71: 弥次郎 :2022/05/05(木) 20:20:01 HOST:softbank126041244105.bbtec.net

日本大陸SS 漆黒アメリカルートSS「燻製ニシンの虚偽」




 WWW---世界で最も最低な戦争と呼ばれる、史上最大規模の絶滅戦争。
 その戦争において、日英陣営はその立地や制空権を奪いやすいという条件を活かし、アメリカ合衆国の生産能力などを叩くための戦略爆撃を実施していた。
勿論、射点さえ確保できれば弾道弾による攻撃も可能であったのだが、攻撃できる範囲などを鑑みて爆撃機による無差別爆撃も実施されていたのである。

 しかし、米合とてバカではない。爆撃機による攻撃を仕掛けてくるならば、当然のように航空機や対空砲などによる迎撃を試みるのである。
M1A1特殊高射砲という悪名名高い兵器のほかにも、低高度爆撃に備えたどこからでもタケノコの如く生えてくる対空砲などを米合は用意。
更には備品に爆撃機に突撃させる半分以上木製の航空機を使わせるなどして、まさしく尋常ではない攻撃を加えるに至ったのである。

 と、ここまでが前提条件となる。
 当然、日英陣営は爆撃や偵察あるいはその手の航空機を用いた軍事行動における被害の低減を図ることとなった。
護衛機を張り付ける、爆撃機の前に戦闘機や攻撃機による事前攻撃を加える、爆撃機の自衛火力を強化するなどだ。
一時的には本分たる爆撃を二の次として、対空砲を山のように搭載した対空攻撃機まで誕生したのだから恐ろしいというべきか。

 だが、どうやっても、備品という名の生体誘導装置はごまかしきれない。
 勿論接近される前に撃破してしまうことが最良ではあるのだが、護衛戦闘機とてそこまで自由自在に飛べるというわけでもないのだ。
コンバットボックスを組み互いの対空気銃や対空砲で死角を補い合い、弾幕を張っても、そこを強引に突き破ってくるのだし。
 確かに金に糸目を付けぬことで数は用意できる。かといって、あの非人類の生きているところに落ちるかもしれない爆撃機にパイロットは乗せられない。
 日英陣営の技術者や軍人たちは色々と頭を悩ませた。だが、そこにとある日英ハーフの技術者が腹案を抱えてきてこう叫んだのだ。

「私にいい考えがある!」

 そして、その腹案は披露された。

『キッパー』

 魚の燻製を意味するコードネームを持つそれ。
 技術者曰く「凧を見て思いついた」とのこと。
 その実態も、まさしく凧であった。ガワだけは一般的な爆撃機に酷似している。
 だが、中身は伽藍洞。パイロットもいない。なんならば最低限形をとるための装甲しか備えていない。
エンジンもあることにはあるのだが、どちらかと言えば飛ぶ際の補助のためにしか用意されていないのが実態。
 というか、もはやこれは航空機ですらない。航空機のガワを持った、巨大な凧なのだ。
 使い方は簡単。爆撃機に、あるいは複数の戦闘機にワイヤーで引っ張らせ、自前のエンジンと合わせて飛翔させるのである。
そして、爆撃機の囮として使う、というわけである。技術者曰く、備品の判断能力はそこまで高くはない。
爆撃機の形は教え込まれているとしても、それが本当に爆撃機であるかどうかを判別することができるかは怪しいと。
なればこそ、特殊高射砲の砲弾をひきつけるためにはこれが最良に近いと、そう判断したというのだ。

 多くの技術者や軍の関係者が思わず噴き出した。レッド・ヘリング(ニシンの燻製)か、と。
 最初は苦笑されたものだが、技術者はいたって真面目であった。

「ただのデコイではない」

 そう。凧というのは存外浮力がある。
 まして、巨大な爆撃機によってけん引されている状態ならば、吹き付ける風を適切な構造で受け止めれば結構な浮力を得るのだ。
つまり、その得られるであろう浮力の分だけ中に色々と仕込むこともできる、というわけである。

72: 弥次郎 :2022/05/05(木) 20:20:33 HOST:softbank126041244105.bbtec.net

「落とされることが前提であるのだから、別段質の良い部品やエンジンを使わなくてもいい。
 なんならば、爆弾を詰め込んでおいて切り離し、そのまま墜落させると同時に腹に抱えた爆弾で吹っ飛ばしてしまえばよい」

 たとえ爆弾でなくてもよい、とまでその技術者は言い切った。
 例えばだが、そこら辺のこぶし大の石ころでもいい。一つ一つは威力は低くとも、空中で起爆させ高高度から降ってくれば家屋などを砕き、地面を穿つ。
あるいは金属片をまき散らすだけでも効果はあるぞ!とまで言う。空から大量の金属片を降らせば、対地・対人効果は抜群である。
手間は多少はかかるにしても、加工して鋭利な状態でばらまけば、後始末にも時間をかけさせることになるとも。
 つまり、単なるデコイというわけではなく、厄介なものをまき散らす、まさしく外れ籤。
 いざ爆撃態勢に入ったら、あとは切り離して自律飛行に任せても良い。凧であり模型飛行機でもあるのだから、ある程度は勝手に飛んでくれる。

「無論、これだけではなく、これまでに試されている防御方法などと合わせることも重要だろう。
 だが、相手にとってこれほど厄介なこともあるまい。これを一つ作るコストで爆撃機クルーの命と人間としての尊厳を守れるのだから」

 それは、切実な問題だった。
 米合内に墜落した爆撃機や戦闘機のクルーの未来は暗い。徹底的に資源として使われるのみだ。
 だからこそ、その手のパイロットやクルーたちには自決用の拳銃が支給されているほどに。
 しかし、それをいつまでも積み重ねられるわけではない。任務とはいえ、士気にも大きくかかわることであるのだから。

 斯くして、このデコイ、コードネーム「キッパー」は「Remora」の名を与えられ、試験運用され、効果が実証されて制式化された。
 戦闘機や爆撃機を模しておきながらも、まるで回避運動も取らず、挙句に墜落して爆発をまき散らすという方法に米合は混乱さえした。
備品を備えていない日英陣営がそんな非合理的な、パイロットを使い捨てにするような戦術をとるはずがないと、経験則に反してしまい混乱したのだ。
 そして米合は、タネが分かった後も判断能力の低い備品に如何に見分けをつける手段を覚えさせるかということで苦心することになった。
WWW後期にはもはや撃墜したのがデコイであるか本物であるかの判別が難しくなり、米合と日英陣営での認識のずれが大きくなったのであった。
 それは米合という国家の余力がなくなった証拠であり、日英陣営が企図した長期戦による備品の損耗を加速させる策が成功したためでもあった。
そう、備品の数が減ったことは必然的に米合の脅威度の低減につながることとなったのであった。
歪な人造国家故に、そんな程度のことでも躓いてしまう。米合の滅びは、ある種の予定調波だったのかもしれない。





Remora/コバンザメ

製造:日英陣営
材料:木材、低質アルミニウム、紙、竹、その他
全長:日英の用いる爆撃機および航空機のサイズによる
動力:補助エンジン
乗員:0名
概要:
 日英陣営が送り出した航空機を模したデコイ。
 基本的な設計は凧や模型飛行機などを基礎としており、これを爆撃機や戦闘機が牽引することで、相手に爆撃機と誤認させるのが仕事となる。
戦闘エリアについた後は切り離してしまうことも可能であり、その後はある程度自律飛行した後に墜落する。

 元々備品が高度な判断能力を持っているとはいえず、また実際の航空機パイロットでさえも偽装された本機と本物の識別を一瞬でするのは難しかった。
むしろ本物の爆撃機よりも速度がないことで狙いやすく、そちらに備品が引きつけられて見事に外すということも相次いだほど。
その為、撃墜したとカウントされても、それが実はデコイだったというケースが多数見受けられた。

 本体はほとんど伽藍洞だが、同時に内部には爆弾やら石ころやら何やらを詰め込んでいるのが特徴。
ナパームや可燃性燃料などを詰め込み、着弾後に火災などを引き起こすようにしたモデルも存在している。
質量弾としての降下だけでなく、詰め込んだ武装による効果が見込めるため、任務ごとに中身を入れ替えることも多かった。

74: 弥次郎 :2022/05/05(木) 20:21:10 HOST:softbank126041244105.bbtec.net
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ご無沙汰ぁ!だったので(ry

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最終更新:2022年05月09日 22:18