407: ホワイトベアー :2022/03/20(日) 22:02:54 HOST:222-229-56-17.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
日本連合ネタ ウクライナ危機 あるいは理性の勝利
アメリカ合衆国 ワシントンDC ペンシルベニア大通り1600
「まったく...人権や平和を詠って我々を非難しておきながら、今まさに平和を脅かし、人権を侵害している中露には非難を浴びせるどころか積極的に助けるとは...。
リベラルを気取る阿呆共は本当に救いようがないですな。そうは思いませんか?特使」
アメリカ合衆国の国家元首たる大統領の家でありながら、現在では老人介護施設と成り果てたホワイトハウスのオーバルオフィスにて座敷牢送りになった大統領に変わり、公的には副大統領のままその執務を執り行う副大統領は国防総省と国務省、それに日本国大使館から送られてきたレポートを読み終えると、ため息を付きながらソファーにもたれ掛かる。
そのレポートにはロシアの要請を受けていないながら、自主的かつ積極的にウクライナ危機においてドイツがNATOの足を引っ張る為に精力的に行動をしている事や、中国にいくつもの軍事的な技術を輸出していることが書かれていた。
「まったくですな。こう言ってはなんですが、彼らは国家と文明を蝕む悪性の高いがん細胞ですよ。適切な手段を講じなければ世界を暗黒時代に戻しかねない」
副大統領の座るソファーと机を挟んで向かい側にありソファーに座る眼鏡をかけたスーツ姿の黄色人種の男性は、東洋人の特徴あるのっぺりとした顔に、感情を反映させない胡散臭い笑顔(ジャパニーズスマイル)を浮かべながら答えた。
その言葉は副大統領の後ろに立っている幾人かの民主党主流派にとっては面白いものではなかったが、彼らとて民主党の有力者といえる政治家である。この程度のジャブの打ち合いで表情を動かすマヌケは存在しない。
「ええ、理解しております。我が国もあやつらのせいで同盟国を裏切るような卑劣かつ間違った行動をとってしまい、内戦半歩前まで追い詰められました。
本来なら罵倒され、石を投げられて当然の我が国を見捨てずに、手を差し伸べてくれた貴方達には感謝の念が尽きません。」
そう言い、副大統領は再び頭を下げる。
何せ台湾海峡危機や対馬紛争においてアメリカ合衆国は日本連合と同盟関係にあり、コロナウイルスへの薬等を低価格で供給してくれるなど恩もありながら事実上何の貢献もできなかった。
それどころか、政権交代後は民主党内の内紛の影響からアメリカ合衆国は同盟国である日本連合に対して敵国であるかのように対応。
さらに日本連合を牽制する為という名目で中国に接近し、台湾海峡危機を誘発するなど日本連合に対して裏切りとも言える行動を取っている。
事実上、民主党主流派と共和党主流派、共和党トランプ派による挙国一致体制が構築され、大統領が失脚するや否や関係修復に全力で動いているアメリカ合衆国であったが、日本連合側の不信感も大きく、未だに完全に関係を修復しきれていなかった。
「貴国が自浄作用を示してくれたから我々も手を差し伸べたのですと言うのが正解でしょうが、正直なところ、我々が信頼する貴方が再びトップに立って事態の解決に動いたからこそです。貴国は信用できなくても貴方の合衆国への愛国心は信用できる。それが、我々の判断です」
ーー日本連合からアメリカ合衆国が支援を得られているのは誰のおかげか忘れるなよ無能ども
口外にそう言いながら民主党の長老格を一瞥する瞬間、特使の目に激しい怒りが宿るが、すぐにジャパニーズスマイルに戻る。
408: ホワイトベアー :2022/03/20(日) 22:03:26 HOST:222-229-56-17.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
「さて、このままリベラルを気取る阿呆への不満を共に吐き出したいところですが、時間も無限にあるわけではありません。本題に移りましょう」
「確かに、彼らに対して思うところを1から言言おうものなら1週間あっても足りませんしな」
お互いに苦笑いを浮かべ、長い社交辞令を終えるとそれまでのやり取りが嘘だったかのように空気が一変した。
「ロシア軍は極東からも部隊を動員。ウクライナとロシア・ベラルーシの国境付近には10万以上のロシア軍が集結中となっておりますが、ロシア側は手を引くと思いますか?」
「62年の貴国は引きましたか? それが答えでしょう。あそこはロシアにとってのキューバだ。
しかも、今の貴国には本格的にロシアと殴り合う余裕は存在せず、貴国の頼れる同盟国である仏独はあのザマ。引く理由がないでしょうな。」
副大統領の問いに特使は何の配慮もせずに否定的見解を叩きつける。
それは史実世界最大の大国である米国の抑止力効果を否定し、米国を軽んじているとも受け止められかねない言葉であったが、
叩きつけられた副大統領+αは大した反応も見せず、やはりそうかと言った雰囲気で受け止めていた。
何せ、
アメリカ国内は《
アメリカ政界の奇跡》や《妥協が生み出した最高の芸術品》と後に言われる、前大統領をトップとした民主党主流派や共和党各派による挙国一致体制の構築とリベラルおよび民主党左派を共通の敵とする事で分断の緩和をはかっており、実際に幾らかは効果が出ていた。
しかし、挙国一致体制から半年も経っておらず、くすぶり続ける内戦の火種を完全に消すには時間が圧倒的に足りない。
日本連合からの積極的な物資支援とインド・太平洋地域での負担の大幅な軽減により、インフレの抑え込み軍の再編などが可能とった事でこの頃には韓国における難民封じ込めと韓国陸軍軍政府への援助の一翼を担うなど、超大国としての片鱗は見せれる程度までは回復していた。
だが、挙国一致体制の発足から半年も経っていない現状ではそれ以上に
アメリカ国内を固めるには時間が足りず、アメリカ合衆国には本格的に国外に目を向ける余裕は存在するはずも無かった。
特使の見解は米国の優秀な頭脳が集まる国防総省や国務省が出した見解と同様であり、米国ですらもはや否定できない事実だったのだ。
されど、米国側もこのウクライナ問題で簡単に引くことはできなかった。
挙国一致体制構築前の事であったが、合衆国は政権交代から1年と経たずない短期間でアフガンと東アジアにおいて2回も同盟国を裏切ると言う外交的な大失態をしている。
ここでブタペスト合意を無視してロシアのウクライナ侵攻をみすみす許してしまえば、あるいは、ロシア側に有利な妥協を一方的に行なってしまえば、ただでさえ揺らいでいるアメリカ合衆国の対外的信頼がどうなるかわかったものではない。
国内政治的にはウクライナへの大規模な介入は許されないが、外交的にはロシアとの妥協やロシアによるウクライナ侵攻時に大規模な行動をおこなわないことは許されない。
アメリカ合衆国政府はこの矛盾した政治要求による二律背反に頭を悩ませていた。
「・・・レバノンの時のように貴方達が動いたらロシアも手を引くのでは?」
ハドソン研究所から再び国務省に戻った元CAI長官の国務長官は半ば諦めながらも強大な軍事力を抱える彼らの介入に期待を抱かずにはいられなかった。いな、彼だけではない。この場にいる誰もが大なり小なりそう思っていた。むしろ、米国の政治や軍事、外交に携わる人間でそう思わずにいられる人間こそ少数派だろう。
それだけ、今のアメリカ合衆国にとって彼らは、いや彼らの抱える戦力は魅力的であった。
しかし、現実とは無情なものである。
「難しいですね。レバノンの時とは違い、多くの本国政府は自国が絡まず、欧州と言う大陸を挟んだ反対側での出来事への介入に否定的です。それに、本来なら積極的に動くべき欧州における貴国の友人達(NATO諸国)が他人事である以上、我々も本国を説得できません」
「やはり、そうですか...」
特使からの答えはわかりきっていたものであったが、それでも肩を落とさずにはいられなかった。
409: ホワイトベアー :2022/03/20(日) 22:04:00 HOST:222-229-56-17.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
「アジア太平洋地域での中国封じ込めと韓国の対処はこちらで担います。そして、もし貴国がロシアとの戦争になればわが国も同盟に基づいて参戦しましょう。ですが、我々ができることはここまでです。現段階でこれ以上の行動を取るのは不可能です」
大使の言葉を受け、副大統領は考えを纏めるようにペンの先でコツコツと机を叩く。
「・・・国防長官」
しばしの沈黙の後に重苦しく声を出す。
「・・・第1機甲師団、第1歩兵師団、第3歩兵師団、第7歩兵師団、海兵隊第2海兵師団の5個師団であれば動かすことができます」
副大統領の意図を組んだ国防長官は頭の中にある米陸軍の配置と状況を確認して応えた。
「まさか地上部隊を送り込むつもりですか?副大統領」
民主党主流派の1人が表情を曇らせる。確かに事実上の大統領はこの商人上がりの男だが、名目上の大統領は民主党の人間なのだ。だが、彼も分かってはいる。いくも地獄、とどまるも地獄なら、まだ動いた方がマシだ。何せ、彼らの後ろには旧大陸のぼんくらとは比べ物にならないほどの同盟国がいるのだから。
「ここに至ってはしょうがない。我々は我々のできることをやるしかないのだ」
「・・・分かりました。では、議会の民主党議員とメディアの方はこちらで対応をしましょう」
お先に失礼。そう言いながら民主党の長老格の人間らはここを出ていく。彼らだけではない。国防長官や国務長官、報道官たちも慌ただしく部屋を出ていく。既に方針は決まったのだ。ならば、後は動くのみである。
今、再び星条旗が動き出す。どんな困難が訪れても諦めない、不屈の男に率いられ。
「貴国の信念はしかと見させて頂きました。」
それまでの薄ら笑いを辞め、真剣な表情を特使は浮かべていた。
「ならば、我々は我々の義務を果たすのみです」
西暦2021年12月10日、アメリカ合衆国はイギリス、ポーランド等の幾つかのNATO諸国とともに緊急の演習を行うことを発表。多くの国の政治評論家や軍事評論家の予想を裏切って、在欧州陸軍の他に5個師団という大軍をアメリカ本土からウクライナ国境地帯に送り込み、イギリス・ポーランドとともに16万近い大兵力をもって真っ向からロシアに対峙する。
翌2022年1月1日、この演習に日本連合から2個師団が途中参加。ウクライナ国境の自由諸国の兵力は20万人に到達。さらに極東は北海道では
日本大陸から追加派兵された兵力も合わせて40万近い兵力と戦艦4隻、強襲揚陸艦3隻、ドック型揚陸艦9隻を中心とした艦隊が北海道で軍事演習を開始する。また、米国はブダペスト覚書は未だ有効であることを演習と同時に行われた日米英波の大統領や首相による共同声明で宣言。以下の声明は日米英波の大統領や首相による共同声明の一文である。
「我々は国際社会の平和を望み、戦争を望まない。されど、一たび戦火が起きれば、恐れず如何なる犠牲を払ったとしても最後まで戦い抜こう。再び平和が訪れるその時まで」
その一方でNATOへのウクライナ加盟はドンバス紛争の平和的解決までは交渉を開始しないとも名言。2022年3月、長期間の動員により先に限界がきたロシアが演習の終了を宣言。動員体制を解除したお蔭もあり、国際社会は緊張の中にあって未だ平和を保っている。
410: ホワイトベアー :2022/03/20(日) 22:04:37 HOST:222-229-56-17.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
以上になります。wikiへの転載はOKです。
2度の裏切りと国内の分断ゆえに追い詰められた
アメリカは動き、
アメリカが動いたからこそ日本連合も同盟国支援に動く。その結果、ロシアは引き、世界は平和を維持する。まさに理性の勝利。
日米英はプレゼンスを証明し、ウクライナは
アメリカの意思を確認でき、ロシアは一応のウクライナの非NATO化の確約を受けた。そして、イギリスを除く西欧は使えない事を証明した。
西欧以外は誰もが、赤字か黒字化は別として一定のメリットを得てウクライナ危機は平和の祭典を前に終了し、世界は危うくも確かな平和を保ち続ける。
まあ、一歩間違えれば第3次世界大戦だったのですがね。
日本連合ホワイトベアールートはこれで行きます。
最終更新:2022年04月04日 15:17