121: 陣龍 :2022/07/18(月) 19:35:08 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
無幻世界に置ける第二次世界大戦 ~本土決戦前夜と崩壊国家~
「道路に、操車場に、線路に、港湾……爆撃目標はコレだけで良いのか?敵空軍基地や駐屯地……もっと言えば、都市とか人口密集地が目標に入っていないが」
「構いません。今回は【テストケース】ですので、意図しない誤爆は兎も角、人口密集地への爆撃は控える様にして下さい」
「あ、あぁ、了解だ……」
「……【テストケース】……どういう事なんでしょう?」
「交通網を破壊して、秀吉のあの兵糧攻めみたいにするつもりなんじゃ無いっスかね」
「そう都合良く行くかぁ?オーストラリアって、確かイギリスに大量の小麦とか輸出してた国だろ?食うもんには困らんのじゃ無いか?」
「じゃあ陸さんがオーストラリアに殴り込みに行くまでの暇潰し」
「暇を持て余して石投げ遊びする馬鹿ガキじゃねぇんだぞウチらは」
――――『珊瑚海海戦』後、ニュージーランドとの連絡路を確保した日本軍は、イギリス本国からの要請に基づいて『戦略爆撃』を実行する。尚、元々戦術爆撃の研究こそ盛んでは有ったが、開戦前からの仮想敵国が海上戦重点の
アメリカ、大都市等影も形も無い極東ロシアのソ連軍と一応仮想敵国入りだが工業化も碌に進んでいない中華民国であった為、理論は兎も角戦略爆撃の実態を理解して居る者は、特に現場では少なかった。
「……わぁお、なんだかすごいことになっちゃったぞ」
「隊長、口調が何か変な事なってます」
「……貴重な【データ】を入手する事が出来ました、ご協力感謝します。小国オーストラリアとは言え、今回の戦訓は対米戦に置いて有効に活用できることでしょう」
「……若しかして、この有様を予期して居たのか?」
「いえ?まさか。……ただ、『可能性の一つ』として挙がっておりましたので、丁度都合良く『どのように滅ぼしても全く心も痛まない、都合も悪くならない』敵国が居りましたので、『実験してみた』だけの事です」
「……ウチの母ちゃん以上に、イギリス人だけは絶対に本気で怒らせちゃ成んねぇって事だけは、身に染みて分かった」
「お褒めに預かり恐悦至極、と答えさせて頂きましょう」
――――アボリジニーへの空輸による武器支援とインフラ破壊によって、空恐ろしい勢いでオーストラリアが国家崩壊、そして内部分裂して『消滅』して行く様を空と各種通信傍受から情報収取し続け、衝撃の余り口をあんぐりと開ける日本軍人と、日本人との交流で会得したと言うアルカイックスマイルで感謝の言葉を告げるイギリス人。色々な意味で『イギリスには叶わない』と居合わせた日本人が思った一幕であった。
「復活を遂げた我が海軍に加えて、イタリア海軍とイギリス海軍からも支援も受けつつの西進か」
「そして気付けば、エジプトからジブラルタル要塞の対岸にまで到達。アメリカ人とロシア人が敵なのは兎も角、イタリアとイギリスが味方軍として傍に居るなんてねぇ」
「まぁ、気にする様な事じゃ無い。我々が成すべき事は、異教の友足る日本人に襲い掛かった頭のおかしい連中を叩き潰す事だ」
「その通りだ。我々を舐め腐ってまともに兵力も置いていない様な連中に、新生オスマン帝国軍の力を見せつけてやれ!!」
――――日本製シャルンホルスト級戦艦に対する気分的な対抗意識にて、オスマン帝国が欲しがっていた新型戦艦をイギリス建造にて二隻提供され、そして今大戦で陸上だけでなく、海でもイタリア海軍並びにイギリス海軍地中海艦隊と共同作戦を展開する事になったオスマン帝国軍。尚彼らの士気の高さに対して、敵軍の質量と士気そして防備は脆く、消化不良のままアフリカ戦線は終結し、ジブラルタル要塞も降伏により陥落している。
122: 陣龍 :2022/07/18(月) 19:35:56 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
「論外だ!この艦は戦艦として建造されているのだ!今更空母等に改造等、認められる訳が無い!」
「現実を見ろこのクソッタレ!制空権が無ければどんな艦も泥船にしかならん事は珊瑚海で思い知っただろう!!
良いから早くその艦の情報を黙って寄越せ!」
「黙るのは貴様の方だ!そもそも既に空母なら多数建造しているだろう!それを『足りぬ』と称し、剰えこの『改U.S.級』すら持って行く等とはどういう了見だ!!」
「報告書真面目に読んだのか?肝心の機体性能は日本軍より劣位、操るパイロットの育成も貴様ら戦艦閥が戦前から予算粗使いしたせいで教育体制その物が不足しているんだ!ついでに言えば今建造して居る空母の性能も凡庸止まりとなれば、そのデカブツを空母化する方がどれだけ戦局に役立つ事か…」
「五月蠅い!そのよく回る口を閉じなければ、この国から叩き出すぞ!!」
「やれるもんならやって見やがれ馬鹿野郎!!俺はこの国の生き残る道を探して背負っているんだ!自分の首と権勢惜しさにグダグダやってるテメェとは違うんだよ!分かってんのかこのハゲ!!」
「は、ハハハハハ、ハゲてなど居らんわ無礼な!!」
――――『珊瑚海海戦』によって大艦巨砲主義が否定された事に対して、敗報の衝撃でヒステリックになった国民と、大失態によって危うくなった権勢と体裁に対する防衛本能から戦艦建造を強行しようとする新世代閥(アメリカン・ジャスティス世代)と、航空主兵主義者を中心とした旧時代閥(現実派派閥)の不毛な政治闘争。最終的に旧時代閥がやや優勢となったが、その後も内部での【殴り合い】は変わらず続く事になる。
「……凄い広いですな」
「斜め甲板を張り出しただけなので、見た目の割には工事の手間はそこまで大きくは無いのですが、言われる通りに思った以上の空間が取れました」
「……これが出来た大本が、我が軍のパイロットの言葉だったと言うのは?」
「発想の切欠としては事実です。『陸の飛行場の三角型の滑走路の様に空母も作れたら、発着艦が全部同時進行で出来る千手観音菩薩になれるな』、だったとか」
「同期の桜の内地での酒の席の与太話が発端で、この新型空母の設計や従来艦の改装が決まるとは。冗談見たいな話しですな」
「今の戦争よりも、ずっとまともな話ですよ」
――――後に、世界の現代型空母の容姿を決定付けた斜め甲板ことアングルドデッキ誕生秘話。官僚組織で予算を取り合う関係上、陸海軍それぞれの組織はどうしても対立構造にならざる負えなかったりしたが、先の大戦で『同じ釜の飯』を食った将兵同士は『戦友』の関係を続けていた。
「これが今度の改装艦かね?」
「はい、資料では艦首に魚雷が複数炸裂したとか」
「なるほど、例の新型魚雷か」
「艦体への打撃は相当だったようです」
「夢破れたりか…だがこれで生まれ変わる」
「戦って貰わないと困りますからね」
「まぁ、そういうことだな。始めよう」
「……ところで、なんですかこの寸劇」
「イタリアだからな、オペラを真似してみた。どうだったかな?」
「オペラ大好きイタリア人の前でやったら、間違い無くはっ倒されるでしょうね。止めましょう」
「(´・ω・`)」
――――ジブラルタル要塞奪還作戦に置いて、地中海側から艦砲射撃支援をしていたイタリア海軍戦艦のリットーリオに、ジブラルタル海峡の大西洋側から撃ち込まれた米軍魚雷が不運にも直撃・炸裂してイタリア本国のドックに入渠後、日本人技術者ら支援による徹底改装が行われた。余りの変貌ぶりに艦名が『イタリア』に変更された程だが、改装中の話題はイタリア被れの面白変人日本技術者の話題が主軸だった。
「奴らは腐った扉でも何でもない、獰猛、狡猾な恐ろしい白熊共である」
「無限と錯覚する広大な大地、想像したくも無い泥濘、全てを蝕む風雨と豪雪。全く持って、恐ろしい難敵である」
「そうであるが故に、このアドルフ・ヒトラーは、我がドイツが誇る勇猛なドイツ軍に命ずる」
「【勝利せよ】。その為の準備、資源、資材は用意された。我がドイツ国民は、貴官らが勝利の凱歌を掲げ、祖国に帰還する日を信じている」
「重ねて言おう。我らがドイツ、ドイツ軍よ。……【勝利せよ】」
――――ポーランド領内からソ連軍を撃退後に体制と後方補給線の再構築後に行われた、対ソ連本土侵攻作戦直前のドイツ総統の演説。
ただ単に民衆を熱狂させるのでなく、観衆の心に静かなる【マグマ】を生み出させる様な切れ味の口調と声色は、今戦争中で更に進化を続けていた。
123: 陣龍 :2022/07/18(月) 19:37:20 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
「T-34にKV-85では不足……か」
「今まで無駄に作った多砲塔戦車部隊は解体して資材と予算を回すから、ドイツ軍や日本軍の戦車を粉砕出来る物を量産しろ、だとせ」
「上は簡単に言ってくれる……」
「だが、正論だ。あのカエル喰いと資本主義の権化が送って来た情報、そして先のポーランド領での戦闘での報告によれば、敵軍には我々の想定の一段上の戦車が配備されている」
「艦載砲流用の対戦車自走砲は出来ているが、砲がデカ物過ぎて機動力も低く、弾薬搭載量も少なすぎる……」
「……この前挙がって来た、新型戦車の案を精査して見よう」
――――ポーランド進撃で苦闘し、日独の新型戦車の出現で更なる危機感を覚えたソ連赤軍は、新型戦車開発に狂奔する事になる。
使い物にならない事が実戦投入で無惨な敗退記録更新で知らしめられた多砲塔戦車の資材を鋳潰して生産された『もう一つの新型』は、日本が過去に受けた【KVショック】の誤解を、数年越しに現実化させたシロモノだった。
「どうかな、今回の『新型戦闘機』の調子は」
「此奴は飛んでも無い聞かん坊ですぜ!何せ全力稼働したら一日や30分どころか20分も持たないと来たもんだ!信じられないブルジョワ戦闘機でっせ!」
「そうだな。だがその分、補給部品に関しては要請して山積みにしてある。苦労を掛けるが、宜しく頼む」
「任されました!……それで、そろそろその無理に格式ばった喋りも止められたらどうなんですかい?上官にして我が娘よ」
「う、うぅぅぅぅ……お父さん、そう言う事は現場で言わないでって……ちょっと!何コッチ見て笑ってるのよ!?待ちなさい、コラー!!」
「……無事に帰って来いよ。整備は万全にしてやっからな」
――――ソ連、そして世界史上初の混合動力型ジェット戦闘機『Mig-13』が前線に配備され、戦いのときを待っていた『蒼天の魔女部隊』こと第586戦闘機航空連隊の開戦前秘話。
全パイロットが女性で編成された世界でもソ連のみのこの部隊は、この世界初のジェット戦闘機を駆り、侵攻して来たドイツ空軍相手に一ヶ月以上もの間トラウマになるほどに暴れ回る事になる。
124: 陣龍 :2022/07/18(月) 19:39:33 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
【暴挙の果て】…珊瑚海海戦にて米海軍の大艦隊が大打撃を受け、オーストラリアの悲鳴と絶叫を黙殺して米軍が撤退して行った後、日本軍はニュージーランドに進出した。半ば孤立無援の状況に有りながらも、米豪からの度重なる強迫にも決して屈さず、珊瑚海海戦の艦艇情報を日本へ送付する等縁の下の活躍をしたニュージーランド軍は、日本本土から送り込まれた輸送船団に積み込まれた各種新兵器を受領し、日本経由で参陣した英本国軍人と共に日本軍と、対オーストラリア、対サモア戦に置いて共同作戦を展開する事になった。
尚、オーストラリアと南アフリカの二か国が訳の分からない感情論でイギリス王族を殺害して反逆し、インドは中印国境で中華民国と屍山血河の戯れ合いに勤しみ、カナダはケベック州中心のフランス系住人の反逆とアメリカ侵略で大惨事になっていると言う有様の中、唯一イギリス本国に国民の上下問わずに忠実で本土を事実上無傷のまま生き残っていたニュージーランドに対する、イギリス本国からの好感度はストップ高を記録しており、戦後英連邦内での地位は実質的ナンバーツーの地位と存在感を確固たる物としている。
そして日本軍のニューギニア島完全制圧、ニュージーランド進出と言う凶報で狂乱したオーストラリア側が、列強から見れば蟷螂の斧と言うか鎌な沿岸防備施設を懸命に建築している中、現地の日本・ニュージーランド軍の航空部隊は、イギリス本国からの要請を受けて都市や軍事施設ではなく、道路網や鉄道網、港湾等を中心としたインフラ破壊を徹底する戦略爆撃を開始する。主眼は戦術爆撃(対地上部隊、対艦攻撃)だが性能的には戦略爆撃も十分出来る積載量と航続距離の連山による攻撃であったが、当の爆撃するパイロットたちの多く、特に日本軍パイロットたちに取っては何とも不可思議な攻撃命令を受けた気分であった。
【インフラ破壊と言う『回りくどい事』をする位ならば、手っ取り早く都市も軍事施設も纏めて吹き飛ばす方が良いのでは無いか?】
米軍供与機と思わしき機体を操るオーストラリア空軍の戦闘機部隊が、烈風等の護衛機部隊によって次々叩き落とされて行くのを下に眺めながらも、その様な疑問を抱きつつ命令に従って爆撃して居た日本兵は意外と多かったと言う。
その様な、ある意味陽気に空襲して居る日本側に対して、オーストラリア側の状況は、坂道をエンジン吹かして転がり落ちる様に急速に悪化して行った。空襲初期こそインフラへの攻撃をして来るのみで、都市や軍事施設を攻撃して来ない状況を訝しんだのだが、インフラ破壊による交通網の途絶に従い始まった、各地の飢餓や物資不足情報が各所から緊急入電して来るに従って、オーストラリア人は日本軍、否イギリス本国の狙いが理解出来た。この世界最小でも巨大な大陸を、オーストラリア人全ての棺桶にするつもりなのだと。
工業力は不足し、広大な農地が生み出す食糧を運搬するインフラが破壊されても早急の復旧は難しく、しかも連日連夜と言う勢いの過密さでの爆撃で復旧もままならない。そして単なるインフラ破壊のみならず、アボリジニーに対する武器支援も行われ出し、各所でオーストラリア人が軍民問わず攻撃される始末。オマケとばかりに、絶対的窮地に追い込まれた結果、オーストラリア内部ではクーデターを引き起こした指導部の力量不足に対する責任追及に対して、指導部側が武力制圧し継戦継続を宣言した結果、一瞬で内部不信と分裂が誘発。
有色人種への蔑視と一方的憎しみと言う【感情】で成立したオーストラリア政権は、絶望的戦況に対する恐怖と言う【感情】によって、国家国民全てを道連れにして、呆気なく瓦解した。
オーストラリア人の通信等が比較的短期間で完全に消滅し、またアボリジニーからの通信にてオーストラリア大陸に上陸した日本兵とニュージーランド兵、またイギリス兵がその眼で見たのは、壮絶な内戦と物資の奪い合いにて相互不信の頂点に達し、一つの文明国が脆くも崩れ去った地獄の成れの果てと、自らを迫害し続けた者共を一掃して勝利の歓声を上げる『正義の使徒』達の姿であった。皮肉なことに、工業力不足の結果まともに兵器の量産が出来なかった事もあり、フランスとスペインに比べれば涙が止まらない程に地雷も毒ガスも無い【綺麗】なオーストラリア大陸の大地は、長期に渡り迫害、支配されて来たアボリジニーが奪還した事になるが、歴史的経緯により根本的な人口不足やその他諸々の問題が無数に積み上がっており、外交や軍事面では実質的衛星国に近い形式の同盟関係を日英と締結せざる負えなくなり、またアボリジニー同士でも喧々諤々の大激論の末に同化を大前提にして絶対条件とした移民受け入れ検討を余儀なくされる等、【勝利】した後の苦悩は、レジスタンスとして戦っていた多くのアボリジニー達の予想を遥かに超える質と規模であった。
125: 陣龍 :2022/07/18(月) 19:41:25 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
アボリジニー達の祖国の大地は極めて多量の鉱物資源を有し、先のオーストリア人の遺産とも言える農地が生む食糧は将来の国家財政への助けとなったが、それ以前にアボリジニー達のアイデンティティ問題や政府機能の構築等、近代国家を建築する為には前途多難の山としか言うより他無い有様だった。とは言え、自らの自らによる国造りと言う希望も有って、様々な噴出する問題を一つ一つ苦労を重ねて解決を続けており、半世紀後、一世紀後には世界の要衝に躍り出る未来は見えなくも無かったが、少なくとも今戦争中にまともな戦力拠出等が行える状況になれる状態では無かった。
一方、オーストラリアと共に英王族夫妻である総督を殺害して反逆した片割れである南アフリカは、世界戦略的に国際連合の中でも最も敵中に孤立して居る状況かつ、元々の国力もそう大した事の無い国家であった事もあり、英王族夫妻殺害と英連邦からの反逆、国際連合への加盟と言う政治的インパクトに対して、実際に行われた軍事的行動による実害は殆ど大した事は無かった。苦労してスエズ運河の制圧と旧フランス植民地領のアメリカ軍との合流を目指し、アフリカ沿岸東西を北進するも、昨日の敵は今日の友と言う状況で現地エチオピア軍と共同戦線を張っていたイタリア軍、また本国至近と言う事で此処でも出張って来たオスマン帝国軍、そして政治的にも南アフリカをチリ一つ残さず滅ぼさなければ気が済まないイギリス軍によって、質量共に圧倒的に劣った南アフリカ軍は惨敗した。
そして英国紳士も、漆黒の微笑みをする気にも成れない程度に怒り狂っており、その英国からのお墨付きと後押しで一切合切の容赦無く、これまでにアラブ人が受けた対白人への鬱憤を南アフリカ人へ叩き付けるオスマン帝国と、反逆者共を誰彼構わず叩き潰していくイギリス軍の姿に、その血の気の多さの余りに正直言って若干、いやかなり引きながらも歩調を合わせて海軍による沿岸砲撃や後方支援をするイタリア軍と言う図式は、降伏も認められず殲滅されて行く南アフリカ軍が、喜望峰にまで軍民問わず追い立てられた末に全滅するまで続けられた。
余談では有るが、珊瑚海海戦にて日本軍の航空機部隊に滅多打ちにされ、這う這うの体でオーストラリアに逃げ込んだU.S.級戦艦の一隻だが、まともに迎撃出来ない状態であったのが不幸中の幸いとなり空襲や艦砲射撃の標的になる事が殆ど無く、日本兵が港湾に乗り込んだ時には、主砲や副砲の多くが拉げ、艦上構造物も多くが崩壊している様な惨状で有ったが、アメリカ工業力の結晶とも言えるだけの戦艦で有る事は有り、不十分なままで行われた自沈処分の爆破や航空魚雷を受けて複数船腹に風穴があけられても、隔壁閉鎖にて何とか航行出来る状態のままであった。
その為現地レジスタンスのアボリジニー達の了解を得て接収した後、浮きドックにて簡易修理してシンガポールに回航、更に一定の修理後に日本本土に送られた。
技術調査の後、棚ぼたで手に入ったこの大型戦艦の処遇について、日本海軍内では激論が交わされた。
日本政府からは対アメリカ戦に置いて【早急に】有効活用する様に、との一文と共に臨時予算が下りており、言外にアメリカ人に対する宣伝戦略の一環で有る事が伝わっていたが、海軍ではそれはそれとして如何に改造しても全く構わない大型艦をどのように弄るのか?その一点に置いておおよそ三つの案がたたき台として挙げられた。
一つは、今戦争で急速に台頭してきた航空主兵主義者達が唱える、全兵装を対空火器に置き換えた世界最強の防空戦艦。
一つは、二番手の地位に落ちながらも発言力は未だ保っている戦艦閥らが主張した、順当に日本の大和型戦艦の主砲塔を移植した艦隊決戦可能な米製日本戦艦。
最後の一つは、早期実用化と言う事でモノ好きな技術者たちが提案していた、珊瑚海海戦にて日本海軍をかき乱して追撃を不徹底にさせた【アラスカ級偵察戦艦】に倣った、後部甲板を真っ新にして前半分戦艦、後ろ半分空母の『航空戦艦』案。尚空母化に関しては、既に装甲空母や戦時急造空母が量産されていた為にお流れになった。艦艇や航空機の建造、生産速度が事前の想定をはるかに上回る勢いで行われていた為に、兵員の手当てが追い付けられなかったのである。
ある意味アメリカと同じく、日本海軍自身も自国の生産力を少しばかり過小評価していたのだった。
ただ単に経済発展と工業力の進歩が、人の意識を超える程に急速過ぎただけ、とも言うが。
126: 陣龍 :2022/07/18(月) 19:44:38 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
そうして短時間ながらも始まった検討会議に置いて、最初に防空戦艦化案が脱落した。
流石に主砲すらも全排除して高角砲や機銃を満載するのは過激過ぎであったし、丁度陸軍からもこれまでに行われた上陸作戦による戦訓に基づき、戦艦による艦砲射撃支援を可能な限り求めていた事からもお流れになった。開戦の号砲となった横須賀奇襲に置いて、旧式戦艦が四隻轟沈して居て少し戦艦不足の懸念もあったのだ。
そして順当な米製日本戦艦案が勝利するかと思われた矢先に、肝心の戦艦砲塔や戦艦用の資材を新型戦艦の予備分から抽出する予定が、確認した所既存戦艦用の最低限の予備を除いたら砲塔だけでも僅か二基、製造が面倒な戦艦用の改修資材も大いに不足する程度しか残って無いと言う飛んでも無い事態が発覚。これは横須賀奇襲にて発生した官僚組織の大混乱による錯誤と誤解、連絡不足によるものだと後の調査にて分かったが、兎にも角にも今は無きリシュリュー級戦艦の様に元からそう言うモノでも無いのに砲塔が二基の戦艦を造るには艦の容量が多く残っていた為に、半分冗談見たいに言われていた航空戦艦案に決定した。
無論、後に極普通の戦艦か空母にする事を考えられていたが、損傷修復ついでの機関換装等で、日本人技術者たちとその伝手で来た英独伊ら造船技術者共の、悪く言えば軍艦マニア共が心底楽しそうに大改造した結果、後に四式戦闘雷撃機『陣風』と共に過去の祖国、アメリカ合衆国の艦隊に真っ先に突撃して大暴れする日本史上唯一にして世界最大である、超弩級航空戦艦『樺太』として活躍し、現代にも大神軍港にて記念艦としてその異形の雄姿を留めているのだから、何とも今戦争は予想外の事ばかり起きている不可思議さである。
【血戦前夜の国際連盟】…南アフリカとオーストラリアがその存在を歴史から抹消され、そしてイベリア半島と旧フランス植民地領のモロッコにへばり付いていたアメリカ軍が殲滅されてより暫くは、各戦線では小競り合いと小規模な戦闘が行われるも静けさを見せていた。ジブラルタル要塞では、撤退の為に突入して来たアメリカ艦隊が、英独二か国による連合艦隊による迎撃により、戦時急造の軽空母、護衛空母複数と旧式戦艦一隻を喪失し、損傷艦も多数出す損害を受けるもイギリスの旧式戦艦戦艦複数並びにドイツ正規空母一隻を大破させ、過半の人間を軍艦に乗せて撤退に成功し、その海戦の最中、ジブラルタル海峡の向こう側で援護に向かおうとしたイタリア海軍の戦艦リットーリオにアメリカ海軍の魚雷の流れ弾が奇跡的確率により数発艦首部分に直撃し大破する特大の不運が起き、そしてジブラルタル要塞に取り残されたアメリカン・ジャスティス世代の将官や兵士が徹底抗戦を主張するも『後ろ手に縛られた胴体全体への多数の銃撃』『弾丸が空の拳銃を持って密封された一室で毒ガス塗れによる毒死』にて【自殺】した者や、完全に愛想が尽き果てられ、見捨てられて先に降伏したアメリカ兵の案内でスペイン兵、ポルトガル兵により襤褸雑巾の方がマシな有様で『捕縛』されたりする一幕が有るも、イベリア半島に残された惨禍と勝ち戦に参入する筈が海峡の向こうからの流れ魚雷で戦艦が大破したイタリア以外は一先ず落ち着いた。
そして、欧州戦線では東部戦線ことポーランド・ソ連国境地帯にてにらみ合いと共に戦力増強に懸命なドイツ・ポーランド・イタリア連合軍とソ連軍。コーカサス地方を境に小競り合いを頻発させているオスマン帝国軍と守勢防御一択のソ連軍。太平洋戦線ではハワイ諸島と本土西海岸の防備を懸命に高めているアメリカ軍と、ニュージーランドを中継点としてアメリカ植民地領であるサモア諸島も陥落させて一息吐いた日本。
そしてジブラルタル海峡の封鎖が無くなり心理的圧迫も消失したイギリスが、旧フランス本土に多数の兵力を治安維持の為に吸われつつも東部戦線、コーカサス戦線、太平洋戦線それぞれに各種兵力や物資支援を行う時間が暫くの間流れていた。
尚、未だに中国とチベットで乳繰り合ってるも同然な不毛な戦闘を継続して居るインドは相変わらず山岳地帯の泥沼にはまり込んで抜け出せなくなっており、世界戦略で見れば、インドと言う国際連盟側でも最大級の兵員供給能力を持つインドを中印国境の山岳地帯に縛り付けている事で、国際連合側の戦略的勝利とも見る事が出来る。とは言え、単純な人数比的にはインドより幾らか劣る程度、国民全体への教育程度を考えれば明らかにインドより勝る日本が元気で有る為に片手落ちであるし、そもそもインドがチベット地方に踏み込んだ当初から、イギリスはインドの事を戦力外計算し、日本やドイツも戦域が離れている事も有って最初から考慮外であったと、後に公開された公文書で明記されている事から、事実上の影響はそこまでなかった様子である。
127: 陣龍 :2022/07/18(月) 19:46:34 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
太平洋戦線に置いて、珊瑚海海戦後に崩れ去るアメリカ軍を追撃する形でサモア諸島も陥落させた後の日本軍は、ローテーションにて新造艦による艦隊をトラック諸島等に進出させつつも、今まで前線で奮闘し、必然的に損害が無くとも乗員と同じくくたびれつつ有った在来艦や一部新鋭艦を本土へ戻し、凱旋した兵員たちに休養を与え、また地方によっては戦時中とは言え細やかながらも宴会等が催されたりする中、帰投した艦たちは整備に加えて対空火器や対潜兵装の強化であったり、新型の火器管制装置搭載の為の改装工事が行われた。戦争による容赦のない技術発展と、自らの苛烈な航空攻撃と通商破壊による潜水艦の活躍を鏡とした対応である。
統計数字により算出されているアメリカの工業力であったり、先の第一次世界大戦では、イギリスによる宣伝戦略も有って『極東の勇者』等と讃えられ、活躍した日本の影に隠れる様な形であったが、参戦してから膨大な兵力を編成、派兵し、そして戦争中は数えるのも馬鹿馬鹿しくなる程大量の物資生産、国債購入等の経済活動を行っていた姿を、様々な理由で欧州に派遣された多くの日本人の脳裏へと強く印象付けられていた。最序盤の横須賀奇襲やイベリア半島への電撃的侵攻は兎も角、その後は拙攻に次ぐ拙攻で幾多の敗戦や自滅染みた敗退が多かったが、だからと言って油断して良いとは思われて居なかった。
尚、無責任な報道関係は部数の為にまた性懲りも無く適当に威勢の良い事を書き立てているが、国民の多くは一時の満州戦役に置けるメディア系のやらかしに対する一件も有り、政府や陸海軍の宣伝部が流している、特に脚色もしない生真面目で武骨なニュース映画の方を好んでいた。
時たま若い男衆のノリで兵士のみならず一部佐官や将官らもはっ茶けている映像が流れるのはご愛敬と言うモノだ。
そして、イベリア半島と西アフリカのアメリカ軍、そして離反したオーストラリアと南アフリカの存在その物を殲滅した後のイギリスは、今後の対米戦略に加えて倒壊した旧フランス領の統治に兵力が吸われた事も有り、陸上戦力の派遣は太平洋戦線、東部戦線共に行わなかったが、その代わりにドイツやイタリア、オスマン帝国、ポーランドに対して自動貨車や戦車、航空機等の供与、支援を行い、そして完全な安全圏となった地中海や、アメリカからは遠隔海域過ぎて事実上の安全圏となったインド洋に、イギリスの海上護衛部隊が多数の輸送船舶と共に大挙進出。
日本海軍と共に各所との海上輸送網を濃密に復活させた事で、序盤に懸念されていた国際連盟側各国の、生ゴム等の様な資源不足は殆ど心配不要なまでに解消された。オーストラリアと南アフリカが国民や政府機関諸共完全に消滅した事で一部供給地が消えた事は痛かったが、それでも各種資源や食糧のみならず、嗜好品でも有るコーヒーや紅茶、砂糖等すらも、戦時中でそれなりの制約こそ有れど、国民不満の解消を目指した各国政府の努力も有り、可能な限り安価で多く供給が行われた。アメリカによる奇襲侵攻でジブラルタルとイベリア半島を占領させたせいで長期間本土に押し込められ、しかもその時々で本土空襲すらも受けていた悪影響で戦時経済の回転が遅れていたが、この時を境に急激にイギリス本土から出て来る各種戦力が膨れ上がったのも、流通の回復があってこそである。
因みにイギリス本土からあふれ出て来た兵器の中で、目立ったところで言えば日本の二式戦車と紅茶装備以外は同等のセンチュリオンの全面採用により、旧式の扱いとなったチャーチル重戦車等の供与先でも活躍した戦車に混じって、英国面戦車部門の代表格ともされたカヴェナンター巡航戦車が居た。この戦車は、車内レイアウト等の設計段階で冷却機能が不足を通り越して欠落している様な有様で、【車両より先に乗員をダウンさせる】と専ら悪評を集めていたのだが、丁度ソ連本土に殴り込む事が確定していたポーランド軍が戦車供与を求めていたので、これ幸いとばかりにカヴェナンター巡航戦車は全車東部戦線に送られた。だがこの車内をオーバーヒートさせる欠陥は、極寒のロシアの大地では暖房として極めて有用として、主に偵察や歩兵直協。陣地でのストーブ代わりとして冬場は重宝されていたと言う。そして冬が過ぎて春となり、夏に入るまでには悪評通りに熱すぎて後方に押し込められまともに使われなくなったのは言うまでもない。
128: 陣龍 :2022/07/18(月) 19:49:17 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
東部戦線に置いて主戦力となる、国際連盟が誇る陸戦の王者ドイツでは、日英が投入した新型戦車である二式戦車やセンチュリオンに多少なりと驚いたが、既に自軍では対フランス、そしてポーランドに侵攻して来たソ連軍相手にその性能を証明したⅤ号戦車パンター、Ⅵ号戦車ティーガーが存在しており、そしてⅤ号戦車パンターⅡ、Ⅵ号戦車ティーガーⅡと名付けられた改良型も前線に出せるようになっていた事で、第二次世界大戦型陸軍として世界最高峰の域にまで達していた。日本の火中車をヒントに開発され、そしてトラックに搭載した車載型多連装ロケット砲も多数配備され、歩兵装備に関しても日本が同時期開発されていた新型歩兵小銃【二式突撃銃】の更に一歩先を行く、世界で二番目の実用的アサルトライフルである【Stg43】が量産配備される等、『東方の蛮族』をドイツ軍の軍靴にて踏み潰す準備は整いつつあると、当時のドイツ人のみならず、情報や宣伝映像を見た国際連盟各国の民衆は本気で考えられていた。
一応慢心を諫める為にもヒトラー総統はラジオ放送にて演説をしたのだが、その例えとして用いたのが日本の桶狭間合戦の織田信長と今川義元と言う、ヨーロッパ人に取って欠片も響かなさそうな逸話の選択をしたのは一体どういう考えであったのかは、現代でも謎であるし、当のラジオ放送を聞いていたドイツ人たちが困惑と疑問以外の受け取りを出来たのかも良く分からない。取り合えず冬季戦用装備の発注が増えた事は事実だった。
新兵器が多数量産される花形の陸軍とは変わってドイツ海軍では、新兵器としてヴァルター機関を搭載した新時代の潜水艦が、実験艦段階から実用化に向けて着実に開発が進められている事の他は、ドイツらしい纏まった高性能を誇る大型潜水艦【UボートⅨ型】を量産配備させた程度であり、水上艦に関しては一部軽快艦艇が追加建造、補充された以外は戦前の規模をそのまま残していた。
ドイツ空軍に関しても、イギリスのランカスター、日本の連山(銀河)の様な大型爆撃機開発が、元々のドイツ空軍の気質に合わなかったのか設計段階の時点で七転八倒を繰り返し、強引に試験飛行に漕ぎ付けた試験機が物理的に大炎上し爆散した為事実上開発が凍結された程の有様の為に、イギリスと日本から多数のランカスター重爆撃機と連山多用途爆撃機を購入して運用していた他は、その労力の多くを既存機の改良や改修に回しており、機体の前後にエンジンを装備した不思議な見た目の双発重戦闘機のプファイルであったり、実験機段階であったジェット機が先ずは偵察機、迎撃機として先行生産や部隊配備に入ろうとしている程度であった。『既に実力も性能も証明して居る機体が有り、そして現状敵国の機体より優勢である以上、無理に新型機の導入を急ぐ必要性は薄い』と言う、何処かドイツ人らしからぬ保守的な思考も何処かに有ったとも言われている。
後世では、この頃の新しい機械好きで有名なヒトラー総統が、その興味を世界初の中距離弾道弾や無人飛行爆弾、そして後にグデーリアン将軍とシュペーア大臣に殴り込まれて試作終了後に即中止になった超重戦車マウス開発の方に傾けていたのも、一因として少なからずあるとも言われた。
だがこの緒戦の勝利にて、内心ソ連に対して驕りを見せていたドイツ人は、戦闘開始から二週間で突破すると言う予定表が突破するのに約三か月、人命と兵器の浪費も当初の想定の遥か上を跳ね上げる大損害を受ける事によって、総統閣下の不安が的中してしまったのであった。
国際連盟の主要三か国がそれぞれ国力任せに各方面で大規模な軍拡や新兵器量産を行う中、日英独に続いて各戦線で共に主力を張るスペイン・ポルトガル、オスマン帝国、イタリアもまた戦力拡大に尽力していた。
イベリア半島組は、侵攻して来たアメリカ軍の負の置き土産のせいで国土が荒れ果てている為に国土復旧の方に尽力せざる負えなかったが、それでもイギリス軍の命令系統下にスペイン・ポルトガル軍の中でも歴戦の有力部隊を多数着かせたままであり、その一点だけで、イベリア半島の民たちの持つアメリカへの怒りと憎しみの程が分かるだろう。彼らは再び襲い来るであろう新大陸の虐殺者共に備えを図り、そして時が来れば虐殺者の本拠へ乗り込み報復の銃弾を叩き付ける気満々であった。
129: 陣龍 :2022/07/18(月) 19:50:57 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
20世紀に蘇った中東の大国、オスマン帝国は、その国土環境から石油輸出により各種物資を輸入し、主に沿岸部にて工場建設を地道に進め、内陸部への鉄道等のインフラ構築を推し進めていた国土開発が功を奏し、イギリス人に『工業製品と思って見れば工芸品に見え、工芸品かと思えば工業製品に見えなくも無くなる』と、つまり端的に言えば『ドイツ人以外では運用に手古摺る様な整備性・量産性の低い高級品』と評されたドイツ軍の重戦車(パンター、ティーガー)は兎も角、それ以外の戦車や航空機はノックダウン生産、更には一部ではライセンス生産が行えるだけの工業力を保持出来るようになっていた。ソ連の鳩尾、又は喉元とも言えるコーカサス地方にて、アメリカから戦争前様々な理由で大量に送り付けられた工作機械、自動貨車により多数の自動車化歩兵師団、戦車師団を編成出来ていたソ連軍相手に、事実上オスマン帝国軍単独である程度張り合えていたのは、ソ連軍が兎角国土防衛に重点を置いた消極的対応だった事も有るが、何よりオスマン帝国その物の地力が伸びていた事が大きかった。
もしオスマン帝国の国力が脆弱であったら、開戦数ヵ月でイスタンブールにソ連の赤旗がはためいていた事は容易に予想出来た。
一方列強国の中でもブービー級等と言われたりしているイタリア王国は、イベリア半島組やオスマン帝国とは違い自力にて航空機や装甲車両を開発可能な一定の地力、工業力こそ有ったものの、戦争によって加速度的に進化、発展する兵器開発競争に着いて行ける程では無かった。航空機のエンジンをドイツ、イギリスから供与、
後にライセンス生産し搭載した事で一線級の性能を発揮したイタリア機や、自国産の自走砲の様に中々見るべき所の有る兵器はそれなりに有ったが、比較対象が悪すぎるだけだが流石に欧州最強格の陸軍大国ドイツ、そして極東の巨竜こと日本と日本に引きずられるように進化した世界帝国イギリスが生み出す最新兵器群には見劣りした。
海軍の方でも、イギリス地中海艦隊とオスマン帝国海軍と共に、ジブラルタル海峡を突破して地中海に侵攻して来たアメリカ海軍を相手に、相応に奮戦して戦果と共に損害を被っていた。『イタリア如き』も蹴散らせずに艦隊決戦で殴り合いとなり、イタリア海軍の旧式戦艦こそ二隻討ち取ったが、海戦中に横合いから挑んで来たイギリス地中海艦隊の介入と、アメリカ海軍の駆逐艦・巡洋艦の護衛を強行突破し強襲した駆逐艦の雷撃、そして海戦後のイタリア潜水艦による夜間襲撃も行われた損害にて重巡洋艦数隻と補助艦艇多数を喪失、U.S.級より前級だが戦間期に就役した有力な新型戦艦も三隻も大破させられ『すごすごと』撤退させられた事に、アメリカ海軍でも新世代閥はかなりの衝撃を受けてたりしたが、当のイタリア側では容易く、それこそポンポンと大型艦を新造して戦線投入して来るアメリカの姿に頭を抱えていた。
オマケとばかりに、ジブラルタル要塞制圧の時には、海峡の向こう側からの流れ魚雷がイタリアの最新鋭戦艦であるリットーリオに複数命中て大破し、撤退する米艦隊への追撃に戦艦部隊が間に合わなくなったと言う泣きっ面に蜂の有様でも有った。
国力、工業力の限界で大型新造艦の補充はある意味ドイツ以上に見込めないイタリア海軍であったが、それでも条約型戦艦の規模で有っても優秀な高速戦艦を複数抱えているので、日英独はイタリア海軍へ多くの支援、援助が行われたが、単純な電探等の最新兵器の供与程度に留まらず、日本やイギリスらが多くの資金までも出す形でイタリア艦艇の全面改装や日英で建造された新造大型艦の供与すらも行われていた。
イタリア海軍が初めて保有した大型正規空母二隻は、翔鶴型の設計を元にした日本製戦時急造の雲龍型空母だったが、艦載機も満載し、序でに艦載機や艦艇の部品も詰め込んだ輸送艦ごとイタリアのタラント軍港に送られてそのまま供与された時には、出迎えた時のムッソリーニ総統も若干引き攣った笑みで日本海軍の将校と握手を交わしていた。イギリスからも防空、対潜に重きを置かれた巡洋艦が複数供与されてたりもするので、イタリア内からは『日本人とイギリス人はイタリア人から休みを奪おうとしている』と半ば本気の冗談が度々交わされていたと言う。言っては何だが、再建されて未だ時間の浅いオスマン帝国海軍と比べて、古くから地中海専門とは言え列強海軍として名を馳せていたイタリアで有るのでこの待遇はある意味当然であったのだが、イタリアからして見れば『頼むから少しは自重してくれ』と叫びたくもなる話である。
130: 陣龍 :2022/07/18(月) 19:53:25 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
【狂乱の国際連合】…さて、着々と反撃の準備を整えつつある国際連盟に対して、構成国がアメリカ、ソ連、そして政治的意義以外では戦力外かつ国内争乱が致命的な域へと順調に進行しつつある傀儡カナダ王国だけになった国際連合。ワルシャワまで一時迫るも叩き出され、明日にもドイツ・ポーランド・イタリア軍がソ連・ポーランド国境からソ連本土に攻め寄せて来る様相であり、そしてコーカサス地方ではオスマン帝国軍が全く無視もあしらえもしない戦力で戦略的嫌がらせの小競り合いを仕掛けて来ていると言う状況の為に、ソ連ではスターリン書記長が大祖国戦争演説と共に不退転の決意をソ連全土に知らしめていた。可能であれば即時白紙講和する事も選択肢に入れたかったのだが、巻き込まれる形で加盟した国際連合が『戦争終結条件は国際連盟側の無条件降伏である』と宣言していた事で、政治的に身動きが取れなくなっていた。
第一回目の国際連合総会に置いて、アメリカが独断で宣言したこの無条件降伏発言に、開戦初頭で頭の壊れた熱狂が支配していた南アフリカやオーストラリア、自称カナダ王国政府、無邪気に自らの『正義』を示す結論を見れて喜ぶアメリカ人の民衆等は兎も角、殆ど寝耳に水であったソ連特別大使はただただ茫然としていた。その為か、ソ連は戦争中アメリカ軍部等の少ない良識派、常識を保っていた面々との方へのパイプを保つ事を重視し、後の戦争末期の混乱の最中に科学者や高位の軍人と言った多数の高価値労働者や一定の技術・機密情報をどさくさ紛れにソ連に引き込んだ事が、冷戦終結後の情報公開にて判明して居る。ソ連に渡ったアメリカ人は二度と故国に戻る事は無かったが、日記であったり子孫らの証言からは案外心の平穏を保て、新天地にて相応に活躍し天寿を全うされた者も多く、それなりに幸福だったと言われている。
余談だが、この時のどさくさ紛れと共にアメリカ文化の象徴でも有るハンバーガーやコカ・コーラもソ連に流れており、ロシア人の口に合うように改良を続けられた結果、冷戦崩壊後に日本でロシアンバーガーはその物珍しさも有り一大ブームを巻き起こす事になる。後に資源輸出を中核として経済的復活を遂げるロシア経済だが、ソ連崩壊と言う下向き気運にしかならないロシア人の自信喪失させる歴史的大事件の中で、その不景気な民心を少しばかりであっても上向きにさせたのは、日本人の多くがロシアンバーガーを求める写真や映像で有ったと言うのは、後の多くのロシア人が証言しているが、ソ連時代に厄災をとことん持ち込んだアメリカが生んだ食物が、数十年後にロシア人を救う切欠になったと言うのは、何とも不思議な巡り合わせである。
そしてそんな夢の国に現実世界で紛れ込んだかの様な気分に陥っていたソ連では、ドイツ軍の戦車の脅威的な性能に驚愕し、そして恐怖に駆られるがままに新型戦車開発に没頭していた。ポーランド戦線から命辛々脱出して来た兵士の話では、たった一両のパンター戦車やティーガー戦車を相手にしたソ連軍の新型戦車T-34が、立て続けに数両も一方的に屠られる事例がいくつも確認されていた。無論、単独での戦車戦や複数台による集中射撃、空爆等で撃破したドイツ軍戦車もそれなりに存在していたが、こと戦車戦ではドイツ軍主力機甲部隊に押されっぱなしであった。更新が間に合わずに多数が存在していたBT戦車に至っては、歩兵部隊なら兎も角ドイツ戦車に取って唯の獲物扱いである。
また戦車以外でも、ソ連兵から『伍長のオルガン』等と呼ばれた多連装ロケット砲の様な砲火力に関しても、ソ連側は開発も含めてドイツ側より一手立ち遅れていた。突然の参戦で準備運動も心構えも何も出来ていなかったソ連は、何もかもが後手後手だった。
131: 陣龍 :2022/07/18(月) 19:55:32 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
満州事変にて日本が投入した多砲塔戦車の外観等による衝撃で多数作られ、そして何の役にも立たなかった多砲塔戦車部隊が生産ラインごと完全に消滅し、それにより捻出された分に加えて緊急で追加された臨時予算と資源にてドイツ戦車に勝てる戦車開発が開発局へ書記長直々に命じられたが、開発陣は皆頭を抱えてウォッカをラッパ飲みしていた。T-34は当時のソ連戦車の傑作とされる程に走攻守全てが高レベルに纏まった、性能的には世界的に見ても名作の戦車であり、それを補完する重戦車としてKV-1の改良型であるKV-85が開発、投入されていたが、ドイツ戦車の方が一段格上であったのは誤魔化しようのない状況だった。正面からの戦車戦にて先手を取って発砲したKV-85の主砲弾が弾かれ、そしてティーガー戦車による反撃の一射で爆散する貴重な戦闘時の資料映像が後世にも残っているほどだった。
また戦車等の陸戦兵器のみならず、航空機に関してもソ連側は劣勢を強いられていた。
元が巨体で有る為に更新が終わっていないと言うのも大きいが、やはり人(日本)のカネと土地で多数の技術試験等をドイツ側が長年行っていたのが最大の理由だった。ソ連側も、主にアメリカ側の経済的苦境の解消の為だが多数のアメリカ製工作機械や自動貨車等を入手する事が出来てたりはするのだが、こと軍事面、技術面に関しての交流の多くは、一部例外を除いて開戦後の話であった。加えて、開戦後の軍事交流でも艦艇・航空機技術は兎も角、陸戦技術に関してはクレーンで輸送艦に乗せて敵地に運ばなければならないと言う、アメリカ側の島国的国家事情も有って大陸国家であるソ連の事情にそぐわない技術開発構成で有り、またアメリカ国内がポピュリズム全盛となって軍艦、とりわけ戦艦開発に注力し過ぎた悪影響で、戦車技術は基礎工業力の高さから来る足回りの強さ等一部技術を除いて、単純な性能等ではソ連より劣る有様であり、航空機技術も素材や生産技術関係は兎も角機体設計に関しては、旧世代機の改修・改良型が主力で新世代機や革新的と言える様な航空機は、少なくともアメリカ軍の前線には見当たらなかった。
その代わりソ連海軍では足元にも及ばない戦艦を多数建造出来ているのだが、将来は兎も角現状で陸戦が最重要事項であるソ連では、全く欲しい物では無かった。
その他のオーストラリアと南アフリカは言うに及ばず、欠片もソ連に役立つモノを持って居なかった。
傀儡カナダ王国からは少数のマーリンエンジンの現物が得られた事と、戦前のソ連上層による要望にて招聘したアメリカ人航空技師の協力の元、世界初のジェット戦闘機が開発終了していた事がせめてもの慰めである。後者のジェット戦闘機は兎も角、マーリンエンジンに関しては実用化するだけの暇と余力が有るのかどうかは別として。
余りにも感情的で行き当たりばったりの戦争指導姿勢と相まって、全くと言う程当てにならない『同盟国』の方々の為に心底失望して頭を抱え、実質独力でドイツと殴り合う事になったソ連。
極東戦線のシベリアは満州理地方で日本軍・満州軍とにらみ合う極東軍からの引き抜きは最低限に抑えざる負えないが、此方では日本軍は対米戦の事に頭が一杯と言う事も有って、小競り合い程度の抑制的な行動に終始していた。その為ある程度の極東配備の現役兵を引き抜き中央アジア等から数合わせで徴兵した兵士で数埋めする事は出来たが、その程度ではドイツ・ポーランド連合軍に加えてイタリア軍、イギリスの航空軍も追加で来た国際連盟軍に対抗する事は厳しいと自己判定していた。根こそぎ動員で揃えた中央アジア等の兵士は、訓練期間を極端に短期間にして前線配備にする事で練度が低い為、装備と兵力差が余程敵軍より優位でもない限り、余り当てに出来なかった。抱えている人口の差で単純な兵力差こそソ連側が優位であったしその点国際連盟側も警戒していたが、ソ連としては不安要素が多々であった。
132: 陣龍 :2022/07/18(月) 19:57:51 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
ポーランド戦線からソ連国内に撤退する際に、ソ連に続く鉄道を中心としたインフラを破壊してドイツやポーランドがインフラ修理されるまでの時間を稼いでいる間、既にソ連国内ではT-34、KV-85を超える主力戦車開発と生産に躍起になっていたが、仮に独波側が拙攻を賭して早急に侵攻していた場合、ソ連側の新型戦車の配備は生産の混乱も加味してモスクワ攻防戦直前にまでずれ込んでいた可能性が高かった。だが独波側は、物資や兵器の備蓄、増援として来たイタリア軍やイギリス空軍との調整、補給路の整備・強化等も有って、万全を期した巧遅を選択した。その為、少しばかり生まれたタイムラグによって、最低限とは言えT-34よりも強力である、ソ連最新鋭の重戦車。そして戦前にソ連上層部のある種の気まぐれにより、アメリカから招聘した多数の航空技師たちの奮闘も有り完成した、全世界で一番初めに実戦投入されたジェット戦闘機が、最前線に投入される余地が生まれていた。
正しく、禍福は糾える縄の如し。散々暴走する他国の災禍が無関係なソ連に突っ込んでくると言う不幸の底から見えた、数少ない幸運の小さな光であった。更なる不幸の前触れな気もするが。
一方、ソ連が魔王軍に王城で決戦を挑む勇者と王国軍かの如き雰囲気を醸し出している頃。
アメリカでは相変わらずの大狂乱の極致にあった。珊瑚海海戦の敗退から続く泥縄的な撤退戦にて、太平洋戦線の重要拠点であるオーストラリアを実質的になすすべなく見捨てる形となり、しかも南太平洋のアメリカ唯一の植民地であるサモア諸島も、元々此処が戦場になる事等想定して居なかった為に防備が貧弱でもあり、緊急で防衛設備をアメリカが誇る工兵部隊が昼夜を問わずに構築しようとするも、相変わらず酸素魚雷を乱射しまくる日本軍潜水艦の通商破壊に輸送艦が度々捕まって沈められる為に遅々として進まず、押し寄せて来た日本軍の艦砲射撃と航空攻撃、そして上陸戦を仕掛けた日本陸軍と海軍陸戦隊によって、サモア諸島を防衛していたアメリカ兵は数少ないトーチカと歩兵らが必死の創意工夫で構築した塹壕ラインごとズタズタに引き裂かれた。
ニューギニア島で苦労した経験から、日本陸軍が海軍等関係各所にも協力を要請して実験的に開発していた、後の強襲揚陸艦の始祖とも言える『あきつ丸』型揚陸艦を複数投入した事も有り、通常の想定よりハイペースに事が進んだ為、無理に増援を送り込む前にサモア諸島が陥落した為に、皮肉にもアメリカ側が更に余計な損害を出す事は避けられたが、大した慰めにも成らなかった。
流石に南太平洋全域を制圧した為に一息入れ、自らの体制作りに余念の無い日本軍では、この頃のアメリカの動きの少なさを『不気味な沈黙』と認識していた程度に、アメリカ国内の事が良く分かっていなかったが、ただ単に自分達が多数のアメリカ艦を撃沈していて能動的反応が取れなくなっていた事と、敗勢の中で内紛と政争が発生して居て惰性ながらに狂奔していた戦力強化とハワイ諸島並びに沿岸部地域からの強い要請で行われた防備強化以外では、政治的な決断が行える状況に無かった事が戦後の調査で判明しており、当時の日本人調査官は、共に合同調査に参加していた英独らの調査官と共にシオン共和国(独立当初)から買い付けた肉と酒をかっ食らって不貞寝したとか言われている。宣戦布告無き奇襲攻撃で弟を唐突に失い、続けざまに英連邦の二か国が親族の英王族総督一家を殺害して裏切り、そしてイベリア半島への電撃的侵攻とイギリス本土空襲と言う苦難の津波の中でも、国民を鼓舞し、国際連盟の強固な精神的支柱の一角として戦い続けたイギリス国王と比べるのも烏滸がましい有様であったのが、この時のアメリカ大統領だった。
追い詰められているとは言っても所詮外地に外征した軍隊が敗退しただけであり、アメリカンボーイズの死傷者の多さも、日系人への迫害とアラモ砦を想起させる大統領演説にて、国民感情の批判の矛先を逸らし一先ず一息吐くホワイトハウスとアメリカ大統領であったが、ある意味能天気な政府上層部を他所に、アメリカ軍内部は安定の政争に突入していた。これまでの敗退の理由をアメリカン・ジャスティス世代による独善的な采配と予算配分、開発注力であるとして責任追及並びに降格や異動等の処分を要求する旧世代閥に対して、自己の権勢保持に加えてこれまでの言動の積み重ねで今更引き下がれ等しないアメリカン・ジャスティス世代は、敗北の中で戦前よりもアメリカン・ジャスティス世代の発言力や権威が低下し、相対的に旧世代閥の存在感が増した事により更に深く対立。
133: 陣龍 :2022/07/18(月) 19:59:52 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
兎に角明確に指示を出さずに『何とかしろ』とだけ繰り返し、専門家に一任と言う表現で責任も決断もホワイトハウスが軍部に丸投げしたせいで、兵器の生産や開発、部隊の編成効率は低下していた。流石に『遊んでいる』生産部署が出る程では無かったが、予算と資源を名目として主にジャスティス世代のメンツと権力を巡った内部抗争で、合理性を貴ぶ筈のアメリカにしては非効率な行動が度々見られ、それを地力の生産力と国力任せで強引に穴埋めすると言う図式は、戦争中盤以降の終盤直前まで見受けられていた。
二つの派閥の最大の対立点の一つとなったのは、艦艇整備と開発に関する事であった。
陸軍に関しては、既に太平洋戦線でもイベリア半島戦線でも、日英の戦車に当時のアメリカ軍主力戦車であったM4 シャーマンが完膚なきまでに粉砕されていた事と、真面目に本土決戦の可能性が視野に入っていた事で海外輸送を考えない、大陸国家的戦車開発に狂奔していたが、ジャスティス世代の牙城でも有った海軍では、ユナイテッド・ステーツ級戦艦が航空飽和攻撃にて複数喪失した事例を以てしても、空母整備を要求する旧世代閥に対して戦前と殆ど変わらず戦艦整備を強行しようとするジャスティス世代の形式は、大きな変化が無かった。ヨークタウン級空母を基とした戦時急造空母であるエセックス級空母の量産を認めた時点で、ジャスティス世代に取っては極めて大きな譲歩の積りであったが、旧世代閥がそれでは不足として更なる新世代の装甲空母や革新的な新型機開発、そして建造途中の全戦艦を完全に空母化させる為にも大量の予算と資材を要求して来た事は、彼らに取って『図に乗るな』と激昂させてしまうのに十分であった。
既に航空機の優位が示されているのに、この期に及んでジャスティス世代が空母の増産を拒絶する否定の根拠となったのは、自己の権勢の維持が本音では有るが、理論武装として使われたのは、皮肉にも戦前欠片も期待もして居なかったアラスカ級偵察戦艦と言う色物の、珊瑚海海戦での活躍であった。U.S.級戦艦が航空攻撃にて撃沈されて這う這うの体で逃げ散り、追撃を図った日本海軍だったが、この時の夜戦にて最新鋭の剣型超甲種巡洋艦二隻が、僚艦である巡洋艦複数と共に撤退支援に突撃して来たアラスカ級と交戦。詳細は省くが、剣型の砲撃が殆どアラスカ級の主要防御区画に命中すると言う、日本側の不運でアメリカ側の幸運も有り、日本側が自身を以て送り出した剣型は二隻とも大破、撤退を余儀なくされ、巡洋艦も複数喪失してU.S.級を取り逃した上、追撃側を散々かき乱したアラスカ級も撤退して行ったのを見送らざる負えず、夜が明けての航空攻撃でも日本側は前日のU.S.級への攻撃に全力を注ぎ過ぎた為に、アラスカ級が搭載していた戦闘機群に妨害されて追撃が頓挫した経緯が有った。この事を盾に、ジャスティス世代はあくまで空母では無く巨大な主砲を搭載した『戦艦』の建造を強行しようとしたのだ。
戦後の調査に置いて、余りにも国家国民の事を考えない、自己の派閥の権勢しか頭に無い醜悪な行動の数々に、政治学の分野等で悪しき例として大きく記載されるこのジャスティス世代の政治的行動に、国を背負った愛国者としての自負を持つ旧世代閥は失望も絶望もする事は無かった。今までの我欲と幻影に溢れた言動の数々を戦前から見続け、そして悪影響も多々受けていた為に、感情的になれる程の元気は残っておらずに摩耗し切っていた。
非ジャスティス世代派閥の人間と言う事で戦前は明確な閑職であったアラスカ級偵察戦艦の司令官を押し付けられ、そして珊瑚海海戦にて唯一気を吐いたハルゼー中将位が、ジャスティス世代の視線等知った事では無いと、自らの仇名である『ブル・ハルゼー』の異名通りに様々な方面へ正論を吐き、噛み付き続けていたが、当のジャスティス世代は珊瑚海海戦での功労者を『上官へ楯突いた』として唐突にアメリカ西部の航空基地の司令官に追い立てて、アラスカ級偵察戦艦の司令官に自己の派閥の将官を捩じ込んでいた事から、全く『真面目に戦争』して居ないのが明白だった。この件が漏れ伝わったイギリス、そしてイギリス経由で知った日本ですら、『ブル・ハルゼー』に対して同情の念が湧いた位である。
134: 陣龍 :2022/07/18(月) 20:01:37 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
そんな不毛な派閥抗争が行われている中での、アメリカ軍の戦力強化だが、戦前から艦艇重視で人材の教育システムもそちらへ重点を置かれ過ぎた結果、艦載機パイロット育成は試行錯誤を繰り返しつつ行われていた。
国情も有って航空機の操縦資格を持つアメリカ人は多く、その点からもジャスティス世代はパイロット育成に対して極めて楽観視していたが、艦載機パイロットは海上航法等の特殊技能を必要とする一種の職人芸が求められると言う事は、航空機に相変わらず興味が無い事や艦載機を扱う前線に行った事も無いのも有ってまるで理解出来ていなかった。その為、日本側では欧州で一朝有事が起きる事を想定し、空母艦載機部隊の増勢体制を戦前より地道に行っていた事から比較的堅調に拡大が行えていたが、アメリカでは教育体制の不備も多く見られ、後々まで人材供給面でも足を引っ張る事になる。
また、人材供給でもそうだが、兵器開発に関しても、戦前から戦争中盤まで行われていた、極端な戦艦重視姿勢による歪みは、アメリカ軍に対し多大なる悪影響を及ぼしていた。
アメリカが誇る世界レベルで見ても優秀な人材や企業が多数フィリピンへと移籍して日本側に付き、元からの日本の工業力、技術発展に加えて英独らからの技術導入にて急激に性能が跳ね上がった新世代の航空機を大量生産、実戦配備を繰り返した日本軍に対して、保守的なアメリカ最大の大規模軍需航空企業となったカーチス社以外では、目立つ所では新鋭だが弱小のブリュースター社程度しか哨戒機以外での軍用機開発能力を持った航空企業が、当時のアメリカ国内には居らず、優れた大型爆撃機の開発能力が有ったボーイング社は、戦艦重視の煽られた世相に絶望して軍用機開発から撤退し、民間機開発のみに専従していた。
そして競争相手のいない大企業と言うのは基本的に挑戦を忌んで保守的になる事が多く、この頃のカーチス社も御多分に漏れず、良く言えば堅実で普通に見れば保守的な戦闘機の開発や改良機を軍へ納入していた。そしてカーチス社やブリュースター社の機体の性能は、イベリア半島や南太平洋での空戦にて、序盤の奇襲効果や数の圧倒的優位を保っていた頃は兎も角、本腰入れて反撃してきた日本機やイギリス機にはまるで歯が立たずに叩き落とされただけの能力しか発揮出来ずに終わった。
当然、慌てる様に戦時予算の拡大で新型機開発をせっつくアメリカ陸海軍航空隊であったが、相変わらず引っ掻き回すジャスティス世代の邪魔も有ったが、そもそも長期間の冷遇にて技術の積み重ねが不十分であったアメリカ航空機業界に、行き成り日英機を圧倒する超高性能機を出せと言うのは無理難題でしか無く、勿論懇願に等しい命令を受けたアメリカ企業は頑張りはしたが、珊瑚海海戦で日本軍パイロットから『空飛ぶ酒樽』呼ばわりされたブリュースター社のバッファローが、機体の面影が吹き飛ぶ大改造を以てようやく一定の戦闘力を得られた様な僅かな例外を除いて、大体が失敗作か低性能機止まりの開発完了に留まっていた。
戦争前に、ソ連からの要請でアメリカから雪崩れ込んだ航空技師の内、少数ながらも無視出来ない数がソ連に居残って開発に勤しんでいたと言う、派遣した企業にとって数少ない有能な人材が更に減ると言う大誤算の余波も有った。
135: 陣龍 :2022/07/18(月) 20:02:24 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
尚、本来資本主義国家の人間が共産主義国家に居付くのは政治的にも宜しくは無いのだが、残留した人間は言ってしまえば政治的思想皆無の航空機バカの典型とも言える連中であったので、ソ連側としても普通に戦後になっても重宝していたと言う。後に、世界初のソ連製ジェット戦闘機の改良等でも、この残留したアメリカ人航空技師の努力も有って、様々な苦難が有りつつも順調に乗り越えられたと言う証言が各所に残されている。
戦争中盤以降から終盤へ突入する段階にて、ようやく体面も何も形振り構って居られなくなったアメリカが、ソ連から多数の技術導入と言う名のライセンス生産と、戦場で一部回収したマーリンエンジン搭載の日本軍戦闘機(隼)を完全コピーした『新型戦闘機』を前線投入する事で、如何にかして制空権の均衡を狙い、そして戦艦が中核の艦隊を敵輸送船団に突撃させようと目論むも、一度護送船団に見せかけた護衛空母、護送空母の群れから飛び立った多数の戦闘機により痛い目を見た日本海軍は、世界初の実用型艦載ジェット戦闘機『閃光』を筆頭とした、本来アメリカの十八番で有った筈の質と量の暴力で真正面から殴り込みに掛かるのであったが、それはまだ少しばかり先の話である。
136: 陣龍 :2022/07/18(月) 20:05:27 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
|д゚) ……斬り処が何か分からんまま取り合えず突き進んだ結果が此方になります。最早文字数のテロだろうか()
|д゚) ソ連君が逆襲の詰めを仕掛け、ドイツ側はそれに気付かず吶喊する形となり、そしてアメリカは何時ものジャスティス世代が邪魔しまくるのであった
|д゚) 因みに、この世界では大粛清が起きていないので、トゥハチェフスキーニキも(書記長とは不仲の極だけど)生きて将軍の地位に居りますな
ジェーコフ将軍らと一緒にグデーリアン将軍等と殴り合う予定
最終更新:2022年07月29日 08:55