493: 陣龍 :2022/08/04(木) 14:59:22 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

無幻世界に置ける第二次世界大戦 ~西欧の重装騎士 VS 北方の装甲騎兵 (場外奮闘バルカン闘士)~


『侮り過ぎていた……!総統閣下の言われた通りだった……奴らは……ソ連は、強い……!!』
『た、隊長!味方機が、味方機が多数被撃墜!更に敵機増援確認!敵が、敵が多すぎます!!』
『総員、直ちに撤退!未知の敵機の存在を、必ず、必ず本国に……ぐぁ!?』
『隊長?隊長!?……隊長機がやられた!全機撤退!全機撤退ィー-!!』


――――同盟国との調整や後方の兵站ラインの強化を終え、満を持してソ連へ攻め入ったドイツ軍に対する、ソ連軍の熱烈な『歓迎委員会』が繰り出した世界初の混合動力型ジェット戦闘機は、これまで圧倒的な戦局のみを経験して慢心していたドイツ空軍のプライドを、開戦一日で完膚なきまでに粉砕した。



「『第三重戦車大隊、損害多数!増援求む!』『小隊長車両が吹っ飛んだだと!?直ぐに指揮を引き継げ!』
『敵機襲来!敵機襲来!!空軍は何処ほっつき歩いて居るんだ!?』」
「『ティーガーⅠの正面装甲が撃ち抜かれた!?何の冗談だ!』『未知の重戦車を確認!主砲は最低でも重野砲クラスだ!!』
『敵新型戦車、側面、後方は何とか抜けるが正面装甲は硬すぎて一発じゃ無理だ!動き回れ!』」
「……予備兵力を投入、此処は退く」
「司令官!?し、しかし此処で撤退してしまっては……」
「我々は、侮り過ぎていた。我々が進歩したように、敵軍も又進化する。そんな単純な事すら忘れていたままでの戦闘では、勝てる物も勝てん」


――――迂回機動による包囲戦を仕掛けたドイツ軍に対して、ソ連軍はトゥハチェフスキー将軍率いる最新鋭重戦車『KV-3』を中核とした機甲軍と地上襲撃機部隊にて機動防御。ドイツが誇る主力戦車と曲がりなりにも正面から対抗可能なソ連重戦車による殴り合いと空襲にて、包囲を諦めて撤退したドイツ軍の戦略的敗北は、世界に衝撃を与える。



「Ураааааааа!!!!」
「Ураааааааа!!!!」
「「「Ураааааааа!!!!」」」


――――明々白々な、紛れも無くドイツ軍を相手に『勝利』を勝ち取った事に対する、兵士のみならず将校達すらも加わった、地鳴りを引き起こしドイツ軍側にすら聞こえたと言う戦場伝説すらも残した、歓喜に沸く雄叫びの大合唱。『自らの剣は、敵軍を切り裂く類稀なる名剣である』と言う事実は、極めて大きな士気の柱となった。



「……そうか。……それで、これからどうするのだ?」
「はっ……先ずは、敵軍の新型兵器に対する更なる情報収集、損害を受けた部隊の再編成、戦訓を元にした戦術の練り直しかと」
「……足りないな。あぁ、それだけでは不十分だ」
「……総統閣下?」
「ソ連軍が新兵器を出して損害を受けたのであれば、我が方も同じく敵を圧倒する新兵器でもって叩き潰す。それが一つの常道であろう」
「はっ……仰せの通りです」
「うむ。個人的には極めて、極めて、『極めて』残念であるが、陸上戦艦『マウス』案は潰れてしまったが、その他のゲルマン民族の精華を見せつける超兵器は多数生み出されつつある。それらを実戦投入出来れば、少なくともソ連軍に一方的に押されるだけには成らないだろう。
良し、メッサーシュミット社のみならずハインケル社にもジェット戦闘機の開発を加速する様に要請を下そう。戦況を聞くからにドルニエ社のプファイルも襲撃機兼一撃離脱型戦闘機として検討の余地も有る。無論日英にも協力を要請して何かしらの面白い技術や兵器を購入出来るかどうかも検討だ。それとあの巨大なロケット計画の進捗は何処まで加速出来そうなのかも確認しなければ。忙しくなるな……!」
「はっ……は、はぁ……」
「(何時もの儀式だなぁ……)」


――――『兵器オタク』的な、新しいモノ(機械)好きの性質が久しぶりに出て来た総統閣下に対し、少し前に側近として着任してその様を初めて見て困惑する新人、それを生暖かい目で見る先達や同僚たち。ある意味新技術や新兵器、新戦術等に偏見や先入観の無い柔軟な、悪く言えば節操の無い気質の総統閣下で有ったのが、ドイツを救った要因の一つなのかも知れない。

494: 陣龍 :2022/08/04(木) 15:00:14 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp


「シュワルベ(Me262)の調子はどうだ?」
「どうしてもエンジンの耐久性が低いのが難点ですねぇ…双発機なので、余計に予備のエンジンを備蓄しておかなければならないのも痛い所」
「パイロットたちからのレポートでは、圧倒的速度を活かした一撃離脱では必勝無敗、正し機動力に優れた敵単発戦闘機への攻撃は、低空での格闘能力が低い為に不得手。総じて、大型爆撃機狩りに向いた戦闘機、との事です」
「うーむ……戦争である以上、早々都合良く行かないモノだとは分かるが、何とも言い難いな」
「まさかソ連単独で、あんな戦闘機を繰り出してくるとは、予想もしていませんでしたからね」
「全くだ」


――――先行量産されていた、混合動力型では無い『純粋なジェット戦闘機』としては世界初であるMe262を投じるも、双発機と単発機の特性の違い、また予備部品の備蓄量等も有って、それなり以上の活躍が出来ていない状況に渋い顔をするドイツ空軍。
後にソ連側のジェット機開発と改良に複数のアメリカ人航空技師が噛んでいた事を知り『コミーの教えはどうした教えはァ!?』とブチ切れた者が多数出た模様。



「私はあの男が嫌いだ、経歴から何からして。だが、この戦争に置いて、あの男の力は必要だ」
「俺はあの男が嫌いだ、敵意から何からして。だが、この戦争に置いて、あの男の力は必要だ」

*1


――――トロツキー追放や経歴問題、派閥闘争等により、政治的に対立していたスターリン書記長とトゥハチェフスキー将軍であったが、内々の私的発言は兎も角表沙汰にはしない程度に最低限協調して対国際連盟との戦争を行うソ連上層部。
将来の火種は兎も角とした呉越同舟の関係は、危うく見えつつも安定したままであった。


「総統閣下の御尽力は心の底から有難く存じます」
「うむ」
「ドイツ三軍、多くの強力な兵器を装備し、お陰で特に陸軍は国際連盟でも最大級の戦力を保有出来ております」
「うむ」
「……どうして一言、陸軍に相談せずに独断で開発を進めてしまうのですか。我々の求める兵器とは掛け離れた変なモノが送られても困ります!!」
「いや、まぁ……その、性能は高いし防衛戦であるから十分に役立つだろうと……」
「出撃の度に足回りや駆動系が火を噴く突撃砲とか使い物になる訳が無いじゃ無いですか!しかも装甲は兎も角足がクソ遅いですし!何より何なんですか!ハイブリッド仕様の駆動系って!?整備兵達を全員病院送りでもするつもりですか!?」
「……スマンかった、これからは自重する(´・ω・`)」
「確約をお願いします!良いですね!?今度はグデーリアン将軍かマインシュタイン将軍が前線から飛んで来ますよ?!」
「……承知した、だからあの二人にだけは言わないでくれ。彼らの説教割と本気で心が砕けるんだから真面目に(´・ω・`)」


――――度々世界最先端の兵器や製品を開発する為の代償であるのか、相変わらずドイツ的エキセントリックな方向にドイツ開発陣が暴走し、それに対して『兵器オタク』思考で全力のゴーサインを出す総統閣下に、クレームを差し込んで調整する軍や官僚、現場の将兵達の図。
夢とロマンと開発者の明後日の方向へのドイツ面な愛が溢れる面白兵器の多くは、基本的に基礎研究は兎も角開発段階となると大体潰されて余計な資材を浪費する事は無かった。



「ソ連軍築城術の精華か……敵ながら、見事なもんだ」
「いやはや……やはり北の大地の大熊は恐ろしい。迂回機動を取るには遠回りになり過ぎて各個撃破の好機を与えかねず、大型爆撃機による空爆も主要拠点へは彼のジェット機の妨害で損害過多の戦果僅少となるのが目に見えている。
攻め込みたくない戦場と言う言葉を具現化させた様な場所で有ります」
「……因みにだが、もし君がドイツかソ連の司令官であったのなら、この強固な防衛ラインをどう突破する?」
「策も何もありませんな」
「……と言う事は……まさか」
「精鋭の重戦車部隊が中核の機甲軍団による、火力と装甲での真っ向勝負。攻撃側が得られる主導権、そして敵軍の想定を超えるスチームローラーで、真正面から叩き潰すより、他に方法は有りますまい」


――――観戦武官として東部戦線に来た日本陸軍将官による、対ソ連軍防衛ライン攻略法の解答。後の時代ならば原子爆弾と言う手段も取れたが、この時の選択肢は睨み合いの消耗戦か、乾坤一擲の大決戦かの二択しか実質的に無かった。

495: 陣龍 :2022/08/04(木) 15:00:51 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
「バーバ・ヤーガの如く四六時中ノック、もとい砲爆撃を繰り返しやがって!お陰で眠れやしねぇ!」
「正面からの戦闘が厳しいと悟ったのか、今では嫌がらせの砲撃や空襲が増えて来たな…油断してたら外郭陣地にまで取り付いてくるんだから始末に負えんが」
「……おーい、大丈夫か?言ってる事分かるか?……よし駄目だ、ロシア語分かってねぇわコイツ」
「僻地からの短期訓練徴収兵だからな……これからこう言う兵士が増えるのか……」


――――その時々に応じてジャブの様に威力偵察や中規模以上の航空攻撃を相互が行う中、戦力拡大に奔走するソ連では『数こそ力』とばかりに中央アジアやシベリア、モンゴル等の僻地から強制的に徴兵した低練度兵が激増して行っていた。
教育度も低く言葉(ロシア語)の理解度も不十分な兵が増えて言った事は、ソ連の戦略に制約を少しずつ与えつつ有った。

496: 陣龍 :2022/08/04(木) 15:01:51 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp


「『国際連盟統合軍部隊』……総統閣下の思い付きだが、意外と有力な戦力に成りあがったな」
「ブルガリア軍が中核…と言うより過半数、残りは一部バルカン残党軍に現地民義勇兵と言う構成で、ボリス三世陛下も統制に苦労されているようです」
「そうだろうな。此方からの支援は一部軍事顧問と物資・兵器支援しか出来ん。彼らには事実上独力で、バルカン地方を平定して貰わねばならん。まぁ、戦後に彼の『大ブルガリア』と言うモノを国際連盟が認める事は確約したから、今は空手形だが良い契約だろう」
「あんな空手形よりも、旧式とは言えFw190Aや四号G型戦車供与の方が喜んでるでしょうけどね」
「それは当たり前の話だが、政治的な交渉にはああいう空手形も時には必要なのだろう。儂は軍人だから詳しくは分からんが」


――――ソ連軍の総動員体制に対応し、欧州各国から志願兵を募る『欧州統合軍』構想を思い付き、検討を行わせた総統閣下の思惑は、ベルギーへの大きな不信感と悪感情、フランスの完全な爆散模様、オランダの国内荒廃、東欧の戦地状況、各軍との調整その他多数の問題により完全な達成は不可能だったが、一部リファインしてバルカン地方で孤軍奮闘するブルガリア軍への支援構成へと転化した。尚この時の『大ブルガリア』と言う口約束が、戦後本当に履行されるとは、ブルガリア人含めこの時この場に居た人間は誰一人として思っていなかった。

497: 陣龍 :2022/08/04(木) 15:07:00 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
|д゚) と言う事で、スターリン・ライン攻防戦の最序盤の模様でした(何故か最後だけ暫く書き込み出来なかった)

|д゚) ソ連側もですが、ドイツ側も総力戦且つ資源や経済面の問題が殆ど無い状態での総力戦体制確立済であるので、序盤の一定の敗北は織り込み済みと言うか、十二分にリカバリー可能な状態であります。まぁ部隊壊滅とかまでしてませんしな

|д゚) しかしこの世界線のヒトラー総統見た史実WW2ドイツが見たら羨望の余りに戦車砲乱射して居そうである。兵器開発方針で時々はっ茶けるけど、基本的に専門家である軍人の分野に過大に介入せず、軍部の欲しいモノを可能な限り揃えて送り届けて任せる、軍に取って理想的な戦時下のトップですし

499: 陣龍 :2022/08/04(木) 18:32:44 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
|д゚) 尚この緒戦のドイツ空軍大敗に置いて、史実に名を残すレジェンドエース共(『悪魔』『星』等)は全員生還してその後も再出撃したりしてますが、名も無き五機(+α)撃墜エースは何名か戦死(撃墜・墜落・マニューバキル死)している位に大損害でした。総力戦体制なので補える損害ですが

|д゚) 因みに我らが大魔王スツーカ大佐はソ連別働隊に殴り込んで暴れ回って対空砲火に被撃墜後は、現地ドイツ陸軍兵士と共にいつも通りの大脱出劇で基地に帰還して翌日再出撃して居る模様

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最終更新:2022年08月06日 10:18

*1 ……実は似た者同士で仲が良いんじゃ無いのか?スターリン書記長とトゥハチェフスキー将軍…