702: ホワイトベアー :2022/06/27(月) 21:22:06 HOST:sp1-75-212-30.msb.spmode.ne.jp
日米枢軸ルートネタ 閑話《帝国軍の新たなる段階》
寄葉部隊、正式名称は大日本帝国陸軍第13独立機動旅団と言い、大日本帝国陸軍緊急即応軍に属する歩兵旅団である。
本部隊は大日本帝国軍初めて前線要員、後方要員、司令部要員の全人員を自動人形で完結させている部隊であり、習志野基地に本部をおいている。
部隊モットーは「我らが日本の尖兵」および「日本に栄光を」。
寄葉部隊は通常戦闘と特殊作戦の両方を遂行できる特殊戦仕様自動人形1個連隊を中核に、1個砲兵大隊などの支援部隊を組み込むことで編成された緊急即応旅団であり、戦略・戦術輸送機やヘリコプター等の航空機を使った空中機動作戦をその主な兵力投射手段として、有事の際には1個増強大隊規模の部隊を世界の何処であっても半日以内に緊急展開可能な体制を常時維持している。
本部隊に所属する自動人形は一目でそれが理解できるように特徴として専用の黒い制服が支給されている。さらに、他の部隊に先駆けて試験的に日本および日本人を第一とするように特別な服従プログラムが導入されており、他の自動人形よりも日本のため、そして日本人のためにに使い潰される事を不満に持たず、むしろ名誉な事だと考える思考様式をしている。
この部隊の創設の切っ掛けは日米同時多発テロへの報復とアフガニスタンでのテロリスト集団の掃討を目的として、2007年から日米主導の下で編成された国連軍により行われた「正義の裁き」作戦(通称アフガン侵攻)であった。
この国連軍によるアフガンへの軍事侵攻は、人類史上初めて戦闘用アンドロイド(ガイノイド)等の自律思考型AI搭載兵器が本格的に投入された戦争であり、後にメディアなどではドールズ・ウォー(ドールズ戦争)と呼ばれる事となる。
この一連の戦いは、かつてハワイ条約機構が冷戦時にバラマイタM47(米製AK-47)やAT7(米製RPG-7)のコピー品などで武装するイスラム過激派が隠れる市街地や山岳地帯などを主戦場とした非対応戦闘がその大半を占め、2年と言う長い年月にも渡ってアフガン各地で繰り広げられた。
しかし、それまでと違い人間は(比較的)安全な後方で指揮・支援を行い、危険な前線任務は自律思考型無人兵器が行うと言う新しいドクトリンや化学兵器による掃討戦術を採用した日本軍は人間の死傷者が8名(うち3人は無謀にもアメリカ製卵を使ってTKGを食べた結果による食あたり)と言う歴史的な低損害でイスラム系テロリストの制圧に成功する。
一般的には先進的な装備を有するハワイ条約機構軍が極めて少ない犠牲で勝利できたと表されるこの戦争であるが、一方で当事者であった大日本帝国軍ではとある問題が発生していた。
それは人間で構成される後方要員および司令部要員の精神的な損耗の激しさである。
特に各実戦部隊司令官や整備担当者の損耗は激しく、極端な例ではあるが前線を担当していたとある部隊では半年で3人の指揮官が精神的に“壊れて“しまう事態すらも発生してしまっていた。
当然、この事態を重く見た帝国軍は事態の解決の為に原因の究明に即座に乗り出した。幸いにして原因はそれほど時間をかけることなく判明する。
その原因は単純なモノであった。人としての良心や道徳と言ったしっかりとした教育を受けた先進国の軍の将兵として、いや先進国の人間として持っていて当たり前のものが彼らを追い詰め、損耗させていたのだ。
もともと大日本帝国製の自動人形は一部の純軍用仕様機を除いて、コスト削減を目的として民需用ボディーを使用している関係からその全てが十代の少女を模して作られている。
さらに軍用仕様でありながら現地人との友好的な交流を行えるように民間と同性能の疑似感情シミュレーションシステムをも搭載しており、これらによって戦地に派遣されていた自動人形も人間と見分けのつかないものほどの感情表現能力を有していた。
一方で、そんな人間と変わらぬ容姿を持ち、人間とそっくりに感情を持っている彼女等の指揮をとる司令官や部隊長、彼女等の修理・メンエナンスを行うのは基本的に志願して兵士となった男性たちであり、そのなかには彼女等の見た目と同年代の子供を持つ者も多くいた。
当然ながら彼らは彼女等が自動人形であり、戦う為に生む出された兵器である事は頭では理解している。しかし、楽しい事や嬉しい事がおきると喜び、笑う。悲しい事がおきると嘆き悲しみ、泣くなど人間と変わらない“生きている“姿を間近で見てしまった彼らの感情はとてもではないは納得できる筈もなかった。
皮肉な事に敵に対して良心の呵責をもたらす為に採用された自動人形の姿行動は、敵ではなく自軍に対しても大きな効果を発揮してしまっていたのだ。
703: ホワイトベアー :2022/06/27(月) 21:22:39 HOST:sp1-75-212-30.msb.spmode.ne.jp
そして、そんな彼らをさらに追い詰めたのが自動人形に導入されていた《人格及び経験の引き続用システム》、通称再誕システムであった。
これはもともと事故等によってハードが修復不可能状態に陥った場合や対応年数の経過でハードの更新が必要になった場合に備えて用意されていたシステムであり、新しいハードにバックアップされていた旧来の記憶や人格データをインストールすることで該当する自動人形を復活させると言うシステムである。分かりやすく言えば買い換えたスマホにそれまでのソシャゲのデータを引き継ぐ様なものだ。
当然ながらこのシステムは軍に配備されている自動人形にも採用されており、例え戦場で破壊されようとも予備の祖体があれば最短で半日、最長でも5日で原隊復帰する事が可能であった。
自動人形部隊の練度維持と実戦データの収集を目的としたこのシステムは、しかし、自動人形と深くか変わる人形整備士や隊長クラスの人間に大きなストレスを与えてしまう。
自分の判断ミスで、または自分等が治すことができずに死んだ(機能停止した)戦友と同じ顔と人格を持ち、さらに記憶も共有しているモノが一週間もせずに再び自分の目の前に現れ、何事もないかの様に振る舞う。そんな異常な状態に、ただでさえ倫理観や良心の呵責から精神的に追い詰められる人間が放り込まれるのだ。その精神的な損耗は想像するのも難しいだろう。
原因をすぐに判明できた帝国軍は即座にどの様に問題を解決するかを検討するために無人兵器運用検討委員会を設置し、解決の為に動き出した。
まず始めに彼らの中で検討された案は戦闘用ガイノイドの配備を中止し、純軍事仕様の無人機械歩兵を配備する事で事態の解決を図る事であった。無人機械歩兵は自動人形と違い人に似せた見た目をしておらず、さらに疑似感情ソフトを搭載していないことから現地に展開する将兵への精神的な負担を軽くできるとしてある程度の賛同を得る事を得られる。
しかし、民需用と生産ラインを共有することで圧倒的な安さを提供可能な自動人形と違い、専用の生産ラインを必要とし、さらに別途でソフトウェアの開発も行わなければならない無人機械歩兵の配備は予算的な問題とスケジュール的にに合わないと判断され、結局お蔵入りしてしまう。
その次に検討されたのは人工皮膚等を装備しない状態の自動人形配備であった。しかし、こちらはその見た目の不気味さから現地民間人との友好関係の樹立が困難になると言う交渉部門の判断とそんなモノを配備すればブランドに影響が出るとするIOP側の強固な反発からお蔵入り。
疑似感情ソフトの非搭載型モデルの配備及び既存配備機に対してのアップデートも検討されたが、これは作戦遂行能力の低下を招きかねないとして保留されてしまった。
その後もいくつかの案が出されるが、それらは様々な理由からお蔵入りするか保留とされてしまい、結局、この委員会のイラン侵攻終戦時までの成果はカウンセラーの増員と言う玉虫色の案を出したのみであった。
戦後、使用できる予算が増えた無人兵器運用検討委員会ではそうそうにイラン侵攻時と同様に蛙鳴蝉噪が繰り広げられてしまう。
いや、むしろ予算が増えできる事が広がってしまったからゆえに戦中以上に様々な意見が飛び交いなにも決められなかった。
そんな中で、会議の一員として参加していた帝国国防総省技術研究本部の研究員より、作戦指揮用自動人形の配備と自動人形のみで編成された部隊の創設と言うそれまでの帝国軍における自律思考型兵器運用の定石を無視した提案が出された。
当時の帝国軍では自動人形の運用の制限として、戦闘中など例外を除いて行動を行う場合は必ず事前の人間の許可か行動前に人間の承認を必要とするように規定されており、一定以上の部隊の運用では人間の隊長が指揮をとるように規定されていた。
無論、中隊や小隊、分隊などの比較的小規模な部隊は自律思考兵器によって無人化されていた。しかし、それ以上の規模の部隊運用は、表向きは完全な自律作戦はいまだに困難と言う自動人形の性能に由来する制限として、実際には自動人形が暴走した場合に対して備えられているセーフティーの一環として禁止されており、人間の手によって管理させていたのだ。
704: ホワイトベアー :2022/06/27(月) 21:23:16 HOST:sp1-75-212-30.msb.spmode.ne.jp
それを変えよと言う話は当初はその他の参加者からは気のきかない『ジョーク』と認識される
対して件の発案者はIOPの協力の下に様々な資料を用意して「自動人形の性能不足は政府が課している制限が問題であり、反乱に対しての解決方法も技術的な解決の目処はたっている」と言い、さらに「それでも反落が怖いのなら完全な無人部隊の配備は帝国国外駐留軍及び帝国内の海外派遣即応部隊に限定し、帝国本土防衛兵力および予備戦力は従来の編成を続ければいい」と続けた。
この発言と資料群を受けてもなお渋い顔をする人間は少なくない数いたものの、予算関係者や政治家らはすでに配備されている自動人形のアップデート費用の問題や世間からの受けを気にして無人作戦部隊を支持したため、この場で拒絶することは不可能となってしまい、結果として作戦指揮用自動人形の率いる通常の自動人形部隊と人間が指揮をとる疑似感情シミュレーション非搭載自動人形の模擬戦闘を持って対応を決める事とした。
そんな中で2011年3月11日、後に東日本大震災と呼ばれる未曾有の大災害がおきてしまった。
この大災害は
夢幻会の介入があってもなお2万を越える死者・行方不明者を出してしまうほどの規模であり、その救助活動あたって帝国軍でも多くの自動人形達が被災者の救援に動員されることになった。
この救援活動では東北部軍管区に配備されていた試作型の疑似感情ソフト非搭載型も動員した結果、意図せずに疑似感情ソフト非搭載型の実用テストとも言えるデータが収集された。
その結果、軍上層部及び政府は現地住民との関係の為にはやはり疑似感情ソフトは必要だと判断、疑似感情非搭載型自動人形の調達撤回を決定(※1)。最終的に作戦指揮用自動人形の開発・配備と試験用無人作戦部隊の創設が決定する。
西暦2012年5月6日、政府のゴーサインを受けた国防総省技術研究本部は陸海軍やIOPと共同して無人作戦部隊創造計画である《寄葉計画》を開始、アフガン侵攻において中隊指揮官として活躍し、自らこの部隊の司令官へと志願したTD-1811、通称シロの人格データを試作部隊指揮型自動人形であるCAD-011CXへと祖体を換装、彼女を頂点として歩兵大隊3個、砲兵大隊、工兵大隊、支援大隊を1個ずつの7個大隊と司令部、司令部中隊から構成される運用データ収集実験部隊として創設されたのが《寄葉部隊》の始まりであった。
その後、《寄葉計画》はいくつもの困難に当たったが、それでも予算と技術者と担当者の睡眠時間と休暇を代価として着実に進んでいき、西暦2016年には富士特別訓練センター(※2)での陸軍教導旅団との対抗方式訓練を部隊訓練評価隊の過去最高の点数で終了させた事から計画の完了が宣言され、同年より帝国軍は無人自律部隊の編成と配備を本格的に開始する。
一通りのデータ収集を終え、その任務を完遂した《寄葉部隊》は、計画終了と同時に解散され、所属人形達は原隊復帰、もしくは別部隊に移動される予定であった。
だが、日本で初めて自動人形のみで編成された独立した活動を行うことができる部隊と言う歴史的な価値を有していた事もあって、「解体するのではなく常設の部隊として繰り上げるべきではないか」と言う意見が帝国軍上層部の一部より出始めており、さらにマスコミやSNSなどで次世代の軍隊のモデルとして大々的にかつ好意的に広まっていたことから、同部隊の解体は莫大な予算をかけた《寄葉計画》に失敗したと誤った認識を世論に与えかねない事から部隊の解体は撤回される。
寄葉部隊の存続がすんなり決まった一方で、本部隊の配備先の決定はそうはいかなかった。なぜなら、各方面軍や戦闘部隊を隷下におく機能別軍が我も我もと寄葉部隊の編入を要望してきた為である。
特に、いまだにイスラム過激派が潜伏している中東をその活動範囲に納めている中央軍や独立主義勢力と現地政府間で散発的な戦いが続くオーストリア領アフリカに駐留するアフリカ軍、有事の際には真っ先に動員される中央即応軍は少しでも多くの、かつ優秀な兵力を欲していたことから陳述合戦を繰り広げられる。
この背景には本部隊の作戦遂行能力の高さの他に、各軍の上層部にいたMMJ構成員の(2BやA2を我が軍(部隊)に!!)と言う邪な考えが働いていたりするが、それは
夢幻会良識派の胃の為にも言わぬが花であろう。
705: ホワイトベアー :2022/06/27(月) 21:24:16 HOST:sp1-75-212-30.msb.spmode.ne.jp
ともかく壮大な陳述合戦の結果、勝利したのは即応部隊である中央即応軍であった。
表向きな理由としては、本軍は特定の管轄を持たず、有事の際に本土より現地に派遣される機動運用部隊であり、空中機動を可能とする寄葉部隊はその運用的に特定の地域に活動を制限される地域軍ではなく、中央即応軍でこそその真価を発揮できるからとされた。
しかし、この判断の裏には特定の地域軍に編入したら、編入された軍とされなかった軍で禍根を残すことになりかねず、それなら本土に駐留する中央即応軍に編入する事で一種の棚上げをしてしまおうと言う統合参謀本部と国防総省の判断もあったりする。
こうして、中央即応軍に編入された寄葉部隊は司令部こみで自動人形のみで構成される部隊が珍しくなくなった現在でもその正式名称を第1独立即応機動旅団に改名しながら、世界で初めて人形による独立した部隊と言う事もあって多くの自動人形達の憧れとなっている。
寄葉計画と寄葉部隊が日本の未来に与えた影響は良くも悪くも大きかった。この計画の完遂により、多くの日本国民は戦争から解放される事になり、日本人将兵が戦場で死亡する可能性がほぼ0になるなど軍事的に日本国民が負う負担は限りなく小さくなった。
その一方で、本計画の達成によりただでさえ低かった帝国軍の軍事的介入に対する心理的抵抗感はほぼ日本人の心から消えてしまい、以後のハワイ条約機構軍の軍事介入や軍事力の行使の圧倒的な増加と言う結果を招くことになっていく。
706: ホワイトベアー :2022/06/27(月) 21:24:49 HOST:sp1-75-212-30.msb.spmode.ne.jp
(※1)
噂でしかないが、宮中おわす尊き御方が既存自動人形の疑似感情シミュレーション非搭載型自動人形へのアップデート計画に反対の立場をとられたと言う。この噂が本当なら政府や軍上層部の決断には宮中の意向もあるのかもしれない。
(※2)
帝国陸軍が有している本土最大の訓練場。史実アメリカ軍ナショナル・トレーニング・センターを参考としており、実際に死人が出ないことと飛び交うのが銃弾や砲弾でないこと以外、現実と何ら変わらない戦闘をおこなう事ができる。
707: ホワイトベアー :2022/06/27(月) 21:28:47 HOST:sp1-75-212-30.msb.spmode.ne.jp
以上になります。wikiへの転載はOKです。
だいぶ前に投稿したネタですが、Wikiへの転載許可を出していなかったので、転載許可を出すついでにちょいちょい修正を加えたリメイクとして最投稿させていただきました。
ちなみに司令官であるシロの見た目はニーアオートマタのヨルハ部隊司令官です。
最終更新:2022年07月01日 13:14