4:弥次郎:2022/08/11(木) 23:04:18 HOST:softbank060146109143.bbtec.net


憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「Zone Of Twilight」第2章1節「信仰と紅い射手」3



  • C.E.世界 融合惑星 β世界北米大陸 アラスカ州 国連軍ユーコン基地 ブリーフィングルーム


 ユーラシア連邦の試験部隊「ロート・フライシュッツ」とのデブリーフィングを終え、サンダークは大きく息を吐きだした。
 毎度毎度が緊張の連続だ。
 改修を受けた戦術期のテストのこともあるが、一番重要なのは連合との折衝にある。
 ロート・フライシュッツ隊との折衝はまさにそれだ。こちらの政治的な意思を含めてやり取りし、相手の意志を読み解く。
非合法な諜報活動ではなく、互いに情報を開示し合うことによるオープンソースインテリジェンス。
そも、諜報活動の分野において相手の心理や思考を読み取るESP能力者の重用が歪に発達してはいるが、本来はこういった行動こそが重要なのだ。
最も、サンダークでさえこれしかないと理解するまでに時間はかかったし、未だにソ連上層には犠牲にもかかわらず続けさせようとする意志がある。

(その人間がほとんど消えた以上、威勢の良い声だけが残った、というわけだがな)

 その惨状をできれば思い出さないようにしつつ、サンダークは退室した。
 手元にあるのは今回採取された貴重な戦闘データだ。これらを持ち帰り、メカニック班と共に解析し、データと実機を突き合わせて解析する。
都度都度パーツや内装を換装したり調整したりしたうえで多量のデータを得て、その結果がどういった意味合いを持つかを特定するのだ。
既に十を超える回数を行ったこれらにより、イーダル試験小隊は途方もない成果を出すことができていた。
既存戦術機を強化するために必要なデータ、ノウハウ、操縦技術など、得られたものは大きい。
 後はこれらをまとめ、実機への反映を急ぐばかりである。

(いよいよこちらでは、発展か)

 そして、いよいよイーダル試験小隊では、紅の姉妹並の機動や戦闘を誰もが行えるようになるという目標に向けて動き出した。
本来ならばESP能力者のクローンしかできないような優れた反応や機動能力の、ハードおよびソフトウェア的な再現という途方もないものだ。
 これまでは、紅の姉妹のような能力者たちと、一般の衛士では越えられない差が存在しているとみなされていた。
それは事実であり、同時に、AL3という国家の威信をかけたプロジェクトが間違いだったということを恐れるソ連の意志も絡んでいた。
 だが、イーダル試験小隊で連合の衛士たちとの幾度とない検証や比較試験の結果からするに、その絶対的な差は容易く覆せると判断されたのだ。
必要なのはそれにふさわしい機体と、それに追従し、制御し、扱いこなせる衛士の技量に他ならない。
そして、その衛士の技量を磨くために何が必要であるかをイーダル試験小隊は合わせてロート・フライシュッツ隊から吸収しているのだ。

 はっきり言えば、一個小隊にすぎないイーダル試験小隊に対する負担は大きい。
 だが、連合からの報復と推測されるそれに上層部が右往左往し、疑心暗鬼になっている関係上、多くが圧し掛かっているのだ。

(……くっ、また……胃が……)

 度し難い、内側からの痛み。丁度胃のあるあたりから走るそれに、思わず顔をしかめる。
 だが、これらをこなさなくてはならないのだ。次に生贄になるのが自分になるかもしれない、という事実は常に頭の上にのしかかっている。
 だから、止まれないのだ。

5:弥次郎:2022/08/11(木) 23:04:52 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

 そんなことを思うサンダークは、ふと紅の姉妹の片割れ、イーニァ・シェスチナが通路に立っているのを送れて察知した。

(いかんな……)

 以前ならばすぐさま察知できただろう、と自分の不調や体調の悪化を自覚する。
 今でこそ管理職的な、計画の遂行者であり管理者であるが、元々は軍人であり衛士だ。それも優秀な部類の。
 だからこそ、イーニァの接近に気が付くことが遅れた事実が重くのしかかるのだ。急がれてはいるが、休みを挟むべきかと真剣に考えた。

「どうした、シェスチナ少尉」

 問いかけた先、イーニァはおずおずと手に持ったものを差し出す。
 長方形の形をした板のようなもの。そしてそれに付随する紙。それが端末の一つだと気が付いたのは、無機質なデザインだからだった。

「リナリアから、渡されました」
「リナリア…?」
「ロート、フライシュッツのお友達です」

 お友達。すなわち、ESP能力者かそれに類する能力者か。
 それが接触してきたということは何らかの意図がある、と理解し、差し出されたものを受け取る。
 キリル文字の踊る紙の束は説明書らしく、その文字の内容は---

「!?」

 驚愕が、サンダークを襲った。
 抑えきれないどころではない。この紙に書かれている情報が欺瞞である可能性だってある。
 だが、それを差し置いても、とんでもない事実がかかれていたのだ。

「ご苦労だった、ビャーチェノワ少尉のところに戻るように」
「りょうかいです」

 かろうじて冷静さを保って、その指示を絞り出せた自分を称賛したくなった。
 今渡されたこの端末の意味は、とんでもないものであった。
 史実においてはインターネットと呼ばれることになる、情報ネットワークにアクセスするための端末。
それも地球連合がこの融合惑星のβ世界に持ち込んだネットワークにつながるものだったのだ。
それが意味することを理解できないわけではない。核戦争を想定した冷戦を経験していたソ連の軍人だ、それの重要度はわかる。
 つまりこの端末は、連合からの招待状に他ならない。連合がその内側に持つ情報網に触れることを自分に許した。
これまでの折衝などで信頼を積み上げたからこそ、なのだろう。あるいは迂遠な諜報活動が煩わしいと判断されたか。
 いずれにせよ、ここから得られる情報は、これまでソ連が得ていなかったものをもたらすという直感的な理解があった。

(……)

 同時に、とても嫌な予感がする。
 劇物や劇薬である情報に触れることになるかもしれないという、ある種の恐れだ。
 BETAとの戦いで歪みが生じている国家の人間だからこそ、本能的に理解できていると言えるだろう、地球連合との在り方の差というのを。

「ともあれ……これは活用しなくてはならないな」

 自分に言い聞かせ、サンダークは急ぎで自分の執務室に戻ることにした。
 ここから得られる情報こそが、さらなる情勢の転換を引き起こすと、確信しながら。

6:弥次郎:2022/08/11(木) 23:06:37 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

以上、wiki転載はご自由に。
というわけで、サンダークさんは連合のオープンネットワークにアクセスを許されました。
リナリアという強化人間の兵士がイーニァを通じて渡しました。ここら辺はロートスさんの差配ですね。
さあ、情報爆弾を食らうがいい。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2022年08月26日 12:25