583: ホワイトベアー :2022/04/05(火) 21:36:34 HOST:202-189-222-171.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
日本大陸×ワールドウィッチーズ バトル・オブ・ブリタニア その5

普段はレーダーにその仕事を任せて、自身らは高所に設置された監視塔のなかでラジオを聞きながらトランプに興じているブリタニア軍の観測兵達は、この日、双眼鏡越しとは言え初めてネウロイを自身の肉眼で見た。

「ネウロイだ! 敵ネウロイを確認!」

日本からもたらされた9式中距離地対空誘導弾の攻撃を受けながらも、何でもないかのように前進を続けるネウロイの姿に観測兵は思わず双眼鏡を落としてしまう。

「何て数だ・・・。」

彼らが確認した数は大型ネウロイと中型ネウロイ約30体。ウィッチの上空援護がない彼らにとっては絶望的な数である。

「スピットファイア! 空軍の援軍か!」

上空を通過しつつミサイル攻撃を実施する友軍のスピットファイアの姿を見て別の観測兵が声を上げる。
中型ネウロイに対してレシプロ戦闘機という貧弱な存在がどこまで耐えられるかは甚だ疑問であるが、この瞬間の彼らにとってその姿はまさに救国戦闘機そのものであった。


「国連軍の連中め。何が、ミサイルがあれば高射砲なんて無用の長物だ だ。きっちり突破を許してやがるじゃねえか」
「結局、我々高射砲部隊こそ最後の砦という事でしょう」
「全くだよ少尉。さて、無作法な訪問者であっても紳士らしく歓迎してやろう。近接対空攻撃開始!」
「アイサー!! 全砲に通達。撃ち方始め!!」

高射バッテリーを実質的には指揮するブリタニア軍大尉の声高な命令を受けて、対空レーダー、射撃統制装置、計算装置を連携させることで敵を自動追尾することを可能としたリベリオン製の最新鋭高射砲システムに管制されたM1938 120mm高射砲4門がネウロイに向かって砲撃を開始する。

彼らだけではない。
国連軍第7高射連隊第4大隊とブリタニア陸軍高射砲部隊の展開する防空陣地では陣地転換中9式中距離地対空誘導弾部隊に代わりに、最後までその使用が望まれていなかった31式短距離地対空誘導弾部隊や34式近距離地対空誘導弾部隊が次々と攻撃を実施しており、
M1938 90mm高射砲やM1938 120mm高射砲が上空にその砲口を向けて激しい砲火をネウロイに集中して浴びせていた。

584: ホワイトベアー :2022/04/05(火) 21:37:05 HOST:202-189-222-171.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
「やった!」

砲手の兵士がそう歓声をあげた。砲火を集中したことが功を奏したのだろう。どこの誰が放った攻撃かは分からないがコアを破壊されたネウロイが霧散していった。
しかし、所詮は多数の中の1体を破壊したに過ぎない。
撃破したネウロイの後方にいたネウロイから猛烈なひかりが発せられ、高射砲を操る兵士たちの視界を一瞬奪う。そして、僅かな時間も許さずにその光芒は歓声を挙げた兵士の操るM1938 120mm高射砲を狙い撃ち、彼の所属するバッテリーが展開していた陣地とそこに存在する機材や弾薬、兵士たちを破壊し、炎上させ、蒸発させていく。

「第8中隊の陣地が吹っ飛ばされました!」
「怯むな! 次の獲物は第8中隊を吹っ飛ばしたやつだ! 攻撃を集中しろ!!」

生き残った高射砲部隊や携帯式の31式携帯型地対空誘導弾を担いだ兵士たち、それに再装填を終えた34式近距離地対空誘導が集中攻撃を実施、第8中隊の敵をとることには成功したものの、それまでに接近した多数のネウロイから放たれたビーム攻撃により幾つかの陣地が、そこを護る人員とともに消し飛ばされた。

ネウロイは国連軍やブリタニア軍の必死の抵抗により多少の損害を受けているにも拘らず、その進行速度を緩めずにロンドンに向かい進撃を続けており、彼らの決死の抵抗をもってしても大した足止めにもなっていなかった。

「防空司令部、ネウロイに防空陣地を突破されました! こちらで対処できる数ではないです! 至急、ウィッチと戦闘機部隊の援護を!!」

第4高射大隊を指揮する中佐は実際の防空陣地からやや後方に位置している大隊指揮所から通信を通して、アックスブリッジにある第11戦闘機グループ司令部に連絡を取る。

『現在、増援の日本海軍戦闘機部隊が急行している。攻撃可能空域までのETAまで後2分だ。もう少しだ踏ん張ってくれ』

「ウィッチ部隊の増援は!?」
『・・・最速でもETAは20分後だ』
「クソッタレ、了解した。最後まで足掻いて見せよう」

通信が終了する。
防空司令部に見得を切ったものの、防空陣地上空にネウロイが到達し、ぐちゃぐちゃの乱戦状態になっている現状では、最早、彼らにできることは精々が陣地転換中の9式中距離地対空誘導弾部隊が早急に再攻撃可能になることと、日本海軍戦闘機部隊の一刻も早い到着を願うのみであった。
もっとも、彼らが祈る時間はそんなに必要はなかったが。

585: ホワイトベアー :2022/04/05(火) 21:38:01 HOST:202-189-222-171.tokyo.fdn.vectant.ne.jp

大西洋の日米連合艦隊から発艦した日本海軍の戦闘機部隊はその大半は未だに激戦が続く空域を目指していた。
しかし、3個飛行隊36機からなる一部の部隊は、防衛戦を突破したネウロイを撃退するために本隊から別れ、国連軍イングランド北部防空司令部の誘導を受けてをサンド島上空を複数個のフィンガーフォーを組んで飛行していた。

「リーダー、敵ネウロイ群をロックオン完了。数は27、報告にあった防衛線を突破した奴で間違いないです」

そんな戦闘機部隊を指揮する日本海軍第84戦闘攻撃飛行隊、通称ジョリー・ロジャーズ隊の一番機に乗るレーダー迎撃士官は諸元を入力し終えたことをパイロット兼部隊長に報告する。

「了解した。ロジャーリーダーより各機、目標までの距離150、フェニックスや俺達にとって実戦では初めての距離だが、相手はデカブツの上にノロマだ。外したやつは飯抜きだと思え」

『了解!』

「よろしい。ジョリー・ロジャーズ、全機フェニックス発射!ぶちかませ!」

「『FOX3 FOX3』」

ロジャーリーダーの合図と同時に計12機の20式艦上戦闘機達は、それぞれに割り当てられたネウロイに向かってフェニックス、正式名称:20式中距離空対空誘導弾52型を一斉に発射していく。

元々は日本海軍が大型爆撃機型や巡航ミサイル型を迎撃するために開発されたこのミサイルは、最高射程距離150kmを誇る現在では世界最大の射程距離を誇る空対空誘導弾であり、その弾頭には日本の魔導学や魔導工学、対ネウロイ研究の結晶である40式対ネウロイ用咒式魔導浸食弾頭が搭載されている。これにより、例えコア持ちのネウロイだろうと当たれば一撃で葬りさることを可能とした。

フェニックスの誘導方式は中間はセミアクティブレーダー誘導(飛行中のデータ更新あり)、終端アクティブレーダー誘導である。
そのため、発射した後も母機である20式艦上戦闘機は目標を搭載されたAN/AWG-20レーダー/火器管制装置で捉え続け、その誘導の下にフェニックスは最高飛翔速度マッハ5の速度で目標として設定されたネウロイに向かい進んでいく。

途中、ミサイルの接近を把握したのだろう国連軍とブリタニア軍の高射砲陣地を焼き払うのに夢中になっていたネウロイ達はその攻撃目標を
ミサイルに変更、叩き落そうとレーザーを乱射するが、マッハ5で進むミサイルを捉える事ができず、フェニックスはネウロイの懐まで接近。搭載されているレーダー、赤外線、衝撃信管で構成される複合型近接信管が作動し爆発することで、ネウロイの胴体に40式対ネウロイ用咒式魔導浸食弾頭の破片を大量に叩き込んでいく。

ーーこの時、ネウロイの感じた感覚を人間の言葉で表すなら困惑と恐怖が一番近いだろう。

ネウロイの体内に入った破片に込められていた他者を拒絶する魔力、他者を否定する魔力、質量を持った魔力、すなわち呪は、僅かな時間もネウロイに与えることなく、急速にその負の魔力を浸透させていく。元々、魔力とはネウロイにとって毒であり、それに質量を持たせた呪の侵食を受けた場所はその尽くがズタズタに引き裂かれていった。
自身の体の中から引き裂かれていく未知の感覚を受けたネウロイはレーザー攻撃に使っていたエネルギーすら自己治癒に回すことで侵食を止めようとするも、それでも浸食は止まるどころか速度を緩まることすらない。
最終的にコアにすら呪(ドク)が回り、重い魔力が無造作に流れこんできた事でコアが破壊され、フェニックスが命中したネウロイは僅かな時間差と共に霧散していく。

「スプラッシュ1、目標全機撃墜」

レーダー迎撃士官が確認していたレーダー画面から対象や対象付近の反応が消滅したことを報告する。

東アジア戦役から通して、帝国海軍空母航空団通常戦闘機部隊としては初の対中型ネウロイ戦であったが、その結果は高射部隊が莫大な被害を出して13体しか撃破できなかったネウロイの大軍を1機の損害もなく、戦闘機部隊がネウロイをその視界に収めることすらなく全体撃退するという圧倒的な結果で終わった。

586: ホワイトベアー :2022/04/05(火) 21:38:32 HOST:202-189-222-171.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
「ロジャー1よりカルデア、目標を全機撃墜した」

『こちらでも確認した。ステータスは?』

「問題ない。燃料・弾薬もまだまだ十分にある」

『了解した。現在、セクター11において航空魔導部隊が中型ネウロイをインターセプト中だが手が足りていない。そちらの救援を頼む。』

「了解、航空魔導部隊を退避させてくれよ」

カルデア、国連軍イングランド北部防空司令部の指示の下に彼らは次の目標を捉え、攻撃を加えていく。

また、ジェット型ネウロイとジェット戦闘機の闘技場と貸していたドーバー海峡のとある空域、国連名称セクター11においても 日本軍の到着は戦況を大きく人類に傾かせる。
未だにネウロイの数の方が多いことには変わりなかったが、彼らのジェット戦闘機型の性能は第1世代ジェット戦闘機としては最高レベルのものでしかなく、2倍の数でようやくP-10やF-38を主体とする国連軍にようやく対抗できていた。そこに史実F-14D相当の性能を持つ20式艦上戦闘機が150機近くも増援として到来してしまったのだ。

日本海軍戦闘機部隊の到来と中型ネウロイの全滅。この2つの出来事によりネウロイの大攻勢は失敗が決定的になるとネウロイは退却を開始。リベリオン空母艦載機部隊の到着を待たずにブリタニア本土を巡るバトル・オブ・ブリタニアのラウンド1は人類に勝敗が上がった。

しかし、それはドーバーを巡る戦闘が終わったことを意味するのではない。
大規模な攻勢こそおきなかったものの、以後もブリタニア本土を狙うネウロイの散発的な攻撃は続き、1944年9月、人類がガリアを開放するまでドーバー海峡において第501統合戦闘航空団 ストライクウィッチーズを主力とする人類とネウロイの戦いは続いていく。

587: ホワイトベアー :2022/04/05(火) 21:39:46 HOST:202-189-222-171.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
以上になります。wikiへの転載はOKです。
ようやくBoBネタを終わらせられました。

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最終更新:2022年04月09日 11:06