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銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです欧州大戦その二 パリ?パリは燃えたわよ…フランスの共同幻想ごと
白い清らかなローブを纏う遣欧軍仏方面軍総指揮艦を務める戦艦リシュリューは現在仏方面軍臨時総司令部の置かれたルーブル宮、ルーブル美術館を離れ神崎島の齢千年を超える楢(オーク)の御神木より落下した枝葉より削り出された杖を携え待ち人の待っているだろうシテ島への道を歩く。
この花の都はもうリシュリューら神崎島遣欧軍仏方面軍により解放されているが本来人通りの多い筈の花の都の街には人っ子一人いない。
いや、いるにはいるが警備をしている仏方面軍や実質遣欧軍仏方面軍に吸収された形の残存フランス軍の兵士達だけだ。
開戦初期に陥落し大統領始め閣僚や政府機関関係者が根こそぎ行方知れず或いは虐殺され市民も少なくない数が犠牲となったが全員が殺された訳では無い。
現在、市民が市内にいないのは巴里より西の地域へと疎開しているからだ。
リシュリューが歩く巴里の街には戦争の爪痕が色濃く残る。
ルーブルの正門を出れば目の前のゴシック様式のサン=ジェルマン=ロクセロワ教会が半壊している姿が目に入る。
まだ半分原型を留める墜落したタイフーンが突っ込み崩れた塔がその入口が完全に塞ぎ、見事な飛び梁も砲弾が直撃したのか一部吹き飛んでいる。
そしてリシュリューの視界に入るある建物は崩れ落ち、街角の石像には弾痕が刻まれ、見えぬ影から血が流れていた。
それを横目にリシュリューはセーヌ川を目指し歩みを進め、川辺に出ると川沿いの道を歩く。
セーヌ川沿いの道のそこかしこに破壊されたドイツ軍、いや憂国騎士団の車両が放置されておりドイツ軍のレオパルド2だけでなく他国のレオパルド2を国籍マークだけ消したもの、倉庫から持ち出されただろう旧式のレオパルド1やヤグアル1まで存在する。
そしてリシュリューの正面からは8.8センチの大砲を載せた虎の王様がキュラキュラと音を立ててやって来る。
それ上で団子(タンクデサント)となり乗っているは元々はフランス土着でブリテンに渡り最後は島に逃れてきた妖精達、故郷(ふるさと)の危機にこの大地に戻りの土の中で長い長い間眠っていた虎の王様に起きて貰い共に戦ったという。
「その牙は正面からは無理でも側面から突き立てれば十分にあの悪いヒョウのやつをやっつけられたよ。虎の王様はやっぱり王様だった。凄かったよ女神様!」と彼らが自身に笑いかけてきたのを思い出しリシュリューはクスリと笑う。
その後ろからは同じく土の中から起きてきたゾウやサイ、ネズミ達がキュラキュラと音を立てて続き、その上で鈴鳴りとなったもう既にこの地を去った筈のフランス土着の妖精達がこの大地を祝福し鎮める様に歌を歌う。
「「「「Domine salvum fac regem!!!」」」」
フランス人達が何故にマルセイユの革命歌ではなくその歌を歌うかと聞けばその内意味は分かると彼らは言った。
その脇ではハッチから身を出した神崎島の妖精達、第三共和政やヴィシー政権下の時代の戦車乗り達が土着の妖精達の下敷きになり押し潰され辟易といった表情でそれを見ている。
彼らは土着の妖精達に虎の王様達と共に戦って貰うべく半ば無理やり引っ張り出されたという、本当なら10式の方が良かったとは彼らの談。
リシュリューはセーヌ川に掛かるヌフ橋へとやって来た。
そこでリシュリューは橋の中央まで来ると欄干に杖を立て掛けると設けられているベンチへと座りセーヌ川より花の都の街並みを見渡す。
『巴里は燃えているか』
七十年以上もの昔紡がれたその言葉は映像の世紀を超えた現在、現実となった。
花の都は尽く破壊され燃えた。
凱旋門は砕け散った。
そしてセーヌ川に架けられた橋から見えるエッフェル塔は折れて千切れている。
そしてそれらは現在のフランスを示している。
フランスはその支えを軍靴に踏みつけられ尽く失ってしまったのだフランスという国は。
EUという共同体は何の意味もなかった。
フランス政府は為す術もなくその機能を失い消えた。
何とか残ったフランス軍は敗走を繰り返すばかり。
フランスという共同幻想は最早千切れかかり風前の灯火であった。
だが、まだなんとかフランス人はフランス人として踏みとどまっている。
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元々、日本の創作が好まれた土壌もあったのだろう。
彼女達らの献身を受け入れ、フランス人としてのアイデンティティを保ったのは。
後方の避難民達の仮の住まいやフランス兵達が収容された野戦病院には毎日の様にマリー・アントワネットが赴いては彼ら、彼女らを励まし慰撫していた。
前線各拠点ではジャンヌ・ダルクが兵士達の為に祈り、彼らの懺悔を聞き鼓舞していた。
前線そのものではリシュリューが全軍を纏め上げ総指揮を取り奇跡的なまでの国土奪還と快進撃を続けていた。
だがフランス人がフランス人として踏みとどれた理由は皮肉でしかない。
フランス人達は現在、慰撫する王妃を敬愛し、鼓舞する聖女と神に祈りを捧げ、纏め上げた戦艦の指揮の下で一糸乱れぬ統率を取る。
しかし、王妃はもう必要ないと自分らの手で断頭台の露に消した。
しかし、聖女はもう邪魔だからと自分らの手で敵対者に引き渡した。
しかし、戦艦は戦艦の時代じゃないからと自分らの手で解体した。
フランス人は自身が捨てたもののお陰でまだフランス人たり得て、それを受け入れている。
フランス人たり得ても変わってしまったのだフランス人という意味合い自体が。
ぼんやりとセーヌの流れを見ていたリシュリューは息を吐くと立ち上がり歩き出す。
余り待たせているのも悪い。
ヌフ橋を渡りシテ島に着くとリシュリューはパレ・ド・ジュスティスへと向かう。
しかしとリシュリューは思う。あの場がパレ・ド・ジュスティス、裁きの宮と呼ばれるのは何たる皮肉かと。
そしてパレ・ド・ジュスティスの裏口が見え、その前にはリシュリューの待ち人達がいた。
「遅くなったかしら?」
「いやリシュリュー、そんなことないぜ。」
「そう、じゃあ中に入ろうかしら?」
一人、いや一妖精と言うべきか、彼女はとあるブリテンから神崎島に何故か流れ着いた糸紡ぎの妖精、妖精騎士を名乗るトトロット、そして同様にとあるブリテンから流れ着いた残り一人。
アルトリアが出会い驚いたその名前。
「貴方も宜しいかしらパーシヴァル。」
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「ごめんなさいね。貴方達は直ぐにでもイギリスへ行きたいでしょうに。」
裁きの宮(パレ・ド・ジュスティス)の廊下を歩きながら三人にそう言うリシュリュー。
世界は違えど故郷は故郷、思う所もあるだろう。
「いえ、寿命も伸ばして頂いたのですからこれくらいは…。」
「そういやリシュリューどうして僕ら呼んだんだ?」
パーシヴァルがリシュリューに返事をし、トトロットがリシュリューに尋ねる。
それに対してリシュリューはここシテ島に見て確認して貰いたいものが居るという。
「見せたいもの?」
「見れば分かるわ。」
一行はパレ・ド・ジュスティスの正面玄関側、ノートルダム大聖堂が存在する方面へと向かうが何かがおかしい。
そちらへ向かうほどに増える警備が増え厳重になっていき、視界が開け明るくなるとリシュリューらの視界には外の景色が見え祭壇が設けられ聖女ジャンヌ・ダルクが祈りを捧げていた。だが、
「なんと…。」
「へ?何この大穴?」
そこから先のパレ・ド・ジュスティスの建物はなかった。
いやそこから先の【シテ島自体】が存在しない、あるのはノートルダム大聖堂があった位置を中心にした大凡直径500m余りの大穴。
そこにはセーヌの流れが注ぎ込む。
「これが見せたかったものよ…。」
二人の前に立つリシュリューが二人の方を振り返り、底を覗いてみろとそこに見せたいものが居ると言う。
恐る恐る穴を覗き込む二人、ソレを見て息を飲む。
以前のアレ程でないが寒気すら感じさせる圧倒的で暴力的な呪いを纏う神。
パーシヴァルは唸る。
「これは…これは妖精國だからこそ成り果てた筈では…?」
トトロットは穴の底のソレを見て叫んだ。
「なあリシュリュー…なんでコイツがパリに…【祭神ケルヌンノス】がココに居るんだよ!?」
あの時の妖精國のものより小さいがそれは間違いなくトトロット達が見た祭神であった。
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以上になります。転載はご自由にどうぞ。
最終更新:2022年06月12日 19:07