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銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです欧州大戦その七 その光達は極東より


ロンドンのバッキンガム宮殿に置かれた英国・日神合同臨時司令部、特に英国側は混乱に包まれていた。
絶対である筈の艦娘に対しドイツの攻撃が有効に働いたからだ。
物事に絶対はなく対馬の件があるが英国では特殊な事例として考えられていた。
そして続く凶報がさらなる混乱に拍車がかかる。


「続き各艦娘及び深海棲艦にも被害多発!!ミサイル及び戦闘機と思しきものが突入した模様!!」

「戦闘機…あれか!尖閣の前に中国がとったのと同じ有人機の無人型か!!」

「詳細不明です!!」

「ジェーナスに続きジャービス及びZ1、Z2各マエストラーレ級通信途絶!!」

「アンツィオ沖棲姫始め深海棲艦の駆逐艦にもミサイル及び戦闘機らしきものが突っ込んだとの報告!!」

「被害不明ながら該当海域旗艦空母神鷹及び護衛の軽巡艦娘にも被害!!」

「データリンクは生きているかね?あれは量子通信だから機器が生きていれば状態が分かる筈だよ。」


その混乱の中で冷静な一人だったモンティナ・マックス神崎島陸軍少佐が発言する。
それにハッとするスタッフ達はコンソールを操作する。
そして司令部のモニターにジェーナスらの現状が映し出される。


「そ、そんな…。」


誰かが絶望の声を漏らす。
駆逐艦ジェーナスの状態を示す図は全体が非常事態を告げる赤いアラートに染められている。
合計3トン弱の蠱毒の仕込まれた徹甲炸裂弾頭、対駆逐艦ではなく最早対戦艦用であるソレはシールド、
加護を突破するばかりかジェーナスの特殊装甲甲板を突き破り艦内で炸裂しジェーナスの竜骨そのものをへし折られ沈んでいく。
他の艦娘や深海棲艦も似たりよったり状態であった。ある者は艦尾を失い、ある者は艦橋を吹き飛ばされ、ある者は船体そのものが割れ沈んでいく。
そして、次の瞬間司令部は衝撃と共にゼルモニターと窓より入る斜陽の光の明かりのみ残し暗黒に包まれる。


「何が起きた!!」

「主電源電源喪失!補助電源に切り替えます!!」

「各レーダーサイト及び軍事施設との量子通信外の既存データリンク網途絶!」

「復旧急げ!!」


しばし続くその喧騒を後目にモンティナ・マックス少佐はペンウッド中将へと語りかけ、冷や汗を拭いながら中将も答える。


「恐らくは水上艦艇で構築していた本土防空網一部喪失による各施設へのミサイル着弾によるものでしょうな。そして引き起こされた混乱続いては…。」

「続いては…何かね?」

「アシカでしょうな。」


少佐のその言葉に目を向けるペンウッド、それと同時にデータリンクが復旧する。


「データリンク復旧、…これは!!」

「どうした?」

「ドイツ軍です!本土上空にドイツ軍と思われる空中艦艇らしきものが複数侵入しています!いや…これは…飛行船による侵入…?
やつら高速飛行船を使い低空で侵入した模様…っ!!空挺です!やつら本土に空挺作戦を仕掛けています!!」



黄昏に染まるロンドンは戦火に包まれていた。
喪失した防空網の一部を抜けたミサイルや砲弾、化け物に戦闘機が押し寄せたばかりではない。
それは南西より低空侵入をしてきた。

元ドイツ国防軍の妖精達はゼルモニターに映るものを見て頭を抱える。
そこに映るのはデカデカと船体に鉄十字が描かれた巨大な軽合金装甲飛行船、それも複数。
鉤十字(ハーケンクロイツ)ではないがどこからどう見ても千年紀なドイツ国家社会主義労働者党残党の飛行船、
多分そんな意図はないだろうが合致し過ぎて趣味が悪すぎる。
しかしながら脆弱極まりない存在であるが市民の避難を開始したロンドンに侵入したために市民への被害も考え撃墜も出来ずにいた。
その為に飛行船からの空挺を許したのだが精々一個大隊千人と兵器や何やら、通常であれば奇襲攻撃こそ受けたが英軍と米軍、欧州諸国陸軍残存部隊でどうにかなるものだったのだが。

854: 635 :2022/07/27(水) 23:24:30 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp


「なんだあいつら!!」

「重機関銃が命中している筈なのに倒れないぞ!?」

「装甲服でも着込んでるのか!?兎に角撃ち続けろ!!」

「いや違う…!身体が再生しているんだ!!」


避難する市民を背に防衛線を築いた英陸軍、ロンドン市警、米軍及び欧州各国の残存陸軍は苦戦を強いられていた。
銃弾の雨で頭を吹き飛ばされや炸裂した迫撃、榴弾砲弾の破片を受け四肢をもがれながらも何事も無かったかのように立ち上がるドイツ人、否憂国騎士団の者達。
そして下卑た顔を浮かべる。


「ハハッ!!白人共がゴミの様だ!!」

「これが帰天。生みもせず、生まれもしない力…。」

「あのズィンミーの長も良きことをするじゃないか。」


憂国騎士団は自分たちドイツの者達を自分達を養わせてやる代わりに存在を認める【ズィンミー(生存許可民)】と呼ぶ。
彼らは市民や軍人を狂喜を浮かべ虐殺し遺体を辱め、そして。


「待て…あいつら…。」

「人間を…喰ってる…?」

「老人や子供だけでなく赤ん坊や胎児まで…!!」


人を食らう。
最早その姿は吸血鬼(ヴァンパイア)である。いや屍食鬼(グール)と呼ぶべきか。
戦後分かったのは大陸やドイツで研究されていた人造艦娘計画の研究と膨大な人体実験が応用されていただろうこと、
大戦当時の指導者の部下達が極秘裏に彼を人造の――にしようとして彼が処分した技術が存在したこと。
人造の――、戦争末期のゴタゴタで指導者が研究した者ごと生命の泉に封じたものの一つなのが引き揚げられたのかそれとも極秘に研究が続けられたものなのか。

どちらにしてもそれまでのドイツの技術ではあり得る筈のなかったそれら、
そして並行宇宙の未来から座礁させられた異文明の技術と世界を終わらせる者の古きルーンを以て生まれた【帰天】と呼ばれたのがその技術。
憂国騎士団には天界の主の御業であり罪ある者を口に入れることで浄化する思っているが実際は違う、完全に伝承に存在する吸血鬼そのものだ。
陽の光に弱く、銀に弱く、祝福されたものに弱い。
ドイツ上層ではその事実を何も知らずに施術され他国の残骸をを漁る難民らを嘲り【ナハツェーラー(死体漁り)】と呼んだ。
まあどちらもどちらであるがそんな者たちも勝てない存在とはあるものだ。

カラカラという音に続きヴォーという音が響くと憂国騎士団の吸血鬼(ヴァンパイア)達はたちまち血飛沫を上げるとミンチに成り果てる。
在英神崎島陸軍の重機動甲冑王武に装備されたM61による制圧射撃、吸血鬼達より高位の幻想たる島の妖精により製造され彼らが操る武器の前には塵も同じ。
また自衛隊いや帝国軍も加えた10式戦車改や16式機動戦車も存在し日本の神々の加護を受けた歩兵火器と合わせ十二分に圧倒出来る性能を誇るが絶対数が足りなかった。
英国に残る兵力は少なく陸上戦力の大半は仏方面に出払っておりロンドン全体をカバー可能な戦力が存在しなかった。
それでも何処が憂国なのか分からない吸血鬼(ヴァンパイア)達には十二分に脅威であり、劣等人種に出すのは癪であるが切り札の一つを切った。


「なんだアレ…。」

「巨人…だと…?」


誰かが呆然と呟く。
建物の屋根に巨大な指が掛けられその存在が顔を見せる。
ビルの谷間の空よりこちらを見下ろす醜悪な存在。神々と文明の敵、終わらせる者が呼び出した太古の幻想、その名を霜の巨人と言った。
その巨人は呆然とする兵達に手を伸ばす。
逃げろと王武の拡声器から声が響き装備された火器で攻撃を行うが尽く弾き返される。
霜の巨人は王武掴み取り放り投げられ機体がひしゃげ行動不能となり抵抗するものがいなくなるとを兵士を摘み上げそして口に入れ咀嚼、
兵たちは恐慌状態に陥り逃げ出した。




司令部は空挺降下の報に俄に騒がしくなり、ロンドン各地より同様に空挺部隊の侵入及び戦闘が開始された報告が上がる。
ドイツ軍に銃弾が通じない奴らは吸血鬼だ。或いは伝説の巨人が出てきたなど幾つもの絶望的な報告が上がり司令部内にも悲観的な言葉が出る。


「どうするんだ…。」

「艦娘ですら撃沈されたんだぞ…。」

「俺らに勝てるわけな「みんな泣き言はそこまでだ。」


しかしその言葉を遮る声に全員が向けば英国無双と慕われるいつもはオドオドしている筈の中将の背筋を伸ばした姿、そしてその傍らの存在に言葉を漏らす。


「女王陛下…。」


この連合王国を統べる敬愛すべき君主がいた。

855: 635 :2022/07/27(水) 23:25:51 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp


「貴官らは陛下の御前で弱音を吐くどころかあまつさえ自らの職務を放棄するのかね?」


怒りを感じさせる声音で中将が言う。
いつもの温和な声音からは想像も出来ない姿、ですがと漏らす軍人にギロリとペンウッドは目を向ける。
それをまあまあと嗜めるマックス少佐は司令部要員達の前で芝居がかった動きをする。


「さてはて皆様方は駆逐艦ジェーナス始め艦娘や深海棲艦が死んだとお思いで?」

「どう見てもあれは轟沈だろう…?」

「我らがあの吸血鬼共に勝てないとお思いで?」

「貴様…お前たち妖精の操る機動兵器すら破壊されたんだぞ!?」


マックスの言葉に苛立ちを隠さない司令部要員に対し、マックスはヤレヤレと肩を竦めてみせると少し笑いながらチッチッチと人差し指を振るう。
その姿に司令部要員達は何処となくイラッとする。
そこへ女王がマックスに問いかけ始め司令部要員たちは閉口する。


「少佐、私達はこの国を守れるのかしら?」

「はい陛下、それは可と答えましょうぞ。」

「彼女達が沈んだのに?あの巨人や吸血鬼達がいるのに?」


問う貴き女王にマックスは笑いモニターに目をやる。


「陛下、東方より光が参ります故に。誰もが知る普遍の王道(光)が。」




追い詰められていくロンドンと市民を守る軍人達をモニターが映す。
彼らは後退を続けロンドン塔にまで退避する。
ロンドン塔に迫る巨人の上半身を16式機動戦車の主砲が、戦艦ウォースパイトの主砲が、空母ヴィクトリアの艦載機達が吹き飛ばし、
吸血鬼達を妖精の火器が、ティ連軍人達の粒子ブラスターやディスラプターが消し去るが手数が圧倒的に足りない。

伝説に軍人や市民達は絶望する。
ロンドン塔へと巨人が迫リその手を塔へと伸ばす。
蹂躙されようとしたその瞬間、輝く閃光が走り視界が光で満たされる。
光が収まり皆の視界がもとに戻るが巨人は崩れ落ちその手はロンドン塔へ至らなかった。

光が消え人々は空に浮かぶ東方の島国の名を冠する船を、そして旭日が描かれたその錦の御旗を掲げる一団を見た。
ローマ皇帝、巨大な鋼鉄の大具足、鋼鉄の竜、艦の娘、武者、騎士、ティ連人や日本人の歩兵に神崎島の騎兵。
そして蝶や蜻蛉の羽の生えた者、笹穂の耳を持つ者、動物の特徴を持つ者、背が低い髭の生えたオッサン等統一感がない。
人間と異星人と人間の死者の妖精とヨーロッパ土着の妖精達。
それを率いるは白馬に跨り長大な騎兵槍を携え獅子の意匠の兜を被る騎士。





ジェーナス達が沈んだ海域、残された人間らの艦隊は眼前で艦娘や深海棲艦が沈む光景を目の当たりにし絶望の縁に立たされる。
だが、ジェーナスら同様に特攻機に突入され辛うじて大破で踏み止まった神鷹の目は絶望していなかった。
その彼女の手には傷だらけの幼い子供を抱き再び攻撃せんとする特攻機や桜花を抱いた陸攻の群れを睨みつける。
神鷹はこの場全ての友軍に通信を繋ぎ叫ぶ、まだ絶望するには早い空を見ろと。

その場の全員が見上げた空には一羽の鳩が舞っていた。
ジェーナスらの沈んだ海域に光の柱が昇る。【彼ら彼女ら】が彼女らに降り顕れる、貴き母刀自が
彼女らはその名に約束と願いが込められ生まれた、願いがある限り信じる者がいる限り彼女らは導きにより舞い戻る。

光が消え彼女達の姿を人々は瞳に映す。
その内の一人は手の内に傷だらけで意識を失った幼子達を抱え、ジェーナスの容姿で鎧を纏い背より白鳥の翼を生やし他の者らも同様の姿で幼子を抱える。
ジェーナスに似た彼女は英国本国艦隊のフリゲートに降り立つ。
降り立った彼女は甲板にいた乗員に抱えていた子供らを託すと堕ちたルフトバッフェ(ドイツ空軍)を睨みつけ翼を翻し飛び立つ。
黄昏の空と輝く鳩の下、白き翼の乙女らが空を舞う。守護天使の如く、戦乙女の如く。




それらの光景の映るモニターを背に、司令部要員と女王前にモンティナ・マックス少佐は眼鏡の位置を中指で直すとそのレンズを光らせる。


「王道とはお約束を違えぬ故に王道なのですよ。」

856: 635 :2022/07/27(水) 23:26:23 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。

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最終更新:2022年07月29日 10:00