165: 弥次郎 :2022/07/09(土) 22:51:27 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

憂鬱SRW ファンタジールートSS「フラグメント:ヘクセンズ」5


 改めてブリタニアへの支援などが決定されてから1か月たたないうちに、地球連合は動き出していた。
 元より、支援プラン自体はシティシスやティル・ナ・ノーグなどでいくつも編成され、その上で用意されていたのだ。
それが行われることが停止していただけであり、プランそのものが消失したというわけではなかったのだ。
無論のこと、それの修正を行う必要があったにしても、それでも迅速に動き出せたのはそういう背景があった。
 そして、それぞれを担当する人々は、一斉に動き出したのであった。


  • F世界 ストライクウィッチーズ世界 主観1944年10月下旬 大西洋上 エネラン戦略要塞 上空 演習空域


 演習は、エネラン戦略要塞の周辺空域を使って行われていた。
 空戦技能を訓練するための標的ドローンを浮かべ、二つのグループで比較検証を行っている。
 片方はウィッチ達---ステファニー・H・レッドフォードとミネバ・ドーリーら---4名一個小隊。
ブリタニアからの出向である候補生たちであり、いわゆるゴートドール。
そんな彼女らが使うのは、ブリタニアのウルトラマリンとの共同開発で生まれたスカイバウンサーMk-2。
 もう片方は魔導士4名一個小隊という編成である。使用しているのはこちらもブリタニアから出向してきた魔導士たち。
そして、彼らが使う魔導士装備もまた、ブリタニアに出自を持つ「シルフィー タスクスワロー」。
従来のレッドメイプルから大型化を図り、また高出力化することによってスペックの向上を図った意欲作だった。
正直なところ、レッドメイプルからいきなり進化をしすぎたのは否めない。とはいえ、それだけ急がねばならなかったのもあるのだろう。
だからこそ、航空機の要素を大きく取り入れるという飛躍も行ったのだから。

 タスクスワローは逃げていくドローンにしっかりと追従していた。かつてのレッドメイプルのように置いて行かれることもない。
更新されたエーテル精製機関とそれを用いて推力に変化させる魔導エンジンが、かつて以上の速力を実現させていたのだった。
 そして、速力の増大は相手を至近距離に、ガンレンジにおさめることを容易くすることにつながる。

『スプラッシュ・ワン!次のターゲットに移る!』
『了解した!』

 そして、その銃撃の嵐でネウロイを模したドローンが落ちる。
 反撃のように、後ろ向きのレーザーが飛んでくるが、予備動作に入った時点で即座に反応できた彼らは回避しきった。

(レッドメイプルなら防ぐところだったな……)

 魔導士の一人は、紙一重で綺麗にかわし、追撃を続けながらも内心呟いた。
 レッドメイプルを使っていた経験のある、オーバーロード作戦の生き残りとしてはわかる、あれは躱せない。
こちらの場合はちょっと操作するだけで機敏に反応してくれたが、応答性などで弱いレッドメイプルならばシールドで防御をするのが基本だ。
使い捨てのシールド発生装置が残っているならば問題はないだろうが、なかった場合にはそのシールドが貫通されていたかもしれない。
そうやってネウロイのレーザーに防御を貫通されて撃破された魔導士を幾度も見てきたのだ。
 ウィッチに代替となると送り出された魔導士装備は、実際のところはウィッチの下位互換にすぎなかった。
だから、ウィッチなら余裕で躱せたり、防げたりするネウロイの攻撃さえも致命傷となりうることがある。
その性能の低さを補うための数の投入だったのだろうが、それが意味をなしていなかったというのが、今の分析結果だ。
 その点、これは違う。性能がいい。動きに素早く反応するし、防御力も高い。火力もある。

(あの時とは違う…!)

 その思いを乗せた、照準器の先に載ったドローン目がけ、トリガーを---

『!?』

 引く寸前で、相手が急上昇。予備動作のほとんどない、ネウロイの理不尽飛行の再現だ。
 反射で操縦桿を引き上げ、追従する。同時に魔導エンジン出力を上げ、速度でも置いて行かれないようにする。
くるりくるりと旋回しながらも追えば、確かにそこに逃げたドローンがいる。

166: 弥次郎 :2022/07/09(土) 22:52:56 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

『敵が加速した、こちらも追うぞ!』
『了解!』

 しかし、いつまでも後ろを晒すわけもないネウロイは、複雑な回避運動で銃弾を回避すると、振り切ろうとする。
 だが、タスクスワローも負けていない。レッドメイプルではありえない機動で追尾を仕掛けたのだ。
尾部の双発魔導エンジンとそれにより生み出される推力をコントロールする大型の翼---ジェット戦闘機に言うところのデルタ翼と尾翼がそれをかなえた。
箒の本体にまたがる魔導士がペダルにより行った操作に合わせ、その翼を適切に動かしていくのだ。
 そして、タスクスワローたちは急上昇しつつ、先端部に埋め込まれた30㎜機関砲を放つ。

『スプラッシュワン!』

 そして、撃墜が確認された。
 その空戦は近くで演習していたウィッチたちからも見えていた。

『競争ってわけじゃないけど、負けたくないね』

 ステファニーはそう言いながらも、重機関銃でドローンを打ち落としていく。
 細かな旋回、あるいはその場での方向転換や急ブレーキを活かした立ち回りで、相手の背後をとっていく。
この背後をとる動きというのは、航空機やTMSなどのそれを基にしているものがティル・ナ・ローグでは教えられている。
このストパン世界の観点から見れば未来の空戦技能、いわゆるマニューバは実証がされているものばかりであるのだ。
その場の判断だけで回避をするだけではなく、相手や状況に合わせた合理的な動きを学んで実行することが、より生存確率を高めるのだ。

『うん……そっち行った!仰角33度!水平11時方向』
『とらえた!』

 ステファニーの方向から逃げ出すドローンを、しかしミネバは逃がさない。
 狙いすませた一撃がうまく突き刺さり、撃墜判定を下した。
 同時に回避運動、というか散開。次に定めたターゲットのドローンの追尾にかかる。
 愚直に一直線ではなく、僚機との間で十字砲火を組み、そこに敵機を捕らえるように挟み込むのだ。
それができるのも、訓練もあるが、アイビスなどでは標準化され、各国でも取り入れらつつあるヘッドディスプレイの恩恵もある。

『三方向から囲んで、ミネバが後方からアタック、いい!?』
『了解!』
『相手は速度600!低速域で逃げ回るから失速しすぎないように!』

 その分析も元に、ネウロイを模したドローンを追撃する。
 集団を包囲し、銃撃を浴びせ、さらに後方からも追い打ちを仕掛ける。

『……っ!後方から増援3機!ブレイク!ブレイク!』

 だが、数発当てたところで射撃は中断せざるを得ないかった。
 後方からの敵機の接近と、同時に攻撃の確認が感知されたのだ。
 即座に散開。あえて速力を落とし、ストールしない程度にしつつ、相手を自分の真上をフライパスさせる。

『いいところだったのに……!』

 ステファニーの怒りの声とともに、重機関銃がそのドローンに突き刺さる。
 だが、判定上は表層を軽く砕いた程度で、即座に修復されたと判断された。ヘッドディスプレイにそのように表示されたのだ。
 ともあれ、敵が増えたならばそのように対応する必要がある。速力を元に戻しつつも、ステファニーは指示を飛ばす。

『エレメントに分かれてそれぞれ対処!相互援助のできる距離は維持!
 追いかけすぎて包囲されないように!』
『了解!』
『了解!』

 そして、ウィッチたちもまたおのれの翼で空を翔けていった。

167: 弥次郎 :2022/07/09(土) 22:54:51 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
ストーリー描写を優先しました。

それ以上に、リハビリですかね…
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最終更新:2023年11月03日 10:52