702: ホワイトベアー :2022/05/17(火) 22:29:23 HOST:sp1-72-1-245.msc.spmode.ne.jp
日本連合ネタ 〘湯呑み処の世間話、あるいは、定時で帰れない者たちの悲しき会議〙
「列島日本での軍備増強の骨子は自律思考兵器の主力化で決まりそうなのかね?」
列島日本を占領統治する日本連合。その統治機関である大本営にあって軍にあって、実質的に日本連合軍を仕切っている日本連合大本営参謀部参謀長は、東京が地上の星で埋め尽くされたというのに、今だに執務机の大部分を占領している書類の山から目を背け、息抜きも兼ねて口を開く。
「ああ、漆黒と孤立も賛同した事で日本統治委員会はその方向で進んでいるよ。肝心の列島日本政府と防衛省はすでに選定を終わらせているし、覆ることはないだろう。」
先程までBDが届いた事を喜んで、会議そっちのけでウ○娘プリティー○ービーのアニメ第2期鑑賞会を開こうとしていた参謀部第2部部長が頷きながら答えた。
日本連合を構成する日本の中でも特に有力国である超日本、孤立日本、漆黒日本、日米日本、日蘭日本の5大国。
その中でも最大の力を持つ超日本のスタンスは、【自分達に影響ないならお好きにどうぞ】だ。最低限の義務こそ負担するが、それ以上の負担は背負わないし、最低限の意見しか言わない。そして、こういう意見の対立も基本的には傍観するのみである。基本的に自主的に動くつもりはない。
そのため、事実上、日本連合の中核を担うのは残りの4つの日本である。その中でも日米枢軸日本は提案国であるし、うち2つの日本が賛同しているのだ。
日本連合にあって事実上指導的な国家である4カ国のうち3つの日本と自衛隊を保有する列島日本が自衛隊での無人兵器の主力化を“許容”したとあっては、もはや自衛隊を飲み込みつつある省人化の波を止めることる事は難しいだろう。
「そもそも海上自衛隊と航空自衛隊の拡大と装備更新、戦艦や空母などの大型装備の導入、さらに陸上自衛隊も規模を拡大させることになります。主戦力を人間にしたら列島日本政府の防衛費はいくらあっても足りませんよ。列島日本の経済再建を最優先にする民政局が許すはずがない以上は無人兵器が主力となるのは決定事項でした。」
占領任務に当たる日本連合軍の後方支援のトップであるが参謀部第4部部長が続く。
軍隊というのは、基本的に何の生産性も有さない。そんなところに超のつくほどの優良な労働者であり、消費者たりうる若者や多額の予算を投じるのは、経済の再建という観点から“だけ”見れば悪手でしかない。
「何より、例え人間の募集枠を大きく増やしたとしても必要定数をみたせないですよ。知っていますか、まだ御盆は先だというのに、今現在の大学新卒の内定獲得率は90を超えているんですよ。専門卒や高卒、中卒も似たようなものです」
列島日本の経済状態は占領直後こそ混乱から低迷を見せたものの、日本連合によって最低でも占領前の経済状態や雇用状態、生活水準の維持が保証されていることに、日本連合主導の経済政策や各種改革も合わさり、それが落ち着いた現在では、
〘コロナ何て何のその、コロナや
第四次台湾海峡危機による海上通商路の混乱?なにそれおいしいの? ウクライナ危機や干魃、東アジアでの睨みあいによる食料・エネルギー需要の悪化で中間貿易で利益ザクザク過ぎてメシウマですわ。笑いが止まりませんわ〙
状態である。
当然ながら、雇用率と給与の中央値は緩やかにだが上がりつつある。
なにより昇給と減税と保険料減額によって使える金がドカンと増えた事が日本人に経済の発展を自覚させ、占領早々に【チェスト】して社名以外全てを入れ替えたマスコミによるプロパガンダや、日本連合の各種政策、そして日本連合が提供する“安心”が合わさり、大衆や企業は少しずつだが消費や投資を活発化させていた。
経済の活性化は各業界で人手不足を誘発し、新卒はもちろん転職希望の人間や高卒、業界によっては中退した人間だってひっぱりだこ状態だ。
こんな状態で大規模な定員拡大したとしても自衛隊に入ろうとする人間は少ないだろう。
「軍隊と一般の民間企業、どちらに入りたいと考える人間が多いかは自明の理だな。しかも、実質的に2~3年しか勤務できない下っ端隊員か、一応は今だに定年まで面倒を見てくれる民間企業の正社員の座ならなおさらな」
日本連合軍の人事を担う第1部部長が頷く。
極論、徴兵制を敷いているなどの例外を除いて、余程のことがなければ軍人、しかも兵卒というのは食いっぱぐれた人間か、キャリアアップの手段が乏しい人間が大多数を占める仕事なのである。
もちろん、自ら軍人になりたいと願うものは各国に多くいる。だが、そういう者は将校や下士官になる事が多い。
他に選択肢が大量にあるのに自ら進んで兵卒になりたいと考える者は極めて少ないのだ。
703: ホワイトベアー :2022/05/17(火) 22:33:48 HOST:sp1-72-1-245.msc.spmode.ne.jp
「防衛省が内定したと言う無人兵器は何処の日本のものなんですか? 一応歩兵の変わりというから孤立漆黒日米枢軸のどこかでしょうが・・・」
「ああ、ウチの自動人形が採用されたとのことだ。IOPの連中が大はしゃぎしていたよ。」
「・・・こう言っては参謀長や少将に申し訳ありませんが、よく採用されましたね。」
日米枢軸日本製の自動人形が採用されたことに
第4部部長が心底以外そうな顔を浮かべた。それもそうだろう。日米枢軸製の自動人形は採用するまでの制限が大きすぎる。
「それは仕方がないだろう。何せ公募に応じたのは漆黒のバイオロイドと日米枢軸の自動人形だけ、そしてバイオロイドは列島日本内でも倫理的にどうなのかが国内を二分して絶賛議論中だ。こうなれば日米枢軸日米の自動人形しか選択肢がない」
そうなのだ。防衛省が実施した公募には超大国日本は無関心、孤立日本は技術流出への拒否感から参加せず、結果として日米枢軸日本の自動人形と漆黒のバイオロイドの二択しか選択肢が存在しなかった。
そして、バイオロイドは生きた素材を使用していると言う点が国内世論に刺さってしまい、動物愛護がウンタラカンタラ倫理的にウンタラカンタラと列島日本内で問題となってしまっていた。
占領軍が使用する分には文句は言えないが、自衛隊の装備として検討されるなら存分に意見を言える。そう考えた人間が比較的多くいたのだ。また、日本連合自身もこの程度の事でいちいち言論の締付けを行う事はなく、結果として極まったフェミしか騒いでいない日米枢軸日本の自動人形が残った。
それだけではない。自律思考能力の高さや人間の指揮がない状態でも高い水準を誇る作戦遂行能力、さらに日米枢軸日本は、最初から列島日本内に子会社を作り、列島日本単独で自動人形の製造を行える体制を構築する事を約束していたことが日本国政府と防衛省が日米枢軸製の自動人形を選定した大きな要因でもあった。
何せゲートはいつ閉じるかわからない。完全に列島日本国内で製造できなければ正面兵装として採用する事など不可能だ。
逆に、各企業はいつ閉じるかわからない、閉じた場合は全ての投資が全てパアになるような場所に投資をするのは難しい。
そんな状態で、IOPと日米枢軸は投資を選択したのだ。
もっとも、これは決断力云々ではなく、日米枢軸はゲートが閉じて投資がパアになってもそれを補填できるだけのものを既に得ているからこそとれる大胆さであるが。
「これで労働力不足にアンドロイドを使用すると言う手段が使えなくなったわけだ。民政局の連中は大忙しだろうな」
「ああ、自動人形ら自立思考機械の労働力を前提にしていた経済再建案が見直しを迫られれたおかげで、左藤(大本営民政局局長)は苦虫を噛み潰しながら仕事の山に埋もれていてたよ。ザマーみろだ」
参謀部第4部部長に第2部部長がケラケラ笑いながら答える。
日米枢軸日本の自動人形の完全な生産設 備と技術の対価として、列島日本は自動人形等を労働力として使用する事に大幅な制限をかけられることになった。
これにより列島日本の政治的、経済的な再建を使命とし、保守的な人間で構成された民政局の立てていた経済政策は大幅な修整を余儀なくされ、今現在、民政局は大量の業務と書類による飽和攻撃を処理せざるを得なくなっていた。
これれ諜報活動や検閲を担当し、列島日本世界各国の文書の翻訳、技術情報の収集などを任務とし、民政局とは権限争いや政治的なスタンスの違いからしばしば対立し、暗闘を繰り広げている彼ら参謀部第2部の人間からしたら愉快痛快な出来事であり、胸がすくような思いを抱くには十分なことであった。
- 我が身に降りかかられるのは勘弁願いたいものであるが。
「ともかく、これで自衛隊の増強は一気に進むわけだ。そうなれば我々の仕事も一気に減るだろう。」
事実上ではあるが、自衛隊の主力無人兵器の選定が終了した以上は自衛隊の増強は急速に進んでいくだろう。
そして、自衛隊の規模が拡大すれば彼等日本連合軍進駐軍の規模も縮小されるだろう。
何せ、各世界の世論では少しずつだが、列島日本からの撤兵を求める声が大きくなり始めている。
それも当然だろう。ゲートは突然発生した摩訶不思議な自然現象である。その発生理由やメカニズムが不明である以上、今度はいつ閉じるかわかったものではない。
そんな状態である以上、文字通り別の世界に自分の親兄弟子供恋人をいつまでも留まらせ続ける事に賛成的な人間は少ないだろう。
理由はともかく、管理する部隊の規模が減れば彼等の仕事量も減っていく。そうなればカフェイン飲料と栄養剤、硬い仮眠室のベットを友とするこの生活からもおさらばできる。
参謀長達は自分たちの仕事が減っていく未来を夢見る事で、今現在の書類の山に立ち向かう気力を回復させていくのであった。
704: ホワイトベアー :2022/05/17(火) 22:34:47 HOST:sp1-72-1-245.msc.spmode.ne.jp
以上になります。
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最終更新:2022年05月31日 00:34