404: 弥次郎 :2022/04/03(日) 23:35:38 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
憂鬱SRW ファンタジールートSS「ゴート・ドールは踊らない」4
- ストライクウィッチーズ世界 主観1944年10月上旬 大西洋上 エネラン戦略要塞 軍事区画 執務室
新たな羊たちを向け入れるにあたっての会議ということで集められたティル・ナ・ノーグ上層部は、トップたるリーゼロッテの言葉を聞いた。
「徒弟制度…ですか?」
「言い方は色々あるが……まあ、徒弟制度、姉妹制度、あるいは…ある種の研修制度ともいうかな」
人員の少なさ、余裕のなさ、あるいは人的問題の問題。
その解決を話し合う場において、上層部を前にリーゼロッテはその案を述べていた。
「つまり、先任が後任の人員の面倒を見るということですか?」
「あっている。ウィッチ間のコミュニケーションを推進し、相互に教え合い、戦技を磨き合う。
まあ、お約束の友情などを求めてというわけではないが……情緒教育の観点からも必要だ」
若年者の育成とは、人間としての育成や教育も兼ねている。
そことの釣り合いやバランスが問題だな、と付け加える。
「要するに、自分達での相互援助をしてくれと、そういうことだ」
「メンタルケアや情緒管理までやるというのは負担が大きくなりますからなぁ…ただでさえ、通常の兵士たちの教育や訓練もあってキャパシティはきついですし」
「同感です。多感な少女たちのメンタルケアは、大人と比較すれば単純とは言い難いものですし…」
メンタル面や情緒教育というのはとかく面倒でもある。
精神的涵養を行い、軍務に適した精神性や内面性の獲得を行わなければ、ウィッチの力を活かしきれるとは言い難い。
そういったメンタルの面でも教育とケアを複合して施しているのは、先進的な技術や軍事を持つ地球連合ならではと言えた。
殊更に、少年兵や少女兵そのものと言えるウィッチたちなのであるから、下手なことはしにくかった。
「何か質問は?」
「最高顧問、その先任である第二陣はまだ教育不足が否めません。
ティル・ナ・ノーグが活動を始めた際に教育した第一陣はすでに各国軍や統合戦闘航空団に編成されており、呼び戻すのは……」
「確かに不可能だ。彼ら、彼女らはすでに第一線に出ており、今引き抜くことは難しいだろう。
練度だけでなく、最先端のエーテル技術や魔導技術にも知識と理解があり、戦技を得ている戦力など手放せまい」
そう、ティル・ナ・ノーグにおいて教育を受けた第一陣はすでに最前線へと配属されている者たちばかりだ。
あるいは、後方での研究・開発・指導といった分野における高位戦力とみなされ、非常に評価を受けている。
そんな彼らを、たかだか教育を施しただけの組織が再び引き抜くなどというのは越権行為そのものとなる。
あくまで彼ら、彼女らの帰属というのはそれぞれの母国であり、あるいは出向しているグループや戦闘団などだ。
ティル・ナ・ローグは所詮は教育機関であり研究機関。地球連合を経由すれば要望は伝えられるとしても、たかが知れているのだ。
しかし、その指摘をリーゼロッテは不敵に受け流す。
「宛てはある。確実とまではいわないが、引っ張ってこれる確率の高い人材をな。
フラワー、出してくれ」
「承知しました」
ルビーの操作で、モニターに表示されている画像が別なモノへと切り替わる。
そこには、一つのエンブレムがかかれていた。花の背景に女性のシルエットを配した、地球連合に属する研究機関のものだ。
それは、ここにいる人員にとってもなじみが深いものでもあった。
405: 弥次郎 :2022/04/03(日) 23:36:09 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
「シティシスの…」
「そう。ティル・ナ・ノーグにおける第一陣よりも前、オーバーロード作戦の前に設置されたシティシスに属していた戦力だ。
各国から派遣され、シティシスにおいて専門の教育を受けたいわば第0陣のウィッチ達だ。
彼女らの中で若年の者はまだ現役だが、年齢とともに魔力が流石に衰え、二線級に下がった者もいる。
そいつらを呼び寄せる、教官としてな」
その言葉は、最高顧問としての地位の発言である以上の説得力を持っていた。
表示されるリストの人員は50名程度。たかが50名と侮るなかれ、この教育の現場においては、かなりの戦力に他ならないのだから。
これだけの人員が先導者として、あるいは身近な相談役や指導官としてふるまってくれるというのは、心理的にも学習的にも良い影響となるだろう。
「なるほど」
「一足先に魔導技術やエーテル技術に触れ、学んだ者たち。ウィッチとして活動した経験を持った彼女らを規範の一つとすると?」
「同じように理論を学んでいることを考えれば、なるほど同じように教育することも……」
「バックグラウンドが同じ相手ならば……所詮は私たちは異邦人、というわけですか」
その場の多くの人間が、言わんとすることを理解できた。
つまり、自分たち地球連合の人員がかかわるのを抑えつつ、同時にこの世界の住人にも自助努力をしてもらうという方針だ。
「無論のこと、本国からの追加の人員の補充も依頼する。
各国に対しても、子弟制度や姉妹制度の導入に対して協力してもらう。
誰かが背負い込むのではなく、誰もが平等に負担を背負うことで、つり合いをとる」
「確かに、我々とて無限に援助できるわけでもありませんしな……」
「効率的にやるならば、現地勢力とも折衝は避けられんのだし」
「あとは具体論だけ、だな」
賛同の意見が多いことに頷いたリーゼロッテは、しかし楽観を持たずに続けた。
「とはいえ、受け入れの予定日まで余裕があるわけではない。
殊更に現在教育を受けている第二陣には、途中から仕事もこなしてもらうことになるわけだからな。
ただでさえティル・ナ・ノーグは大所帯だ。急に動きを始めたところで、すぐに順応できるわけがない」
「そのための猶予が欲しいところですな」
「無論そこは設ける。あとは、派遣されてくる羊たちにある程度時間をおいてもらう手はずだ。
その間に、派遣できる人員によるティル・ナ・ノーグについてのレクチャーなども済ませてもらう」
ともあれ、とリーゼロッテは締めくくる。
「一先ずは受け入れ側として準備を進め、また地球連合やこの世界における各国に通達して了承を得ることが必要だ。
あちらには貸しはあっても借りはない。頷いて了承を得ることはほぼ確定ではあるが、初動から躓くわけにもいかん。
各員の努力に期待する」
「了解!」
その返答の後に、それぞれが割り当てられた役割を果たすべく動き出した。
406: 弥次郎 :2022/04/03(日) 23:37:05 HOST:softbank060146116013.bbtec.net
以上wiki転載はご自由に。
マリみてとか乙ぼくとかそこら辺の影響は否めませんな。
次回はいよいよ原作主人公の芳佳ちゃんを出そうかなって思います。
最終更新:2023年11月03日 10:36