568: ホワイトベアー :2022/05/20(金) 14:14:32 HOST:sp1-72-1-245.msc.spmode.ne.jp
日本大陸×ワールドウィッチーズネタ 第15話

西暦1938年1月1日
大日本帝国 漢城航空基地 中央作戦戦闘指揮所

「ヤマ集団、第6警戒線に接触。移動ルートに変更なし」

「クィーンより通達。第1次攻撃部隊、ポイント08を通過。スケジュールは予定通り」

「キングより通達。第2次攻撃部隊、第1次攻撃部隊の後ろに付きます。」

「扶桑皇国第1航空軍オンステージ。航空魔導部隊展開完了。」

大日本帝国でも最大クラスの指揮統制能力を有した基地にしてのEACO、東アジア協力機構軍総司令部も兼ねている漢城航空基地。その地下に設置された戦闘指揮所では多数の機材が奏でる機械音とともに続々と情報が届けられ、作戦指揮所内ではオペレーターたちの抑揚を抑えた報告が飛び交っていた。
正面の大型モニターに移される戦域マップには、友軍の航空機を示すマークが画面を埋め尽くさんばかりに映されている。
作戦参加機の半数近くが対地攻撃機であり、今だに空に上がっていないのにこの規模だ。

EACO軍を構成する扶桑皇国軍と中華帝国軍はは最低限の守備部隊を除いて今回に作戦に持てる限り全ての部隊を動員していた。
そのして、その背後にて構える太平洋の雄たる大日本帝国も、作戦が大失敗に終わったとしてもリカバリー可能な保険を残し、その他の全航空戦力を投じていた。
まさに、人類史上最大の大航空部隊である。

「総司令、全部隊作戦準備完了しました」

漢城地下の戦闘指揮所から、今作戦の指揮を取る総司令官東条英機大将に参謀長が決戦の準備が整った事を伝えた。

「よろしい。全部隊に通達、作戦を開始せよ」

「ハッ、作戦に参加する全部隊に通達、作戦行動を開始せよ!」

東条は内心に抱く自身の不安や恐怖心を感じさせない静かで落ち着いた声色で参謀長に作戦の開始を命令する。
総司令官・東条大将の静かな声色の命令を受け、参謀長が司令部要員に命じた。

その命令は電波を通して同時に各級部隊に通達された。 

『第一波攻撃隊、攻撃を開始しました!』

オペレーターの報告とほぼ同時に同時に、シベリアの空では日本本土から先遣していた27式超音速戦略爆撃機の群れが41センチ対ネウロイ用対空榴散弾を弾頭として搭載した空対空ロケット弾が1機あたり4発づつ撃ち込んでいく。その数は合計848発、人類史上最大の航空戦、その開戦の号砲として相応しいものであった。

569: ホワイトベアー :2022/05/20(金) 14:15:03 HOST:sp1-72-1-245.msc.spmode.ne.jp
西暦1938年1月1日
扶桑皇国 バイカル航空基地
扶桑皇国陸軍 飛行第64戦隊 飛行第1中隊 第3小隊

新年を祝う初日の出を浴びながら、多くの魔女たちがこの基地に整備された3つのコンクリート舗装された滑走路から飛び立ち編隊を組んで西を目指して飛び去っていく。
開戦と同時にネウロイの奇襲で大ダメージを負ったバイカル航空基地であるが、4ヶ月も経った今ではすでにその機能を完全に取り戻している。

空を見上げれば幾百もの魔女達がシベリアの上空を編隊を組んで西を目指して飛行していた。
本来なら基地に配属されている航空ウィッチの幾十幾もの数の航空ウィッチが空に上がったというのに、今だに地上には発進許可を待つウィッチ達が、溢れるのではないかと思うほどに待機している。

(総力戦だな)

扶桑皇国陸軍のエースウィッチの1人である若松雪美少尉は、12.7mm重機関銃を握る手袋の内側が汗で滲んでいるのがわかる。

先の会戦から4ヶ月弱程に渡り続いた平穏は、日本人達が発見し、オラーシャの欧州方面を焼き尽くしたと言う超巨大ネウロイを中心とした大規模なネウロイ集団が東進を開始したという報告により打ち砕かれた。

報告によるとネウロイの数は推定可能限界を超えているらしい。一体どれだけのネウロイがいるのか・・・。
こちらもなりふり構わない戦力集中で5桁の通常航空機と4桁の航空ウィッチを集めているらしいし、私達が接敵するまでに日本軍が徹底的な漸減を施すとのことだが、それでも不安を拭い去ることは難しい。

何より、今回はエコンダ会戦の最後に出てきた大型ネウロイが最低でも1ダースはいる。
コアと呼ばれる物体を破壊しなければ自己修復を続けるとのことだ。
そして、最大目標、EACO軍コード“ヤマ”は破壊光線すらも攻撃手段として有していると言う情報が、日本軍から映像付きで送られてきた。
今度こそ死ぬかもしれない。恐怖が冷や汗となって手袋や服の内側を湿らせる。

「タイチョー、緊張してるん すか?」

隣からウィングマンであるレッドイーグル10、前川 音寧 飛行兵曹長が茶化したように声をかけてくる。 
普段は敢えておちゃらけた態度を取っているが、部隊でも最年長で、下士官の長たる曹長なだけはある。こういうところにはよく気づいてくれる。
そして、気を回してくれるのだ。

「ああ、何せ文字通り世界最大の空戦だからな。緊張するさ」

心の中の恐怖心を落ち着かせて、前川曹長以外の二人の部下に不安を感じさせないように落ち着いた声で言葉を発する。

「大丈夫っすよ。何せ私達無敵の加藤魔女戦闘隊に、日本の戦争狼、中国の第5魔女大隊もいるっすよ。勝てるに決まっていますよ」

「そうだな。・・・そして、その中でももっとも活躍するのは私達だ」  

そうだ。何を怯える必要がある。私達は、私達こそが扶桑皇国陸軍最強の加藤魔女戦闘隊だ。
そう思うと自然と恐怖は小さくなっていた。

『管制塔よりレッドイーグル3。待たせたな。誘導路侵入を許可する。1番滑走路に迎えレッドイーグル10、レッドイーグル11、レッドイーグル12もあとに続け』

耳につけている魔導インコムから野太い男性の声が聞こえてくる。
ついに私達も空に上がる順番が来たようだ。
隊長である私を戦闘にアヒルの行進のように一列になり誘導路を進み滑走路への入口を目指す。

『レッドイーグル3、レッドイーグル10、1番滑走路への侵入を許可する。』

指示に従いスタート地点に移動する。

『レッドイーグル3、離陸を許可する。続いてレッドイーグル10も離陸を許可する』

管制塔からの許可と同時に魔導エンジンをフルスロットルに上げ、滑走路上で一気に速度を出して空に上がる。

『高度制限解除、グッドラック』

後ろを確認すると前川曹長はすでに空に上がり、二人の部下たちは滑走路で配置についている。

数分と立たずに全員が空に上がり、私達もこの大演目の役者の1人として舞台に登ったのだ。

私達は中隊と合流して戦隊の一員として編隊を組んでヤマに向かい死地へ向かうことになった。

素直に驚くべきか、恐ろしいというべきかと悩ましいが、
日本軍は日本人達は超高硬度偵察機や早期警戒管制機、果には大気を飛び越え、宇宙空間に配置した偵察機器である偵察衛星を使用して常時把握し続けていた。
幸か不幸かは別として私達が空振る心配はしなくていいのだ。

飛行第64戦隊は他のウィッチ部隊や戦闘機部隊らとともに早期警戒管制機の統制に従って西を目指して飛行していく。
その進路の先には観測史上最大のネウロイが、そいつが登場するまでは最大であった戦略爆撃機型を引き連れて東アジアを目指して東進していた。

570: ホワイトベアー :2022/05/20(金) 14:16:10 HOST:sp1-72-1-245.msc.spmode.ne.jp
EACO軍が立てた作戦は、日本帝国海軍の基本ドクトリンであった漸減邀撃作戦の航空戦版とも言える作戦であった。
潜水艦や水雷戦隊の役割を日本空軍と日本海軍航空部隊の対ネウロイ用ロケット弾を搭載した戦略爆撃機や中距離空対空ミサイル満載の戦闘機部隊に、戦艦を中心とした主力艦隊をウィッチ部隊に見立てたらわかりやすい。

即ち、ウィッチ部隊と当たる前に通常兵力を用いて徹底的にコアを有さない中小型ネウロイの数を減らし、少しでも数的な優位を高めようとした作戦である。
ゆえに、彼女らウィッチ部隊がぶつかるネウロイの規模は限界まで日本空軍と日本海軍航空部隊によって徹底的に漸減された数である。そのはずであるのだが・・・

『クソッ何て数なのよ! 本当に日帝の連中は仕事をしたんでしょうね!!』

魔導インカムから少しおそらく、中国訛のある日本語が聞こえてくる。おそらくEACO軍連合ウィッチ部隊に所属しているウィッチであろう。全く持って同感だ。何が徹底した漸減を行うだ。日本空軍の航空機乗りは禄に仕事もできないのか!

中隊の支援のもとに群れる中小型ネウロイを撃破していき、戦略爆撃型から放たれる光線で中華帝国空軍の戦闘機が撃破されるのを後目に、光線を避け、シールドでいなしながらその巨体に接近、12.7ミリ魔導弾を目の前の戦略爆撃型ネウロイの、削りまくってようやく見つけた、そのコアに叩き込み撃破しながら松雪はそう毒づいた。

『ナイスっす隊長』

僚機である前川を初め小隊の部下たちから簡潔ながら心の籠もった称賛の声が届けられたので、これに返す。

ヤマを護る敵の防衛網、その一角を崩したものの、戦闘は依然として激戦の様相を見せていた。何せ、当初予想されていたネウロイの数よりも中小型ネウロイの数が多い。圧倒的にだ。
それだけではない。戦闘機型ネウロイの主力は旧来の低速での格闘戦を重視した機体ではなく、さらなる新型、明らかに一撃離脱を重視した新型の戦闘機型ネウロイであり、その存在と数から当初の予想よりかも戦闘は遥かに激しさを増していた。
こちらも動かせる最大規模のウィッチ部隊と戦闘機部隊を投入しているからこそ未だに戦況は五分五分を維持できているが・・・


戦略爆撃機型ネウロイを撃破した後でも油断は一切できない。
群がってくる中小型ネウロイの攻撃を小隊と共同してシールドで受け流し、お返しとして12.7mm弾を叩き込んでいくらかのネウロイを撃破し、次の獲物に向かおうとしていた。
その時、魔導インコムから近くにはいない女性の声が鼓膜に届く。

『レッドーイーグルリーダーよりレッドイーグル03、わが国初のコア持ち撃破おめでとうございます。本来なら休憩を上げたいのですがそうもいきません。状況はどうですか?』

飛行第64戦隊の戦闘部隊長であるレッドイーグル01から無線が入る。
若干の疲労も感じさせない声だ。
実際には私達とともに戦略爆撃機型ネウロイとその周囲の中小型ネウロイへの攻撃に当たり、戦闘だけではなく中隊と直轄小隊の指揮を担っていたはずだが、それを一切感じさせない。

正直、これに応える余裕があるかと言われれば無いと応えたいところだが、返答をしなければならない事に変わりはない。

弾がもったいないが、群がる小型種に12.7mm弾を叩き込むことで一掃して余裕を生み出す。
通信を返しながら、小隊を指揮して、ネウロイとの戦闘にあたる。無茶なマルチタスクであるが、使い魔の助けもあって困難ではあるが不可能ではない。

571: ホワイトベアー :2022/05/20(金) 14:19:32 HOST:sp1-72-1-245.msc.spmode.ne.jp
「レッドイーグル03よりレッドイーグルリーダー。戦略爆撃機級はと撃墜しました。こちらは全員無傷です。
不幸な事に魔力、残弾、魔導燃料には未だに余裕が有り余っています! 」

無線を返し終わるのと同時に、動作で自身の軸回転で90度旋回させ、正対、僚機である前川曹長の後ろに回り込んでいた戦闘機型に12.7ミリ弾の雨をお見舞いする。

(クソ、素直にわが国のキ43履いてくればビンゴを理由に帰投できたのに!)

戦隊長の能力の高さが今ほど恨めしいときはないだろう。
どうやって手に入れたが分からないが、戦隊長が手に入れ、今現在私たちが使用している日本製の36式戦闘脚は本国仕様、すなわちエーテル・魔力転換術式による圧倒的な魔力量の補助システムと空間拡張システムによるどでかいペイロードを誇る海の向こう側のチキン共が生みだした最強最高の戦闘脚である。
しかも、精神向上系の術式を使用している事で私たちは戦闘脚を履いている間は疲れ知らずであるし、何より集中力が落ちる事がない。

おかげで、他の扶桑皇国軍や中華帝国軍のウィッチ部隊がローテーションで戦闘を行っている中にあって、彼女らは継続して戦闘を続けていた。

『愚痴が言えるだけの余裕があるならまだマシですわね! クィーンが目標の排除はまだかとせかしてくるのですが、いけそうですか?』

クィーン、今作戦の戦闘指揮を担うバイカル航空基地地下にある戦闘指揮所のコールサインである。
超大型ネウロイ、EACO軍名称ヤマを撃破する大まかさな作戦は上記したとおりであるが、その最終フェイズ、どうやってヤマを撃破するかに関して日本軍が立てた作戦はある意味で単純なものであった。
即ち、ヤマを守るべく周囲に配されている戦略爆撃機型ネウロイを殲滅後に、ネウロイのコアを発見できる魔眼持ちウィッチを投入。コアの位置を特定し、ウィッチ隊でこれを破壊。不可能な場合は、犠牲覚悟で一部のウィッチがレーザーカーマーでその位置を指定。後方で待機する戦略爆撃機群の対艦ミサイルで吹き飛ばすと言う作戦である。

魔眼持ちがいるなら、早期に飛ばして戦略爆撃機型ネウロイの撃破を手伝えと思わなくもないが、ウィッチ大国でもある“あの”日本ですら、そこまでの精度を誇る魔眼使いは貴重であり、リスクを最小限まで抑えたいということらしい。

「日本軍と中国軍のウィッチ部隊主力は何やっているんですか!? 本来なら彼女らも目標の討伐に当たる予定だったはずでしょ!?」

『・・・雛鳥(キ43装備の扶桑軍ウィッチ部隊の蔑称)のお守りで手一杯とのことです』

今すぐ軍上層部と政府へあらん限りの罵声を浴びせたい感情を抑えきった自分を、誰か褒めてほしい。

日本とその支援指導のもとで近代的な航空ウィッチ部隊を創設した中華帝国は一撃離脱を重視し、扶桑皇国ウィッチ部隊では低速域での格闘戦を重視している。一応、戦争初期の戦果から一撃離脱にドクトリンを移そうとする声も徐々に出ているが、未だにその声は大勢となりえていない。

572: ホワイトベアー :2022/05/20(金) 14:23:00 HOST:sp1-72-1-245.msc.spmode.ne.jp
そのせいで、戦争初期の戦闘において、ネウロイ型の低速域での格闘戦重視型ネウロイが日本の一撃離脱型戦闘脚を纏うウィッチ部隊に体よくあしらわれた光景を再現するかのように、一撃離脱型に低速域での格闘戦を重視する扶桑皇国陸軍の航空ウィッチが対応できていない。
そして、同盟国軍を見捨てられないがゆえに、苦難にある扶桑皇国ウィッチ部隊のカバーに中華帝国や日本のウィッチ部隊が動いている事もあって、作戦通りの展開が出来ていないのだ。

簡単に言ってしまえば、精強を謳う扶桑皇国ウィッチ部隊が見事に足を引っ張っている。

一応、結果として中小型ネウロイの誘引して、戦略爆撃機型ネウロイの討伐に役立っていると言えなくもないが、庇いながらの戦闘を強いられている日中のウィッチ部隊でも被害が出始めている。
付け焼き刃な同盟の悪いところが出てしまっていた。

(クソ、だから同盟内ではドクトリンと装備特性を合わせておけと現場から何度も上申していたのに・・・上層部のクソッたれめ!)

ドロドロとした気持ちが松雪の内心であふれ出てはいるものの、だてに扶桑陸軍最強のウィッチ部隊、その第一中隊の小隊長を担っているわけではない。
10代の少女とは思えない理性の力で感情を完全に押し留め、その内心を一切周りには悟らせなかった。
文句は部下たちと生き残って、基地に帰ってからぶちまければいい、今はどうやって任務を達成し、部下と自分が生き残るかを考えるべきなのだから。

「先程報告した通り、第3小隊は帰りたいですが戦闘継続に一切の問題なし。仰せとあらば飢えた鷹の如くネウロイに食らいついていけます!」

『第2小隊も同じく。問題ありません。行けます!』

『よろしいですわ。なら、レッドイーグル隊はイエローアロー隊の援護にまわります。総員、フォロー・ミー』

ネウロイの戦力の想定間違い、新型の登場、いくつもの不確定により、今だに戦いの行方は五里霧中。それでも、鷹の名を関する少女達は次なる獲物に食らいつくために、魔女と戦闘機と怪異が支配する空を羽ばたいていく。

573: ホワイトベアー :2022/05/20(金) 14:25:12 HOST:sp1-72-1-245.msc.spmode.ne.jp
以上になりますwikiへの転載はOKです。

ネウロイ「質を落としてでも、漸減されようとも相手を飽和させられる数を用意してゴリ押しすれば大抵は勝てるってばっちゃが言っていた。
主力の中小型種はコア持ち持たず、レーザー発射型でもないから製造コストは格安なネウロイ。ただし、それだけだと不安だから、コストもかかる大型ネウロイ1ダース、そして天文学的なコストのヤマを1個用意した!
例え漸減されようとも数的な優位を維持することなど容易ですわ。
さあ、数と質の暴力の前に屈するがいい」


EACO「徹底して漸減したのに、それでも日扶中4桁のウィッチと扶中の5桁近い戦闘機(日本の通常航空戦力は除く)動員してようやく互角って嘘だろジョータロー・・・」

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最終更新:2022年06月03日 23:42