577: ホワイトベアー :2022/04/24(日) 14:03:55 HOST:183-180-175-181.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
日米枢軸ルート 小ネタ 帝国特殊作戦軍第[データ削除済み]回装備検討会議
西暦2016年[データ削除済み]月[データ削除済み]日 国防総省第6会議室
光の抑えられた薄暗い会議室内には陸海空宇宙軍の4軍の将校服を纏う高級将校達や背広を着る事務方の軍官僚、帝国国母総省傘下の諜報機関からの出席者たち、帝国唯一の自動人形メーカーであり、帝国の国防の基盤的企業の1つであるIOPから参加しているホワイトカラーたち計十数名が集まっていた。
「海軍さんとしては今回の作戦の結果をどう見ているのかね?」
それまで沈黙が支配していた会議室内で、陸軍から参加している高級将校が口火を着るかのように口を開き、友好的とは言えない視線を海軍からの参加者たちに向け、同様の口調で言葉を発する。
彼の言葉を受け、海軍参加者たちにその他の参加者の視線が集まる。
「不確定要素による妨害もあったが、それすらも排除して機能停止機体も出さずに目標を達成した。もし公開されたら近代の特殊作戦の教科書に載るほどの大成功だろうと認識している。報告書にもそう書いてあるだろ」
それに対して海軍側はまるで気にしてないかのように、いつもの如く不遜な態度を崩さずに返す。
「たった一人の人間を始末するのに投入部隊の2割が負傷。さらに本来なら負う予定がなかった我が国の関与をほのめかしかねないリスクを負ったのに大成功とは。海軍さんはジョークのセンスが無いようだな」
「敵戦力が統合情報局のもたらした事前情報よりも遥かに多かった上に、情報になかったEU製の機械化外骨格兵すらいたんだ。投入兵力の損耗を発生させずに作戦目標を達成したのだから大成功と言っても過言ではないだろ」
「確かに統合情報局の無能さは責められて当然でありますし、そんな過酷な状況の中で目標を達成できた海軍を責めるのはいささか筋違いでは?」
陸軍の嫌味に対して海軍側は全ての責任は統合情報局の無能さにあると言う態度をとり、
空軍から参加している高級将校が海軍側の肩を持つ。
統合情報局の無能さには陸軍も散々なまでに振り回されており、こう言われてしまうと彼らも反論が難しい。
それでも何かを言おうと口を開きかけるが、
「いい加減にしたまえ。ここは責任を追求する場所でも仲良く皮肉を言い合う場所でもない。今回の問題で発覚した自体にどのように対応するかを議論する場所だ。それが出来ないなら出ていってもらおう」
議長を務めていた右眼を眼帯で隠した白人系の老年の男性。かつて帝国陸軍特殊部隊のトップエリートとしていくつものブラックオプスを担い、現在では帝国の全ての特殊部隊の頂点に立つ特殊作戦軍司令官ジョン・T・大司 大将の言葉に口を噤まざるを得なかった。
「ーーしかし、こうして国家間の非正規戦に投入して見ると、改めて特殊作戦用自動人形の運用の難しさが浮き彫りになりましたな」
暫しの気まずい沈黙の後に、参加者の一人が口を開いた。
続けて別の者たちも口を開いていく。
「特殊作戦用自動人形はそれ自体が国家機密の塊ですからな。今回は運良く投入した自動人形は全て帰還できましたが、次もそうだとは限りません。最悪の場合、機能が停止し、放棄した人形が鹵獲される可能性もあります。一応、メインコンピュータや各機密モジュールには機能停止時に自己消滅装置を搭載していますが、それも絶対とは言えませんし」
「非正規戦中に敵の攻撃で機能が停止し、放棄せざるをえなくなった場合の政治的リスクも大きいな。何せ、人間と違って言い訳が難しい」
「それが一番の問題だよ。一応イギリス連邦加盟国軍でも自動人形は使われてはいるが、自動人形を戦闘任務で運用している組織は我々に属する国家や組織が大半だ。対テロ任務ならまだ良いが、国家間の非正規戦では使いづらいことこの上ない」
陸海軍や軍官僚などの参加者達から次々と出てくるのは、少し前に帝国が南米で行った秘密作戦、具体的には機密情報を手土産に欧州に亡命しようとしていた某省庁高官の口封じ、にて大きなリスクとして改めて浮上した《特殊作戦時に機能停止した自動人形を放棄する事に伴う諸問題》に関しての事であった。
578: ホワイトベアー :2022/04/24(日) 14:04:55 HOST:183-180-175-181.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
「そもそも、こう言う場合に備えて戦闘警備隊特殊部隊を用意してあるのですから、こうしたブラックオプスに自動人形を投入する事が間違いなのでは?」
「戦闘警備隊特殊部隊を投入して死傷者が出れば世論は間違いなく与党に批判的になる。故に自動人形と言う代替手段がある以上は政治家達が戦闘警備隊特殊部隊の投入を許さんだろうよ」
「全く・・・欧州連合や英連邦が復活しつつある今こそ非正規戦戦力が重要だと言うのに」
参加している軍の制服組や官僚たちはおのおのが隣席の人間と意見をぶつけ合い、会議室はそれまでの静かさが嘘のように騒がしくなる。
「え~、議長。参加者の皆様からご指摘して頂いた特殊作戦用自動人形の問題点なのですが、弊社もこれを認識しておりましていくつかの案が社内で検討しておりました。そうした検討案の中で最も実効性の高いと判断された計画を提案させて頂きたたいのですが、よろしいでしょうか?」
「...構わない」
そうした中で今まで沈黙を守ってきた、会議に参加している組織で唯一の民間会社であるIOPからの参加者の一人、IOPの重役が発言を求め、議長である大司大将は、一度周りを見回し、異論がない事を確認するとはこれを認めた。
「ありがとうございます。まず、皆様ご存知のとおり、弊社の自動人形はメンテナンス製や信頼性を向上させ、NBC兵器による汚染地域でも作戦行動を可能とするために生物由来素材を使用せずに製造している人の形を模した機械です」
IOPからの参加者は一旦口を閉じる。その頃には会議室内の喧騒としていた会議室内は静まり返っており、参加者たちは「何を当たり前の事を言っているんだ」と言いたげな視線を彼に向け、無言で続きを促した。
その視線を受け、重役は再び口を開く。
「その為、弊社の自動人形は様々な環境下で高いパフォーマンスを発揮できますが、反面、金属探知機などの機器や、それこそ機能が停止した廃棄人形が鹵獲され、調査が行われれば人間と自動人形見分けるのは容易です。
また、死ねば情報の秘匿ができる人間と違い、いくら機密保護プログラムや機密保護用モジュールにより、機能停止時には情報を削除するように備えていても、廃棄人形から情報がサルベージされてしまう可能性は0ではありません。」
「だからこそ、どう対応するかを考えるためにこの会議が開かれているのだろう。余計な前振りではなく、早く提案とやらの中身を聞かせてくれ」
「そんな事はわかりきっている。だが、人間の兵士を送り込めないから我々は頭を悩ませているのだろう」
一部から野次が飛び始めていく。
「え~。つまり、投入される自動人形が弊社やIBI社製の機械式自動人形である事が問題の根源なのです。これにより、たとえ機能が停止したとしても、我が国の関与を疑わせるには十分な証拠が残り、また、機械であるが故に修理などで情報が流出する可能性が常に存在してしまいます」
ゆえに、
IOPの重役は野次を無視するが如く話を続けていく。
「金属の使用を極力抑え、生物由来素材を主体とし、見た目はもちろん内蔵等の体内組織も人間に近づけた生体型自動人形の開発をご提案させていただきます」
IOPの重役が行った提案は、短期間であるが会議の出席者達の思考を停止させ、彼らから言葉を奪った。
暫しの沈黙の後、一番はじめに意識を再起させた大司大将が口を開く。
「...貴方の説明を聞いているとその生体型自動人形とやらは法律で規制されている人クローンと同じように聞こえるのだが。もしそうなら解決策としては使えないですぞ」
それは最もな発言であった。何せ、人クローンの製造は国内世論は否定的な人間が極めて多く、戦闘警備隊特殊部隊の国外派兵以上の政治的困難が待ち構えているのは明らかなのだから。
579: ホワイトベアー :2022/04/24(日) 14:07:10 HOST:183-180-175-181.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
「それに関しては詳細は書類に記載されているのでそちらをご確認していただきたいのですが、掻い摘んで申しますと、現在の法律で禁止されている人クローンの定義はホモサピエンスの遺伝子を有し、1つの受精卵から体を構成する細胞や組織を一定割合以上成長させた生命体とされております。ゆえに人工的に作成した人造細胞を使用し、細胞を非金属性の人口骨格に再生治療の要領でそれぞれのパーツを構成する細胞を定着、培養させていくに生み出された場合は法的にはクローンにはあたらないとのことです」
司法省にはすでに確認しておりますが、問題ないとのことです。そう付け加えて重役はその口をとじる
「という事は法的には問題ないわけだ・・・」
「倫理を無視すればですがな」
IOPの重役の説明を聞いた軍の関係者たちは唸りながら是非を考える。確かに人道的、倫理的には問題があるが、仮にこの計画が成功したら特殊作戦に関してはだいぶ楽になる。
「そこまで言うからには成功する見込みはあるのだろうな」
大塚大将は嘘は許さんとでも言うかのように殺気に似た圧迫感を持って迫る。
「わが社が今まであなた方の期待を裏切った事がありましたか?それが答えです」
素人なら気絶してもおかしくないほどの圧を受けてもなお、重役は軽く肩を竦めるのみで、飄々と応える。実際に今までIOPは軍の要望に完璧に近い回答で応えてきた。その実績が彼に自信と余裕を与えていた。
重役の言葉をもって会議の大勢は決した。
「よろしい。そこまで言うのならば、貴社の提案に乗るとしよう。」
大塚大将の言葉に意義は存在しなかった。
この会議から約2年後、帝国の特殊作戦部隊は新たな特殊作戦用自動人形を手に入れる事になる。
580: ホワイトベアー :2022/04/24(日) 14:14:50 HOST:183-180-175-181.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
以上になります。wikiへの転載はOKです。
ブラックオプスを行うにあたり必要な技能である証拠の隠滅と最悪の場合に誤魔化す手段。
それを自動人形に与えるために腐敗する有機物や非金属の力を借りることになりました。
最終更新:2022年05月09日 22:01