478: 弥次郎 :2022/06/25(土) 00:25:55 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

憂鬱SRW アポカリプス 星暦恒星戦役編SS「ブル・ブレイク」4


  • 星暦恒星系 星暦惑星 現地時間星暦2147年6月14日 極西地域 白紙地帯



 結論だけを言えば、試作案・陸上戦艦型はその戦闘力を自ら失うことになった。
 搭載されていた巨大な800㎜レールガン---前部4門と後部2門---は、白紙地帯という極限環境下でも正しく機能し、砲弾を送り出した。
接近してくるビグ・ザムの戦列前身に対して海軍の用語でいうところのT字有利を確保し、全力で砲撃を浴びせたのだ。
しかし、打ち出しても打ち出しても、ビグ・ザムのバリアを貫通することはできず、何ら被害を浴びせることはできなかった。
何ら誤りがあったとか、不具合があったとか、そういうものではない。純粋に、勝てないのだ。

 そうして、自身の護衛についていた戦車型や重戦車型などが反撃の光学兵器で消し飛ばされてもなお、砲撃を続行し---ついに限界となった。
 即ち砲身寿命の限界だ。
 レールガンは火薬式火砲の何倍もの速度で砲弾を加速させ、打ち出す。
 同時にそれは、砲身であるレールとの間で火薬式の比にならない摩擦が発生し、熱の発生とレールの劣化を招くものだ。
その物理法則はどうあがこうとも自然なモノであり、レギオンを作り上げた旧ギアーデ帝国の技術的限界からあっけなくぶつかる。
そして、限界まで打ちまくれば、当然の如くレールは限界を迎え、使い物とならなくなるのである。

『-----』

 それを証明するように、試作案・陸上戦艦型からすべてのレールガンの砲身がパージされた。
 ドシン、と音を立てて落下する長大なそれは、それまでの発砲により生じた膨大な熱を抱え、衝撃と火山灰をまき散らした。
通常であるならば、自動工場型などの支援の下で、砲身の交換が行われるであろう。あるいは、消耗した砲弾を補給するかもしれない。
 だが、この戦場の状況下においてそんな悠長な作業は不可能だった。巨体に相応しい巨砲だからこそ、時間もかかるのが当然の帰結。

 だからこそ、試作案・陸上戦艦型は撤退や補給を選ばずに、生き残っている兵装での抵抗を試みることとなった。
既に逃げ場はない、というのが搭載されている羊飼いの判断だ。
自分と同様に大型兵器に対処するために用意されていた中量電磁加速砲型も次々と砲身の限界を迎えているのを確認していた。
相手は攻め込みながらも、こちらの消耗を待っていたというわけである。あるいは最初から撃たせることを前提に動いていたか。
 なればこそ、とこの白紙地帯を預かる指揮官の羊飼いは判断を下す。

『----』

 その命令に、一瞬試作案・陸上戦艦型の羊飼いは抵抗した。
 だが、刹那の間の『処理』により命令を受諾。

『----』

 そして、残存する中量電磁加速砲型ともども、吶喊を開始した。
 逃げるのでもなく、戦力の交代をするのでもない、第三の選択。
 すなわち、前方への脱出であった。

479: 弥次郎 :2022/06/25(土) 00:26:29 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

  • 極西地域 白紙地帯 後方 地球連合軍 拠点型AF「ユグドラシル」



 白紙地帯を見下ろす地点に、巨大な樹木が生えていた。
 それは自然なものなどではない。人工のものであった。北欧神話に伝わる世界樹の名前を冠する拠点型AFである「ユーグドラシル」である。
今回の白紙地帯の打通作戦において指揮を執るための移動基地として、さらには母艦としてこの戦場に展開していた。
 その指令室は、レギオンの一斉行動に対応に追われていた。

「ビグ・ザム隊に通達。奴らは自爆を狙っている!最悪ぶつかってでも阻止しろ!
 神戟達の戦力に攻撃が及ぶのは避けろ!」
「第三機甲師団の内、予測範囲に収まる全軍は退避!残りは爆発の衝撃に備えよ!」
「全軍、後退!」
「前線のMTも下げろ!ビグ・ザムが前に出るぞ!」

 指令室が慌てるのも無理もないことだ。
 レギオンに、それも大型の個体に自爆用の爆薬が搭載されていることは、電磁加速砲型で確認されていたことだ。
機能停止もしくは損傷が甚大となった場合、鹵獲や調査などを受けることを避けるためにセルフディストラクションを行うためだと推測された。
 だが、それは何も自分だけを処理するものではない。あれだけの巨体を処理するための爆薬となれば、その影響は広範囲に及ぶ。

 主兵装であるレールガンをすべて失い、残るは自衛火器などだけとなっている試作案・陸上戦艦型の最大の武器はそれだった。
無論、あらん限りの速力での突進も、あるいは近接接近を避けるための電磁ワイヤーも武器とはなりうるが、自爆には及ばない。

「特攻、ですか」
「レギオンの側も理解しているのでしょう、首を狩るか狩られるか、そういう次元だと」

 ヒェルナのつぶやきに、ドナルドは同意した。
 レギオンが首を求めているというのはコンセンサスとして共有されている話だ。
レギオンの個体は使えるものであるならば人間の死体でさえも持ち帰り、活用しているというのは。
それについては、相応に備えることで対処手段としている。人間として死ぬか、取り込まれるか、その二択を強いられるが、遥かにましであった。

 だが、地球連合が参戦してからは、人間の側もまた狩る側になった。
 地球連合はパラライズバレットという特効のある武装を開発し普及させた。それによって、電磁加速砲型を鹵獲したのは記憶に新しい。
 しかして、それを使用したということはレギオン側に対しても露呈していることでもあった。
 故にこそ、鹵獲され、情報を得られることを恐れて行動を選択した。フェルドレスのパイロットが、追い詰められた際に自決するように。

「そして、尚且つ、こちらへの攻撃を試みるならば、この手の選択を躊躇なくとれる。
 無人兵器の強みでありますな」

 こういう点ではAIは人間より恐ろしい、とドナルドは理解している。
 人間では躊躇するようなことも、必要と判断するならば躊躇いなく実行に移してしまえるのだ。

「だが」

 その状況下においても、ドナルドは冷静だった。
 AIにしても人間にしても平等な積み重ねの果てが、彼を冷静の領域に押しとどめていた。

「だが、その程度を想定していないと思われたならば、舐められたものだ」

 確かに試作案・陸上戦艦型が自爆すれば脅威。
 でも、それを止めてしまえるのもまた、地球連合であった。
 指揮官であるドナルドの発令の元、各所が一斉に動き出していた。

「ミストルティンを用意しろ、準備は整っているな?」

 そして、その矢は放たれようとしていた。

480: 弥次郎 :2022/06/25(土) 00:27:22 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。

一寸あっさりですが、戦闘にならんので…
とりあえず、この話はとっとと終わらせたいですなぁ。
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最終更新:2023年07月10日 20:08