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銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ サセボ異界紀行十三冊目


さてさて泣き止まないマリー・マフタンFFR大統領に困ってしまったファーダリシュリュー。
あれからファーダは大統領とそして幾人かの大統領のお付きの者を連れゼル造成した聖堂の中へと入って行った。
多分説得とかご機嫌取りとかするのであろう。
そしてファーダ金剛やファーダジャンスール副長(この世界では提督だが我々の世界では妖精として戦艦リシュリューの副長てある)加え私らは休憩室に移動した。
そこで何をしているのかといえば。


「ああそこはもうちょっと拳銃持った腕をもう少し上げてネー?」

「ファーダ、何故に急に絵画を?」

「んんー?急にこうキュピーンとインスピレーションが湧いたんダヨ。」


FFR各軍の制服や戦闘服纏ったケラージョルジュ、そして残った大統領お付きの戦車乗りや飛行機乗りな駐日FFR大使、
加え各軍人達モデルとして絵を描いていた。
モデル要請されケラー達もエラく困惑していたが我らが指揮官を連れてきてくれた日本の女神の求めならと快諾した。
後なんか戦艦リシュリューの通信員がその光景をカメラで捉えている。

ファーダは下描きも無しに筆を走らせるファーダ。
ハイクァーンとゼルクォートを駆使し3枚同時に描くとか訳の分からないことをしている。
一つははファーダリシュリューを中心に描かれファーダの後ろにも銃や剣を持つ人々を描き始めている。
一つはどこか見たことのある場所、軍艦の甲板であろうか?
そこでこの世界のジャンスール提督にペタン元帥にもう一人二人の間には何か本を持つ人物が描かれ始め、後方には群衆も描き始めた。
一つはファーダリシュリューが浴槽に沈む人物を見下ろし、その人物の胸には刃物が突き刺さっている。


「金剛艦長、そろそろ宜しいですかな?私は兎も角他の者には同じ体勢を長時間は些かきついかと?」

「Oh!ゴメンネー。もう大丈夫だから姿勢戻してイイヨ。」


ファーダジャンスールの言葉に気づいて謝罪の言葉を言うファーダ。
その言葉にケラーらはホッとした様子で姿勢を戻す。
中には長時間同じ姿勢でのコリを解す様に腕を回す者もいる。
話しているその間も3つのキャンバスを行き来する筆のスピードが落ちることはない。

暫くするとFFRの者達もファーダの絵を覗き込み、凄まじい速度で異なる三つ景色が描き上げられる様に驚く。最早人間業ではないから当然だ、まあ人間でないのだが。


「なんと迷いのない筆運び…!!」

「これが我らが指揮官と同じ戦艦の女神の業…。」

「んー…リシュリューもこれくらい出来るヨ?でも美術的感覚は彼女の方が上だネ。」


流石は美術の国の戦艦とファーダリシュリューの実力を褒めるファーダ金剛、その言葉を聞いたFFRの者達はまるで母親を褒められた子供の様に鼻高々であった。
ファーダリシュリューから自分達が褒められた時以上に鼻高々な気がする。
しかしながらここへ来てファーダ金剛は些か訛ったフランス語や日本語を口にすることはあれどいつもの英語の呟きをしないことに気づいた。
多分FFRにとってBCの言葉は敵の言葉なのでそこら辺から疑念を持たれない様に注意しているのであろう。
しかしFFR軍人…。

851: 635 :2022/03/19(土) 21:10:59 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp


「なんとこれほどの腕を持つ日本の女神がその美術の腕を認める実力とは流石は我らが指揮官…!」

「この事実を皆に知らさなければ…!!」

「食堂へ行き皆に知らせてくる…!」


現在戦闘態勢でないしココ休憩室なので機密も低いとは思うが個人の情報機器取り出し使ったりして良いのか?喜び過ぎでそこら辺が緩んでいるのか?
FFR国民は我らが指揮官の慶事にはポンコツになってしまうのか?
そこへ戦艦リシュリューの艦長が皆に声を掛ける。


「ああ、君たちちょっと待ちなさい。個人の携帯端末を使うのではない…。」


おお、流石は艦長!


「許可するので戦艦リシュリューの第三通信室を使用しなさい。
あそこはそうそう使うことはないことであり、我らが指揮官が艦娘である我らが指揮官に通信を送られた場所だ。この事実を伝えるに相応しい。
女神金剛の絵画の腕は我々美術の国の国民も認めるところである。そして我らが指揮官はその上を行くと女神金剛が御認めになられた。
この事実を早急に本国及びFFR各州及び全軍、FFR国民全てにに通達するのだ…!!無論正式な電文でだ!」


ブルータス、お前もか…!
艦長の言葉に納得する軍人達。


「確かに!この我らが指揮官に関する新たな知見、我らがreseaux sociaux(SNS)での不確かな情報として拡散して良いものではありません…!」

「艦長、我ら通信部が録音した音声も電文に加えて宜しいでしょうか!?」


戦艦リシュリュー通信員が手を挙げる。
それに艦長はファーダ金剛の方を向く。


「女神金剛…「最後まで言わなくてイイヨ。それくらい構わないヨ?」ありがとうございます。」


ファーダは艦長の言葉を最後まで聞かず許可の言葉を出し、さっさと行けと手を振る。
艦長はファーダに敬礼すると乗員たちに支持を出す。
そして艦長に駐日FFR大使が声を掛ける。


「艦長、我々在日本FFR大使館にも正式に通信室使用の許可を願いたい。我々の存在もあれば本国や軍へこの我らが指揮官の才の事実の説得力も増す筈です…!」

「それは有り難い…!願ってもないことです!おい!大使館職員も通信室にお連れしろ!」


なお大使自身や艦長は通信室に行かなかったりする。
我々がいるから気を使ったのであろう。地位とか危険性的な意味で。




「フゥ…説得が終わったわ…。」

「お疲れ様です。ファーダ。砂糖とミルクは?」

「どちらもたっぷりでお願い、疲れて糖分が欲しい所だわ…。」


それから暫くしファーダリシュリューがファーダマフタン大統領らを引き連れ休憩室に入ってきた。
疲れ切った様子のファーダは真っ直ぐに私の所へやってきたのでたっぷりの砂糖とミルクを入れたコーヒーを渡すとファーダは椅子に座りコーヒーを飲む。
マフタン大統領はファーダと別れるとお付きの者や艦長、大使らの下へと行き話始めた。
ファーダに会った当初と違い自らの足で歩き、その目には強い意志が感じられる。
これがあの泣き叫んだ少女(見た目)とは誰も思わないであろう。


「出来たヨ――――!!」


その時ファーダ金剛の声が休憩室に響く。
その声にコーヒーを飲んでいたファーダが咽た。

852: 635 :2022/03/19(土) 21:11:45 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp


「ケッホ、ケッホ…一体何?」

「ファーダ金剛が暇だったので描いていた絵が完成した様です。幾つかにはファーダリシュリューが描かれていましたよ。
後、ファーダの美術の才が今頃FFR全土に知れ渡ってると思われます。」

「何がどうしてそうなったのよ…。」


胃の辺りを抑えるファーダ、そして声を聞きつけマフタン大統領や艦長らがファーダ金剛の所を訪れ休憩室に幾人もの軍人らが入ってくる。
途端にガヤガヤと騒がしくなる休憩室、ファーダ金剛と絵の周りには人集りが出来た。


「これは素晴らしい…我々を我らが指揮官が導く正しきFFRの姿だ!」

「三人が集まられてFFR建国を決意した…この様な歴史的事実はない筈…いや初代大統領や元帥や提督ならば未来を見通しあるいは…。」

「なる程…我らが指揮官がフランスという古き国を終わらせ聖女、いや女神としてFFRを御治めになる…これはまるでFFRの精神が形になったようだ…!」


それらの言葉に反応するファーダリシュリュー。


「なんか聞き捨てならない言葉がちらほらと聞こえるのだけど…。」


ファーダは椅子から立ち上がると群衆の方へと近づき私もお供に続く。
そして意を決して群衆をかき分けるがその際にファーダに退かされているFFR軍人達が恍惚の笑みを浮かべている様な気がするが気にしないことにした。
そして群衆を抜けるとファーダ大統領らから絵の称賛を受けるファーダ金剛の姿。
その側に件の絵があるのだが…。

一枚目、ファーダリシュリューがボルトアクションライフル(後でケラージョルジュに聞いたらMAS50とかいうらしい)を持ちFFRの旗を掲げ、
大戦時と思われるフランス軍人と思われる遺体を超えながら武器を持つ一般人や軍人達の方を向き先導する姿が描かれた絵。

二枚目(注1)が四連装砲塔を持つ戦艦の甲板、つまりは戦艦リシュリューの船首方向と思われる場所でファーダジャンスールにファーダペタン、
その間に配された一段高い場所の鉄人ジョルジュ=ビドーを取り囲む人々という図式の絵、なおビドー初代FFR大統領の手にはFFR憲法とか描かれている本が持たされている。

三枚目であるが…浴槽に沈む男、フランスの旧国章が描かれた髪が添えられた遺体には刃物が突き刺さり、四国同盟の国旗が描き込まれた布が同じ浴槽に沈んでいる。
そしてそれを見つめる粗末な装いのファーダリシュリューの後ろにはFFRの国土が描かれた地図が配されている。


「一枚目はどう見ても元ネタはドラクロワの『民衆を導く自由』ですな…二枚目は…ダヴィッドの『球戯場の誓い』…三枚目は…「ポール・ボードリーのマラーの暗殺よ…。」…ファーダ?」


わなわなと震えるファーダリシュリュー、流石にこの場で声を荒げることも出来ずに拳を下ろすしかなかった。
なおファーダ金剛がこんなの描いた理由がファーダなりのFFRへのジョークだったそうな。
なんかエスプリの効いた風刺画とか期待したがまさか絶賛されると思わなかったとはファーダの談であった。



注1:この後FFRでは鉄人、提督、元帥の三人、特に鉄人が戦艦リシュリューに神性を感じて三人はFFR建国を決意、
三人でリシュリューの甲板で建国の誓約をしたという話が大きく広まることとなる。
そしてFFR建国の歴史を扱うドラマや映画では桃園の誓いやテニスコートの誓いならぬ甲板の誓いの場面が必ず出ることとなった。

853: 635 :2022/03/19(土) 21:12:27 HOST:119-171-250-56.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。

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最終更新:2022年03月25日 11:35