907: ホワイトベアー :2022/06/01(水) 21:25:54 HOST:sp110-163-216-120.msb.spmode.ne.jp
大陸×ワルパンネタ 第18話 下準備 
西暦1938年1月1日 シベリア上空
中華帝国空軍第5航空魔導大隊

シベリア上空を舞台にした激戦は今だに終わらず、空では今だに幾千もの細長い雲が何重もの円を描き、幾千もの戦闘機と魔女達、そして怪異達は互いにワルツを踊り続けていた。

そんな空の一角では4発の爆撃機を思わせる大型怪異が、外角に存在するいくつもの赤いパネルからしきりにレーザーを放っていた。その射線が向かう先にはその大型怪異を狙う何十人もの少女達がいる。

少女達は怪異が放ったレーザーを時に回避し、時にシールドで受け流しながら裁いていき、集中砲火を浴びないように回避機動を取りながら、手に持つ大型の機関銃、日本軍が前世紀から運用している超ベストセラー機関銃である73式重機関銃の引き金を引いて、大型怪異に12.7mm弾を叩き込んでいく。

その周りではヤマから放たれる極大レーザーを回避しながら、戦闘機とウィッチの混成部隊が戦闘機型怪異との激しい空戦を行い、大型怪異を攻撃する少女達の邪魔をさせないように動いていた。

「暴風1よりバオフェン各員、スカイアイ7から戦争狼達が飛び立ったと言う報告があった。各員、さっさとノルマを達成するわよ!」

『『『『『了解』』』』』

中華帝国の最精鋭部隊である中華帝国空軍第5航空魔導大隊、その大隊長兼第1中隊隊長を務める少女が、12.7mm機関銃から大量の銃弾を大型怪異に浴びせながら勝ち気な口調で発破をかけると、35名の魔導インカムから元気のいい声が帰ってくる。

彼女たちは今、1個大隊36名と言う圧倒的な数で戦略爆撃機型の大型怪異をタコ殴りにしていた。
攻撃を受ける大型怪異は自身の近くを飛び回る鬱陶しいハエを叩き落とそうと激しい光線の雨を魔女達達に浴びせて来るが、既に何体もの大型怪異を狩った少女たちはこれを悠々と慣れた対応で捌き、火箭を大型怪異に浴びせて核を探していく。

既に12体いた戦略爆撃型大型怪異の数は4体までに減っていた。そして、各大型怪異を撃破する為に、彼女達中華帝国空軍第5航空魔導大隊と扶桑陸軍飛行第64戦隊、同飛行第69戦隊、日本空軍第118航空魔導大隊がそれぞれ攻撃を仕掛けていた。

つまり、彼女たちの仕事はここで大型怪異を撃破することである。

『しっかし、無駄に大きいアルな』

『わざとらしい口調は辞めなさいよ暴風4』

『えー、こうした方が日本人受けいいんだよ』

『なに、また日本人達から色々せびっているの?』

『日本人は懐が豊かですぐ絆されるから、愛嬌を取れば色々くれるのよ』

まるで学生のような他愛も無い会話を続けながら、少女達は引き金を引いて核を探していく。
東アジア戦役を開戦から戦い抜いてきた今の彼女達にとって、一瞬でも気を抜けば死ぬ戦場と、学校からの帰路は同じ程度の場所でしかない。

ちなみに、日本人達の名誉の為に補足しておくと別にハニートラップにかかった訳ではなく、ロリコンが多い訳でもない。
ただ、仕方ないとはわかってはいても自分達の娘や歳の離れた妹程の少女が、自分達とともに命をかけて戦っている事に思うところがある日本軍の将兵は多く、そのためにウィッチには何かと甘い人間が多いのだ。
ついでに、日本はお菓子や漫画などの嗜好品も大量に持ち込んでおり、自国の将兵には安価な価格でPXで販売している。
なので、ウィッチがお菓子ちょうだいといえば洋菓子か和菓子かは別だが、だいたいの将兵は甘味はくれる。
場合によっては整備兵とかへの賄賂用のお酒も手に入れる事ができる。
この辺は日本の『子供はウィッチであっても護られるべきである』という価値観と、日本以外の『ウィッチが戦うのは当然である』という価値観の違いゆえにおこるカルチャーギャップであった。

「あんたら、馬鹿みたいにおしゃべりをする暇があるなら手と足を動かしなさい!」

シールドでレーザーを弾きながら雑談をしている少女達に暴風1は小言を飛ばす。
本当ならこの程度の雑談、小言を言うほどでもないが管制機からわざとらしい咳が入ったのでアリバイとして一応注意を促しておいた。
咳は雑談をしていた少女達にも聞こえているので、大人しく『了解』という回答が帰ってくる。

(日帝の連中はお茶目で小粋な女子トークというものを理解するべきね)

内心でそう思っていたが、日本と中国の力関係もある。作戦に関しての意見具申ならまだしも、こういった雑談等において佐官である彼女が素直に日本人への侮辱と捉えかねない発言を無視するのは些か問題であった。

908: ホワイトベアー :2022/06/01(水) 21:26:57 HOST:sp110-163-216-120.msb.spmode.ne.jp

『しかし、なかなか核が見つかりませんなぁ』

「こればっかりはしょうがないわ。魔眼持ちがいれば話は別だけど、そんな贅沢な人材はこの大隊にはいないしね」

話を変えようとしてか、暴風2が別の話題を出して来たのでこれに乗っかった。

大型怪異に存在している核、コアは怪異の巨体の何処かには存在しているものの、その場所は個体によって大きく違っている。
そのため、ただ他の個体で確認された場所を攻撃すれば良いと言う話では済まず、いちいちネウロイの硬い漆黒の外殻を引っ剥がして探さなければならない。
一応、魔眼と呼ばれる特殊な固有魔法を有しているウィッチの中には怪異の核の位置を把握できる人間もいるとは聞いてはいるが、そんな人間は黄金より貴重であり、中華帝国最精鋭部隊であるこの第5航空魔導大隊であっても配属されていない。

『暴風12、弾倉交換及び銃身交換!』

『了解よ。第3小隊、援護するわよ』

視界の箸では暴風12が熱で真赤になった銃身の交換を開始する。この間、彼女はほぼ無防備になるため、小隊のメンバー達が護衛に移る。
私達の装備している73式重機関銃は理論上数千発の弾薬を発射できるが、それでも大型怪異との戦いは大隊から幾人かの銃身交換者を出すことが多い。

(全く、厄介な進化を遂げてくれたものね)

攻撃を継続しながらそう考える。何せ、先も上げたように隠されたコアを探すには大型怪異の外殻を片っ端から引っ剥がさなければならず、その間、攻撃と防御、回避を同時並行に行わなければならない。それには大量の弾薬と魔力を消費する。

幸いなのは、ブラックボックス化されているとは言え日本が提供してくれている拡張空間収納系統(システム)により、本来なら速度や挙動制限がかかる為に持ちきれないだけの量の弾薬と予備兵装を携帯できているので弾薬を気にせずに戦える事、
同じくブラックボックス化されており、さらに転換比率が本国仕様より落とされてはいるものの、エーテル・魔力転換システムが魔導エンジンに搭載されていることで魔力の消費も今までよりもずっと少ないことだ。
弾薬と魔力がなければ彼女達は幼い少女にすぎない。この2つがなければ、いくら練度の高い彼女達を持ってしても、連戦での大型怪異とその護衛との戦いは厳しいものになっていただろう。

『隊長の力で魔眼持ちをこの大隊に連れてくることはできないのですかね』

「無茶を言うんじゃないわよ。魔眼持ちがどれだけ貴重かわかっているでしょ。ただでさえ、私達についてこられるだけの練度を持ったウィッチは少ないっていうのに」

『是非もないですか。日帝ではすでにコア持ち対策の兵器や術式の開発に取り組んでいると言う話もありますし、今後に期待するしかないですかな』

核持ちの怪異の登場は世界最先端技術を独占し、科学の頂点を気取る日本帝国の通常軍備に大きなダメージを与えた。日本は科学技術を上げ過ぎていたせいで魔力保有者の数に対してウィッチの数が少ない。
無論、それでも母数が多いので世界でも最大規模の魔導兵を抱えているが、それでも通常軍備を国防の主体にしている日本軍への衝撃は大きかったようだ。
そのため、日本ではその最先端技術を使ってコア持ちネウロイに対抗できる通常兵器と次世代の戦闘脚の開発に力を入れているという話は、東アジアでは有名な話であった。
中には、ネウロイのコアを利用した超兵器を作っているなんて言う眉唾な噂すら存在しているほどに。

そんな事を話していると、放たれた魔導徹甲炸裂弾により弾け飛んだ黒い外殻の奥から、脈動するかのように輝いている真紅の立方体が目に映る。
どうやらようやくあたりを引けたようだ。

909: ホワイトベアー :2022/06/01(水) 21:31:19 HOST:sp110-163-216-120.msb.spmode.ne.jp

弱点を晒すことになったネウロイは、弱点を護るために攻撃可能な空域にレーザーの雨を浴びせてくる。今までの攻撃よりも遥かに切迫感を感じさせるものであり、何としても修復までの時間を稼いで見せるという気迫をマジマジと感じさせた。

「暴風1、核を確認。ガンズ!」

ここでシールドを展開すると攻撃が困難になるので、回避機動を取りながら銃を構えて声を出す。
そして、言い終わるのと同時にコアに向かって引き金を引く。
ダダダダダ、機関銃から発射音とともに5発の弾丸が放たれたのを確認して、即座にシールドを展開しながらレーザーの攻撃範囲外に離脱を図る。
銃身から放たれた5発の弾丸は吸い込まれるように核へと向かっていき、核の周辺に着弾。うち一発が核に命中してこれを粉砕する。

中心となる核を破壊された大型怪異は端から急速に分解されていきます、ガラスのようにキラキラと輝いている細かい破片となって空中から消え去っていった。

『大型ネウロイの撃破を確認した。グッキル暴風1。』

後方からこの空域の管制を担当している早期警戒管制機、コールサイン スカイアイ7の管制官からお褒めの声が発せられた。

『流石ですね暴風1』

管制官だけではない。暴風2の言葉を皮切りに大隊の部下たちからの短いながらも称賛の声が、魔導インカムを通して伝わってくる。

しかし、大型怪異を潰したと言っても未だに戦闘が終わったわけではない。未だに大型怪異の護衛であった小型の怪異がうじゃうじゃとおり、後方から来ている日本狼達のためにもこれらは片付けて置かなければならないのだ。
第5航空魔導大隊の少女達は、各々がこれまで支援してくれていた他の部隊と協力して小型怪異の掃討に入っていく。

910: ホワイトベアー :2022/06/01(水) 21:33:08 HOST:sp110-163-216-120.msb.spmode.ne.jp
以上、狼達が出撃した直後くらいの戦場の状況でした。wikiへの転載はOKです。

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最終更新:2022年06月03日 23:51