208: 635 :2022/06/25(土) 15:23:58 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp

銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです欧州大戦その四 さらばドイツよ。旅立つ艦は、



「キールの超常兵器級と思しき艦艇に出撃の動き…か…。」


英国本土攻撃より二十四時間以上前、戦艦ネルソンの艦橋の艦長席で艦娘ネルソンは紅茶を飲みながら眼前のゼルモニターに映る情報に目をやる。
ネルソンの姿はオークニー諸島スカパ・フローにあった。
そこには旗艦を務めるネルソンだけでなく空母アークロイヤルなどの英艦娘やビスマルクなどの独艦娘、そして英国本国艦隊が集結していた。
理由はドイツキール軍港に超大型艦艇群それもとある創作の超大型光線戦艦や超高速巡洋戦艦等、超常兵器級と思しきモノが存在し動きを見せていたからだ。
他にもそれらより小型とはいえ大型艦艇の存在を複数存在し英国政府や在英鎮守府軍は警戒を強めていた。
故にそれらが出撃した際に対応に当たる為に英国にある水上戦力の大半がこの英国の北の果て下りまで来ているのだ。
現在英国本土に残っているのはもしもの時の為のウォースパイトとヴィクトリアス、J級駆逐艦ニ名、欧州棲姫ら深海棲艦そして大鷹達海上護衛部隊くらいなものである。


「…しかし気掛かりと言えば欧州本土、ベルギーやオランダ、フランスのダンケルクにもドイツは戦力を移動していると聞く。
アシカ作戦などということにならねば良いが。」


フムウーと言った感じで顎に手を当て考え込むネルソン。
そこへ艦橋の通信員がネルソンに明朝出撃命令が下ったと話しかける。


「フムそうか…。」


ネルソンはその言葉に最果ての海を見やる。
この先、北海の海がが戦場となるのだ。
明朝、全ての艦が錨を上げ北海を目指す。
そして戦闘の数時間前、ネルソンは己の浅慮への怒りから噛んだ唇から血を流すこととなる。
ことは第二次ゼーレヴェー、ネルソンのその想像の遥か斜め上の事態だった。

ドイツによるフランスでの核兵器使用、ドイツ艦隊より分離した超高速巡戦部隊、超巨大光学迷彩戦艦による米本土攻撃。
そして英国本土空襲時、ジェーナスとジャービス及び多数の深海棲艦が大破し残存英国本国艦隊に轟沈艦発生。
空挺作戦によるロンドンへの侵入と市街戦展開、そしてバッキンガム宮殿への吸血鬼の突入の報を艦上で聞くこととなる。
史上初めて行われたのだ、英国本土決戦が…。




ドイツ連邦共和国キール軍港、そこには多数の大型艦艇が停泊していた。
だがその多くが錨を用いたり埠頭のボラードやドルフィンにロープ等で船を停泊させるばかりか、
何か恐れる様にその船体を稚拙なルーン文字らしき意味も力も持たない模様の刻まれた鎖で雁字搦めにされされている。
そこへドイツ軍の軍人達が恐る恐るといった様子の大勢の外国人や民間人らしき人々を引き連れやって来た。
外国人や民間人達は皆痩せ細ったり、怪我を負うなどしている。
彼らはヒソヒソと話し合う。


「しかし本当に脱出出来るのか…?」

「それでもこれに掛けるしかない…このままじゃ収容所で死ぬのを待つだけだ。」

「助けてくれたドイツ軍の人も言ってたな。ドイツがイギリス本土攻撃に全力で向いてる今が最後のチャンスだって。」


民間人を引き連れた軍人の内、陸軍軍人と思われる人物が海軍と思われる人物に問う。


「ここにあるのが?」

「ああ、大光線や疾風が出現したと同時期に現れた戦艦だ。
大光線やここのはあの第四帝国首相殿が平行世界から魔法で呼び出したなんて与太にも出来ない話がある。
日本の架空戦記やゲームのオタクなんかが言うには大光線なんかは超常兵器級なんていう宇宙戦艦みたいな力と人外の意思持つ化け物みたいな兵器らしい。
だがここにあるのはそれより小型な十万トン級から二十万トン級。
デカイはデカイがあくまでも第二次世界大戦から冷戦期の技術の範疇の通常兵器らしい。
だから首相殿が召喚に失敗したモノの墓場とあの騎士団サマ方は揶揄してる。」

「いや失敗作だったらなんで壊したりせずにこんな封印するようなことを?」

「恐れてるんだよ。この艦達を壊したり沈めたりするのを。」

「何故に?」

「それは…ああっと!この艦だ。この艦。」

209: 635 :2022/06/25(土) 15:24:49 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp

ドイツ軍人達は二十インチ砲三連装三基を艦橋前方に集中配置した巨大戦艦の前で止まる。


「コレ?あっちのもっとデカいのじゃだめなのか?」

「あっちは動かすだけならともかくやり合うには人員が足りん。それにあのサイズだ客船や輸送船で足りない脱出する人間乗せるだけ乗せる予定だからな。」

「そうか…そういえば機関とか大丈夫なのか?蒸気タービンとかいう話だろ?」

「まだ生存しておられたZ1級乗員やリュッチェンス級駆逐艦の蒸気タービン扱ったことがある機関員や民間の旧式蒸気タービンLNG船の乗員掻き集め今回使用する艦艇分どうにか…ってとこだ。
それに…あの化け物艦艇共がイギリスに向かった今しかチャンスはない…。」

そしてその戦艦の艦橋を見上げドイツ海軍軍人はまるで目の前の艦に人格があるように話しかける。

「敵さんに操られて癪かもしれんが日本人も脱出させるためだ…力貸してくれ…。」

その眼には映らぬが艦橋の上から見下ろす視線があった。
その視線の主、この場に似合わぬ百合模様の着物を着た黒髪の日本人の少女は軍人達を静かに見下ろしていた。


その戦艦の艦橋、陸海空と節操ないドイツ軍人達が動き回る中、ドイツ海軍の制服を着せられ艦長席に座る一人の日本人の男の姿があった。
その姿はドイツ軍人達に比べ痩せ細ってはいたが背の背筋はピンとしており軍やそれに準ずる組織に在籍しているのが一目で分かる。
それもその筈、彼は海自の二等海佐の自衛官でありフランス大使館付の防衛駐在官であった。
ドイツによるヨーロッパ侵攻時に同盟国(同じEU)故にまだ安全と思われたフランス・パリにいた彼はドイツ軍、
いや憂国騎士団に捕らえられ強制収容所に入れられたが今日まで何とか生き残ってきた。
その彼が何故戦艦の艦橋にいるのか。


「サイトウ司令。避難民収容完了、全艦乗員配置に付き出撃準備整いました。」


この場のドイツ軍人達のトップ、海軍軍人が自衛官を司令と呼び、それに自衛官は苦笑で答える。
何故日本人かと言えばこの艦が日本の艦であったからだ。
そして軍人達にとってこの戦争、主義主張や経済対立による人間同士の戦争ならばまだ良かった。妥協点が見いだせるからだ。
だが人間の皮を被った悪魔、いやそれは悪魔に失礼であった、人間の皮を被ったナニか(憂国騎士団)による略奪や暴行が溢れかえった西部戦線に人を生贄に捧げた無人機や化け物が闊歩する東部戦線。
そして本土の民間人は明らかにその精神や脳を弄くられのではないかという者が少なくない。
昨日まで愛し合っていた夫を妻を恋人を子を無実の罪で国の為にと泣き叫ぶ彼らを心底喜ばしいという笑顔で政府に渡していく常軌を逸する光景がそこかしこで見受けられた。
正常な者もいるがそれを指摘することは出来ない、した瞬間に自分が同じ目に合うからだ。
そしてそれを幸福なことだと弄くられた彼らはするだろう。
ドイツという国はそれだけのことを成したのだ。

だからこそドイツ軍人達は立たねばならなかった。
ここにいる軍人達は身軽な者ばかりあるものは家族を失い、ある者は独り身、或いは家族共に或いは残る家族に押されてここにいる。
ドイツ人として僅かな者であろうとも抗らわなければならないという義務感からここにいる。
その時艦橋に痩せこけ死相すら出ている一人の男が入り、兵士の一人が呟き全員が敬礼を行う。


「国防大臣…。」

「楽にして貰って良い。最早私は大臣とは言えないよ…戦争を防げず、お飾りと化した今の私には…。」


兵士の呟きにその自嘲気味に男は答える。
それでも兵士達は敬礼を止めない。
現在この狂った国で唯一のまともな政府の人間が彼だからだ。
まあ全ての権限を奪われ最早御飾りと化しているのだが、それでも前線で戦う軍人達の為に尽力を尽くした。
しかし、彼は国防大臣であるのに戦争に関与も止めることも出来ずそれに苦悩して体調を崩していた。
そこまでして何故解任しないのかといえば首相殿がまともな人間が苦悩で弱っていくその姿を見て悦に浸っているというのが専らの噂だ
そんな噂される国防大臣が口を開く

210: 635 :2022/06/25(土) 15:25:33 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp


「君たちは…やはり行くのかね…?」


海軍軍人は答える。


「はい大臣、私たちは行きます。」

「この艦でキールを出た時点で君達はドイツ連邦の反逆者と見なされる。それでも行くのかね?」

「いえ、国防大臣。私達は反逆者として行くのではありません。私達はドイツ軍人としての義務を果たす為に行くのです。」

「ドイツ軍人としての義務…。」

「かつての大戦の反省としてドイツ軍人はドイツという国の出した人間の尊厳を損なう命令に対して抗う義務を負います。」


かつての大戦を反省とすべきそのドイツがソレ以上のことをしでかしてしまいましたが、と軍人は自嘲しながらもその瞳に熱いものを映し言葉を続ける。


「そして…彼らの様に戦いたいのです。」

「……。」

「人間の尊厳を辱めるのではなく、人間の尊厳を守る様な戦いを。あの対馬の彼らの如く」


ヒーロを夢見る子供の様に海軍軍人は言葉を漏らす。
そしてそうかと言うと国防大臣はその場を立ち去る為に踵を返し、その途中でそうそうと背中を軍人達に向けたまま話す。


「どちらにしても君達が行くならば私は止めなければならない…。」

「……。」

「…が、それが君達の義務であるならば仕方あるまい。」

「……。」

「ADM級二隻、私の権限で動かせるのはそれだけだ…それと銃後のことは出来うる限り受け持とう…。」

「…?」

「ドイツ軍人の、いやドイツ人として…いや違うな人間としての義務と責任を果たしてきたまえ。」

「!!」


その国防大臣の言葉にその場にの全員が再度敬礼する。
そして艦橋を出る間際大臣は振り向き体を自衛官に向けその罪を焼き付ける様にその身体を見ると文民故のぎこちない敬礼をする。


「貴方達にあの様な扱いをした我々ドイツ政府にその様な資格がないのは重々承知しています…しかしどうか彼らのことを頼みます…。」


そう言うと大臣は艦橋を後にし、自衛官は無言で敬礼を以て見送った

211: 635 :2022/06/25(土) 15:27:52 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。
なお人間の尊厳を犯す命令に抗命することは実際にドイツ軍人の義務です。

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最終更新:2022年07月01日 12:23