669 :ヒナヒナ:2012/02/21(火) 21:45:22
○「ヘタリア」から「イタリア」へ
風聞というのほど行き渡るのが早く、制御するのが難しい物はない。
列強中でその勢力を保ち、それなりの覇を得たイタリアだが、
そのDNAに染み付いたとでも表現すべき彼らの習性が発揮され、
歴史が変わってもやはり列強ダメ国家の代名詞となりつつあった。
曰く、女と食事にしか興味のない奴ら
曰く、小隊は最強クラスだが、規模が大きくなるほど弱くなる
曰く、ナチスドイツ最大の敵(総統の胃とか血管に負担を掛ける的な意味で)
曰く、パスタが無いと死ぬ
結局、歴史が変わっても、ヘタリアはヘタリアだった。
イタリア首脳部も日本帝国の主流派から(その他列強も各国の言葉で皮肉っている)
「ヘタリア」呼ばわりされていることは知っていた。
それをなんとかしたいと考えていたが、彼らが取る行動は何故か批判されるのだ。
アメリカ大陸で難民にパスタを渡し、旧米国人の敵対感情を緩和したり、
(
→ドゥーチェのパスタby名無し三流さま)
騎士道精神に基づいて、女性に対しては一段と失礼のない対応をしたり、
卑劣にも女性を人質にして立て篭もった敵兵相手に1/3の人数の小隊で完勝したり、
兵士の士気を保つために、暖かいパスタを前線の兵士に行き渡るようにしたり、
同じく士気を保つために、5時になったら攻撃を一時停止して休息を取ったり……
首脳部から見て、問題ないか、多少行き過ぎた程度の事であっても、
世界は彼らを指して、驚愕したり、嗤ったり、怒ったり、諦めの表情を見せるのだ。
問題意識を持つ将兵もいたのだが、それは少数派の意見として埋もれていた。
そして、少数派の彼らはその他無残な称号を雪ぐべく機会を待っていたのだ。
そのときは比較的早く来た。
同盟国であるドイツ帝国とソ連が独ソ戦で共に息切れを起こし、
ドイツは国力を回復するために、
アメリカ再開拓よりも手っ取り早い方法である
覇権国家日本との関係緩和を望んでいるとの情報が入ったのだ。
しかし、日本とドイツは険悪な関係にある。
そこで、イタリア首脳部は考えた。
ドイツと日本の手引きをできるのは誰であろうか?
ヴィシーフランス?
日本国民の中で、ヴィシー=ドイツという公式になっているのは想像に難くない。
それより、ヴィシーは絶賛英国敵視中で英国と手を組んでいる日本まで恨みかねない。
英国?
イギリス自体は日本にラブコールを送っているが、裏切りの代償は大きく、
一部の日本人からは、下手をするとドイツより嫌われているのではないか。
フィンランド?
日本と非常に親密な関係にある北欧諸国が、
日本の意に沿わない講和を持ちかけるだろうか。
カリフォルニア共和国?
狡いアメリカ人の残党である彼らは、益になるなら仲を取り持つくらいはするだろうが、
そんなことが可能な外交ルートは、未だかの国にはない。
そこでイタリアだ。
イタリアはドイツと共同歩調を取り枢軸の中核を担ってきたが、
日本に決定的な敵愾心をもたれるような行為は行っていない。
ここでドイツと日本の関係緩和を取り持てば、勢力の減少が著しい西欧列強の中で、
頭一つ飛び出る(様な気がする)。
それは英雄的行動を好むイタリア人にとって非常に誘惑的な案だった。
同盟国ドイツや仮想敵国日本の不興を買うことなく、名声を上げられる。
そして、最も重要なこととして、誰かの下に付くことなく孤高の存在で居られる。
そんな、会話がイタリア首脳部で話された。(
→俺のバルボが…by名無し三流さま)
670 :ヒナヒナ:2012/02/21(火) 21:45:52
イタリア首脳部は日本への接近を開始した。
しかし、日本とはドイツよりマシな程度の国交しかない。
まずは日本人の心を溶かすことからはじめよう。そう考えた。
人間というのは、同じ価値観を持つ物に共感を持ちやすいのだ。
そして、イタリア首脳部はいくつかの日本文化をひそかに国内に持ち込んだ。
刺激が少なく万人に好かれるタイプのアニメや、
娯楽映画、日本人が書いた書籍、書画の類、
また、日本の創作パスタ料理である‘ナポリタン’などをひそかに輸入させ始めた。
もともと、娯楽には目が無い国民性の性もあり、
これら日本文化の一端は、割りと素早くかつ好意的にイタリア国民に迎えられ、
日本人、日本帝国に対する興味を引き立て、対日国民感情の改善が見られた。
もちろん日本でもこの動きはキャッチされていた。
またイタリアがおかしな事を始めやがった、という呆れに似た認識であったが。
まぁ、日本としても、カリフォルニアを挟んでお付き合いするはめに
なるかもしれない国のヘイトを下げておくのは好ましい。
敵意を持たれるよりは良いという結論になった。
日本からは警戒しながらも、イタリアに対して生暖かい目線が注がれることとなった。
この結果に気を良くしたイタリアは更に日本との関係改善を進めた。
仕事(軍務)よりも私生活の充実を好むお国柄であることもあり、
娯楽関係の浸透は思ったより早く、軍人でさえ日本文化を好む物が現れた。
米国という異郷の地で戦うイタリア人には、
女性とパスタと新しい刺激が必要だったのだ。
そしてある時、同盟国であるドイツ人は、イタリアとの米国共同作戦で、
支援にやってきたイタリア軍機を見て驚愕することとなる。
そこには、「ヘタリア」から「痛リア」に生まれ変わったイタリア軍が……!?
(了)
最終更新:2012年02月21日 23:37