641: 635 :2022/04/23(土) 23:06:12 HOST:119-171-248-237.rev.home.ne.jp
銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようですその八十後編
祭が始まった。
苗木を抱えたデメテルと円匙を持つ対州要塞姫が歩みを進める。
二人は祭壇の向こうアスファルトが剥がされ良い肥料が与えられ良く耕された土へと向かう。
対州要塞姫は円匙を大地へと入れ、土を掘り起こす。
そして娘が土を掘り起こすと母、デメテルは自らの持つ苗木を手ずから大地へと植える。
それはこの地に鎮まりこの地の産土神と成るべ樹。
かつてはこの世界ではない違う遠き異国で異教に子らを殺され怨嗟の果てに荒ぶるモノに堕ち果て世界に災いを振りまいた荒神であった。
デメテルが苗木を植え、対州要塞姫がその根本に土を被せる。
そしてデメテルもまた土を被せる。
続き天照大御神が、アルテミスが、ケルヌンノスが、熊野権現が、稲荷神が、大天使が、イシュタルが、リシュリューらが祝福と共に土を樹の根に被せていく。
そして続くのはことらの日本の者達。
まずは先帝と細君が樹に土を被せ、日本の長が続く。
この地に鎮まるように、この地を永久(とこしえ)に見そなうようにと願いを込めて。
続きこの土地の長やこの地で暮らす者、この地を離れざるを得なかった者。
この災厄を止めようと抗った者や神に山海の幸を捧げた者、そして災厄を見たこともないそれらの者達の幼子達、アイドル兼業農家も土を次々に樹の根に被せていく。
悲劇が終わりますように、皆が救われますようにと願いを込め。
皆が土を被せ終えると金剛の姿の天照大御神が騎士王アルトリアを従え祭壇へと歩み出る。
此方側の者達は何をするのかと興味津々だ。
天照大御神は祭壇の前に立つとアルトリアより何かを渡される。一振りの剣だ。
風を起こし、雲を呼ぶ神剣、天照大御神の御影にして八岐の巨龍の化身たる剣。
その剣を持つと天照大御神は二度剣を滴り落ちる水の如く縦に振り下ろす。
その動作に何の意味があるのか見る者達は訝しがるが一部の者達は違う。
縦に二度振り描かれる紋所、天照大御神がそれを振る物語を知っていたが故に気づく。
太陽の照る中、剣が雲を呼び突如として暖かな雨が降り出す。
名前:名無しの氏子 投稿日:
【恵雨】だ。筆調べの恵雨だ!!
名前:名無しの氏子 投稿日:
恵雨?
名前:名無しの氏子 投稿日:
なんじゃそりゃ?
名前:名無しの氏子 投稿日:
ええとなんていったらいいか…兎に角アマテラス大神の持つ神通力の一つ水を操る力の中で雨を自在に降らせる業だよ!!
【恵雨】、あの物語で世のために命を投げ打った一人の女性の魂を慰める為に降った雨。
優しい雨が降る。金剛に降りる天照大御神、その荒御魂は水神にして祓戸大神たる瀬織津姫、神の雨が全ての穢と汚濁を流し去り神域を祓い清め恵みを降らせる。
その恵みを苗木の小さな葉が受け取り、根より清められた水と雨と共に大地に染み込んだ小さな祈りを小さな樹は吸い上げていく。
それとともに小さな樹がぐんぐんと大きくなる。
数百年、いや数千年という時間を掛けて大きくなる過程を吹き飛ばし原子炉建屋よりも巨大な大樹となる。
しかしその枝には葉も何も存在しないまるで枯れ枝のような様。
名前:名無しの氏子 投稿日:
でっけええ木!
名前:名無しの氏子 投稿日:
でも枯れ木じゃね?
名前:名無しの氏子 投稿日:
葉も何もないじゃないか…
名前:名無しの氏子 投稿日:
これでどうするってんだ?
名前:名無しの氏子 投稿日:
いやあれが恵雨であの木がコノハナ様と同じならここからが本番だ…
名前:名無しの氏子 投稿日:
どういうこと?
名前:名無しの氏子 投稿日:
あ、誰か祭壇の前に出てきたぞ
名前:名無しの氏子 投稿日:
踊り始め
名前:名無しの氏子 投稿日:
はい!?
名前:名無しの氏子 投稿日:
ええええええ!?
642: 635 :2022/04/23(土) 23:06:42 HOST:119-171-248-237.rev.home.ne.jp
祭壇の前に一人の艦娘が歩み出ると大樹の前で音楽とともに舞い始める。
それに合わせ大樹に花が咲いていく、その陰で天照大御神やデメテル達が踊りに合わせ剣や指で円を画くのに気づく者は少ない。
艦娘の舞いに合わせその枝に花を咲かせていく大樹に皆が驚く。
そして全ての枝に花が咲き誇る。
その枝葉全てに花、桜花を咲かせ終えると大樹に光が集まる。
まるで冬を超え春を待つ花の様にその幹に光を蓄える大樹、その光が臨界に達する。
名前:名無しの氏子 投稿日:
光が…
名前:名無しの氏子 投稿日:
花吹雪がタタリ場を押し流して行く…?
名前:名無しの氏子 投稿日:
光と花吹雪がこう、ぶわあって…
名前:名無しの氏子 投稿日:
大神降ろしだ…!間違いなく大神降ろしだ!!
名前:名無しの氏子 投稿日:
なんだろう、涙で画面が見えねえや
名前:名無しの氏子 投稿日:
ありがたや。ありがたや。
大樹から広がる光、それが花吹雪と共に大地に広がる。
この地に澱んだ怨念を悔恨を穢を押し流し、吹き払っていく。
光が立ち昇り海へと山へと去っていく。
原子炉の燃料デブリに取り込まれた魂も大地に縛られた魂も全て解放されあるべき場所へと還っていく。
神の力だけでこれを成し得ず、人の想いだけでこれを成し得ず。
正しく祀り、祀られた神の力の降臨、大神降ろしに相応しい風格であった。
全てが、ありと汎ゆる罪過と穢が吹き払われた福島第一原子力発電所。
そこに壊れた原子炉建屋も汚染水を溜め込んだタンクも存在しなかった。
ここはエレウシスの神域、豊穣の大地。広がる光景はあり得ざる景色、だがそれは日ノ本の民ならば心揺さぶられる景色。
名前:名無しの氏子 投稿日:
ああ金色の、稲の穂の絨毯が揺れてる…
名前:名無しの氏子 投稿日:
秋だからな…
名前:名無しの氏子 投稿日:
デカイけど桜の木も綺麗に咲いてるな…
名前:名無しの氏子 投稿日:
青い空に桜色が映える…季節外れだけどいいもんだ…
名前:名無しの氏子 投稿日:
なんでだろうとてつもなく泣きたくなった
名前:名無しの氏子 投稿日:
何かこう心の底が揺さぶられる
名前:名無しの氏子 投稿日:
なんかゴザ敷始めたぞ?
名前:名無しの氏子 投稿日:
あ、神様達にみんながご飯出してきた
名前:名無しの氏子 投稿日:
祭が終わればみんなで酒飲んでみんなで飯を囲むもんだからな
名前:名無しの氏子 投稿日:
神様と人が共にあるか…
名前:名無しの氏子 投稿日:
今度は向こうとこっちのリーダー達が楽器出してきた
名前:名無しの氏子 投稿日:
歌でも歌うんかいな?
名前:名無しの氏子 投稿日:
歌うのは…子供…?
643: 635 :2022/04/23(土) 23:07:25 HOST:119-171-248-237.rev.home.ne.jp
兼業農家達が楽器を持ち寄る。
彼らなりに考えてたサプライズ、この話を聞いた時銀河連合の彼らは祭にはコレが必要と考えた。
ゲート側の彼らは感謝を伝えるにはどうするかと悩み銀河連合の彼らの話を聞いて自分達もと申し出た。
しかし歌うのは彼らではない、幼子達。
始め彼らから言われた時幼子達は意味を理解出来なかった。感謝を捧げるとはどういうことか、何故そんなことをするのか。
でも今ならば理解る。黒いモヤを吹き払う桜吹雪、還っていく魂、そして目の前に広がる金色の稲田と咲き誇る桜、その光景を見て泣き崩れる父母達。
自分達の内にも湧き上がるこの場所に帰ってきたのだという想い。産声を上げたのはこの場所でないというのに。
だから伝えなくてはと強く想う。
幼子達は唄い出す。植え芽吹けと。
それはとある物語の唄、豊穣の神に捧げられた田植え唄。
幼子の歌に父母は思い出した。
厄災に立ち向かった者達やその光景を目にした者達もあの日に感じた我が身の心細さを思い出す。
そして祈ったのだ全てが元通りになるのを、しかし現実は非情だった。
故郷を離れざるを得ず、進まない除染作業、年月が経ち故郷へ戻っても無くならない風評被害と元通りにならない光景。
それでも願ったのだ、金に揺れる稲穂を、穏やか海を。
そしてその景色は今ここにある。
その気持を察した幼子や兼業農家らは唄の書かれた紙を渡す。
父母や他の者は少し驚くと幼子達と共に唄い出す。
田の神さんよありがとう
神に寄り添い神に感謝を伝える。
言葉だけでは理解っていたが本当の意味で理解していなかった。
いつも通りの景色、いつも通りの世の中に感謝することがどれ程尊いことか。
田の神さんよありがとう
デメテルはその光景にかつてを想い出す。
遥か遠い遠い過去、遠き地に降り人と出会い力を貸した時、あの時どれ程の感謝を伝えられどれ程彼らに寄り添っていたか。
崇められ、傲慢になりその光景を失ったのはいつ何時だったか。
銀河連合日本の世界で自分達は信仰を失い流離い世界に融け果て、異聞では傲慢の果てに行き着いた。
だが再び自分は人と寄り添いここにいる。
唄が聞こえる、いつか大地に根を降ろそう、人も神も末永く栄えようと。
デメテルの頬に一筋の光が流れた。
644: 635 :2022/04/23(土) 23:07:57 HOST:119-171-248-237.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。
最終更新:2022年05月10日 09:25