447: トゥ!ヘァ! :2022/06/02(木) 21:22:33 HOST:FL1-220-144-100-182.kng.mesh.ad.jp
日蘭世界 動物のパワードスーツ事情
動物用パワードスーツ。それは日蘭世界独自のものであろう。
始めは主に民間での活用が始まった。
民間の人間用リハビリアシストスーツから着想を得て、犬、猫、馬などと言った生き物のリハビリもしくは老化によって低下した身体機能を補う目的での医療用パワードスーツ(PS)として開発が始まったのが起源とされている。
日蘭が第一世代PSを出した1960年代以降から始まったこの試みは時代を経て、技術とデータが蓄積していくにつれて大きな成果を上げていき、特に老化や持病で動きの鈍くなった犬や、骨折した馬など多くの動物を助けることに繋がった。
これら動物用医療PSは犬猫馬などへの利用を経て、虎、鹿、山羊など他の動物のリハビリや補助にも流用されていき、1990年代では一般的な治療機械の一つとなるほど普及していた。
こうして民間に普及していった医療用動物PSだが、その過程で膨大なデータが集まりPS自身の画一化も進んでいった。
動物用PS以前の動物の義足などは基本的に個々にあったオーダーメイドが主体であったが、医療用PSの普及の際に集まった各種動物のデータから平均値が割り出された結果ある程度の普遍化あるいは画一化というものに成功。
動物用PSのコスト低下と整備性の向上などをもたらし、以降の同PSの民間普及の一助となった。
こうして徐々に民間にも普及していった動物用のPSであるが、これに目を付けたのは何しも医療機関や動物園関係だけではなかった。
まず目をつけ始めたのが警察。次いで軍隊である。
いわゆる警察犬、軍用犬におけるパワードスーツ運用を目論んだわけである。
だが実際のところ左程上手くはいかなかった。
実戦となると犬は軽快な動きが必要であったため、リハビリや補助が目的の医療用PSと違い、余り重い重量のPSを装備できなかったのである。
詳しく言えば装備はできたが、犬が支えられる重量で尚且つ軽快な動きを損なわないレベルのPSというのが非常に難しかった。
警察犬の方は専ら防弾のみを気を付ければいいため、軽量化と複合樹脂によるボディアーマーで妥協できたが、軍用はそうはいかなかった。
警察と違い、戦場ではより高威力の銃弾が飛び交い、尚且つ犬自身にも高い戦闘力を持たせねばならないため、軍用犬らへ着せるための犬用PSの開発は非常に難儀した。
結局のところ軍が夢見ていたようなスーパードッグを貸すPSの開発はできず、装備した犬の動きを補助するための軽量フレームに防弾装備と指示出すようスピーカー及び収音マイクを装備させ従来の運用の延長線上で活用することへ妥協することとなった。
なお一部では遠隔任務用に背中へ載せるタイプの遠隔操作カメラなども開発されたが、専ら軍事任務よりも災害救助などで扱われている。
犬に重い装備は難しいと悩んでいる傍らで順調に装備が開発されたのが馬であった。
元から人や犬よりも重い重量物を長時間装着し続けられる生き物であった馬は重量のかさむパワードスーツ系と相性が良かったと言える。
最も馬用パワードスーツは殆どの国では採用されなかった。
現代において馬が活躍する機会が少ないというのが最大の理由である。
専ら馬用PSは欧米の警察で採用されており、防弾や防刃を優先した装備をまとい、警察馬として暴徒鎮圧や警邏などに活かされている。
最も変わったところでペルシャやオスマン、またはポーランドなどでは国境警備隊の装備として採用されている。
オスマンやペルシャなどでは自動車を運用しづらい地形の警邏に対して度々馬を使用しており、この警邏用の軍馬に対して長時間の活動を補助するための装備を求めたのである。
警察用装備と違い防弾などは最低限。フレームも軽量であるが、全体に冷却装置を搭載し、馬体の冷却を補助。
また水分補給や一部薬剤の補給なども自動で行ってくれる優れものである。
ペルシャ軍やオスマントルコ軍は強烈な日光の下で何時間も警邏するために必要な補助装備を求めた結果がこのような冷却や水分補給機能に現れていた。
なおこれらに登場する人間兵士の方も同様の冷却機構や水分補給機能を備えた軽量PSを着込んでいる場合が多い。
448: トゥ!ヘァ! :2022/06/02(木) 21:23:18 HOST:FL1-220-144-100-182.kng.mesh.ad.jp
対してポーランドの方がガチガチの防弾装備にマッシブるなパワー補助と正に関係者が夢見るような戦闘型のパワードスーツを配備していた。
これらを着込む軍馬に関しても専用に選りすぐった馬体と馬力に優れた代々連なる軍用馬である。
歩兵の銃弾程度には耐えることが可能で、パワードスーツから得られる余力と衝撃緩和機能を持って障害物を跳び越し、数十kmの速度で突っ込んでくるのである。
とは言え流石に対戦車ロケットやら重機関銃やらを撃ち込まれるとやられるので、運用としては基本的に側面や背後に回り込むことを前提としている。
実は配備数は少ない。精々が一個小隊。
警備用のものと違い実戦レベルで通用するパワードスーツとなるお高いのだが、それ以上にこれを着込んでも走り続けられるだけの持久力と我慢強さを備えた馬が少ないのである。
このため口がさない者達からは殆ど趣味で採用されているような部隊と言われており、事実配備数が少ないことも相まって左程大きな任務は余り回ってこない。
専ら平時では式典や演習などが活躍の場となっている。
しかし実戦で役に立たないかと言えばそうではなく、度々
アジアやアフリカなどの紛争地帯に派遣される際には戦車や装甲車が通れないような地形をPS部隊と共に進み、側面や背面に回り込んでは敵部隊や陣地を粉砕する活躍を見ている。
なお配備、維持コストは相当なものとなっており、実質重PS相当と左程変わらぬという噂である。
最後に話すのが虎用PS。極東の超大国大日本帝国の特殊部隊で運用されているものであり、同国の固有種剣牙虎専用の戦闘用PSである。
元々日本では専用に調教した剣牙虎を戦いへと投入してきた歴史があったが、近年の歩兵火力の向上により徐々に戦場から姿を消していった。
そんな中で1960年代に実用的なパワードスーツが登場し、それらが徐々に進歩していく中で、日本ではある計画が持ち上がった。
剣牙虎運用の復活と、それを用いた特殊部隊の創設である。
現代でこそ火力の向上で正面切っての戦闘には適さなくなったが、虎特有の膂力や跳躍力、隠密力は未だ一級品であり、それこそ密林や閉所空間であればPSを着込んだ一個分隊を上回るとの試算が出ていた。
そこで閉鎖空間及び都市や森林などを活動とする局地戦部隊でならば現在でも、その強さを活かせるのではないか?と考えられたのが剣牙虎兵復活計画である。
防弾能力及び身体能力の保持、回復を補助し剣牙虎従来の長所を伸ばす形のパワードスーツの開発。
及びPSを着用した虎を伴い、彼等に指示を出すパートナーとなる兵士の用意。
この二つからなるプランである。
実際のところPS開発自体はそれなりに上手くいった。
犬用や馬用PS開発のノウハウから少なからず学んだ開発陣は剣牙虎に最適な重量とフレーム構築を実現。
調教の方も伝統文化財として残し続けていた虎用の練兵指南役が残っていたため、これを流用しながら内容を近代化したものを用意、運用。
結果閉所空間や森林部においては高い跳躍能力を活かした立体起動や生来の隠密能力と膂力による高い近接戦闘力により虎用PSを着込んだ剣牙虎一匹に対して、歩兵用標準PSを装備した一個分隊相当の戦闘力を備えると太鼓判を押されている。
また近距離は虎、中遠距離は人がカバーするなどをして苦手距離を補助。
ここに理想的なコンビを揃えることに成功した。
試験運用として投入した中華地域の秘密掃討戦にても活躍。これを持った正式採用される運びとなった。
449: トゥ!ヘァ! :2022/06/02(木) 21:24:04 HOST:FL1-220-144-100-182.kng.mesh.ad.jp
少数であるが…
そう少数なのである。
最大の理由はお高いことである。
パワードスーツの方が特別高いわけではない。歩兵用の平均的なPSよりは高いが、それでも大量に導入するわけでもないので形容範囲内であった。
問題は虎の育成費用で会える。人一人育てるのすら手間暇かかるのに、そこに大型獣を追加して、尚且つそれらへの装備も整えないといけないのだから、そらかかる総コストは恐ろしい数字になる。
また実戦から遠のいて久しい現在の剣牙虎では実戦運用に耐えられる個体は残っておらず、仕方なく子虎の頃から専用の訓練を施して選別する方式を行っているのだが、メジャーな動物である馬や犬と違い曲がりなりにも虎であるため育成コストもお高いものであった。
結果運用コストが激増し、コスト比率ではPSを装備した人間の隊員をもう一人用意した方が確実で安く付くとまで言われるレベルとなってしまった。
幸い実戦で上げた戦果と少なからぬ上層部も贔屓もあって少数ながらも正式採用こそされた剣牙部隊であったが、専ら一部の山岳部隊や特殊作戦部隊に採用されるに留まった。
一部の部隊に少数採用されるのみに終わったため、かつてのような看板部隊としては扱われず、計画に関わった将官が夢見たであろう華々しい剣牙虎部隊という現実は泡に消えた。
しかし一部の山岳部隊所属の剣牙虎は毎回の総合火力演習では注目の的となっており、特殊部隊所属の虎は日本軍が実験的に投入したバイオタイガーだと世間で噂や都市伝説なるなど、現代の兵種として剣牙虎が復活するのは間違いないのである。
因みに公職付きの剣牙虎で最も有名で尚且つ世間慣れしているのは皇宮警察所属の剣牙虎だったりする。
450: トゥ!ヘァ! :2022/06/02(木) 21:24:50 HOST:FL1-220-144-100-182.kng.mesh.ad.jp
〇動物用パワードスーツ紹介
犬用に開発されたパワードスーツのこと。世界各国で似たようなPSが存在しているため、ここでは犬PSとして一括りに説明する。
リハビリ用スーツから派生した代物で専ら警察犬用の装備として使用されている。
犬へ必要以上の負荷をかけないようにと最低限(7.62mm弾でも一発は耐えうる)の防弾、防刃装備を備えながら犬本来の跳躍力や持久力を補助する形の機能を備える。
これにより着込む前以上にダイナミックな動きを実現しており、逃走する犯人の確保をスムーズなものにしている。
警察用以外にも軍用犬仕様のスーツも各国で開発されており、こちらは防弾機能と持久力の補助機能が充実している。
他は収音マイクや背中に載せた周回カメラに指示出しようのスピーカー機能が拡充されている程度である。
一応中には多少の武装を施した代物も存在しているが、装備可能重量の限界のために重装備なものは存在していない。
ペルシャの採用している軍馬用パワードスーツ。
専ら山岳部などの車両では見回りにくい地域での国境警備を行うために使用されている。
対銃弾防御は最低限であるが、長時間の警備任務を行うためにスーツの構造自体に冷却機能が搭載されており、更に自動給水機能も完備されている。
同様の機能を搭載した軽量スーツを着込んだ人間と共に今日も暑い中で国境警備に勤しんでいる。
オスマントルコが採用している山岳部対応軍馬用パワードスーツ。
ペルシャの採用しているカタフラクトスと同様の機能を備えた代物である。
名前が違うがぶっちゃけこの二つはオスマンとペルシャが珍しく共同開発した代物で、中身はほぼほぼ同じ代物。
名称が違うのと、内部部品における割合が違う程度である(ペルシャのはペルシャ国産の部品が多く、トルコにはトルコ国産部品が多い)
こちらはペルシャ仕様と比べ砂漠地帯での任務も想定している。
脚部に特殊な装備を取り入れており、砂場でも足を取られにくい機能となっている。
なお同装備のラクダ仕様なども開発しており、専らこちらが砂漠地帯で運用されている。
451: トゥ!ヘァ! :2022/06/02(木) 21:25:37 HOST:FL1-220-144-100-182.kng.mesh.ad.jp
日本の開発した剣牙虎用パワードスーツ。「こがい」と読む。
試験兵器として作られた一型、初期生産型の二型で、現在の三型は諸々の機能を改善した普及タイプ。
虎本来の跳躍力や膂力を更に向上させる形で設計されたスーツで、これを着込んだ剣牙虎一頭で歩兵用標準PSを着込んだ一個分隊にも匹敵すると試算されている。
主に山岳部、森林部、閉所空間などで運用することを目的とされており、パートナーとなる兵士と一組で運用される。
しかしスーツの方はともかく虎の方を軍任務専用に育成するには多大な費用がかかってしまい、結局少数採用のみで終わってしまった。
現在では特殊部隊の一部と中華地域派兵前提の特務山岳部隊などに採用されている。
かつての剣牙虎兵並の復活!とはならなかったが、その勇ましい姿は度々軍の演習や基地祭りなどで見られており、民衆からの人気を博している。
虎鎧の警察仕様。専ら治安維持目的の運用がなされており、このため軍事用よりも大幅な軽量化がなされている。
犬のおまわりさんならぬ、虎のおまわりさんと親しまれており、数匹で一部隊となっており、大体一県に一部隊ほどが存在している。
一番有名なのは皇宮警察で運用されている部隊で、毎日皇居の周りをコンビの警察官と共に見回りしている。
正直軍で採用された数よりも警察で採用されている数の方が多く、こちらで開発費の回収が行えていたというオチが付く。
日本仕様以外にもオランダ仕様やロシア仕様のものなども存在している。
452: トゥ!ヘァ! :2022/06/02(木) 21:26:12 HOST:FL1-220-144-100-182.kng.mesh.ad.jp
投下終了
話題に出していた動物用のパワードスーツです。
最終更新:2022年06月12日 20:06