515：加賀：2022/10/26(水) 11:26:21 HOST:om126179114184.19.openmobile.ne.jp
「へぇ、鹵獲した『ホーネット』は呉に回航してきたのね」
「あぁ。横須賀には『信濃』がまだ建造中だし神戸は民間、それに大神は『雲龍』型の3隻を建造中だから呉になったらしいよ」
11月上旬、空母『瑞鶴』は激闘となった南太平洋海戦後、各空母飛行隊から選抜されたパイロットを以て再編成する『瑞鶴』飛行隊を搭載兼臨時の整備をするために呉工廠に回航されてきた。その呉工廠には鹵獲した『ホーネット』がドック入りをしていた。
「前回はいなかったし今回はその顔でも拝んでみるかな」
「まぁそれはね」
『瑞鶴』の瑞鶴の自室で瑞鶴と加賀中尉（昇進）はお茶を飲みながらそう言い合う。
「ところでさ……飛行隊はどうなるの？」
「……何とか定数は修理中で炙れたパイロット達をかき集めて混成飛行隊として揃える事は出来てるよ。けど、空母は『瑞鶴』『隼鷹』しか無いね」
加賀は肩を竦めるが『隼鷹』も数日後に敵潜水艦からの雷撃を受けて大破、内地に送還されるので実質は『瑞鶴』ただ1隻しか残らないのである。
「まぁ仕方ないわね。取り敢えず顔を見に行くわよ」
「あ、待ってくれ」
加賀中尉は瑞鶴に急かされながらも修理兼改装中の『ホーネット』に乗艦するのである。そして瑞鶴は艦内を歩き勘である部屋の前で止まった。
「此処ね。此処にホーネットはいるわ」
瑞鶴はそう言ってノックをすると中から返事があった。入るわと一言言ってから瑞鶴と加賀が部屋に入る。部屋は机と椅子、ベッドにロッカーが置かれていたが椅子には中破姿のホーネットが座っていた。
「あら、誰かと思えばズイカクとそのパイロット？ かしらね。何も無いけどようこそホーネットへ」
「ありがとうホーネット。自分は『瑞鶴』飛行隊のパイロット、加賀中尉だ。そして此方が……瑞鶴？」
加賀が瑞鶴に視線を向けると瑞鶴はホーネットの姿を見て呆然としていた。だが直ぐに身体を震わせる。
「瑞鶴？」
「………やめて……やめて……」
気付けば瑞鶴は両腕で身体を抱き締めて涙を流していた。
「いや……いや……いなくならないで……『翔鶴姉』……」
「瑞鶴……」
加賀はハッと思い出したかのようにホーネットを見る。瑞鶴の行動に不自然だったホーネットは首を傾げていたがホーネットの髪色は……翔鶴と同じ色だった。
「どうしたの？」
「あ、いや……多分姉の事を思い出したんだよ」
「ッ……」
加賀の言葉にホーネットは感づき、椅子から立ち上がりツカツカと瑞鶴の前まで歩くと瑞鶴に持っていたコルトM1911を渡す。
「……ズイカク、貴女には私を撃つ権利があるわ」
「ホーネット……？」
「貴女の姉のショーカクに爆弾を叩きつけたSBDは……私の飛行隊なのよ」
「ッ」
ホーネットの言葉に瑞鶴は顔をあげる。そしてホーネットはM1911を瑞鶴の手に添えて自身の胸に突きつける。
「仇が目の前にいる。貴女の思う事をして、私はそれを全て受け入れるわ」
「…………………………」
ホーネットは鹵獲された時から瑞鶴に撃ってもらおうと覚悟をしていた。だからこそホーネットは瑞鶴に任せたのだ。二人の様子に加賀は間に入らなかった……否、入れなかったのだ。入れば二人の面子、二人の今後に傷がつくと思ったのだ。暫くは無言だった瑞鶴だが、不意に左袖で自身の涙を拭き、息を吸い込み深く吐いた。そしてホーネットに視線を向けた。
「……撃たないわ。撃っても翔鶴姉は悲しむだけだもの。ホーネット、貴女が悪いわけじゃない、戦争が、ミッドウェーが悪いもの」
瑞鶴はそう言ってホーネットに微笑むのである。
「……そう……」
釈然とはしない、でも瑞鶴が決めた事にホーネットは納得するのである。だが話はまだ終わりじゃない。
「んー……でも思う事はするわ」
「Why？」
そう言って瑞鶴はホーネットを抱き締める。
「……たまには甘えさせて……ね？」
「……あら、ならズイカクは今日から妹になるわね。宜しくねズイカク」
「……うん……宜しく……お姉ちゃん……」
ホーネットは胸に顔を埋める瑞鶴に頭を撫で瑞鶴は頬を薄く染めながら頷くのであった。
（おぉ、キマシキマシ）
空気化している加賀はそう思うのである。なお、これをたまたま目撃した駆逐艦『秋雲』と『巻雲』は直ちに創作を始めて『瑞×ホ』の同人誌を発売するのである。ちなみに瑞鶴に見つかって二人は簀巻きにされて呉の海に捨てられたのは言うまでもなかった。
516：加賀：2022/10/26(水) 11:27:45 HOST:om126179114184.19.openmobile.ne.jp
今日が南太平洋海戦の日なので何としても仕上げたかったので仕上げました。
ところで今日は代休の筈なのにどうして自分は仕事をしているのだろうか……？（何
最終更新：2022年11月14日 21:44
