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銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです欧州大戦幕間 ご昭和下さい。彼女の名を・裏
大勢の幼いボロボロの衣服を着た子供たちがトラックの荷台に押し込められ運ばれる。
トラックの荷台の後ろでは軍人ら立ちが周囲を警戒している。
その軍人達の年齢は精々二十代から三十代、行っても四十を超えた辺り。
装甲車や同じ様に大人、兵士たちを乗せた別の車両も伴い線路沿いを南へと進む、何かから逃げる様に。
途中無人の鉄道がすれ違い後方から爆発音がしたり、見たこともない航空機が飛んで行ったが彼らは振り返らずに南を目指す。
その背の先にいるのは化け物だけ、人などいないのだから。
子供達の中に一人の子供が居た。
その子供はボロボロの赤と銀のソフトビニールの人形を大切そうに抱きしめている。
それを見とがめた年長の少年はそれを嘲笑う。
そんないないもしないものを大切にしているのかと言うと子供よりその人形を取り上げる。
子供は泣き叫び年長の少年に食って掛かる。そんなものがいないのは理解っている、それは両親が誕生日に買ってくれた大切なものだから返してくれと叫ぶ。
狭いトラックの荷台で押し合う二人、少年は人形を投げ捨てようとし子供は人形を取り戻そうとする。
それを見た兵士がやめろと怒鳴りつけると二人は直ぐに離れビクビクと恐怖に満ちた顔で兵士の顔色を伺う。
兵士がため息をつくと二人は体をビクリと硬直させ、兵士が少年に人形を渡す様に促すと少年は急いで兵士に人形を渡しソレを見て子供は絶望の表情になる。
それを無視し兵士は手慰みに人形を弄くりながら他の兵士と話始める。
「全く日本人とはいえ子供のあんな表情見るために兵士になったんじゃないんだが…。」
「全部党の上のやつらの責任さ、本当の意味で鬼子、いや鬼神になった日本と戦うべきじゃなかったんだ。」
「強硬派排除狙ってた張前主席が上だったらマシだったんかねえ…。」
「少なくとも即日本人を全員強制収容に入れて親子引き離すなんて真似はしなかっただろうし…妥協点くらいは探せたんじゃないか?」
そう彼らが運んでいるのは中共により収容所に入れられていた日本人達。
蚩尤復活の混乱の中でこの兵士たちは上海へ向かい受け入れて貰うための手土産として運んでいる。
兵士は少年より取り上げた人形を見ながら呟く。
「全く…彼らに憧れてたのに俺何やってるんだろうな。」
日本人を解放したその心の中には中共への憂さ晴らしと彼らの境遇への同情心、そして心の底に残っていた幼い頃の憧れた星への憧れ。
人形を片手に空を見上げる兵士、本来青い空を砂塵と大気汚染の粒子が覆う。
彼らは現実にはいない。兵士が見上げた空に星は輝いていなかった。
「さっさと歩け!!」
兵士がそう叫び急かす。
あれから時間が経ち、上海への道中に蚩尤の喚んだ魑魅魍魎達に襲われた。
しかし、それらは勝手に着いてきていた中共幹部達に襲い掛かり兵士や日本人達は命からがら逃れることが出来た。
その後も数は少ないが襲撃が続き脱落者こそ出なかったが車両が破壊されるなどし車両を放棄せざるを得ず徒歩での移動となり、
脚が遅い上に栄養不足の子供や老人らが足手まといなったが兵士達は放り出すことをしなかった。
放り出せば上海に着いてから後が怖いのもある。
日本人を見捨てたとどれ程責められるか、そしてもう一つは…。
「やつらが来たぞぉぉぉっ!!」
兵士の一人が叫び皆が恐怖に駆られた表情で振り向けば中国人には昔話で見慣れた、日本人には見たこともない魑魅魍魎の大群が蝗の群れの如く押し寄せる。
その数と速さにもう逃げられないと全員が悟る。
我先にと逃げ出すものも多くいるなか少なくない日本人の大人達はせめて子供だけでも守ろうと子供たちに覆いかぶさる。
それは人民解放軍の兵士達もだ、逃げ出すものもいるが子供を守ろうとして応戦する者もいる。
あの人形を持っていた者は人形を放り出し銃を構える。
ここで見捨てるのは簡単だ、しかし彼らはここで逃げれば己を許せなくなる者達だ。
心の底に残る幼き日に見た輝く星が、星への憧れがそうさせた。
その時一つの人影が放り出された人形の傍ら、魑魅魍魎達の前に立ちはだかる。
「おい!あんた…!?」
兵士の一人が声を掛けようとしたその刹那。
人影、銀の髪に角の生えた女はその手を一閃…振るうと雲霞の如き魑魅魍魎達の群れが即座に吹き飛ばされる。
353: 635 :2022/06/30(木) 17:57:23 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
「総員、射撃開始!!」
そして続くその声と共に散れ散れになった魑魅魍魎達は続く銃撃音や光と共に消し去られていく。
避難民や日本人達の前に出たのは後光な最上級上等兵曹…ではなくより重武装の被覆鋼なカエル顔の緑色のコマンドローダーM型だ。
その肩には日の丸に加え太陽を戴き交差する刀の刃と鞘そして桜があしらわれたマーク即ち陸上自衛隊、否この時こそは大日本帝国陸軍である。
日本人達や兵士達は突然のことに驚くがコマンドローダーの肩の日の丸を見て皆安堵の表情を浮かべる。
魑魅魍魎達の殲滅を確認すると彼らは動き出す。
「こちらは陸自、じゃなかった…大日本帝国陸軍である!この部隊の責任者は誰か!?」
コマンドローダーの拡声機能も使い部隊長は指示を飛ばす。
それにこの場の人民解放軍の責任者や日本人の纏め役をしている者が応じるが大日本帝国陸軍の名に変な顔をする。
そして部隊の他の者も自分の仕事を行う。
「全員、輸送車両に乗せるから一列に並んで下さい!!」
「捜索隊を編成周辺を捜索し他に生存者がいないか探せ!!」
そんな中、角の生えた女…ティアマトは足元に落ちていた人形を拾い上げるとそれを手に持つと持ち主の子供の下へと歩み寄る。
子供はただ呆然と目の前の存在、星の内海を映す瞳と豊穣を示す双角を持つ女神を見上げる。
「大事なものなのでしょう?」
そう言うとティアマトはボロボロの人形を差し出し子供はおずおずと人形を受け取った。
そしてティアマトはもう大丈夫と子供を優しく抱きしめる。
子供はティアマトの肌の暖かさに姿も形も違うのに何故か連れて行かれた母を思い出し涙を流し泣き始めた。
ただそれを優しくティアマトはあやす。
「ほら、君も早く車に乗って。」
泣き止んだ子供はM型コマンドローダーを着た軍人に促されるがティアマトに泣きそうな顔で一緒に行かないのかと問いかける。
しかし、それを軍人は嗜める。
「ティアマト様はここですることがあるんだ。」
その言葉に促され後ろ髪を引かれながら子供は輸送車両に乗り込むと車両は動き出す。
それを見送るティアマトに部隊長は問いかける。
「ティアマト様はここで?」
「もうあの場所と目と鼻の先、あの神をここで止めます。」
そう言うとティアマトは懐から何かを取り出す。
「それは…。」
「鎮まって後、本土で幼い子らと触れ合う機会がありその時に知り合った子らから貰いました。」
部隊長はそれに見覚えがあった。
それは部隊長も知る物語の主役の道具であろうがティアマトの手のそれは樹脂で出来た唯の玩具であろう。
どれだけの年月を経たのか塗装は剥げ、残った塗装も色褪せたティアマトが軽く握れば粉々になってしまう様な代物。
中にあっただろう電球もなくもう輝くことはないだろう。
それを手にティアマトは空を見上げる。
「子らは私の力を知った時にあの子らは恐れず、星は本当にいるのだと目を輝かせてくれました。」
354: 635 :2022/06/30(木) 17:58:24 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
そしてティアマトが出立する時にその時、
出会った子供達はティアマトの下を訪れティアマトの手に持つもの子供達の一人が親が子供の頃に親から貰い子供が継いだそれを渡し願ったそうだ。
怪獣(蚩尤)を止めて欲しいと。
その時二人が立つ地面が振動し大きな音がしてその方向を向くと蚩尤の姿が見えた。
「さ、行きないあれは私が止めます。」
「御武運を!」
部隊長はそう言うと残っていた車両に飛び乗りその場を後にそ、残されたのはティアマトのみ。
ティアマトはもう一度空を見上げ、手に持ったそれを高く掲げるとティアマトの足元が水面の様に揺らめき原初の大海が広がり、
彼女は高く掲げたそれのスイッチを押す。
それには何の力もない壊れた唯の玩具。だがそこに、【ベーターカプセル】に込められたヒトの二世代分の空に輝く星になろうという想い本物だった。
ティアマトは子らの想い今の存在になった。ならば星の輝きになれぬ道理はない。
ティアマトの身体が完全に原初の海に没し刹那の間、原初の海より巨大な手が顕れそれは何かを掴む様に拳を握りしめる。
日本人や人民解放軍の兵士を乗せた日本陸軍の車両が蚩尤より逃げるように遠ざかる。
蚩尤の姿が見えた時皆が悲鳴を上げ、子供は手にした人形を抱きしめる。
その時、蚩尤の行く手を塞ぐ様に光が立ち昇り、右手を空高く掲げそれは姿を現す。
その背を日本人や兵士達に見せ顕れた翼と竜の尾を持つ原初の母、巨神ティアマト。
だが人形を抱きしめる子供始め幼い子らは失いかけた友人の、日本人の大人たちや人民解放軍の兵士達は姿形も違う筈のその後ろ姿に古い友人の姿を幻視する。
琺瑯の様な銀と赤が白と青のティアマトの肌に重なり、兵士の瞳から涙が流れ呟きが漏れる。
「奥特曼…。」
「おじさんも知ってるの…?」
子供は聞き慣れた名に人民解放軍の兵士に問う。
日本人の子供の問に兵士は良く知っているとも、と答える。
彼らは存在したのだ。何処とも知れない場所で彼らはヒトを守り続け戦い続けていたのだ。
そして兵士は彼らから教えて貰ったことを思い出し自身の国のしたことを恥じ、大きな声援をティアマトへと送る。
その心には再びあの星が輝いていた。
兵士の声援を皮切りに次々に声が上がる。
「頑張れええええ!!」
「怪獣なんかに負けないで!!」
その大人たちの声に圧倒される子供たち、そして意を決し人形を抱きしめ子供は日本軍の軍人に問う。
「陸自のおじさん!」
「おじさんっておま「あの人の名前なんていうの!!」…ああっと、ティアマト様だ、ティアマト様。」
子供の剣幕にどもりながらも答える軍人、子供はその名を聞くと大人たちに負けない声で声援を送る。
その声援を聞いてどもってた軍人は苦笑する、少なくともマンじゃなくてウーマンじゃないかと。
「頑張って!!ウルトラマンティアマト!!」
少年の言葉に続き皆が彼女の名を唱和した。
355: 635 :2022/06/30(木) 18:04:12 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
以上になります転載はご自由にどうぞ。
次回英国本土空襲、馬鹿が飛び青ざめる太平洋戦争経験者達。
最終更新:2022年07月29日 09:57