335: 弥次郎 :2022/07/01(金) 22:20:14 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

憂鬱SRW アポカリプス 星暦恒星戦役編SS「ブル・ブレイク」6


  • 星暦惑星 現地時間星暦2147年6月19日 連合呼称「セントラルエリア」


 その日を以て、オペレーション・ブル・ブレイクは完遂が宣言された。
 四か国間の間に存在した「セントラルエリア」からのレギオンの掃討は完了し、人類の版図は大きく奪還されたのであった。
それは即ち、各国に存在していた戦線の一つが完全に消滅し、その余力がほかの方面へと振り分けられるようになったということ。
これまでの失地奪還などとは比較にならない、恒久的な解決がなされたということであった。

 これに伴い四か国間を結んでいた旧国家間高速鉄道は迅速な復旧作業を経て再稼働を実現。
連合の輸送機や陸上輸送艦に依存していた国家間の移動・輸送体制から脱却し、己の力で作り上げたインフラへの移行を成功させた。
これにより各国間の移動はさらにスムーズ化され、より活発化することになる。

 さらに大きいのは、放棄されていた穀倉地帯や耕作地帯といったレギオンが手を付けることがないまま残されていた土地の奪還だ。
レギオンとの戦争状態において、食糧生産の重要性はただでさえ高まっている。それだけの量を軍隊が消費するからだ。
これにより食料の生産量が向上し、戦争が始まって以来少なからず発生していた物価の高騰に歯止めがかかることが見込まれていた。

 そのほかにも収穫はあった。
 作戦においては後方支援を担当する自動工場型レギオンや発電プラント型などを多数鹵獲したのだ。
レギオンという現行の星暦惑星各国の技術を超えた個体を生産する能力と技術が詰め込まれたものを人類は手にしたのだ。
旧ギアーデ帝国の技術の粋を集めたそれは、どうやっても各国が欲するところの物品であったのだ。
特にレールガンの製造技術、フェルドレスにも転用することが可能なレギオンの構造、さらには発電プラント型の核融合炉技術などは特に人気があった。
地球連合からの技術供与だけに甘んじるほど、星暦惑星各国は甘い精神をしているわけではない。
自前の技術を磨き、対抗となりうるものを勝ち取っていかなければ、国家としての体面を保てず、戦後の体制において後れを取ることになる。
 ただでさえ、地球連合が供与したパラライズバレットやその強化型であるミストルティンなどでレギオンの個体が大量に鹵獲されたのだ。
これを見逃し、生かさないと言う手はどの国にも存在していなかったのであった。
得られたレギオンの個体は分配され、分析や解析にかけられた。撃破した残骸などよりもよほど状態が良い状態であったがために、それの価値は高かったのだ。

 加えて、各国は地球連合より供与された技術の実戦投入の機会を得ていた。
 既存のフェルドレスに盛り込まれた技術もそうであるが、MTやKMFといった新兵科・新機軸の兵器群を実戦に放り込んだのだ。
これが自国の防衛線を維持するための戦いであるならば文句の一つもたれたかもしれないが、今回は攻勢だ。
尚且つ地球連合というバックアップの上で行えるのだから、これ以上にない好機。
こちらも戦後を見越し、各国は競い合うようにその運用ノウハウの習得にいそしむこととなったのであった。

336: 弥次郎 :2022/07/01(金) 22:21:03 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

 しかし、ダーツボードの中央、ブルを打ち抜いたからといって人類側は浮かれるだけでは済まなかった。
 それもそのはず、恐るべき事態が発生したためである。宇宙怪獣の、星暦恒星系への到達だ。
 より正確に言うならば、星暦恒星系から見た外宇宙の領域というべきところに宇宙怪獣の偵察部隊が出現しただけにすぎない。
その群れは捕捉されてからほどなく迎撃部隊が対処し、撃滅することに成功している。
 だが、偵察部隊が来たというからには、次に来るのはさらなる群れ。

 さらに宇宙怪獣というスケールを鑑みれば、すでに恒星系の一つや二つはすでに射程の内側に入っていると言っても過言ではない。
むしろ直近に攻め込まれた、と捉えるべきであった。相手はほぼ光速で飛行し、その1つの群れに含まれる数というのは120億。
そして生命体がいると分かれば、この群れがこれまたものすごい数押し寄せてくるというのが当然の流れとなるわけである。
 そして地球連合と言えども、それだけの数の宇宙怪獣を完全に撃滅することができるかと言えば、Noというしかないのである。
無論迎撃すること自体はできる。だが、相手はその群れの大きさを測るために天文単位というスケールを使わねばならない相手。
それだけの数を相手にして、いつまでも星暦恒星系を守り切れるかと言えば、残念ながらこれもNoというしかない。

 斯くして、地球連合星暦恒星系派遣軍はこれを星暦惑星各国に、それこそ惑星上に存在するすべての国家に通達した。
折しも、摩天貝楼の攻略と制圧に成功し、さらには仮称リブラという大型戦艦を鹵獲に成功するなど、大いに戦勝で盛り上がっていたころであった。
さらに北方、ロア=グレキア連合王国領内の山脈においては「無慈悲な女王」---レギオンのAIを開発したゼレーネ・ケルビンバウムを乗せた個体を鹵獲していた。
彼女からさらに情報を抜き出すことにより、レギオンに対して完全な勝利さえも見えてくる可能性があったほどに。
レギオンの討伐は順調どころではなく進行しており、まぎれもなく希望が見えてきたところでの、さらなる絶望であった。

 星暦惑星各国は程度は様々でありながらも、ついに訪れた宇宙怪獣という脅威に瞠目するしかなかった。
 何しろ、レギオンとは比較にならない脅威だ。自分たちの身を守ることさえできないほどに強く恐ろしい相手。
彼ら星暦惑星各国にできることは、地球連合の指示に従い、エクソダス---土地どころか惑星から逃げ出す準備を始めることであった。

 しかし、それはそれとして、為しておかねばならないことがあるのも事実だった。
 それは、サンマグノリア共和国の案件である。
 殊更にレギオンに関わることになった各国からすれば、いや、そうでなくとも何らかのつながりのあった国からすれば噴飯もののしでかしをやった国だ。
エクソダスの後に追求するのは少々骨が折れる。脱出後にあれは前の話だと誤魔化しにかかる可能性だってあり得る話である。
ただでさえ、サンマグノリア共和国とその他の国の外交ではエイティシックス関連の問題は解決のめどが立たず、共和国が逃げ切りを図っているのだし。

 そんなわけで、星暦惑星各国は地球連合の黙認の元、それを実行することを決定した。
 即ち、原初の戦争への立ち返り。人と人とが、国家と国家とが激突すルという本来の戦争に戻る、この惑星で最後の戦争を。
 五色旗を掲げた国の黄昏は、いよいよ迫っていたのであった。

337: 弥次郎 :2022/07/01(金) 22:22:04 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

以上、wiki転載はご自由に。
一先ず作戦完了。
そして、ついに宇宙怪獣が来ました…

ちょっと他の世界の観測とかSSを投下して、その上で次の話に取り掛かろうかと考えております。
予定としてはストパン世界SSを数話。ZoTを少々。そして星暦惑星の幕間、とどめに本筋という感じ。
暫く書いていなかったのでアイデアがたまってきましたし、ZoTは放置期間長すぎましたしね。
それに、せっかく原作86なのでシン君たちにクローズアップしたいと思います。
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最終更新:2023年07月10日 20:12