228: ホワイトベアー :2022/04/18(月) 20:14:10 HOST:157-14-179-9.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
Muv-Luv Alternative The Melancholy of Admirals 第5話
西暦1984年11月
欧州ではポーランド軍が全力で死守するビスワ川絶対防衛線での負担軽減のためのBETA群漸減を目的としてヴィストゥラ潟湖での限定反攻作戦の実施を決定、バルト海では日本・
アメリカ。西側欧州諸国の予備戦力を投入した一大戦力が形成されていた。
NATO軍共同反攻作戦オペレーション・セイバー・ジャンクション1984
主戦力は戦術機揚陸艦や強襲揚陸艦などの膨大な数の輸送艦艇に搭載されている欧州連合軍軍とアメリカ軍、日本軍からなるNATO軍地上部隊、そしてこれをエスコートすることを目的とした日本海軍の大鳳型戦術機母艦《大鳳》《黒鳳》、アメリカ海軍のニミッツ級戦術機母艦《ニミッツ》《エンタープライズ》、イギリス海軍のクィーンエリザベス級戦術機母艦《クィーン・エリザベス》《プリンス・オブ・ウェールズ》などの戦術機母艦群を中心とした戦術機母艦打撃群と、大和型やモンタナ級、アイオワ級、ライオン級、アルザス級など多数の戦艦と重巡洋艦からなる水上打撃部隊によって構成される機動艦隊。
まさに人類史上最大規模の艦隊は東を目指して海を往く。
バルト海海上 大日本帝国海軍 戦術機母艦大鳳
地平線から顔を出し始めた太陽光が、徐々に冷え切った気温を上昇させている。しかしBETA侵略による気候変動は、そんな予兆すらも吹き飛ばす凍える突風を極地の海上に吹き荒らしていた。
吹雪により白色が視界を支配するバルト海の洋上を進んでいく日本海軍第7常備艦隊第5戦術機母艦打撃群所属戦術機母艦 大鳳の甲板では戦術機が発進の時を今か今かと待ちわびていた。
『レーザー級の撃破率75%、水上打撃部隊は砲撃を継続。戦術機部隊は跳躍時の射線交差に注意せよ』
『ゴブリン中隊は目標沿岸地域に到達。橋頭堡を確保しつつBETA群との戦闘継続中』
『新たなBETA群を確認。バルトシツェ方面から約2000が接近中』
『戦術機の突撃開始まで残り120秒。戦術機揚陸艦は橋頭堡に向けて突撃を開始せよ』
日本海軍の誇る最新鋭第三世代戦術機であるF-6秋雷のコックピットでは静寂と興奮が同居していた。
すでに水上打撃部隊とそれにエスコートされた輸送船団はヴィストゥラ潟湖に展開。
戦艦や重巡洋艦、そして低周回軌道上の国連宇宙総軍ならび日米宇宙軍の低周回軌道艦隊は大量のAL弾を投射する事で重金属雲を展開させ、その後に圧倒的な火力による面制圧で橋頭堡付近のBETA群や近づいてくるBETA群を片っ端から吹き飛ばしていき、火力支援の下に上陸を果たしたA-1部隊が中小型種を自慢の火力で薙ぎ払っている。
網膜投影されている戦況ウィンドウには先遣部隊の戦況が余すことなく移され、ヘッドセットからは無線交信と彼方から響く砲声が絶え間なく響き渡っていた。
『戦術機部隊の発進を許可。メビウス中隊から発艦せよ』
「メビウスリーダー了解した」
CPからの許可を受け、飛行甲板で待機していた嶋田のF-6はカタパルトに進んでいく。
『カタパルト、接続よろし』
甲板要員の声を集音センサーが拾った。
その報告はプリフライ_発着艦指揮所に陣取るエアボス_飛行長にまで届く。
『発艦30秒前だ・・・戦術データリンクとの接続は完了しているか?』
「問題ない。JTIDSから戦域データを正常に受信を受信できている」
『了解した。発艦まであと20秒。発艦に備えろ』
F-6は膝を曲げて体勢をやや前のめりにし、跳躍装置のエンジン出力をフルパワーにあげる。
『メビウス1、射出!』
その声と共に発艦士官が片膝を付き、右手の伸ばした人差し指と中指で艦首を指し示す。
ガツンと言う猛烈な衝撃と共に、、カタパルトが戦術機を猛烈な勢いで加速させ、嶋田の乗るF-6を飛行甲板から放り出す。放り出され、宙に浮いた巨体は墜落したかのように艦首の先に沈むが 、次の瞬間には青い炎の光跡と轟音を残して蒼穹へと舞い上がっていく。
『メビウス1発艦完了!続いてメビウス2の発艦を開始せよ!』
無線からは自身を打ち上げ終えた甲板要員達が次の対象の打ち上げにかかっている声が電波を通して聞こえてくる。
229: ホワイトベアー :2022/04/18(月) 20:18:36 HOST:157-14-179-9.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
港湾に接近していた何隻もの戦術機揚陸艦を背景として、重金属雲と黒煙で霞む洋上をいくつもの戦術機が自身の跳躍ユニットから青白い炎の光跡と轟音を発して海岸へと向かっていた。
嶋田率いる日本海軍第118戦術機中隊、通称メビウス中隊は同じく空母のカタパルトから射出された日本海軍戦術機部隊の一部、スカル中隊、アップル中隊、バーミリオン中隊の3個戦術機中隊とともにその一部として海面直上を最大速力で駆け。
『CATCCよりメビウス1。水上打撃部隊からの艦砲射撃は依然継続中。レーザー級による迎撃率は約84%。先行上陸した海兵隊のA-1部隊がLZを確保している。』
先行上陸を担った部隊は日本海軍海兵隊とアメリカ海兵隊、共に盛況無比な兵達で構成されている強力な部隊である。
彼らはA-1と呼ばれる潜航可能な戦術歩行攻撃機に乗り誰よりも早くBETA支配地域に上陸し、戦術機部隊の上陸地点を確保していた。
海兵隊のタフガイたちが確保している海岸到達まであと60秒、普通なら何てことはない時間だが、レーザー級から身を隠す遮蔽物のない海上においてはとてつもなく長く感じる。
いくら事前にレーザー級の数を減らし、水上打撃部隊の絶え間ない支援砲撃でレーザー級の攻撃を誘引しているとは行っても、それも完璧ではないのだ。
「メビウス1から各機へ!上陸まであと20秒。重金属雲が発生しているがレーザー級の位置には常につけておけ。上陸と同時にLZに接近している師団規模BETA群にフェニックスを叩きつけろ!」
「「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」」
隊員たちの返答が返ってくるや否や、前方を覆っていた粉塵が晴れ、大地を埋め尽くほどの数の水上打撃部隊の艦砲射撃で原型を留めていないBETAの死体とそれを乗り越えて接近してくるBETA群、それに砲撃を叩き込むA-1部隊。
「全機FOX1!ぶちかませ!」
A-1部隊の間を通り過ぎるのと同時に肩部に48発の日本海軍必殺のAIM-1が放たれた。
AIM-1、日本海軍を象徴する兵器の1つであり、原作において米国が開発したフェニックスミサイルを母体に、日本で開発された打ちっぱなし機能を搭載する中距離空対地クラスターミサイルである。
戦術機1機につき両肩に4発ずつ、計8発を搭載可能としており、その威力は大、実に大である。
数十秒後に本ミサイルはBETA梯団の上空に到達、内部に搭載されていた大量の子機爆弾を地上で蠢くBETA群にプレゼントフォーユーしていき、大量にいたはずのBETA梯団はその大半が物言わぬ肉塊と化していた。
『スティングレイ1よりメビウス隊へ!助かったぞリボン付きの!』
ウィンドウが開き、下で奮闘を繰り広げていた
A-1部隊の隊長が感謝の言葉を伝えてきた。
一瞬だけ戦況ウィンドウを確認すると、やはりというべきかすでに弾薬が危険域にまで達している。
「当然の事をしたまでた。メビウス1からスティングレイ。ここは我々が受け持つ。貴隊は一度後方に下がって補給を受けてくれ」
『重ねて感謝する!すぐに戻ってくるので我々の分の獲物も残しておいてくれ』
「申し訳ない。スティングレイ1、我々は食いしん坊な上に今猛烈に腹ペコでなぁ。目の前の御馳走を残すなんてできそうにない。」
『『『ハハハハハ!』』』
メビウス、スティングレイ双方の衛士たちから笑い声が聞こえてくる。
『了解した!リボン付きの奮闘を願っている』
「安心してくれ。その期待を裏切る我々ではないさ」
『前方より新たなBETA梯団接近中、相当数は水上打撃部隊の砲撃で無力化しましたが旅団規模BETA群相当のBETAが砲撃破砕区域を突破しました。メビウス中隊とスカル中隊は迎撃に向かってください』
CPポストから新しい指示が飛んでくる。
「どうやらHQの連中は俺たちを徹底的に使い潰すようだな」
『それだけ”世界最強“の俺たちが期待されているってだろうよ』
『戦後に有給と優先的なコミケ参加券をもらわないと割に合わないな』
海軍3羽鴉、帝国海軍の3代エースにして第118戦術機中隊嶋田、山本、そして米内は互いに冗談を言いながら部下たちを率いて次の獲物へと誘われていく。
230: ホワイトベアー :2022/04/18(月) 20:22:28 HOST:157-14-179-9.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
バルト海海上 アメリカ海軍揚陸指揮艦ブルー・リッジ
バルト海に浮かぶブルー・リッジ級揚陸指揮艦1番艦ブルー・リッジ。
今作線における国連軍の総旗艦であり、アメリカ海軍が艦隊や揚陸作線の指揮を執るために建造した専用艦という実に贅沢な、アメリカの富の象徴であるこの艦には莫大な数の通信機器が整備されている。
そして、それらを通して前線や遥か後方、果には宇宙空間からもたらされた情報が集約される戦闘指揮所では、多数の機械の奏でる機械音やオペレーターの報告をBGMとしながら、今作線の最高司令官であるヨハン・エイブラハム・レビル大将は戦況の表示されるディスプレイを眺めていた。
「第1海兵師団、揚陸および橋頭堡の確保を完了。内陸部にむけて侵攻を開始しました。陣地構築のための資材を送ります」
「第18戦術機甲大隊、目標α付近のレーザー級の排除を完了」
「内陸部より新たなBETA梯団を確認。水上打撃部隊による艦砲射撃を開始してください」
「ゴットランド島に待機していた第二陣がこちらに向かって移動を開始。到着まで12時間程度です」
データーリンクを通して衛星軌道を飛ぶ衛星や低軌道艦隊などの遥か上空から戦場を監視する宇宙の目達や前線の部隊などから送られてくる情報はオペレーター達によって手際よく対応されていき、本艦から発せられる命令を下に動く各種部隊により上陸作戦は極めて順調に進んでいた。
すでに橋頭堡では戦術機とヘリコプター部隊に続いてアメリカ海兵隊第1海兵師団、イギリス海兵隊第1海兵師団、日本海軍第3海兵師団の3個水陸両用師団の上陸が完了しており、ミンスクハイブやポーランド侵攻の為に形成されつちあったBETA梯団から送られてくる絶え間ないBETAの波状攻撃を水上打撃部隊の火力支援の下に蹴散らし、内陸部に侵攻することで縦深の確保に移っている。
また、港湾部を確保したことで後続の2個戦術機甲師団を中心とした主力部隊の上陸と補給物資の揚陸も開始されており、BETAが反撃に転じてもそれに対応できるだけの準備が急ピッチで進んでいた。
231: ホワイトベアー :2022/04/18(月) 20:23:34 HOST:157-14-179-9.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
(すでに全水陸両用師団が上陸を完了したうえに日本海軍海兵隊はカリーニングラード港とカリーニングラード(都市)の大部分の確保に成功。我軍やイギリス海兵隊も内陸部に向かい進撃を開始したか。
当初の予定よりだいぶ早いな。さすがは日本海軍とイギリス海兵隊、それにマリンコの連中だ)
今回の作戦で水陸両用師団を提供しているのは大日本帝国、アメリカ合衆国、イギリスと強力な海軍力を誇る海洋大国達であり、それ故に経験豊富で練度の高い師団で、計画より手際よく上陸と部隊の展開を可能としていた。
(このまま行けば当初の予定より早く縦深の確保に成功できるな。当初の予定では確保した縦深の護りを固めるのは明日から行うはずだったが、今日中にある程度は行けるかもしれないな)
レビル大将は作戦計画と現在の戦況を比べ、今後の修正計画をねっていく。
(後続の欧州連合軍2個戦術機甲師団の揚陸は今日中には終わるだろう。)
今作線第1段階における主役とも言うべき2個戦術機甲師団は西ドイツ軍とフランス軍所属の部隊であり、世界各地で戦闘ノウハウを蓄積し、すでに第2世代以降の戦術機を行き渡らせている日米と比べてしまうと練度・装備共劣っていると言わざるをえない。
それでもF-105系列の中でも評価の高いトーネードを主力として配備している部隊が中心であり、その戦力は東側戦術機部隊とは比べ物にならなかった。
「弾薬の消費量と残弾数はどうなっている」
「はい。艦隊の弾薬消費量は事前の予想と大差なく、当面の間は引き続き支援砲撃の継続が可能です。上陸部隊の弾薬消費量ですがイギリス軍は当初の予想以内に収めておりますが、日本軍が2割、我軍が3割ほど予想量より増大しております。」
オペレーターからの報告に補給担当幕僚がひっそりとため息をついてしまう。
だが、弾薬を節約しろというのも難しい話であった。
何せ、当初の予定より日米両国の弾薬消費量が多い理由は、当初の予測よりもBETAの数が多いことをその理由としており、司令部としては文句は言えない。
幸いとして未だに許容範囲ないであるし、いざとなれば西側諸国の物資はその多くが日本規格で統一されており、いざとなれば比較的物資に余裕のある欧州連合の物資を供給可能であるが、まあ、補給担当としてはため息をつくこと位は許されるだろう。
(順調だ。拍子抜けするほど順調に進んでいる。何も心配はないはずだ。なのに何だこの違和感は。まるであの時のように大切な何かを見落としてしまっているかのようなこの感じは)
レビル大将の、第1次月面大戦から今まで対BETA戦の前線に立って戦ってきた経験と、戦場で研ぎ澄まされた感覚がこのまま順調に終わることはないとレビル大将に訴えかける。
そして、残念な事にレビル大将の”悪い“予感は外れたことがなかった。
「オペレーター、ゴットランド島の第三陣はこちらの指示があるまで待機させておくように命令。それと日本の九鬼中将に秘匿回線を繋いでくれ」
悲観的に備え、楽観的に行動せよ。日本に留学中に読んだラノベの一文を言葉を思い出しながら、レビル大将は自身の行動が取り越し苦労で終わることを祈りつつ最悪に備えるために最善を尽くしていく。
232: ホワイトベアー :2022/04/18(月) 20:24:05 HOST:157-14-179-9.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
以上になります。
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最終更新:2022年05月18日 20:30