226:加賀:2022/09/25(日) 10:51:14 HOST:om126158159108.30.openmobile.ne.jp




「やはり盧溝橋は史実と同じくか……」
「まぁ北支は完全に押さえ込みます」
「それで問題は上海か……」
「陸戦隊は増員させていますが……陸軍は動けますか?」
「勝手には無理だろう。そうなると盧溝橋を抑えた意味が無くなってしまう」
「なら陸軍の派遣は史実と同じくですか……」
「それと海軍も艦隊を派遣しますか」
「『伊勢』型と『加賀』に『龍驤』くらいですかね……」
「あの……伊勢達も行っていますけど……」
『えっ?』







 7月7日に発生した盧溝橋事件は一先ずの戦闘は終えて和平交渉をしていたが後一歩のところで今度は大山事件が発生してしまい史実と同じく暗礁に乗り上げた。しかし、日本側は北支については撤退する方向であると中国側に通告していた事もあり北支方面は基本的に穏やかであった。
 だが次の戦火は明らかに上海であった。岡田総理は各国でのロビー活動に切り替えて「日本政府は大陸における租界の返却を順次行っていく」と公表しその手始めとして漢口等の租界及び揚子江沿岸に在留していた在留日本人を上海に引き揚げさせた。
 また上海の在留日本人も順次引き揚げを行う事を蒋介石に通告し引き揚げ船の護衛をするために日本海軍は第三艦隊を増強させた。




 二戦隊第二小隊
 『伊勢』『日向』
 第一航空戦隊
 『加賀』『龍驤』『鳳翔』
 第二水雷戦隊
 『神通』
 第七駆逐隊
 『曙』『朧』『朧』
 第八駆逐隊
 『天霧』『朝霧』『夕霧』
 第19駆逐隊
 『磯波』『浦波』『敷波』『綾波』




 なお、第七駆逐隊司令には橋本がおり無論参加していた。

(史実と前回に無かった事だが……まぁ大丈夫か)

 旗艦『朧』の艦橋で橋本は波に揺られながらそう思うのである。

「司令、交代です」
「ん」

 交代の艦長が来たので橋本は艦橋から司令室に戻る。そして司令室を開けると狭い部屋ながら何故かネルソンとガングートがいたのである。

「よし、帰ってきたなシンタロー。飲むぞ」
「あのなネルソン……そう言って昨日、ガングートが船酔いで死んだだろ……」
「案ずるなハシモト……今も船酔い中だ……ウプッ」

 ちなみに二人、艦娘の力を使用して関係者以外からは見えないようにしている。

「というよりも伊勢達もだけど……何で付いてきたんだ?」

 実は二人の他にも『伊勢』には伊勢と妙高が、『日向』には日向がいたりする。(妙高に関しては艦自体が先に三艦隊に編入されている)

「ウム、チャイナ服を買いにきた」
「………………………………」
「半分冗談だ」
「半分はなのかよ……」
「付いてきたのは……まぁ陸の戦争というものを理解したかったからな」
「陸の戦争?」
「ガングートはさておき、余やイセ達は海戦ぐらいしか経験していない……だからこそ陸の戦いを見ておきたかったのだ」
「……それならそうと、ちゃんと宮様や古賀中将達に言えよ……古賀中将達も心配していたぞ」
「ムゥ、ちゃんと書き置きはしたぞ」

 ネルソンはそう言って書き置きした紙のコピーを橋本に見せる。

『コガへ、ちょっと上海まで行ってくるぞ。グフフフ、ネルソン』
(某ギャグマンガ日和のしか見えない文章だな……)

 取り敢えずは考える事を放棄した橋本であった。そして8月13日1654には中国軍第88師第523団第1営が西八字橋、済陽橋、柳営路橋を爆破、砲撃を開始し日本軍は応戦した。1700には大川内司令からの戦闘開始が発令された。
 この時、陸戦隊は史実の4000+在留日本人引き揚げの護衛に来た舞鶴陸戦隊1200、呉陸戦隊800、横須賀陸戦隊1000の計7000と軽戦車三個中隊が派遣されていた。特に軽戦車はハ号であるものの、現地で装甲を追加した車輌も複数あった。

「敵機接近!!」
「対空戦闘用意!!」

 14日には上海沖に停泊する第三艦隊にも中国軍機が爆装して攻撃してくるが上空警戒をしていた94式艦戦が迎撃をする。

(やはり本格的な開戦か……? しかし……)

 第三艦隊旗艦『出雲』の艦橋で長谷川中将は中国軍の本格的な開戦かどうかの判断が掴めなかった。

(前世では盧溝橋事件で一気にと思っていたが……夢幻会の陸が北支を抑えたからなぁ……)

 長谷川中将は史実組の転生憑依者であり夢幻会の事は宮様を通して知っていた。北支を抑えた事は聞いていたので長谷川自身も楽観視していた節もあったのだ。
 そして見張り員からの絶叫に我に返ったのであった。

227:加賀:2022/09/25(日) 10:52:15 HOST:om126158159108.30.openmobile.ne.jp
「『龍驤』『加賀』上空に急降下!?」
「何!?」

 この時、分厚い雲を利用してノースロップ・ガンマ9機が『龍驤』と『加賀』上空に接近しそのまま急降下をしたのである。

「敵機直上ォォォォォォォォ!! 急降下ァァァァァァァァァァ!!」
「銃身回せ回せ!!」
「駄目です、間に合いません!?」

 2隻は対空火器で蹴散らそうとしたが間に合わず、『龍驤』に3発、『加賀』に1発の250キロ爆弾が命中したのである。折しも『龍驤』の格納庫には待機していた94式艦戦9機がおりしかもエレベーターは降りていた事もありそのまま格納庫に1発の250キロ爆弾が飛び込んで爆発したのである。爆風は機体を薙ぎ倒し満載していた燃料が引火し小規模な誘爆を繰り返していくのである。

「消火急げ!?」
「排水ポンプ故障!! 消火不能です!!」

 『龍驤』は瞬く間に炎上した。対して『加賀』も250キロ爆弾は命中していたが被害はそれ程甚大ではなかった。一時的に発着艦不能になってしまいその間の航空戦は全て『鳳翔』が引き受けたのである。
 また、この航空戦で第一航空戦隊は敵機32機中27機撃墜し94式艦戦の威力を中国空軍に知らしめたのであった。
 更に中国空軍は史実通りに上海租界への誤爆を行っており民間人の死傷者は4桁を記録したのである。
 なお、第三艦隊の参謀達からは上海への空爆を長谷川に具申するも長谷川は却下した。

「貴様らは日本海軍を中国空軍と同じ事をしろと言うのか!!」

 前世での上海における戦闘で誤爆や『上海南駅』の事は知っていたのでむしろ偵察と迎撃に務めたのである。なお、海軍内では長谷川中将の行動を消極的だと言う声もあったがそれを宮様は擁護した。

「長谷川は海軍が乱暴者ではないという事を証明してくれている」

 宮様に擁護されたら反論者達も声を下げざるを得なかった。8月16日、岡田総理は上海引き揚げのために上海派遣軍を上海に送る事を発表した。
 上海派遣軍は第三師団、第十一師団、第十三師団、第101師団の計4個師団となっており8月23日には上海北部沿岸に『伊勢』『日向』の艦砲射撃の下で上陸を成功させた。4個師団の上陸に中国軍は慌てて上海入りを阻止するために8個師団を送るも『加賀』『鳳翔』の第一航空戦隊の攻撃隊に空爆され戦線は崩壊して敗走したのである。
 また長谷川中将はよく外国メディアにも出演し日本の正統性を主張した。26日に南京駐在英国大使ヒュー・ナッチブル=ヒューゲッセンが銃撃を受けて重症を負い、同行の大使館職員が日本海軍機の機銃掃射によるものであると主張した。これにも長谷川中将は負傷した日に直ぐにヒューゲッセンが収容された病院を訪れて面会をし謝罪をし自費で見舞金をヒューゲッセンに送りヒューゲッセンはその行為に思わず感動しイギリスの対日感情が悪化する事はなかったのである。
 そして南京では9月18日に廣田外相と蒋介石が停戦会談を行ったのである。廣田は戦闘を一時停止を蒋介石と確認し、上海から全ての在留日本人、その他の資産の引き揚げ、日本人租界の中華民国への返納を改めて通告し蒋介石もそれを受け入れたのである。
 これにより10月1日には漸く戦闘が停止したのであった。

228:加賀:2022/09/25(日) 10:53:04 HOST:om126158159108.30.openmobile.ne.jp
「……これが陸の戦闘か……」
「少しは勉強になったか?」
「あぁ、大変にな……」

 停戦が発行される前の9月30日、橋本とネルソンらは上海に上陸してその惨状を目の当たりにしていた。あちこちにバラバラになった遺体や四肢がまだ路上等に安置されたままになっていた。

「まだ便衣兵がいるかもしれないからあまり出歩かない方が……」
「大丈夫だ。妖精さん達にも手伝ってもらっている」

 ガングートはムフーと意気込む小さな妖精を肩に乗せていた。

「まぁそれなら……」

 橋本も問題無いと思ってそれからは無言だった。そこへ妖精さんが一人やってきた。

「同志ガングート!!」
「ん? 同志東亜戸亞じゃないか、どうした?」
「向こうで赤ん坊が……」
「何?」

 橋本らは妖精さんに案内されながら瓦礫化した上海の通りを走り、とある一角に辿り着いた。そこには壁にグッタリしながら白人の貴婦人らしき女性が寄り掛かっていた。その貴婦人の胸には赤ん坊が泣いていた。

「……見つけた時、貴婦人は既に息はありませんでした……」
「そうか……此処まで逃げて逃げて此処で力尽きたのか……」
「………………………」
「ネルソン?」

 黙るネルソンに伊勢は首を傾げるがネルソンは無言で手で十字を切った。そして泣いている赤ん坊をゆっくりと優しく寄せたのである。

「……罪滅ぼしではないが我々が引き取ろう。変なところに引き渡しては……な」
「……良いのか?」
「構うものか。余はネルソンだぞ」

 橋本の問いにネルソンはニッコリと微笑む。その表情に橋本達は仕方ないとばかりに苦笑したのである。







「ところで名前はどうするんだ?」
「ウム。ロドネーとかはどうだ?」
「それは艦名だろ!!」
「なら大和とかは?」
「それも艦名!!」
「ならバルチック」
「それは艦隊だろ!!」
「……私もボケた方が宜しいのでしょうか?」
「妙高はツッコミでお願いします」

229:加賀:2022/09/25(日) 10:56:13 HOST:om126158159108.30.openmobile.ne.jp
以上、第二次上海事変になりました。なお、『龍驤』被弾で……?

次回
  • 日中激突
  • 国内投資
  • 軍備拡大
のどれかになります

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最終更新:2022年11月14日 21:42