747: ホワイトベアー :2022/05/18(水) 14:27:29 HOST:sp1-72-1-245.msc.spmode.ne.jp
日本連合ネタ
プロモーションビデオと再起の意思
光の抑えられた薄暗い会議室内には陸海空自衛隊の将校服を纏う高級将校達や背広を纏う事務方の官僚、胸に金色の金属製11弁菊花模様を付けた背広姿の列島日本の国会議員、日米枢軸日本の財閥の1つであり、同国の国防の基盤的企業の1つであるIOPの役員達が集まっていた。
彼らのいる部屋にはその場の空気に相応しくない軽快なBGMと歌声が響き、目線の先には部屋に備えられている大型モニターにはアイドルの様に容姿の整った少女達が映されていた。
しかし、彼女たちがただのアイドルではないだろう事は彼女らが纏う帝国陸軍の戦闘服を始めとしたその服装や映像を見れば一目でわかる。
大型モニターでは、高校生ほどの少女達が、森林で、山岳地帯で、密林で、平原で、街道で、塹壕で、草原で、海岸で、市街地で、凍土で 砂漠で、亜熱帯で、湿地帯で、海上で 空中で、泥中で、湿原で、室内で、滑走路で、格納庫で、歩兵として、整備兵として、操縦士として、後方支援要員として、指揮官として活躍するシーンが如何にも若者が好みそうなアニソンだかJ-POPだかわからないリズムに合わせて、次々と映し出されていく。それはまるで動画投稿サイトに投稿されている軍事系のMADにも見える。
最後には日米枢軸日本の本土の基地だろう。まるで観閲式に望むかのように大量の車両と少女達が映し出され、少女達が旭日旗に向かい一斉に敬礼を行う。そして、風になびく旭日旗と少女達が重なり合い、映像は終わった。
「わが社の自動人形はいかがでしょうか?自衛隊の皆さま」
映像の終了から時間をおかずにそれまで消えていた明かりがともり、就活生の様な様相の女性が、周囲を見回しながら観客に問いかける。
その言葉に会議室は再び静寂が支配する。
どう答えたものか、何を答えるのが正解か、そんな事を考えながら軍服や背広を着た男性達は口を紡いでしまう。
何せ、目の前の一着フルセットで諭吉さん1人と行く幾枚かのコインで買える程度の安物スーツを纏い、如何にも就活活動真っ最中と言わんばかりの風情の若い女性は、その風情や容姿とは違い、
実際には就活中の大学生よりも2回り半ほど歳を重ね、IOPと略されて呼ばれる、今後の日本の国防において大きな影響力を有するようになる“かもしれない”大企業の重役を担う大物である。
「貴社の高い技術を知れる素晴らしい“映像作品”でした。」
にこやかに、褒め称えるように、されど口外に〘本当に兵器として使えるのか?〙と言う言葉を持たせ、歳に応じた経験を得たものだけが纏えるダンディな雰囲気を纏う背広姿の中年男性が挙手をして発言した。
背広の胸には金属製11弁菊花模様のバッチが輝いている。
「これは手厳しいですね 」
女性は余裕を浮かべた笑顔を崩さずに受け流す。
この程度で感情を揺さぶられるほど、彼女もウブではない。何より、彼女は自分たちの商品に絶対的な自信を有していた。
「ですが、ご安心ください。我社の製品は我々の世界の各地でプロモーションビデオ以上のパフォーマンスを発揮しております。貴国に進駐している我が国の軍でも同様です」
すでに陸上自衛隊との間で行われた実戦形式での演習や
アメリカはヤキマトレーニングセンターで開かれた日本連合軍、自衛隊、アメリカ軍が参加した三軍合同演習ライジングサンダー2020においてIOP製の自動人形は対抗戦闘演習で陸上自衛隊とアメリカ軍の部隊を一方的に叩き潰す事で十分にその能力を示している。
そんなことは外交防衛委員会に属する彼だって理解している。だから、先程のはほんの嫌味にすぎない。
「他に何かご意見がある方は・・・」
幾つかの質問が飛び交うが、それにも丁寧に余裕と優越感を隠さずに彼女は返していく。
「さて、もう質問がある方はいませんね。では、時間も限られておりますし、単刀直入に申し上げさせていただきましょう」
スーツの女は、彼女の祖国を含めた幾つもの日本帝国の占領下に置かれている国の国防関係者達を見遣る。
「我々は貴国が望むなら、自動人形の生産に必要な全ての製造施設を貴国に設置し、それら貴国に設置した施設に必要な技術を全て移転する用意があります。」
彼女が言った言葉は強力な衝撃となって、参加者たちの頭を襲う。
「また、これは将来的な話ですが、貴国企業に一部の技術を提供する用意もございます。」
一瞬だが、頭の中が真っ白になる。
この、大学生のような老獪な女性はいったい何を言った?
日本国側の参加者たちがその言葉を完全に理解するまでに、数秒間の時間を必要とした。
748: ホワイトベアー :2022/05/18(水) 14:28:20 HOST:sp1-72-1-245.msc.spmode.ne.jp
「そ、それは本当でしょうか!?」
一番早く再起動できた防衛省の外局である防衛装備庁の背広組、いわゆる防衛官僚の一人が驚愕を含んだように聞き返してしまう。
それは日本国側の参加者たち全員の意見を代弁するものでもあった。
その声で他の人間も我に戻る。
彼女が、いやIOPが彼等に提示した商品は彼等にとってはほぼ満点に近いものである。何せ、彼女の言葉が事実なら自衛隊が懸念していた最大の問題を解消できる。
「はい。流石に貴国の企業に重要箇所のライセンス生産を許すことはできませんが、これならと帝国議会や国防総省からの承諾も受けております。
後は貴国がそれに伴う価格の上昇を許容でき、我々の“要望”を叶えてくれるのなら、我々は貴国に生産施設の建設を始められます」
やはり、それの受諾が必須であるか・・・
まあ、彼の国の立場からしたら当然と言えば当然ではあるが。
しかし。“要望”か・・・“要求”の誤りだろうに。
映像終了後に真っ先にジャブを放った政治家は、内心そう皮肉らずにはいられなかった。
それでも、彼女のいや、彼女の裏にいる超大国が我々に示した商品は史実日本にとって大きすぎる。
何せ、彼らの世界の技術より遥か先にある技術、それを大量に有した生産拠点を日本に設置してくれると言うのだ。
それだけで大きな雇用が生まれるだろうし、何より、ゲートが閉じたとしても日本は自動人形の運用能力を維持したままでいられる。
すでに多くの政治家や防衛官僚は、あとにも幾つかの世界線の日本のプレゼンテーションが残っていると言うのに、IOPの、日米枢軸日本の言葉に靡きかけていた。
「御社の誠意はありがたいことですが・・・、その、要望の一部である条約の加盟には国会の審議を待たなければならず、その、短時間では難しいと言わざるを得ないので・・・」
先程声を上げた背広姿の防衛官僚がしどろもどろに答える。
彼らの要望の1つである自動人形条約への加盟は、我々はともかく産業界が大反発する事は間違いない。
国民から圧倒的な支持率を受けている妖怪の孫なら問題ないだろうが、やはり避けれるなら避けたいのだろう
「それでしたら、本来なら条約の承認と正式な加盟を待たなければならないのですが、今回は特例として条約への署名を持って加盟したと見做す用意があるとのことです」
無論、貴国の議会で条約が承認されることを全面的に信頼してですが。
眼の前の若い女性の革を被った女性は後ろで満開の花が咲き誇っているかのような笑顔で答えてくる。
その言葉は、言葉尻だけ、表面上だけ見れば譲歩に見えなくもない。しかし、その中身は、防衛官僚が口外に求めた『アンドロイド条約に加盟せずに自動人形を運用したい』と言う要求に、一切の譲歩も妥協もしていない。
それどころか、彼女の言葉の裏には
『ここまで気を回してやっているんだからわかるよな? 』
という副次音声すら聞こえてくる。
一見すれば私達を気遣っているように見えるが、その実態は、ただ単にこちらの要望にNOを突きつけて退路の1つを断っただけだ。
もっとも、自動人形等を労働力として使えなくなるので産業界は煩いかもしれないが、孤立・漆黒が完全な技術供与や完全な状態の生産設備の我が国への設置に難色を示している以上、退路を断つまでもなく選択肢などあってないようなものであるが。
その後もしばらくの間会談は続く、しかし、終始彼女の余裕が崩れることはなく、会議は終始IOPのペースで進められていった。
749: ホワイトベアー :2022/05/18(水) 14:29:58 HOST:sp1-72-1-245.msc.spmode.ne.jp
(このままでは不味いな)
会議が終了し、IOPの役員達に見送られIOP本社を出た視察団のトップはそう思わずにはいられなかった。
日本連合からの度重なる軍拡要求や国内の労働市場、それにゲートが閉じた後の事を考えればIOPの自動人形の導入はもはや避けられないだろう。
しかし、それは国防力の基盤を並列世界の日本とは言え他国に握られる事を意味している。
すなわち、このままでは日本は国防において完全に主権を喪うことになるのだ
(しかし、この流れを断つのは不可能だろう。)
何せ他に手段がない。人間を主体とした状態で、日本連合の要求に沿った大軍を整備・維持するのは経済的にも予算的にも不可能に近い。いや、できなくはないが、経済的な負担が大きすぎるだろう。
「それでも、このままでは我が国は本当の意味で属国になってしまう。それだけは避けなければ・・・」
自覚はなかったが、口から言葉が溢れ出てしまった言葉は、誰にも聞かれることはなく風に流されていった。
幸いにして自動人形に対抗できる手段に心当たりはある。それを有する彼の国は、自分が今いるこの国とともに祖国への内政干渉に積極的であるからまず間違いなく乗るだろう。
何せ、現状を1番面白くないと思っているのは間違いなく彼の国だ。
(後進達のためにも、明日を生きる子供達のためにも自立した軍備の保有は必要不可欠だ。そのためにも他国から供与されたAI兵器ではなく、人間による戦闘部隊とそのノウハウを維持しなければならない)
その気持ちを有しているのは彼だけではない。自衛隊はもちろん政治家にも少なくない同志たちがいる。
帰国しだい、あの鉄血主義者達との交渉を進めなければならないだろう。
今は無理でも、未来に再び祖国が、本当の意味で自立した先進国として再び立ち上がれる可能性を少しでも残しておくために。
750: ホワイトベアー :2022/05/18(水) 14:30:33 HOST:sp1-72-1-245.msc.spmode.ne.jp
以上になります。
wikiへの転載はOKです。
最終更新:2022年05月31日 00:35