581: 弥次郎 :2022/05/04(水) 16:12:50 HOST:softbank126041244105.bbtec.net

憂鬱SRW アポカリプス 星暦恒星戦役編SS「空が落ちる前に」


  • 星暦恒星系 星暦惑星 衛星軌道上 地球連合軍星暦恒星系派遣群 星暦惑星地上方面軍司令基地 ソレスタルビーイング級コロニー型外宇宙航行母艦


 巨大なコロニー型航行母艦であるソレスタルビーイング級ファントムビーイング艦内、その研究区画には、回収された多数の無人兵器が並んでいた。
そう、星暦惑星のギアーデ帝国が開発して送り出した無人兵器「レギオン」。指揮を執るものがいなくなってからもなお自立稼働を続ける戦闘機械である。
それらは、あらゆる形で保存されている。内部回路をあらわにしたもの、殆どばらばら状態のもの、あるいは輪切りにされ断面図を晒すもの。
あるいは武装や脚部など細かい部分の構造を取り外して可視化したものまでもある。
即ち、地球連合の科学力と国力を以て、レギオンについて調べ上げ、分析し、解析を行っているのだ。

 すでに地球連合の艦隊がこの恒星系に到着し、現地の人類と接触してから2か月余りが経過している。
 その2か月という時間は、現地国家との接触や共闘のためだけでなく、人類の脅威となるレギオンに対しても費やされていた。
ただ戦うだけではなく、相手のことを知ることが、勝利への近道だとよく理解していたのであった。
1か月弱は現地からの情報の整理と分析に、そしてそれ以上の2か月を自らの力で集めたサンプルを調べることに費やされた。
 その結果判明したのがレギオンの黒羊や羊飼いの存在であり、あるいはレギオンの指揮系統の構造、そして生産体制をはじめとした後方支援体制だ。
宇宙を抑えている地球連合は、本来ならばたどり着くことが難しい後方にいるレギオンを容易く強襲することができた。
即ち、発電プラント型・自動工場型・射撃子機型・発電子機型といったレギオンの発見や鹵獲もすることができたのである。
それらの情報は星暦惑星各国にも共有され、各国からは優先目標として排除の懇願が来るほど稀少な情報として評価された。
即ち、地上の前線国家には難しいレギオンの兵站および生産能力への直接攻撃である。如何にレギオンと言えども、生産されなくては数を増やせないのだから。

 しかし、その連合もある程度時間をかける必要があった要素があった。
 即ち、レギオンの中枢、戦術・戦略的な面も含めた制御系を確実に抑える何かである。
回収された残骸からはマイクロマシンやナノマシンにより、大型哺乳類の脳あるい人間のそれを再現して取り込んでいることは分かっている。
それがわかってしまうと、人間どうしても欲が湧くものだ。それらレギオンをより確実に無傷でとらえたいと。
 その結果、地球連合はその総力を挙げ、手を届かせたのだ。ギアーデ帝国が使ったマイクロマシンという技術に。
 元手はあった。
 すなわち、ロア=グレキア連合に残されていたレギオンのAIの大本となった研究---ヒトの脳をナノマシンなどにより再現する技術。
さらには、ギアーデ連邦により回収されたレギオンの開発にかかわる資料。あとは鹵獲したレギオンの残骸。
これらの材料があれば、後は人員と機材などを用意すれば、時間経過でたどり着けるものであったのだった。

  • ソレスタルビーイング級コロニー型外宇宙航行母艦「ファントムビーイング」 研究区画 第34研究室


 必要なのは生物に対する麻酔だ。
 そのように、主任研究員たるエルザ・バニングは今の研究と実験を捕らえていた。
 レギオンの機能を安全に停止させるために、同じマイクロマシンを撃ち込み、その作用で中央処理装置を停止させる。
それは、動物に対して麻酔を施すのと同じようなものであった。個体ごとに適切な量を、適切な場所に打ち込むことで、動きを止める。
 あるいは、局所麻酔の要領でレギオンの中央処理装置から各所への指示を麻痺させる方向でも動いている。

「けれど、こんな大きなのを麻痺させろなんて…」

 今のところは、小型や中型のレギオン相手には成功している。実際、それによって無傷で鹵獲できた個体も多いくらいだ。
 ただ、上から命じられたのは、そんなちんけな相手ではなく、もっと大きな、最早列車砲というスケールのそれへの対処であった。
曰く、これまで確認されたことのない、明らかにレギオンの戦略級個体であり、その鹵獲は優先事項だという。
その能力などを調べるためにも、可能な限り損傷を与えることなく無力化したい、と注文を受けた。

(やたら打ち込んでも効果が出るわけじゃないんだけどねぇ……)

582: 弥次郎 :2022/05/04(水) 16:13:32 HOST:softbank126041244105.bbtec.net


 その列車砲を思わせるレギオンは、現在は建造中と思われる。
 だが、迂闊にもその姿をさらしてしまったのが運のつきか。
 とはいえ、その大きさは全長40メートルほどで、想定される重量は2000t近くに及ぶ。
 麻酔と称したように、無力化のマイクロマシンというのは相手の大きさや中央処理装置の出力、あるいは構造を踏まえたうえで撃ち込まねばならない。
既存データを基にして、何十回もシミュレーションは重ねているが、それでも確実とは限らないのが怖いところ。

 一体それはなぜか?
 これまでの実証試験でも成果を出している対レギオン中枢麻酔弾(パラライズバレット)が信頼がおけないのか?
 その答えは、至極簡単なものだった。

(現在進行形で建造中ってこと)

 そう、稼働状態にあるかどうかは別としても、今もなお建造と艤装が施されている最中なのだ。
 対象の内部構造が刻々と変化している可能性が極めて高く、事前の観測データがどこまであてになるかも不明なのだ。

 加えて、もう一つネックなのが、一体どこに中枢麻酔弾を撃ち込むか、ということになる。
 中枢麻酔弾と言っているその中身は。リバースエンジニアリングして再現されたマイクロマシンの集合体だ。
これらがレギオンの中央処理装置もしくは人間でいうところの神経にあたる電子回路に侵食することで効果が発揮される。
 だから、必要量を、中央処理装置の指示をかき消して麻痺させるための量を撃ち込むには、その位置を的確につかまなければならないのだ。
そして尚且つ、レギオンの装甲を貫通して撃ち込まなければならないのだ。相手の装甲が未知数なのも相まって、最悪現場で何とかするしかないのである。

(でもそんなの無理を強いるわけだし……)

 データリンクでリアルタイムで情報を与えてもらえばマイクロマシンの調整は遠隔ではやれる。それでも実行者に危険が及ぶのだ。
肉薄して攻撃するというのは危険が伴う。無傷でとらえようとするならばなおのこと攻撃をためらわねばならないのだ。
 かといって、これを誘導兵器や直接的に火砲で撃ち込んでも誘爆などが起こってしまう可能性が高いのだから使いにくいのも何ともならない。

「なら、相手の動きを阻害する武器が有効かな」

 どう判断するかは実行役などが考えることであるが、自分にもできることはいくつもある。
 例えば、相手の動きを阻害するトリモチ弾を集中的に浴びせ、運動の力を奪い取ってしまう、とかだ。
この手の兵器はMSやACではすでに実用化されているので、それを相手に合わせてスケールアップすることで効果が見込めるかもしれない。
如何に強力な火砲を搭載しようとも、それが射角が限定されたりすれば当然役に立つことはないわけだ。
あるいは逃げ出そうとしても、その装脚というのは輪帯と同じかそれ以上に繊細なものであるゆえに妨害に弱い。
 問題なのは、やはり相手が巨体であることだろうか。相手の運動性は高くはないと推定されるが、果たしてどうなるか。
 ともあれ、自分はやれることをやっておこうと、エルザはラップトップの操作を続行することにしたのだった。

 該当のレギオン---仮称コクーンの鹵獲作戦「オペレーション・スカイフォール」の実施まであと2週間足らず。
 人類は、天空の瞳により、自らの脅威となる相手を先手を打って排除するのを試みようとしていた。
 これまでのように、レギオンに押されるばかり、先手を打たれるばかりではない、人類の反抗の先駆けとなる一大攻勢。
この作戦に合わせ、星暦惑星各国は攻勢に出る。スカイフォールのための陽動であり、レギオン支配地域を漸減のためでもある。
本来ならば損害などを考えてあまりやらないであろうそれは、しかし、連合供与の無人機などで増強された状態ならばできると、そう判断されたのだ。
 地球連合の、そして星暦惑星各国の動きは、いよいよを以て加速しようとしていたのだった。

583: 弥次郎 :2022/05/04(水) 16:15:43 HOST:softbank126041244105.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
モルフォ君、端的に言うと注射器とトリモチランチャーを大量に持った機動兵器に追っかけられることになります。
クスリはやっぱり注射に限るぜ


誤字修正を

581
×その結果、地球連合はその総力を挙げ、手を簿為したのだ。ギアーデ帝国が使ったマイクロマシンという技術に
〇その結果、地球連合はその総力を挙げ、手を届かせたのだ。ギアーデ帝国が使ったマイクロマシンという技術に


×
 すなわち、ロア=グレキア連合に残されていたレギオンのAIの大本となった研究---ヒトの脳をナノマシンなどにより再現する技術。
さらには、ギアーデ連邦により回収されたレギオンの開発にかかわる資料。あとは鹵獲したレギオンの残骸。


 すなわち、ロア=グレキア連合に残されていたレギオンのAIの大本となった研究---ヒトの脳をナノマシンなどにより再現する技術。
さらには、ギアーデ連邦により回収されたレギオンの開発にかかわる資料。あとは鹵獲したレギオンの残骸。
これらの材料があれば、後は人員と機材などを用意すれば、時間経過でたどり着けるものであったのだった。
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最終更新:2023年11月05日 15:23