636:陣龍:2022/08/09(火) 16:35:16 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
【戦争停滞期の世界】…『ドイツ軍、ソ連に敗北』と言う一報は、特にドイツ市民に大きな衝撃を与えた。
似た時期に日本もミッドウェー海戦にて戦術的勝利の戦略的敗北を喫した事で日本国民へ衝撃を与えたが、この時のドイツ人は御多分に漏れず動揺に揺れた。今まで景気の良い戦勝のニュースばかりが飛び交い、総統閣下による戒めも、謎の『オケハザマ』と言う聞いた事も無い大昔の戦場の話で気に留めなかった市民も多く、この時の戦略的敗北は効いた。かと言って非戦気運が湧いた訳では無く、敵愾心に加えて漸くソ連の脅威を認識した風潮であった為に、内政的には雨降って地固まる、と言う状態であった。
そして敗退したドイツ軍であるが、総統閣下はこの敗北に対して特に癇癪を起こしたり激怒する事も無く、軍部には敗北に対する調査・研究を命じ、そして国内には国民向けの演説と必要と思われる
各種新型兵器の開発促進を行った他は、軍司令部へ敗北の責任を取らせて解任する様な事は全く無かった。
『勝敗は兵家の常。敗戦の屈辱は、次の勝利の美酒にて濯ぐべし』……敗北した将軍への処罰どころか叱責も殆ど無かった事に対する疑問に対して、総統はこの一言を返していた。無論、無条件で全員を許した訳では無く、戦闘開始前余りにもソ連戦力を低く見て戦力想定を誤っただけでなく、居直りや開き直り、又は責任転嫁等を図ろうとしたり、前線で奮闘して撤退してきた者達へ不合理な命令等を行った不届き者や【不要の者】への処罰や制裁は、査問会議を開催してジックリと行われている。かなりの強固な権力者でありながらコメディアン的な逸話が目立つヒトラー総統なのだが、締め上げるべき時と場合には容赦無く締め上げている事例は多数見られており、唯の演説が上手いカリスマ国家元首ではない事は明白だった。
ただ余りにも妄想を具現化したかのような理想的指導者過ぎた為、ドイツや日本を【残虐非道な軍事侵略独裁国家】と一方的に定義して世界に喧伝する
アメリカに取ってはドイツ批判宣伝する為のネタが乏し過ぎる事で、戦後ドイツ人やヒトラー総統が怒るより先に腹を抱えて大笑いする様な適当な捏造ネタを書き立てていた。
尚ドイツは兎も角日本に対する宣伝工作では、工作の精度やネタが粗雑かついい加減だったのは兎も角、人種差別思想満載で女子供に対しても虐殺や強姦、民族浄化等を正当化して煽る様な物であったり、天皇家に対しても
アメリカの創作上のヒーローで皇居ごと爆破・抹消・殺害するプロパガンダ漫画を多数発刊・発行していたりと、ドイツ人が過去フランスの暴挙に本気で日本人が激昂した時にも見られなかった、能面の如き完全な無表情へとさせるに十分な有様だった。
637:陣龍:2022/08/09(火) 16:36:57 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
後の
アメリカ解体の時に置いて、まるで機械の如く淡々と証拠を揃えて一遍の容赦も酌量も無く【罪人】を断罪し、イギリス人が思わず引き攣った笑みで冷や汗をかき、ドイツ人は顎が外れんばかりに驚愕し、日本人の事を脇の甘いお人好しな人種だと単純に思っていた親日の友好国が茫然とし、断罪された
アメリカは始めこそ激しく抗議や抵抗を行うも、問答無用の断罪が一切容赦なく止まらない事に対し恐怖に震え、絶望した程に、徹底して【
アメリカと言う存在の罪】を暴き立て、世界に暴露し、北アメリカの大地と人間を完全に引き裂く楔と鎖を無数に叩きこみ、縛り付け続けた日本人の姿は、決して触れてはならない領域を汚した愚者に与えられる末路を、この上なく示していた。【暗黒王】等と呼ばれた某イギリス国王が「私と同じ領域に来る者は私だけでよいのだが」等と溢したと言う話すら有った程だった。
戦後に来たる未来の話は兎も角として、綱紀粛正に加え、エキセントリックな暴走をするドイツ技術者陣と全く止めない総統閣下を掣肘・調整するドイツ高官の何時ものコントの如き流れがドイツ国内で起きている中、戦略的勝利を成し遂げたソ連側では、それはもう『大勝利』の喜びで大いに湧き上がっていた。
フランス人が意味不明な戯言を吐いてバルカンが突然自称トロツキストとか名乗る賊で溢れかえり、訳も分からず戦争状態に突入した、と言うのがロシア人一般の感覚で、その本音は上層部も大体共通していた。
それでも一気呵成にドイツを飲み込めていたのなら未だ問題は少なかったのだが、現実はドイツ・ポーランド連合軍による反撃でポーランド・ソ連国境まで押し戻された始末だった。
国家防衛戦と言う形式になった緒戦で、兎にも角にも精強無比と言われるドイツ軍相手に勝利を納めたのは、国民・兵士達の士気の面から見ても大きな成果だった。
ただこの『大勝利』に食い付いた
アメリカの方がソ連を他所に勝手に政府主導で盛り上げさせようとしているので、駐米ソ連外交官や大使館員は色々な意味で胃痛を抱える羽目になっていた。それでもその様な内心は?(おくび)にも出さず、盛り上がらせようとするアメリカ政府に付けこんでアメリカの持つ技術や情報をシレっと技術交換や協力者を通じた略取を行い、母国ソ連の為に尽くしていたのだから愛国心溢れる恐ろしい者達であった。そんな彼らも、日英による容赦のないインフラ破壊であったり原爆投下等に巻き込まれてしまい、終戦後母国に生還したソ連大使館員は僅か三名しかいなかったと言う。
638:陣龍:2022/08/09(火) 16:39:38 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
その様な国際情勢の中、ドイツ、ソ連、そして東部戦線に関わる各国がそれぞれ戦力強化や戦訓を基にした開発を加速させていたが、半ば外野に等しい立ち位置に居た日本と
アメリカは、それぞれまた違った対応と反応だった。
アメリカに関しては、戦域が
アメリカ本土に押し込められたも同然の戦況で、少しずつ
アメリカ市民の心の奥底に厭戦気分と連邦政府への不信感が募りつつ有った事も有り、市民の戦意鼓舞の為にもソ連の今回の『大勝利』を宣伝し、ソ連自身もプロパガンダの為若干水増しした戦果発表の更に3割増しの戦果を喧伝、慰撫を行っていた。相変わらずのソ連側に寝耳に水の行動で形通りに大使館側が抗議をしたが、連邦政府、もっと言えばホワイトハウスの意向が多々有ったとは言え形式上民間の報道機関が行った喧伝と言う事で『事後対応する』、と言う程度の言葉しか返って来ず、そしてソ連側も何度も繰り返された
アメリカの近眼視な政治的行動を受けて、色々と諦めていた。これでもう少し戦争に対して向き合ってくれたのならそれでも別に良いのであるが、実際は相も変わらず国内の支持率や権力保持、政治の事ばかり執着しており、そして当然ながら起死回生の大反撃と大戦果を叩き出す事も無く国土防衛に汲々としており、ソ連の外交関係者は「例えいばらの道であることが分かり切っていたとしても、
アメリカに与する事無く独自路線を貫いた方が、後知恵論ながらに正しかったかもしれない」と後世明言していた程に、既に
アメリカと言う存在にソ連は内心見切りをつけていた。『精々ソ連が生き残る為に全世界の悪になれ』、と言うのが?偽りの無い本音だろうか。後に本当にその通りになるとは思っていなかったようだが。
そしてその
アメリカと太平洋にて真っ向勝負して居る日本では、現実化した【KV-1ショック】に対して、そこまで大きく動揺はしなかった。ドイツからの情報で、攻撃と防御面は兎も角速力が兎に角遅い事で、機動性で圧倒的優位にある自国の『二式戦車』であれば十分に対応可能であると言う事と、明らかに重要視される筈の無い極東戦線にその様な有力な戦車が大挙配備されるとは考えられなかったからだ。
お披露目程度に多少は回って来る可能性は有るが、それ以上には成らないと言うのは常識的判断だった。何より意味不明な言動を繰り返した末に宣戦布告無き、未成年の女学校生と民間人を多数巻き込んだ奇襲攻撃を行い、剰えイギリス王族もイギリス戦艦ごと撃沈した事に対して未だ一切の謝罪も反省の色も無いばかりか日本への陰謀論と責任転嫁ばかり繰り返す
アメリカへの侵攻準備で忙しく、ソ連極東軍へは【ファニー・ウォー】呼ばわりされる様な静かな睨み合い以上をする気は、日本には無かった。一部に未だ残存する向こう見ずで血気盛んな将校も、バイカル湖までの完全制圧に必要な物資と兵力の検算をさせて見たら、全員黙るしか無かった。
ただそれでも万が一と言う場合が有るので、現地満州を守護する関東軍は『KV-3』やそれを超える新型戦車が配備され、攻撃されると言う最悪の場合を想定して、車体容量やエンジン馬力に余裕のある『二式戦車』の車体を流用した大型の砲戦車開発を要請。その要請に応じた日本本土の陸軍は、海軍に依頼して艦載砲技術を貰い受け、そして海上用の高精度な双眼鏡を使用する事を前提とした『狙撃戦車』等と現場の兵士に称された『四式砲戦車』が、満州の工場にて量産されて行った。海軍としては大した事でも無かったので割と「陸さんのネタで出来た斜め甲板の返礼になるかな」程度に軽い気持ちで行われた協力であったが、海軍の砲技術を用いて『狩り』をする為に開発されたこの『四式砲戦車』は、後に東部戦線へ支援として送られた際にその強力無比な破壊力と射程にて交戦したソ連戦車の全ての正面装甲を爆砕し、極東に置いても並走していたソ連中戦車二両を真横からの一発で二両とも貫徹、爆砕すると言う空想染みた活躍を見せ、戦後に陸軍から公的に感謝された時には、軽い気持ちで行った技術協力の結果が思っても居なかった展開になった事に少々引き攣った笑顔の海軍高官との握手を交わす写真が撮影され、戦時中妙に仲の良い日本陸海軍と言うイメージを強固にさせた物証の一つとなった。
639:陣龍:2022/08/09(火) 16:41:43 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
そしてそんなある意味余裕のある日米両国と違い、世界の動き等関係無いと半ば無関心に成りつつも、バルカン地方の平定を黙々と勤しんでいたのが、ブルガリア軍主体の『国際連盟統合軍部隊』であった。
世界恐慌の打撃による政情不安や不景気を温床とし、世界から見れば突如湧いて出て来たトロツキスト達によって実行された政府転覆、クーデターは、事実上ブルガリア一国を除いたバルカン地方各国の殆どを倒壊させた。ドイツに対する石油輸出にて経済の立て直しがある程度行えていたルーマニア程度が若干ながら例外であったが、怒涛の如く蜂起したトロツキストと扇動に呑まれたバルカンの住民たちが軍の武器庫を襲撃し、イナゴの如く攻め入って来られた事で事実上の全面戦争を奇襲攻撃で始められたルーマニア軍は力戦敢闘するも、一部のルーマニア人がトロツキストの扇動に乗って内応した事で敢え無く敗北。政府機能と多数の国民を如何にかブルガリアへ脱出させた代償にルーマニア軍は壊滅し、組織的抵抗が崩壊したルーマニア軍の将兵はルーマニア各地にバラバラに脱出し、ゲリラ的戦闘を行うのが精一杯になっていた。
一方バルカン地方で唯一トロツキストの蜂起を防ぎ切ったブルガリアであったが、まさか自国の直ぐ隣が纏めて大炎上するとは夢にも思っておらず、自国のみで対処は不可能と即断してドイツへ救援を求めた者の、既にドイツはフランスのマジノ線を突破してフランス人自らによる焦土作戦に七転八倒して居たり、ポーランドと共にソ連の攻勢を受けて必死の反撃を試みていたりと他所に手助けできる状況に無く、勿論イギリスや日本も
アメリカによる凶行で対米宣戦に突入していたりとこちらも手が回らなかったので、一年近くもの間、一定の物資支援を除いてブルガリアは単独でバルカン地方のトロツキスト達を泣きながら国土から叩き出す戦闘に終始していた。歴史的経緯で仲の良くないオスマン帝国にも協力を要請したりしたが、オスマン帝国側は対ソ連戦に目が向いておりバルカン地方への権益には大して興味が無かった事も有り、若干の航空部隊による支援の他は石油と一部兵器の融通程度しかしてくれなかった。
その後ようやくドイツがソ連軍をポーランドの向こう側に追い出すも、ソ連の戦力増強速度が速かった為にドイツ軍がブルガリアへ援軍に回される事は無く、経済支援と物資・兵器援助以外では『バルカン地方の切り取り勝手次第』と言う政治的フリーハンドを得た位であった。ブルガリアへ逃れて来たバルカン地方の残党軍や義勇兵向けの兵器はほぼドイツやイギリス、イタリアの物が多数供与された為に何とかなったが、元々複雑に絡み合った歴史と民族の集まった国家の残党が、ブルガリアへ集結して居る状況はブルガリア政府や官僚、軍全てに胃痛を与えるしか無かった。実際、ブルガリア領内で異国間の国民や異民族同士が様々な諍いを起こし、ブルガリア人の官憲や軍人、時には住人達が疲れ切った顔で仲裁と制裁に向かう姿が多く見られていた。
ブルガリア特産のヨーグルトがこの頃大きく需要が伸びたのも、恐らくこの件に無関係では無いだろう。
そんな彼らの苦労は、戦後に『大ブルガリア』の実現と達成と言う形で表向きは報われるのだが、その実態を知る当のブルガリア人たちの本音では一体どう言う表情をしていたのかは、余り語られる事は無い。
その苦労の山の甲斐も有って、21世紀初頭には非常任理事国の常連となり、将来的に常任理事国入りになる可能性もささやかれるようになったブルガリアだが、それが良かった事なのかはやっぱり他国人には分からない事でも有るだろう。
640:陣龍:2022/08/09(火) 16:43:28 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
|д゚) と言う訳で【スターリン・ライン】攻防戦の情報が世界に知れた事に対する世界の反応とブルガリアニキでした
|д゚) 言うたら何ですが理想主義に突っ走った連中のせいでこの世界どれだけ歯車狂って爆砕してんでしょうね(他人事満開)
最終更新:2022年08月26日 13:03