306: 弥次郎 :2022/06/23(木) 19:53:14 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

憂鬱SRW アポカリプス 星暦恒星戦役編SS「ブル・ブレイク」3


  • 星暦恒星系 星暦惑星 現地時間星暦2147年6月14日 連合呼称「セントラルエリア」


 その日、レギオン達の支配域---ギアーデ連邦-ロア=グレキア連合王国-サンマグノリア共和国-ヴァルト盟約同盟のエリア全体に襲撃があった。
 中心地、かつてレギオンが跋扈する前には旧国家間高速鉄道のレールが敷かれ、ハブステーションも存在したエリア。
該当のレギオン支配地域においてはど真ん中と言えるエリアにおいて、人類側が奇襲を仕掛けたのである。
 それは水平方向からではなく、垂直方向からの奇襲。
 制空権・制宙権を絶対的なまでに掌握している地球連合軍と星暦惑星各国連合軍による、テレポーテーションアンカーによる上空からの展開だった。
 事前の対地攻撃に加え、即座に展開を終えていた連合軍は、即座に陣地を確保。
 旧国家間高速鉄道ステーションを中心とした半径50㎞のエリアを瞬く間に掌握した。

 これに対し、レギオンは即座に遅滞防御に努めた。
 前回の人類側からの反撃---オペレーション・スカイフォールで貴重な後方戦力である自動工場型などを多数失っていたレギオンは、その配置を分散させていた。
貴重な戦力でもある羊飼いも同様に各地に分散させ、一か所に集中させないことで、奇襲を受けたとしても被害を低減できるようにと配置を変更したのだ。
これにより、該当エリアの個体はすぐさま迎撃にかかることができ、尚且つほかのエリアからの増援を動かす余裕を得ていた。
 レギオン側、ノゥフェイスはこの人類側の展開を橋頭堡の確保とみなした。戦力が減耗してしまってから間をあまりおかずにこの作戦。
そして、展開地域が陣地のど真ん中ということは、そこを利用して戦線を構築するつもりだと判断したのだ。
故にこそ遅滞戦闘を行いつつ、時間稼ぎに乗り出した。

 元々、スカイフォールの後、生産設備である自動工場型などを地下へと移し始め、それに付随する生産・研究工廠などは地下に移転されていた。
土地はあり、尚且つ基本的に邪魔は入らず、さらには人工機械だらけで疲れを知らないレギオンたちは、支持により地下拠点の構築を急いだ。
戦車型や斥候型をベースとした作業タイプを新規生産することにより、レギオンは大深度にそれらを生み出した。
それも一か所や二か所ではなく、規模も配置も様々に置いておいたのだ。これにより、重要拠点を集中的に狙われることを避けることにもつながった。

 だが、レギオン側の指揮官は、ノゥフェイスは見誤った。
 確かに地球連合軍の行動の意味は橋頭堡の確保という面があった。
 しかし、それを正確に表現すれば、それは単なる一時的に通過する橋頭堡ではなく、最早恒久陣地の構築と戦線の展開だった。
とどめに、今作戦は単なる戦線構築などが目的ではない。各国の戦線からの包囲を合わせ、セントラルエリアのレギオンの殲滅が目的であったのだ。
オペレーション・スカイフォールからのORを基にすれば、レギオンが生産工廠設備などを隠匿することは明らかであった。
レギオン側にとっても希少である「羊飼い」をどこかに逃がすか反攻作戦の時までは隠しているであろうということも。
 故にこそ、後顧の憂いを断つための、殲滅である。比喩でも何でもなく、全滅させるつもりだったのだ。
それこそ一体残らず、前線に出てくる個体はもちろん、自動工場型も何もかも、綺麗に片づける。
さらにはレギオンが残っていないかの、徹底した精査を行う予定でさえあった。

 遅れて、レギオンの指揮官であるノゥフェイスは行動を移した。
 前線の敵を戦力で拘束している間に、「羊飼い」たちなどを脱出させるのである。
基本的に、生前の強い自我までもコピーした「羊飼い」は「自分」が多数いることに耐えられないため、ワンオフとなる。
しかし、逆に言えば、脳構造のコピー体自体はいくつも用意できるわけで、主観となるデータを移送してしまえば脱出ができるのである。
作戦エリアにあらかじめ展開していた警戒管制型を経由することで逃がせると判断していた。
 だが、そんなことは地球連合もお見通しだった。衛星軌道上からの攻撃を以て、警戒管制型は次々と撃墜。
また、セントラルエリアを包囲する各国戦線においてはジャミングやECMを展開。航空要塞までも投入した立体的な電子包囲網により、データに逃げ場はなくなった。
 いや、セントラルエリアの情勢自体の情報がノゥフェイスの元へと届かなくなってしまったのだ。
 ノゥフェイスが確認できたことはたった一つ---セントラルエリアは完全な包囲下に置かれた、ということだった。

307: 弥次郎 :2022/06/23(木) 19:53:58 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

  • 同日 星暦惑星 白紙地帯


 そして、地球連合の動きはそれだけにとどまらなかった。
 同日、ノイリャナルセ聖教国に対峙する白紙地帯に対しても、同時のタイミングを以て攻撃が開始された。
 作戦名「オペレーション・イーストダウン」、極西地域の「白紙地帯」の解放およびレギオンのマスドライバー施設の制圧を目的とした攻勢。
 戦力の中核を担うのは、大型MAである「ビグ・ザム」が合計12機。殲滅力に長けるそれで戦列を形成し、踏み込んだのだ。
それに追従するのは重戦車に該当するMA「ユークリッド」であり、機動兵器やフェルドレスの前衛を担う「ゲルズゲー」らであった。
強力なバリアを、それこそ機体レベルではなく、戦術・戦略レベルでの防御力を展開することが可能な軍団が、一気に白紙地帯の踏破を開始した。

 これに対し、同地域において隠匿されていた試作案・陸上戦艦型(プラン・フェルディナント)が迎撃に出た。
相手は巨体。それゆえに狙いは定めやすく、試作案・陸上戦艦型のレールガンをもってすれば撃破可能と判断していた。
その他にも、量産化された試作案・電磁加速砲型を並べることにより、白紙地帯のレギオンの集団は防衛体制を構築していた。

 しかし、800㎜レールガンや400㎜レールガンはそのビグ・ザム目がけて放たれることとなったのだが、それは効果を為さなかった。
対小型兵器・機動兵器のためのチェーンショットまでも投じられたその砲撃は、しかし、無情にも弾かれていった。
搭載されている戦略級のEフィールド発生装置とそれに付随する防御機構の働きである。
 800㎜や400㎜という大口径の砲、しかもレールガンという火薬式の砲よりも優れたそれを用いられていることは確かだ。
無論のこと、星暦惑星各国の軍隊にとってはまさしく必殺の一撃となりうるものであり、かなりの被害を許容しなければならない相手ではあった。

 だが、相手は地球連合だ。
 この程度のレールガンについては、それこそ電磁加速砲型などを鹵獲しており、またそれ以上の火砲を用いていることもあり、既知の範囲だったのだ。
むしろビグ・ザムなどは飛んでくる砲弾を打ち落とし始める有様であり、地面撃ちなどによる攻撃を行おうと、容易く凌がれてしまった。
それどころか、一発や二発どころか、砲身がオーバーヒートするギリギリまで連発しても、揺らぎもしなかったことをここに記す。

 そしてこの攻勢の目標は、レギオンが構築したと思われるマスドライバー施設であった。
 白紙地帯の先、極西地域にある六芒星型の巨大建造物。自らを質量弾として落とすレギオン「衛星砲弾」を打ち出すための設備である。
燃焼材やそれに適した燃料などを用意することなく、またレギオンに存在するプロトコルに抵触せずに、宇宙へと兵器を配置する方法。
それこそ、電磁式のレールを用いたマスドライバーだ。むしろこれこそが本命だったのではと、連合軍では推測している。
ギアーデ帝国時代からすでにレールガンの研究は進められており、そして革命時に多くが紛失してしまっているということも把握されていた。
その技術をレギオンが転用した、ということではないか?というのは自然な推測だ。

 ともあれ、これ以上衛星砲弾を撃たれては困る、というのと、レギオンの技術の回収と調査。
 さらには航空偵察により確認されていた試作案・陸上戦艦型の鹵獲ないしは一部の回収が目的とされた。
 そして、この打通作戦自体が、オペレーション・ブル・ブレイクの陽動も兼ねるという、複雑なフラグメントの複合系であった。
来月にはレグキード征海船団国群との合同作戦での、摩天貝楼への攻勢である「オペレーション・ブレイクザランス」までも計画されている。
 まさに間断なく、レギオンに対して地球連合と星暦惑星各国は攻め続けているのだった。


 星暦惑星のどこか。
 最高司令官として据えられた、「羊飼い」であるノゥフェイスは、演算を続け、指揮をとり続けていた。
そうあれかしと、元となった素体から複製され、その意識をレギオンによって都合よく改変され、その上で戦略的な判断を下してきた。
 しかし、それはノイズと混乱と反復とを混ぜ合わせた、人間風に言うならば、混乱した思考が過半を占めていた。
 もはや、ノゥフェイスが支配していた戦場や戦略などは瓦解しているも同然。彼にできるのは、迫りくる終末に微小な力で抗うのみだった。

308: 弥次郎 :2022/06/23(木) 19:54:39 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

以上、wiki転載はご自由に。
本題から逸れて行きそうだったので、軌道修正。
ここからはちょっと俯瞰的に世界を観測していきます。

微細に観測したいけれど、それをしすぎると牛歩の歩み…ジレンマー…
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最終更新:2023年07月10日 20:07