186: ライスイン :2022/06/24(金) 18:32:59 HOST:g110-74-111-54.scn-net.ne.jp
注)ネタ多めです。
1939年8月25日 ドイツ第3帝国 首都ベルリン 総統官邸
「ポーランドめ、当初の約束を反故にしたばかりか図々しい要求まで・・・。」
「奴らは英仏による独立保証を得て強気になっています。このままでは奴らから攻め込んで来るかもしれません。」
ヒトラー総統の問いにリッペントロップ外相が答える。ドイツはポーランドとのダンツィヒ問題の円満な解決を目指して多大な努力を重ね、
ポーランド国境へ配備する部隊の削減の他に外相会談、続いてヒトラー自身によるワルシャワ訪問による首脳会談及び国際連合との
折衝を重ねて先月30日に”ダンツィヒ条約”の締結に至ったのだ。その内容は
01:ポーランドはダンツィヒがドイツ領であることを認め10月1日までに返還する。
02:ドイツはポーランドのダンツィヒ放棄の代償として同地に港湾を含めた管理区域を設置する。
03:管理区域には連隊規模のポーランド陸軍部隊及び海軍の駐留を認める。なお返還後にポーランドが保持しきれない艦艇については
ドイツが購入する。
04:条約締結時にダンツィヒに居住するポーランド人に関しては今後も居住及び無制限の出入国を認める。
05:ドイツは条約締結後、ポーランドに対して技術並びに経済支援を実施する。
というものであった。他にも細かな付帯事項はあるが今後もポーランド人の居住や軍の駐留が認められる事、そして経済が接好調なドイツによる
支援を受けられることが不況に喘ぐポーランド人を一応満足させていた(※1)。
しかし大ポーランド主義を掲げる強硬派が反発。特に右派政党を率い国会にも多大な影響力がある軍総監シミグウィ元帥が公然と反対した為に
状況は混乱した。そしてドイツの台頭を抑えたい英仏がポーランドに対して独立保証や軍事援助を決定した事でポーランド政府は手のひらを返したかのように
条約破棄をドイツに通告。更に強気になった同政府はドイツに対してダンツィヒからの全ドイツ人の退去と同地にある資産の譲渡を要求してきていた。
「救いようのない奴らだな、まあ嘗ての我々の隣にも同類が居たが。」
エルンスト・レーム副総統が吐き捨てるように言い放った。
「それでどうしましょうか嶋田さん・・・いや総統閣下。」
ルドルフ・ヘス財務大臣の言葉にかつて嶋田繁太郎と呼ばれていた男、現ドイツ総統アドルフ・ヒトラーは頭を抱えるのであった。
187: ライスイン :2022/06/24(金) 18:34:11 HOST:g110-74-111-54.scn-net.ne.jp
彼らが覚醒しだしたのは先の大戦がはじまる数年前からであった。その為戦争回避の努力も実らずドイツは英仏等との戦争に突入してしまう。だが徐々に表舞台に
現れ始めた彼らの努力は実を結ぶ。具体的に言えば東部戦線の早期終結・
アメリカの参戦遅延(※2)・複数回にも及ぶパリへの突入などである。
結果として帝政は崩壊したが遥かにマシな条件で講和に漕ぎ着けていた(※3)。
その後はルール工業地帯の占領を巧みにかわしつつ(※4)、大恐慌を利用して荒稼ぎを行っていた。因みにこの場に集まっている
夢幻会メンバーは
○ヒトラー総統(嶋田) ○エルンスト・レーム副総統(近衛) ○ルドルフ・ヘス財務相(辻) ○リッペントロップ外相(吉田茂)
○ヒムラー親衛隊長官(東条) ○ラインハルト・ハイドリヒ内相(阿部)
○ブロンベルク元帥/国防相(閑院宮) ○フリッチェ上級大将/陸軍総司令官(杉山) ○レーダー元帥/海軍総司令官(伏見宮)
○カナリス中将/国防軍情報部長(堀) ○ゲーリング元帥/空軍総司令官(山本) ○エルンスト・ウーデット中将/空軍次官(福留)
○ヴァルター・ダレ農業大臣(北一輝) ○ウィリー・メッサーシュミット(倉崎重蔵)
等であった。この場にいないメンバーとしては
○テオドール・アイケSS少将/武装SS髑髏師団長(富永) ○オスカー・クメッツ少将(南雲) などが存在していた。
「では改めて現在の軍備状況を説明します」
フリッチェ(杉山が)が発言する。
「現在の陸軍は総兵力200万人です。国内配備の守備隊を除いてほぼ自動車化が完了しています。また装甲師団8個、装甲擲弾兵師団12個の編成も完了しています。」
装甲師団と装甲擲弾兵師団の主力戦車は4号G型(憂鬱97式)及びH型(憂鬱97式改)が充足。また5号(憂鬱3式 主砲71口径88㎜)の試作車すら完成している状態であった。
それに伴い3号戦車は大半が3号突撃砲(65口径76.2㎜)に改装されて歩兵師団の突撃砲部隊に配備されるか友好国への輸出対象となっていた。
また歩兵の装備もSTG38(AK47)やMP36(MP40)に加え、パンツァーファウスト(RPG7)と結構充実していた。
「日本との協力のお蔭だな。」
ブロンベルク(閑院宮)が感慨深く言った。共産主義による影響を避ける為、史実のようなソ連との協力は一切行わず、大慶油田の開発・生産協力や各種技術支援と引き換えに
北海道や満州などで表向きは日本軍の計画扱いで重装備の開発・運用試験を行うという日独開発協力条約を締結していた。
お蔭で資源も豊富で装備も強力(※5)になった日本軍は日中戦争を優位に戦いつつも無理な進撃はせず、沿岸部および重要都市の占領に止めつつ、謀略を駆使して内部裂を誘い
長距離、爆撃で工場や道路・ダムに発電施設などインフラを破壊して回っていた。
おまけにノモンハン事変では強化された日本軍がソ連軍を撃破し、ソ連司令官ジューコフが戦死。おまけに報復として北樺太を占領し講和で同地を入手するという戦果を挙げていた。
「観戦武官や義勇軍経由で実戦経験や各種情報は入手できましたし、英仏とポーランドに挟み撃ちされても問題ありません。」
ブロンベルク(閑院宮)が自信を持って言い放つ。
188: ライスイン :2022/06/24(金) 18:34:41 HOST:g110-74-111-54.scn-net.ne.jp
「イタリアもいざという時は我が国の側で参戦すると確約していますし、装備も強力になっていますから活躍が期待できそうです。」
リッペントロップ(吉田)が微妙な顔で言葉を放った。
イタリアはエチオピア侵攻で国際的に孤立していたが、ドイツの助言でリビアにて油田が発見された事で転機を迎えていた。
おもな輸出先のドイツから代金の他に様々な技術を受け取ることが出来た。燃料不足で訓練もままならなかった海軍が充分な訓練を行えるようになり、各艦にレーダー装備が実現。
陸軍でもドイツの技術支援で主力の戦車がP40になり、空軍も全ての機体に無線機搭載が実現するなど確実に強化されていた。
「それに
アメリカもKKK問題やメキシコ紛争にニューヨークでのバイオハザード等のお蔭で外へ向ける力を失いつつありますから今が良い機会かと。」
カナリス(堀)が発言する。
アメリカ国内ではKKKの活動が突如活発になり、各地で黒人有力者の暗殺や黒人系への虐待・殺人が増加していた。それが穏健派の黒人も過激派に走らせ、
黒の騎士団(※6)といった黒人至上主義団体が結成され、KKKへの反撃や政府へのテロを行うまでになっていた。
更にメキシコとの国境では双方の国境警備隊同士の銃撃戦が頻発し、軍を投入する事態にまで発展していた(※7)。
おまけにニューヨークの某研究所で管理の不徹底からペスト菌が流出して感染が拡大するなど非常事態が続発していた。
そのおかげで対中援助が完全停止し(※8)し、日本に対しても融和的な姿勢に転じていたのだ。
「そうですね・・・、それにこれ以上国民の怒りを抑えることは出来そうにありません。」
ヒトラー(嶋田)の言葉を最後に方針は決定した。そして・・・
1939年8月31日、ヒトラー(嶋田)による演説が行われた。
「我がドイツは度重なる譲歩をしたのにも拘らず、ポーランドは戦争を望む英仏の誘惑に負けて寛大な譲歩案を蹴った。しかもダンツィヒからの全ドイツ人の退去と資産の譲渡を突きつけてきた。
これは誠に図図しく愚かな要求である。此処に至り我がドイツは生存をかけてポーランド及び戦争を望む英仏と戦う事を決断した。」
この演説の直後、イギリス・フランス・ポーランド政府へ駐在ドイツ大使から宣戦布告文が手渡された。
フランス方面では防衛に徹し、ポーランド方面で大攻勢に出るドイツ軍。ポーランド軍は必死に応戦するも、開戦前の強気な態度とは裏腹に動員や兵器の充足が完了していなかった。
ご自慢の騎兵部隊は装甲車と突撃砲の援護を受けた歩兵に蹴散らされ、切り札の英仏供与の戦車を装備した機甲軍団もマチルダIやルノー R35ではドイツ戦車には歯が立たず連戦連敗。
ドイツの侵攻を確認したスターリンは漁夫の利を企むも、ノモンハンでの紛争で日本に完敗したことや、自身が行った追加の大粛清(※9)の影響で身動きが取れず。
更に牽制とばかりに日本が関東軍を増強したことで警戒する必要が生じたため、ポーランド侵攻は断念せざるを得なかった。
ドイツ軍の進撃は順調に進み、開戦から2週間後の9月14日には首都ワルシャワを残して全土を制圧。降伏勧告を行うも事実上の指導者であるシミグウィ元帥は拒否。
それを受けてドイツ軍はワルシャワ市内へと一斉に攻撃を開始。そして翌日未明には国会議事堂に突入した武装親衛隊所属の装甲猟兵侍女中隊(※10)によってシミグウィ元帥他が捕縛され、
ポーランドは降伏するのだった。
189: ライスイン :2022/06/24(金) 18:35:12 HOST:g110-74-111-54.scn-net.ne.jp
※1:経済が絶好調のドイツの恩恵を受けられることや、自国の軍・警察の駐留で権利や安全が保障されるため、懐だけでなく精神的にも満足できる内容だった。
※2:史実より早く
アメリカ国内でインフルエンザが大流行し、派遣予定の部隊の大半が罹患した為。
※3:領土賠償は史実と同じだが賠償金は1/4。軍備に関しては「参謀本部ありで兵員20万まで」「兵器の保持数・貯蔵弾薬は史実の3倍」「戦車は10両、戦闘用航空機20機まで保有許可」
海軍はナッサウ級のナッサウとポーゼンの保有が認められている。
※4:占領開始数日前にフランスとベルギーの政界で閣僚を含めた多数の湯力政治家の致命的なスキャンダルが大量に暴露されて大混乱に陥り、実行に移すことができなくなった。
※5:九七式中戦車(一式中戦車相当)、九七式砲戦車(ホニIII相当)、九七式戦闘機(隼3型相当)、九七式艦上戦闘機(零戦52型相 機銃はMG151)に格安でライセンス生産権を得た
ドイツ製小火器や対戦車火器(パンツァーファウスト100)と憂鬱ほどではないが史実とは段違いに強力になっており、共同開発した無線機やレーダーなど正面装備以外も
充実し始めていた。
※6:黒人至上主義の武装組織。「
アメリカは黒人の物で白人を駆逐する」という主張を掲げ、全米各地で警察署や銀行を襲撃しKKKと熾烈な市街戦を繰り広げて多くの犠牲者を出している。
※7:日本特務機関の工作で麻薬でラリッた米軍兵士がメキシコ側に向けて銃を乱射して多数の死傷者が出たことが切欠。
※8:各種騒乱に加えて援助の一部を大半を国民党幹部が懐に入れたり、受け取った資金を民主党への資金援助に使って国民党が選挙に介入していたことが暴露された為。
※9:ノモンハンでの敗北に激怒した彼は八つ当たり的に残っていた有能な将校をNKVDに命じる形で処刑し始め、それに対しついに切れた赤軍将校が各地で反乱を起こす。
更に白衛軍系勢力の残党や少数民族にコサックなども蜂起し、ソ連領内は群雄割拠な状態に陥りつつあった。
※10:全ドイツ軍・親衛隊に所属する女性将兵の中から選抜された特別部隊。MMJの野望や不況対策などにより、講和直後から女性の入隊を許可し必要な教育や法制度を整えた努力が実った結果。
全員が(比較的)容姿端麗で広報部隊的な役割を期待されていたが意外なほど戦闘能力が高く、試験的に実戦に投入されて大きな戦果を上げた。制服は戦ヴァルのアリシア。
なお彼女たちに捕縛されたシミグウィ元帥は ”メイドに捕縛された元帥閣下” としてその写真と共に有名になり歴史に名を遺した。
いかがでしょうか?
日ソ同盟や孤立の外伝の構想が進まなかったので、過去に途中まで書いていたSSを基にして作ってみました。続編を書くかは未定です。
なお覚醒が遅く、影響力を発揮しきれずにWW1が終わったにもかかわらず史実より講和内容が緩いのは
「占領はできなかったが複数回にわたるパリ突入によりパリがボロボロになり、フランス国民が凄まじい厭戦気分に陥った」
「ロシア軍がブルシーロフ攻勢に失敗し、壊滅的な損害を受け攻勢を長期にわたって停止した(ただしドイツ側も物資の消耗が多く以後は守勢に専念)」
及びその他が原因です。なおこの時点でドイツ海軍主要艦は
戦艦:ビスマルク級「ビスマルク」「ティルピッツ」 日本に建造を依頼した長門型の準同型艦。主砲以外の兵装及び機関とレーダーなどはドイツ製で速力31kt。
空母:「グラーフ・ツェッペリン」「ペーター・シュトラッサー」 憂鬱祥鳳型相当。艦載機はMe109T(憂鬱九六式艦戦64型)、Ju87C(憂鬱流星)など。
軽空母:ザイドリッツ 商船改造の練習空母。
潜水艦:U-666級(主力 史実米バーベル級相当)他
という設定です。
掲載お願いします。
最終更新:2022年07月01日 12:44