴天、特に今日のような冬の朝は見晴らしが良いがその程度である。
むしろ、橋を渡り終えた後すぐにある停車駅での座席争奪戦の方に意識が向く。

しかし、今日は様子が違った。
橋周辺の河川敷に人だかりと共に「何か」があった。すぐに通り過ぎたためよく見えなかったが、確かに存在した。
その「何か」を理解した時、「彼」の心臓は跳ね上がった。「彼」以外にもソレを見た乗客はいただろうが、理解できた者はいないようである。

———あれは、SAM(地対空ミサイル)だ…

「彼」は趣味でそういった物の知識を有していたから理解できたのである。そして何故それがここにあるのかも推測できた。
戦略目標であるインフラ(橋梁)を守るためだろう、と。
となると、その周辺にいた人影もそれに関係する者たち————「占領軍」の兵士たちだ。
「彼」は、この時初めて今日という日がいつもと違うということを皮膚感覚で理解した。
なお、気が動転していたため座席争奪戦には敗北した。

140: モントゴメリー :2022/03/16(水) 23:43:47 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
そうこうしているうちに、電車は「彼」の目的地——上野駅に到着した。
この時には「彼」も平静さを取り戻し(むしろ座席争奪戦に敗れたことに憤っていた)、
降り過ごすことなくいつも通りに下車できた。
そして改札を通り、公園口から外に出る。
今度は戦車でもいるのかな、と期待…もとい案じながら駅前を見渡す。
残念…いや幸いにも様子はいつもと変わりなかった。強いて言うならば警官が多く見られるが、さっきのミサイルの前では霞んでしまう。
「彼」は気に留めることなく上野公園へ入っていく。公園を突っ切った更に先に「彼」の職場はあるのである。
「いや、上野駅から地下鉄に乗り換えろよ…」とよく言われるが、好きでやっているのだから放っておいて欲しい。
いつも通り不忍池を横目に見ながら歩いて行こうしたが、それは叶わなかった。
上野公園の大部分が閉鎖されていたのである。
進路上にあった看板の文字を読んで解ったが、「占領軍」が上野公園を接収して陣を張っているらしい。
上野動物園や国立西洋美術館などの施設も臨時休館のようだ。
「彼」が受けた衝撃は先ほどのSAMの比ではなかった。
通勤経路という点では同じであるが、一瞬で通り過ぎるものと己の足で進んでいくものとは受ける印象がまるで違うのだ。
半ば茫然と立ちすくむ「彼」の目前を何かが横切ろうとしていた。看板の向こう、「占領軍」の敷地内を。
その何かによって、「彼」の心理的衝撃度の最大値はまたも更新されることにある。

——オーウェルやアシモフだけでなく、ハインラインまでおいでなすったか

「ロボット」が全高3~4mほどの人型ロボットが人間と見紛うほどのスムーズな挙動で「彼」の眼前を横切っている。
「ロボット」の方でも当然「彼」のことを視認しており、警戒モードに入っていたのだがそのようなことは知る由もなかった。

「ロボット」が見えなくなって数秒後、「彼」は再起動した。
こんなことをしている場合ではない、普段より歩く距離が長くなってしまうのだから急がねば遅刻してしまう、と。
明日からは一本早い電車に乗らねばならないなぁ、と考えながら「彼」は足早に看板の前を通り過ぎていく——。

141: モントゴメリー :2022/03/16(水) 23:45:54 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
以上です。
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「彼」の日常(通勤)の続きです。
例えロボットが目前を通り過ぎたとしても、一番の心配事は通勤時間の増加なのである…。

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最終更新:2022年03月20日 12:45