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大陸×ワルパンネタ 第20話 ヤマ
西暦1938年1月1日 シベリア上空
大日本帝国軍 特務魔導中隊
ウォーウルフ隊と分かれてたレイザーとワルキューレの魔女達は時間をおかずに予定されていた観測ポイントの1つに到着する。
(まるでお姫様みたいな扱いね)
自身の直衛部隊であるワルキューレ隊が組んでいる円陣の中で、レイザーは今の自分の扱いについそんな皮肉が浮かんでしまう。
周囲の怪異はすでに戦闘機部隊と航空魔導部隊により狩り尽くされており、さらにウォーウルフ隊の代わりとして、今だに戦闘は継続しているのに2個魔導兵大隊が彼女の護衛として戦場から引き抜かれて配置につくことで彼女の安全は確保されている。
それでもワルキューレ隊は周辺への警戒を怠らず、円陣を組んで全方位において奇襲攻撃に備えていた。
それほどまでに日本においても魔眼使いというモノは希少かつ重要なのだ。
(こんなことを考えていたら駄目ね)
自身の任務に集中するために、雑念を振り払い無線を開く。相手は後方から自分たちを管制している早期警戒管制機、マジックである。
「レイザーよりマジック、観測ポイントCに到着。これより観測任務を開始します」
『こちらマジック、了解した。現在、ウォーウルフ隊は目標への攻撃のために前進している。なるべく早期にコアを発見してくれ。』
「レイザー了解。全力を尽くします」
マジックからの願いに答えると同時に、円陣の真中に位置していたレイザーこと佐倉 理子中尉の両目の色がまるでカラーコンタクをつけたように茶色から赤く変わる。
「さて、あなたのコアはどこにあるのかしら?」
彼女の魔眼の性能は原作の坂本よりかも劣っている。しかし、それでも大日本帝国という世界最大最強の覇権国家が自国の将来すらも大きく左右する重要な決戦に投入している以上、世界最高レベルの魔眼であることには変わりない。
彼女の魔眼はほぼノータイムでヤマ全体を解析していき、その弱点であるネウロイの核、コアの位置を彼女自身に知らせてくる。
「なるほど…ずいぶんと厄介な場所に存在しているわね」
つい、言葉が漏れる。その言葉は未だにオフにしていなかった事から電波に載って遥か前方のウォーウルフまで届いてしまったのだろう。北郷から怪訝そうな声が返ってくる。
『どうしたレイザー。何か問題でもあったのか?』
「ごめんなさいウォーウルフリーダー。いいえ問題はないです。無事にコアは発見しました。ですが位置が問題です」
『位置が問題だと…一体どういうことだ。』
327: ホワイトベアー :2022/06/05(日) 20:08:05 HOST:sp49-98-154-6.msd.spmode.ne.jp
西暦1938年1月1日 シベリア上空
大日本帝国海軍第1航空魔導大隊
『ヤマのコアの場所は…山頂部です山頂部のすぐ真下に存在しております。』
レイザーからネウロイのコアの場所を教えられる。
あのデカブツのコアはその山頂に隠されているとのことだった。だが、それだけなら何も問題はないはず。むしろ、装甲の分厚い中心部に配置されるよりかも遥かに撃破しやすい。
「位置はわかった。それだけなら何の問題もないように思うが?」
『問題はコアの存在する場所の表面に無数のレーザー発射用パネルと思われるものが隠されていることです。下手に近づくと蜂の巣にされるかと』
返ってきた答えは、ネウロイはコアの位置を露見される事を覚悟して無数のレーザー発射パネルを集中的にコア付近に配置しているとのことだ。なるほど。確かに厄介である。
「それは…確かに厄介だな。知らずに近づいていたら大きな犠牲を出していただろう。感謝する。レイザー。あとは任せろ」
しかし、攻撃を仕掛けないわけにもいかない。
ヤマの弱点と秘密は暴かれた。あとはヤツを撃破するだけだ
そう誰もが思った時、迎撃に向かわせた中型怪異を一方的に食いちぎり、自身に向かってくるウォーウルフ隊に恐れを成したのか、それまで散発的にしか攻撃をしてこなかったヤマがその牙を向いてきた。
それを真っ先に察知したのは先頭をいく北郷自身であった。
「全員、散開!」
北郷がそう叫び、魔女たちは考えが浮かぶ前に反射的にその言葉に従いバラけてシールドを貼りながら回避機動を開始。数秒後、猛烈な光と熱が幾体かの怪異を飲み込んで、彼女達がそれまでいた空域を進んでいく。
『嘘…』
ウォーウルフ13の震えた声がインカムを通して伝わってくる。
これが何なのかはすぐにわかった。大型怪異の光線である。では、放ったのは誰か? 考えるまでもない。ヤマである。
『…奴さんも相当必死だな。まさか、味方ごと私達を攻撃してくるなんてな』
フミの言葉が状況を表していた。
ヤマが味方であるはずの怪異が射線上にいるにも関わらず、攻撃を仕掛けてきたのだ。
幸いにして北郷の言葉が間に合い、ヤマの攻撃を食らったウィッチはいなかったが、回避機動をとるのがあと数秒遅れていたら、最悪は部隊が全滅していただろう。実際に、彼女たちの後方で小型怪異の集団と戦闘をしていた戦闘機1個飛行隊が小型怪異ごと文字通り消滅していた。
しかし、それに驚いている余裕はない。攻撃が外れたことを確認したヤマは攻撃方法を先の極大レーザーではなく、従来の大型怪異が放ってくるのと同程度のレーザーによる弾幕という方法に切り替えて攻撃を継続してきたのだ。
『まるで弾幕回避ゲームみたいだな。東方のキャラにでもなった気分だよ』
『なら、貴女はチルノですかね。ウォーウルフ2』
『誰が⑨だ。 どちらかというと私は影狼だろ』
ウォーウルフ2とウォーウルフ3が行う漫才を耳にしながら、ウォーウルフ隊の魔女達は文字通り雨のようなヤマからの弾幕に対してシューティングゲームの時機のようにレーザーとレーザーの間に身体を滑り込ませながら回避していく。
無論、完全に回避しきれない時もあるが、そのときはシールドで攻撃をいなしながら回避を行い、シールドの使用を極力しないことで機動性を確保しつつ魔力の消費量を最小限に抑えながらヤマを目指して前々と進んでいった。
しかし、ヤマとの相対的な距離が近づいていくとそれも厳しくなっていく。何せ相対的な距離が短くなるわけだから回避する隙間も時間もどんどん少なくなっていくのだ。
最終的には攻撃可能圏内にヤマを捉える前に、光の壁と言う言葉が似合うほどの大量のレーザーに阻まれてしまい、私達は回避をするのが手一杯で前進を続けるのが困難になってしまった。
攻撃を加えるにはさらなる前進を行わなければならないが、いつまでもこの状況を続けているわけにもいかない。魔導エンジンのSSEM(System to switch ether to magical power:エーテル・魔力転換システム)で魔力は持つが、今のまま集中力が切れると本気でマズい。
本国から厳重に自身らの生還させるようにと言いつけられていた北郷の決断は素早かった。
328: ホワイトベアー :2022/06/05(日) 20:08:39 HOST:sp49-98-154-6.msd.spmode.ne.jp
「全員、一旦離脱するぞ。それで大丈夫だな マジック?」
『問題ない。周囲の部隊にも一旦距離を取らせる。諸君らも直ちに離脱せよ』
ここで無理に彼女らをとどめて、なんの成果も得られずに黄金より貴重な精鋭ウィッチを大隊ごと失うことを日本は許容できない。
北郷の判断にマジックは同意する。
『待ってください!それでは』
『ウォーウルフ13、自分たちの価値を理解してくれ。現状、無謀な作戦に君たちを投入できるほど我々に余裕はないんだ』
『…了解』
ウォーウルフ13が何かを言いかけるが、マジックがこれを黙らした。
(後で御礼に何かを奢らなきゃな。)
この状態で私への不信感を抱かせないように、自ら進んで嫌われものになってくれたマジックに感謝を示す事を内心で決意しつつ、離脱の指示を出していく。
北郷と彼女に率いられたウォーウルフ隊の魔女達は離脱時に攻撃をバラけさせる為にエレメントごとにバラけて離脱を図っていく。ウォーウルフ隊だけではない。ヤマの攻撃範囲と推測される空域から全てのウィッチ部隊と戦闘機部隊が一斉に離脱を図っていった。
これに対してヤマは、他の部隊には目もくれずにウォーウルフ隊を標的として一定距離が開くまでのあいだ、集中的に激しい攻撃を仕掛けてくる。
それでも、やはり広く分散したウォーウルフ隊を攻撃するために攻撃は徐々にまばらになっていき、北郷達は容易にこれを回避して後退していった
『どうやら攻撃範囲外に出たようですね。』
フミの言葉がインコムから流れてくる。彼女の言うとおり、ヤマから一定の距離を取るとヤマからの攻撃はピタリと止まり、現在までに再攻撃は仕掛けてこない。
「そのようだ。だが、念の為にさらに距離をとるぞ」
『了解』
ヤマの攻撃が止まったことで一応の離脱は成功したものの、念のためにさらに距離をとらせる。
「各中隊ごとに状態を報告を確認しろ」
一定距離以上離脱できたので自身の機関銃の残弾と銃身の状態を確認しつつ、部隊各員に自身の状況を報告するように指示を出した。
『ウォーウルフ2、あの程度の弾幕なんて余裕です。ピンピンしております』
『ウォーウルフ3、こちらも無事です』
『ウォーウルフ4、機体、身体ともに問題ありません』
順次報告があがってくるが、流石は世界最強のウィッチ部隊であるウォーウルフ隊である。あれ程の攻撃を受けていたのに被弾機は0、その報告内容はは全て問題なし、戦闘継続可能とのことであった。
機関銃の方は簡単に確認をしても異常は見られない。だが、嫌な予感がしたため、念の為に銃身を交換して弾薬を予備のベルトに置き換える。
SES(Storage expansion system:拡張空間収納システム)のおかげで弾薬と予備部品は大量にあるので出し惜しむ必要はない。
それはフミ達も同じであり、未だに武器や弾薬等は十分にある。
「全機、各中隊毎に集結して再度の攻撃を準備しろ」
『またアイツに突っ込むんですか?』
「当然だ。アイツの撃破こそが私達の役割だからな」
そう言って部隊を再編成して再度の突入開始を準備するが、このまま何の策もなしに突入をすれば先程のように失敗することは目に見えている。
幸いなのは部隊の士気は依然として高いことだ。
彼女たちからしたら、本気を出さずに撃墜されてしまう今までの敵はヌルすぎた。ようやく本気で当たれそうな強敵の登場に、恐怖心もあれど高揚する心もある。そういった矛盾した2つの気持ちが彼女達の心の中で渦巻いており、彼女達の士気の低下を阻止していた。
『しかし、どうやって突入しますか。先程のレーザーの雨もありますし、奴ら、私達がヤマを警戒しているのをいいことにヤマに集結しつつありますよ』
『最悪の場合は、ヤマのレーザーを回避しながらあれらと空戦をして突っきるのは至難ですね』
フミやウォーウルフ3の言葉通り、こちらがヤマの大火力を警戒して部隊を後方に下げると、怪異達もフリーハンドをえた一部の部隊を撤退させてヤマを中心に部隊の再編成に入りはじめていた。
小型怪異や中型怪異など敵ではない。しかし、それらが捨て身で足止めを仕掛けてきたところに、レーザーの弾幕を受ける事になったら場所次第であるが少し厄介なことになる。
さて、どう攻撃したものか…
こうしている間にもヤマの周囲では中小型怪異が再編成を進めており、悩んでいられる時間は少なかった。
329: ホワイトベアー :2022/06/05(日) 20:09:17 HOST:sp49-98-154-6.msd.spmode.ne.jp
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最終更新:2022年06月15日 15:34