544: ホワイトベアー :2022/05/14(土) 14:10:57 HOST:sp49-98-140-6.msd.spmode.ne.jp
日米枢軸ルート 小ネタ 現代編
《転換点の舞台裏》
東京都 横田空軍基地
格納庫や野外駐機されている戦闘機の周りでは整備兵達が戦闘機に燃料を注入したり、機関砲への給弾、ミサイルの配置などを大急ぎで進めて、操縦席に座るパイロット達は怒りと焦りが入り交じった表情でそれが終わるのを今か今かと待っている。
滑走路や基地施設の周囲では帝国空軍が基地防衛用に配備している中距離防空ミサイルや短・近距離防空ミサイルやその付属レーダー車両などが配置を進めており、
帝都東京、世界一堅固な護りの中にある世界最大クラスの大都市圏の空の護りの中枢である関東最大の空軍基地、横田空軍基地では激しいざわめきと混乱が基地全土を覆っていた。
それは、戦闘機の出撃準備を急ピッチで推し進める整備兵達やそれが終わるのを今か今かと待ちわびているパイロット達などの末端から中央に近づくに連れて強くなってくる。
「馬鹿か! 今は敵勢力の素性なんてどうでもいい! どこの誰だろとここまで帝国を虚仮にした奴らを皆殺しにするのは決定事項だ! それよりも陛下と首相の安否の確認と一刻も早く戦闘機を空に上げろと言っているんだ!」
基地の地下に置かれている横田空軍基地中央作戦司令部にいる基地司令兼第1戦闘航空師団師団長 板橋正純空軍中将はG2の参謀が持ってくた報告書を流し読みしたあとにその書類を叩きつけて怒鳴りつける。
中央作戦司令部に置かれている巨大なモニターの一部では、テレビ旭日や讀買テレビ、帝都テレビなど帝国の主要なテレビ・メディアが番組を中断して放送している臨時ニュースが映されております、そこでは信じられない状況が映像として流れていた。
帝国の政治中枢である首相官邸や帝国の民主主義の象徴たる帝国議会があった場所は瓦礫の山ができている。
帝国の軍事の象徴だった国防総省は崩壊した。
ーーそして帝国の象徴たる尊きお方が住まう宮城、江戸城の象徴であった天守閣があった場所には、もは人工物など存在せず、ただ黒煙が上がるのみであった。
原因は何か? 火事? 地震? いやそうではない。
そんな甘っちょろいモノでない事を、臨時ニュースが繰り返し流している〘二度に渡り四発の巨大旅客機が超低空飛行で江戸城天守閣に突っ込む〙瞬間の映像が証明していた。
それだけではない。帝国議会や首相官邸、世界貿易センタービルなどにも同様に旅客機による体当たりを喰らったとの事だ。
何らかの組織が、明確な意図と意思を持って帝都に攻撃を加えている事は明白であった。
世界最強最大の帝国空軍は、今、自国の首都の制空権を喪失し、陛下のおわす帝都に対して神武天皇以来初めて、すなわち皇国始まって以来以来初めての国外勢力による攻撃を許してしまっている。
その事実に、帝都の空の護りを任されている板橋の脳は血管が破裂せんほどの怒りが渦巻いていた。
参謀の一人が、今だに解決の目処の立っていない状況に対してか、板橋に対してか、それとも今後に浴びることになるであろう批判に対してかはわからないが怯えた表情を浮かべながら報告を上げる。
「げ、現在、急ぎ出撃準備を進めております。し、しかし、何分予算の関係でアラート待機はもちろん即座に飛べる体制にある戦闘機は当基地はもちろん都内に存在しておらず・・・
現在、中部SOCにをかけておりますが、そちらは応答がありません。もっとも都内に近い安土型である白鷺の無人戦闘機群が到着まではどんなに早く見積もっても15分はかかるとの事です」
「厚木は?あそこには3個空母航空団が駐留しているだろう。そこから直ぐに直掩機を上げることは不可能なのか!?」
「すでに確認を取りました。向こうも現在急ピッチで準備を進めているそうですが、今すぐに飛べる機体はないそうです」
板橋のいる場所から、ドンッ!! と言う打撃音が聞こえてくる。
後ろを振り返らなくてもわかる。板橋が思いっきりデスクに拳を振り下ろしたのだ。
545: ホワイトベアー :2022/05/14(土) 14:13:58 HOST:sp49-98-140-6.msd.spmode.ne.jp
「中部SOCは無視して百里基地へのダイレクトラインを開け! 急げ!! クソッ、大蔵省の無能共が!! やつらが予算を削るからこうなるんだ。」
関東は世界最大の軍事力を有する日本の政治・経済の中核であり、東京の周囲には極めて強大な防衛線が何重にも渡り整備されている。
それが故に冷戦の終結による軍備削減では、真っ先に防衛線最深部に位置している東京の実働部隊の予算が真先に削られることになり、今の彼等の行動を大きく制限していた。
「閣下! 警視庁に旅客機が衝突したとの報告が!」
オペレーターである自動人形からの報告に、板橋は再び板橋が思いっきりデスクに拳を振り下ろした。
「これで何機目だ! 関東上空を飛ぶ旅客機の強制着陸はどうなっている! 一刻も早く地上に降ろさせろ!!」
「そ、それが現在、各空港の管制塔が必死に着陸させておりますが、国土交通省本庁が崩壊した事で内部部局であった航空局も合わせて通信不通になり・・・」
「まさか・・・?! まだ、強制着陸命令が発令されていないのかッ!?」
「・・・そのとおりです」
帝都が史上初の大規模な攻撃下にあるのに、今だに帝都の空は“平時”の法の下にあるかもしれいないと言う異常事態に、驚愕の表情を浮かべてしまう。
「バカな・・・、いや、国土交通省と航空管制局が全滅しても九段の関東航空管制局があるはずだ。連中は何をやっている!?」
「不明です・・・ですが、ここまで何ら動きがないことから、おそらくすでに避難を実施しているものかと・・・」
彼らには今だに知らされていないが、宮城への攻撃より少し前に《関東航空管制局に爆弾を仕掛けた》といった内容の電話が東京都警にかかってきており、関東航空管制局からは職員が全て退去させられていた。
これにより関東航空管制局すらも機能不全をおこしていたのだ。
「なら、今すぐ最寄りの民間空港に着陸するように全ての航空機に命令を出せ!。指示に従わない場合は一切の安全を保証しないともだ!!」
板橋の指示を受けてオペレーター達も動き出す。
法律上は今だに“平時”である。
横田の防空空域内ならともかく、それ以外の民間空域を飛行する民間機に独断で指示を出す権限は彼に存在しない。まして、これを撃墜する事が許されるわけがない。
完全な越権行為、如何なる理由であれ、文民統制を是とする日本軍においては事態が解決したとしても決して褒められることではなく、罰せられる行為である。
しかし、参謀達もオペレーターもそのことを指摘するものはいない。彼ら彼女らも、それが今できる最善であることがわかっているから。
越権行為を止めなかったとして参謀たちは良くても出世コースから外れ、オペレーターとして働く自動人形(ショウジョ)達に至っては、不良品として人格データを初期化され、最悪の場合は解体される危険性があるにも関わらず。
彼らだけではない。
関東で唯一スクランブル機を用意していた百里基地では、基地司令の独断で帝都に向けて戦闘機を上げていた。
各空港の管制塔では“横田からの指示が下る前”から航空機を地上に降ろしていた。
崩壊した各省庁や首相官邸、世界貿易センタービルでは警察と軍、戦闘警備隊、消防に務める人間と自動人形(ショウジョ)達が危険を承知で共同して救助活動を開始していた。
何もかもが後手後手であった。
世界最大の超大国、世界の憲兵たる日本が、どこの誰だからもわからないような弱小組織に良いように弄ばれていてしまっていた。
それでも、少しでも状況を好転させるために、東京で働き、平和な生活を営む人々たちを護り、日本に再び日常を取り戻す為に。
軍人は、警察官は、消防官は、日本人達は、自動人形(ショウジョ)達は危険を、リスクを承知で取れる最善を尽くしていく。
しかし、彼らの決意を、その行動を、嘲笑うかのように“敵”はさらなる攻撃を加えてくる。
546: ホワイトベアー :2022/05/14(土) 14:16:21 HOST:sp49-98-140-6.msd.spmode.ne.jp
“それ”を受け取った1人の自動人形の手が止まり、真青にした顔を板橋に向けて口を開く。
その声は何処までも震えている。
「し、司令! 関西方面軍司令部から帝国軍全軍に向けて緊急入電」
「関西だと!? まさか、連中は関西でも航空機を突っ込ませているのか!」
「い、いえ。航空機による自爆テロではありません! 核です!」
中央作戦司令室内の時間が一瞬止まる。
冷静な判断が求められる板橋ですら、脳内を空白が埋め尽くし、オペレーターの少女(自動人形)が何を言ったのかを理解するまでゆうに数秒かかってしまう。
「大阪証券取引所にて核爆発が確認されました!」
軋みを上げながら、何かが崩れ落ちる音が聞こえる気がした。
“それ”は疲れが生み出した気のせいだったのかもしれない。あるいはストレスが生み出した幻聴だったのかもしれない。
だが、板橋には、“それ”が、冷戦終結から続いてきた平和だった〘時代〙が悲鳴を上げながら崩れ落ちていく音に思えて仕方なかった。
西暦2007年9月11日、多くの者にとって突然におきた正体不明の勢力による東京とワシントンD.Cへのハイジャック機による同時多発テロ。それは日米の政府機能を大きく揺さぶり、日米の対応能力を、意思決定能力を短時間ながら喪失させた。
日米の政府機能が大きく混乱し、日米国民の、世界の人々の目が東京とワシントンD.Cに向いているその時、人類史上初の核兵器を用いた攻撃として、国家によらない武装勢力が実施した人類史上最悪のテロ攻撃として記録されるそれはおこった。
世界4大金融センターのうち2つを占める大阪証券取引所とニューヨーク証券取引所においてもほぼ同時に核爆発が確認されのだ。
そして、核爆発に合わせる形でネットを通して全世界に犯行声明が発せられる。
それは、明確なる世界秩序への宣戦布告であった。
あるいは、冷戦終結から四半世紀ほど続いてきた平和だった“戦後世界”の終わりを告げるラッパであった。
日米同時多発テロ、あるいは9.11同時多発テロ。
僅か十数分間の間で発生した一連の無差別攻撃により、平和な世界は儚く崩れ、世界は狂気と狂信、恐怖と憎悪、疑心暗鬼と強迫観念に満ちた戦乱の時代に時計の針を巻き戻していく。
547: ホワイトベアー :2022/05/14(土) 14:19:50 HOST:sp49-98-140-6.msd.spmode.ne.jp
以上、9.11同時多発テロにおいての横田基地の状況をお送りしました。
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最終更新:2022年05月31日 00:44