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大陸×ワルパンネタ 第16話 ルビコン川
西暦1938年1月1日 シベリア上空
幾千もの怪異と、その脅威から人々を護る為に開発された人類が生み出した機械仕掛けの魔法の箒である戦闘脚を纏うウィッチ達、機械仕掛けの翼たる戦闘機が飛び交う空に彼女たちはいた。
「ホワイトラビット1、ガンズ!」
その言葉とともに、少女の手に持つ最新の20mm重機関銃から放たれた幾発かの魔導徹甲弾が、護衛の双発戦闘機型ネウロイや複数の戦闘機型ネウロイもろとも戦略爆撃型ネウロイのコアを破壊して、上空に光の破片が舞い散る。
『大型怪異撃破!流石です隊長!。』
「褒めるな褒めるな」
扶桑皇国軍ウィッチ部隊でも数少ない“活躍”できている部隊である扶桑皇国陸軍飛行第69戦隊飛行第1中隊、通称ホワイトラビット隊の隊長であるホワイトラビット1は部下からの称賛の声に意気揚々と答える。
圧倒的に相性の悪い、いわゆる軽戦であるキ43で護衛の戦闘機型ネウロイを撃破し、さらに大型の戦略爆撃機型ネウロイまで撃破したのだ。
彼女らの腕の良さがわかるだろう
「スカイアイ01、目標は達成した。次の目標は?」
『流石だ。ホワイトラビット1。次の目標は3時方向のネウロイ群だ。現在、中華帝国軍第118航空師団が対処しているが手が足りない。至急援護せよ。』
「了解したわ。皆、聞いたわね!次の仕事に移るわよ!」
『了解!』
口々に賛同の声が聞こえてくる。
狩りを楽しむ白兎達の次なる獲物は、彼女たちにもっとも近い位置に展開していた戦闘機部隊と交戦中の大型ネウロイを中心とするネウロイ群、その数、およそ600であった。
しかし、それはあくまでも総数に過ぎない。戦闘機型の大半は戦闘機部隊が対応する
実際にホワイトラビット隊が対処するのは大型ネウロイとその護衛、合わせて30程度だ。ホワイトラビット隊は1個中隊12名、およそ3倍近い数だが、その程度の戦力差では兎たちを止めるには足りない。
「ホワイトラビット1より前方の戦闘機部隊支援するわ!」
『こちらCNAF(中華帝国空軍)第133戦闘飛行隊だ。支援感謝する。俺たちだけでは攻撃力が不足していたんだ』
部隊の1つを指揮している指揮官から返答があった。それに続き、いくつかの他の部隊からも次々と中国訛の日本語で感謝の言葉とコールサインが届けられてくる。
『さて、どう調理しますか、隊長?』
「奇をてらわずにセオリー通り行くわ。全機、高度を上げなさい」
その言葉に従い、兎たちは限界まで高度を上げていく。そして、目標の編隊の上空に達する。
「ホワイトラビット隊各機、続けぇ!」
『『『『『了解』』』』』
狩れとのボスの指示を合図に白兎達は空に登る真冬の太陽を背にするように上空から一気に攻撃をかける。
それは本来ならキ43に合わない一撃離脱による攻撃体勢だ。
無論、ネウロイも迎撃を仕掛けてくる。しかし、真上からの奇襲攻撃に対応できるのは戦略爆撃機型のネウロイのみであり、意気揚々と飛び込んでくる白兎達を止めるには火箭が足りない。
彼女らは時に踊るようにそれらを避け、時に最大に強化されたシールドを張ることで受け流し、逆に手に持つ20ミリ機関砲をネウロイ達に叩き込んでいく。兎たちは戦略爆撃機型ネウロイとその他のネウロイの間に楔を打ち込むかのようにネウロイの群れに飛び込んで、中型、小型問わずに片っ端からネウロイを撃破していった。
『ホワイトラビット1、上空!』
その声とともに後方から幾発もの機関砲弾が飛び、後ろ斜め上からホワイトラビット1を攻撃しようとしていた戦闘機ネウロイが破壊される。
「助かったわ、ホワイトラビット2」
『隊長の後ろをまもるのは私の役目ですので。御礼は隊長が隠しているロマーニャ製の大人のブドウジュースでいいですよ』
そう軽口を言いながらホワイトラビット2は、戦略爆撃機型ネウロイに攻撃を集中するホワイトラビット1を狙う護衛のネウロイに20ミリ弾を叩き込んでいる。
彼女だけではないホワイトラビット隊の各ウィッチ達は、ウィングを組んで一人が大型ネウロイに攻撃を集中させ、もう一人がその護衛としてネウロイの攻撃をいなし、邪魔な中小型のネウロイを撃破していく。
彼女達にはネウロイのコアの位置がわかる魔眼は備わってないし、今、本国で開発中というコアの位置を探知する魔導探知術式も有していない。
故にネウロイの身体全体魔導弾を叩き込んで、コアを発見するしかない。
『コアを発見しました!左翼と胴体の根本その真ん中です。』
ホワイトラビット12からの報告が魔導インコムを通して届いていくる。
その位置を見ると確かに真っ赤な宝石のような物体、ネウロイのコアが外部に露出していた。
数秒後、いくつも光の破片が降り注ぎ、戦略爆撃機型ネウロイはその姿を消すことになる。
872: ホワイトベアー :2022/05/22(日) 20:01:18 HOST:sp1-75-1-116.msc.spmode.ne.jp
西暦1938年1月1日
大日本帝国 漢城航空基地 中央作戦戦闘指揮所
『B11(Bは戦略爆撃機型ネウロイに当てられたコード)撃破確認!』
『スカイアイ(早期警戒管制機のコールサイン)08よりM01の進路は 依然変わらずとのことです』
『B03、B04撃破しました』
『通常戦闘機戦力82%まで低下。航空魔導部隊94%まで戦力低下!』
『爆撃機部隊は依然として規定ポイントを周回待機中。』
オペレーター達は前線、後方問わず各所から集められる情報を的確に読み上げていき、情報将校は次々に舞い込む戦況報告を整理するために情報を整理していく。
「ぎりぎりだな」
総司令部に務める参謀の1人が、そしたら光景や情報、それにモニターやリアルタイムで変わりゆく戦況図を見ながらそう呟く。
そうギリギリだ
シベリア上空で繰り広げられる戦闘は今だに五分五分を維持していた。
ネウロイの数の多さからこちらの漸減による数的な優位を作り出すという目的こそ粉砕され、現場では数的に不利な 状態でネウロイとの戦闘に突入していたものの、それでも通常戦闘機、航空ウィッチともにネウロイ側の主力たる中小型ネウロイよりかも遥かに高い質によって、既に戦略爆撃機型ネウロイの半数を撃破するなど何とか戦えている。
それでも被害は急速に拡大していた。
真っ先に削れていくのは、航空魔導部隊の援護のためにともに戦っている扶桑皇国と中華帝国の通常戦闘機である。
「戦況の推移と被害状況はどうなっている」
今作戦の司令官であり、EACO軍総司令官を務める東条英機陸軍大将は居並ぶ参謀達を見まわし問う。
「はっ、第一次、第二次漸減攻撃部隊の攻撃を突破し、超大型怪異1、大型怪異12、中小型怪異約1万2000が防衛線に到来。現在、EACO軍第1航空総軍および第2航空総軍、第3航空総軍、第4航空総軍、第1航空魔導総軍が迎撃にあたっております」
G2、総司令部情報部、部長がこれに答えた。
航空総軍は3個航空軍、9個航空師団で構成されているEACO加盟国空軍における最大の戦略単位であり、1個航空総軍単体で1000機近い航空機を運用している。航空魔導総軍も同様の編成であり、すなわち1500名近い航空ウィッチと4000機近い戦闘機がこの迎撃にあたっていると言うことだ。
「現在までに大型怪異の半数と中小型ネウロイの5割を撃破。我が方の被害は第1航空魔導総軍が3%、第1航空総軍55%、第2航空総軍25%、第3航空総軍30%、第4航空総軍15%です。」
「既に3割近い戦闘機部隊がリタイアか・・・補充はどうなっている?」
「現在までに予備戦力として待機していた扶桑皇国陸軍第12飛行師団および第36飛行師団、中華帝国空軍第21、26、31航空師団の5個航空師団を増援として急派し、戦線の維持にあたっております。
また、予備機を使用して出撃可能なパイロットを出撃させることで戦力の補充を測っておりますが・・・。しかし、それでも焼け石に水というのが正直なところです」
総司令官たる東条の問いに、G2部長ではなく、G3(作戦部)部長が努めて平静な口調で報告する。
EACO軍は、日本の工業力と扶中の人的資源を活かして直接投入戦力のみならず予備戦力や予備機も大量に用意していた。撃墜された分は即座に予備機が飛び、故障で機体が使えなくなっていてもパイロットが無事なら予備機に載せ換え出撃させる。そういった体制を構築していた。しかし、それでも被害を受けたにはおよそ11個航空師団分、予備戦力として新たに投入されたのは5個航空師団。被害に対して予備戦力の動員が足りないのは子供でもわかる。
戦力が低下するスピードを低下させるのが手一杯と言う状態である。
873: ホワイトベアー :2022/05/22(日) 20:01:50 HOST:sp1-75-1-116.msc.spmode.ne.jp
「・・・司令、既に目標の半数は撃破しております。ここは作戦案を変更して特務航空魔導部隊を戦線に投入するべきかと具申します」
G3部長の提案は一考にたる提案である。
特務航空魔導部隊は、ネウロイのコアを発見できる魔眼使いとその護衛部隊、そしてコア破壊を目的とした1個航空魔導大隊で編成された今作戦の切り札である。
ネウロイのコアの位置を正確に把握できる程の精度を有する魔眼を備えた魔導兵は日本でもほんの数名しかいない貴重な戦力だ。
その価値は1個航空師団よりかも遥かに高い。
ダメージレース的にはネウロイの方が不利であり、このまま作戦計画通りに動いても戦いは人類が勝てるだろう。
しかし、その対価としてEACO軍は大損害を受ける事になる。
今ですら戦闘機部隊は無視できない被害を受けているのに、これ以上の被害を負うことになれば、扶桑皇国と中国は被害の回復までには相当数の時間をかける必要があるだろう。
その間の負担を背負うのは間違いなく、世界最大の空軍力と工業力を保持し続けている祖国日本である。
何より、戦闘機部隊の損害の拡大は=で航空魔導部隊の負担増加を意味している。
通常戦闘機部隊の損害増大によりただでさえ足手まといを抱えている航空ウィッチ部隊の損害も徐々にだが増えてきていた。
リスクを覚悟でヤマの撃破に動くべきか・・・
既にウィッチ部隊と戦闘機部隊の献身によってヤマの防空を担っている戦略爆撃機型ネウロイの半数は撃破されている。それも選択肢の1つとしては十分にありだ。
考えている間にも2体の戦略爆撃機型ネウロイを示すマーカーと多数の中小型ネウロイ、そしていくつもの友軍機を示すマーカーが消滅していく。
悩んでいられる時間は対して存在しないだろう。
「戦略爆撃機群の配置はどうなっている?」
「既に全隊が待機空域において周回待機中。各部隊、何時でも攻撃を開始させる事ができます。」
「よろしい。では、些か早いが作戦を第3フェイズに移行させよう。特務中隊およびウォーウルフ隊に仕事をさせるとしよう。彼女らに出撃命令を出せ。」
予想よりも多い被害を受けて、東条は予定よりも早く作戦を次のフェイズに移行させる事を決断した。彼の判断が吉と出るか凶と出るか、それは神ならざる身にはわからない。
賽が振られる。
874: ホワイトベアー :2022/05/22(日) 20:02:21 HOST:sp1-75-1-116.msc.spmode.ne.jp
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最終更新:2022年06月03日 23:43