76: ホワイトベアー :2022/05/24(火) 23:41:48 HOST:157-14-234-250.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
日米枢軸ルート 東京事変 3
大日本帝国 首都 東京 

東京都内にある東京都戦闘警備隊の基地。その広場では非常呼集を受け招集された大勢の戦闘警備隊の兵士達が完全武装した状態で整列して命令を待っていた。その姿はパートタイマーであるとは思えない規律あるものである。

「知事および統合幕僚総監から治安維持出動命令が下った。総員、市内各地に展開し、警察と協力して警護と治安維持にあたれ!乗車」

『ハッ!!』

戦闘警備隊に属する兵士達は高機動多用途装輪車や6×6輪駆動の大型トラックであるM477やその派生車である58式装輪式対地雷装甲車、76式装輪装甲車、76式装輪歩兵戦闘車等に乗り込み、車列を組んで次々と東京都内に向けて出撃していく。車列の後方には威圧用の戦車を乗せた特大型運搬車が続いていく

また、別の基地からは同じく完全武装の兵士を乗せた多用途ヘリコプターや輸送ヘリコプター、輸送ティルトローター機などが出撃していき、

「繰り返します。現在、東京都内全域において外出禁止令が発令されております。都民の皆さまは現在おります施設内において待機を願います。」

世界最大最強の列強である大日本帝国の首都であり、世界最大の金融センターでもある帝都東京。本来なら世界で最も堅固な護りの中にあるはずのその都市では上記のような防災用行政放送が各地で機械的に流され、9.11日米同時多発テロ以来初の非常事態宣言が発令され、東京都内の基地からは同様に次々と戦闘態勢をとった部隊が吐き出されていく。


「なんだとぉ!?」

東京都警察本部で暴動の対処に尽力していた都警本部長は突然の知らせに驚愕を隠せなかった。

「はっ、先ほど東京都庁より緊急事態宣言と東京都戦闘警備隊に治安維持出動が発令され、以降の都内の治安維持は都戦闘警備隊が主導して回復を図るとの発表がありました・
また、都内全域に展開中の警察は都戦闘警備隊の指揮下に入るようにとの命令が発せられました。」

「馬鹿な!こちらには一切話が来ていないぞ!」

「どうやら知事と戦警の統幕内の話し合いで決定したらしく・・・」

「知事にはあれほど早まった真似はしないでくださいとお話したのに!」

本部長は思いっきり机に拳を叩き下ろす。
東京都庁から発せられた東京都戦闘警備隊の治安維持出動命令は東京都警内に大きな衝撃と怒りをもたらしていた。
ただでさえ大小大量の不安定要素が都内全域にばらまかれ、いつ最悪な事態に入るかわからない極めて不安定な状況を収拾しようと内務省や警視庁と協力して全力を尽くしているのに、ここにきて知事が戦闘警備隊という特大の不安定要素を投下してきたのだ。
警察に取ってみれば明確なる都行政府からの後ろ弾であり、失策である。

「それで、状況は!?」

「す、既に都戦闘警備隊ぼ各駐屯地から完全武装の部隊が出撃を確認しております。
一応、全部隊に配備された弾薬は低殺傷弾薬であるスポンジ弾頭と言うことですが、流石に重装備用のスポンジ弾は存在せず、7.62mm以上の口径の銃器や火砲には実弾が配備されたとのことです。」

戦闘警備隊は初期の頃から隊員に非常呼集をかけており、5個師団とそれを支える後方支援部隊が出動の時が来ないことを祈って即応体制を取っていた。
それが今、解き放たれてしまったのだ。
金がかかる非殺傷兵器を、出動する部隊全員に行き渡らせるほどに大量に配備できているのは金がある東京都だからこその幸運であるが、そもそも戦争用兵器である重機関銃や歩兵戦闘車など向けの機関砲弾に非殺傷弾頭なんぞ用意されているわけがない。

「また、一部では展開した戦車と機械化歩兵部隊を主力とした機甲部隊による市街地戦の準備を進めているとの情報もあります・・・。実際に第101機甲師団を初めとした都戦闘警備隊の機甲部隊も動いております」

本部長の顔から血の気が引いていく。相手は暴徒とはいえ自国民を相手に、この帝都で機甲部隊が市街地戦を繰り広げる?
いくら何でもそれは許容できる範囲を超えている。
一体どれだけの被害が出るのか知事や行政府はわかっているのか?!

この時点で都行政府および戦闘警備隊と都警察の認識には大きな隔離が存在していた。
火事で例えるのならば警察は未だに事態を局所的な小火騒動と考え、時間はかかるが機動部隊による通常の消火活動で十分対応可能だと考えていた。
対して、東京都行政府はすでにコントロール不可能な大火事だと考えていた。既にここまで事態が悪化してしまった以上、解決手段はある程度の被害を許容しての爆風消火以外の対処法は存在しないと考えていたのだ。

どちらが正しいかは今は最早どうでもいい話である。なぜなら決定権を持つ都行政府は事態を収拾する手段として爆風消火を選択し、戦闘警備隊は出動した。出動してしまった。
すでに賽が振られた以上、如何なる内容であっても結果が出るだけ、後に戻る事は不可能なのだから。

77: ホワイトベアー :2022/05/24(火) 23:44:15 HOST:157-14-234-250.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
東京都内の全駅には完全に武装した兵士達が装甲車や戦車とともに布陣し、都内各地では完全武装の兵士が銃弾を装填した小銃や分隊支援火器を構えながら分隊ごとに全方位を警戒しながら通りを歩き、警邏を行っている
いつもなら仕事から帰るために乗用車で溢れる道路には外出禁止令の影響で乗用車は一切見られずにただ警察車両と戦闘警備隊の車両だけがそこを走っていた。

当然、デモ行為や暴動行為の鎮圧にも戦闘警備隊は投入される。
最も、事態が事態で全てを対処するには戦力が足りないため、非暴力的なデモは小規模な部隊を送って警察と協力して暴動に発展しないように監視させつつ、後日逮捕の為に映像を取る程度であったが。

ただし、 23区などで行われている暴動にまで発展したデモに対してはこんな生温い対応はされない。

『公道を占拠し、届け出のないデモ行為ならび暴動を行う君達に再度警告する。諸君らの行動は道路交通法ならび地方自治体法、治安維持法に反している。ただちに武装を解除し、膝をついて両手を上げなさい。繰り返す、ただちに武装を解除し、膝をついて両手を上げなさい。これは最後通告である。諸君らの行動はテロ行為であり、以後は実力をもって鎮圧する』

六本木通りでは永田町を目指す暴徒たちに対して戦闘警備隊は完全武装の兵士と装甲車、さらには戦車とヘリコプターでデモ参加者らを威圧しながら最後の警告を実施する。

「私たちはこの命尽きようとも最後まで国家権力の横暴に抵抗する!」

「そうだ!そうだ!」

「権力の犬め!引っ込め!」

しかし、大日本帝国がテロ行為に対して如何に苛烈な対処を取ったかを歴史でしか知らず、ある意味自分らに酔っている学生らが大多数である。なかにはこれに応じたほうがいいと考える参加者もいたものの、そうした人間も集団心理に飲み込まれてしまいどうしようもなかった。
暴動を続ける彼らは戦闘警備隊や警察、そしてその後ろにある既存の秩序を罵倒し、火炎瓶や投石で戦闘警備隊の最後通告に応えてしまう。そして、火炎瓶は戦闘警備隊隊員に直撃、隊員の身体はすぐに炎に包まれる。

「消火急げ!」

「衛生兵!、衛生兵!」

「タンカ急げ」

炎に包まれた隊員に急いで消火剤が吹きかけされ、タンカに乗せられ後方に送られる。

『攻撃を確認。鎮圧開始!!』

「撃て!撃て!」

攻撃を受けた事で交戦規定にある射撃要件を満たした戦闘警備隊側は、指揮官の命令の下に戦闘警備隊隊員達が小銃の引き金を引き、彼らの持つ55式自動小銃から7.62×51mm弾が暴徒に向かって放たれる。
小銃だけではない。戦車や歩兵戦闘車の主砲や機関砲こそ今だに沈黙しているが、歩兵部隊の分隊支援火器や各種装甲戦闘車両の銃座、同軸機関銃、はてにはヘリコプターのドアガンすらも激しく火を吹いていた。

戦闘警備隊の銃器から放たれた銃弾は愚かにも挑んできた暴徒達に情け容赦なく降り注ぐ。
すでにすでにボディアーマーなどの防弾装備の性能の飛躍的な向上から正規軍同士の争いにはいささか威力の不足が目立ってきた7.62×51mm弾、さらに減装薬弾の上で弾頭は低殺傷兵器に分類されるスポンジ弾であるが、碌な防弾装備はもちろん、防御装備も持たない暴徒にとっては圧倒的な脅威以外の何物でもない。

78: ホワイトベアー :2022/05/24(火) 23:50:51 HOST:157-14-234-250.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
スポンジ弾そのものに殺傷性は存在しない。しかし、戦闘警備隊の突然の行動は彼らにとっては予想だに出来なかった事であり、火炎瓶を投げようとしていた人間に優先的に火箭が集中した結果、最悪の光景が生まれる。
火炎瓶がその場で炎上し、瓶を投げようとしていた人間はもちろん、運悪くその人物の近くにいた人間を焼いていいったのだ。

「きゃぁぁぁ」

一瞬の空白の後、場を悲鳴が占領した。その悲鳴を挙げているのは先ほどまで声高に抵抗を叫んでいた暴徒たちであった。

所詮は放水や催涙弾による攻撃だろうとタカを括っていた暴徒たちにとって警告射撃なしでの水平実弾射撃は掃天の霹靂であり、銃声と人間の焼ける匂いに彼らの大半は恐怖により後方に逃げ惑うしかなかった。
無論、なかには手持ちの火炎瓶や投石で反撃しようとする愚かな人間もいるにはいたが、そんな原始的手段で完全武装の兵士を相手にできるはずもない。
そうした人間は真っ先に狙われ銃火の中に沈んでいった。
服に火がつき、焼かれている人間達を助けるために消火に動こうにも、戦闘警備隊の激しい銃火の嵐により近づくことは出来ない。

「攻撃姿勢を見せた敵を真っ先に叩け!これ以上の攻撃を許すな!!」

「第5分隊前進!敵を圧迫しろ!」

「第3小隊火力を集中! 反撃のすきを与えるな! 撃ちまくれ!」

戦闘慣れした自動人形で構成されている帝国陸軍が投入されれば話は別であっただろう。
しかし、パートタイマーを中心としているため戦場なれしておらず、対武装勢力を想定した市街地戦や対テロ戦闘を想定した訓練こそ受けていたが暴動鎮圧の訓練には乏しい戦闘警備隊隊員達は、暴徒の攻撃に対して今までの訓練どおりに、帝国歩兵の本領であるファイアー&ムーブメントに従い過剰とも言える火力による制圧射撃と前進を実施、逃げ惑う暴徒たちにも容赦なく攻撃を浴びせていった。

「撃ち方やめ! 機動警備隊全隊突入! 全員検挙!」

暴徒側の態勢が崩れ、完全に逃走状態に陥ると戦闘警備隊は射撃を辞め、それに合わせて命令の下にライオットシールドを構えた警察機動隊が突入を開始。次々と暴徒たちを拘束していく。

戦闘警備隊による暴動鎮圧の流れは外出禁止令を受けてビルなどの建物の中にいた多くの一般人がライブ放送しており、日本はもちろん世界各地に広がっていった。そして、左翼系の人間や自称進歩的知識人、デモに参加していた人間、そして切欠となった東大占領事件をおこし、未だ籠城中の学生らの大半はこうした東京都戦闘警備隊の行動を虐殺行為だとして声高に非難した。

しかし、少々後のことになるが、彼らの主張とは別に日本の世論はこうした映像をもって、東京都戦闘警備隊の行いをある程度ではあるが認めてしまうことになる。
デモ隊が最後まで非暴力を貫けば、抵抗するにしても投石程度で止めておけば、あるいは日本の世論は戦闘警備隊の行動を非難し、暴徒達の味方についたかもしれない。
だが、ただでさえ彼らの主張に反対的な人間が世論の多数派であり、暴動による経済的混乱で大多数の人々が苛立っているところに火炎瓶という明確な凶器を持って先に攻撃を実施したのが暴徒側だという映像が出回ってしまったのだ。

世界を震撼させた史上最初の核兵器によるテロ攻撃である日米同時多発テロからいまだに20年と経っていない。その被害国である日本で如何なる理由であれ、テロ行為が世論から容認されることなどあるはずもなかった。

暴力はより圧倒的な暴力を前に無力である。
そして、世間から見捨てられ、世界でも有数の規模と兵器を有する軍、暴力組織である東京都戦闘警備隊が本格的に動いた今、数でしか勝らない暴徒たちにできる事は現実で逃げるか、現実から逃げるかの二択しかなかった。

時は寅2つ時、まるで、暴動と言うカオスの終焉を知らせるかのように、もしくは新たなる混乱の誕生を知らせるかのように、夜は明け、日が登ろうとしていた。

79: ホワイトベアー :2022/05/24(火) 23:51:48 HOST:157-14-234-250.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
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最終更新:2022年05月31日 01:03