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銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです欧州大戦 幕間 ブリテンに集う者達


斜陽差すスラブの大地に二つの影が映る。
黄昏の空を光の尾を引く機械仕掛けの白き竜と巨大な翅を羽ばたかせる蝶が西へとの道を急ぐ。
そしてその道すがら英国近海に問題が発生しているのが判明、一部戦力を分割し彼らは蛭子命の背に乗っていた。


「待てやああああっ!?これ大丈夫なのかよ!?」

『オリオン様。我が主蛭子様は安心安全がモットー大丈夫に御座います。』

『藤原秀郷公は…大丈夫そうですわね…オオマガツ姉さま。』

「はあっーはっはっはっ!!まさか神の背、それも大蝶の姿の蛭子神の背に乗り異国の空を駆ける日が来ようとはな!!
愉快、愉快!対州姫もそう思わんか?」

「流石は日本随一の怪異殺し。モスラの背に乗ってソレとは肝が座っておるのぉ…。」


ちなみにオリオンは自分行けないからとカミさん(アルテミス)にケツを蹴られて発破かけられてたりする。
英国へと先行するふそうと一旦分かれた二つの影は怨嗟と絶望に惹かれ東欧に顕れたパリの祭神ケルヌンノスの分御霊、スラブにおいてはチェルノボーグと呼ばれるそれに対処する為に若干遅れていた。


急がなければ…


そう思考する白き竜は深く息を吸い大気に満ちるエーテルと空気をその身へと取り込む。
エーテルと空気は竜の二つの心臓へと送られる。
一つは天然の竜の心臓、心臓へと至ったエーテルは莫大な魔力を生みだし終えると別のところへ送られる。
そして空気は科学が生み出したもう一つの竜の心臓、縮退炉とも呼ばれるそれに送られ絶対的熱量により急激に加速膨張しプラズマとなり竜の心臓から送られたエーテルと混ぜられる。
エーテルとプラズマ、混合され膨張する二つの空の気は人で言えば下肢に当たる所に備わる器官に送られると天然の竜の心臓と科学の心臓により生じた莫大な電力により生み出された磁界によりさらに加速され後方に排出され竜の躰を前へと押し出す。
加え斥力推進に高機動可変力場も加わった前人未到の超高機動。
人類の機体ならば中の人間は即座に肉塊となり果て、機体が空中分解してしまう程の圧倒的なまでに暴力的な加速により壁となる大気とそこに満ちるエーテルまでも用いて空を"跳ねる"。
それを重力制御と事象可変シールド、そして竜自身の強靭な肉体を以て完全に制御していた。
なぜそこまでして英国への道を急ぐのか…。

彼女はティアマトの娘であり白き大地、アルビオンの名を与えたた一体の竜である。
日本の太母の影響で不完全な状態で誕生し人の手で完全な肉体を得た前代未聞の半機械の竜。

自身の名と同じ大地の別の呼び名…ブリテン。
その名を聞く度に彼女の胸に去来するのは何とも不可思議な感情だった。
切ない様な、怒りを覚える様な、絶望する様な、切望するような…。
そして妖精國、今はなき異聞のブリテンの諱とそのブリテンより座礁した白光と呼ばれた騎士の名を聞きその感情は強くなる。
脳裏に浮かぶは生まれたばかりの自分に存在しない筈の誰かの記憶、彼女の中の誰かの声が悲鳴を上げ訴える。
そんな記憶はあり得る筈がないと竜は頭を振る。
しかしその足は内なる声により確実に歩みを早めていた。
その声は言う。もう失うな失わせるな。悲しむな悲しませるな、と。


【…………パー……ァル…。……シヴ……。私の………うと………。】

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大量の呪いを帯びた黒い灰の降り積もる花の都を槍を背負う一人のイゼイラ人が裁きの宮を目指し走る。


「アインビル、ちょっと待ちなさい!!魂継ぎをして助かったとはいえまだ病み上がりなのよ!!」


その後を叫びながら艦娘ローマが追うが人っ子一人すれ違わない。
人間の兵士はおろか土着の妖精や神崎島の妖精すらいない。
巴里全域及びブリテン島への海に続く地域に戦艦リシュリューの名で非常事態宣言及び全ての人員への避難命令が発令されたからだ。
いやそもそも普通の人間であればこの呪いの降り注ぐ街には一刻として存在してはいられないだろう。
そういう類のものなのだ、この降り注ぐ灰というものは。

そしてアインビルと後を追うローマはセーヌ川を渡り裁きの宮の門を潜り祭壇を目指す。
廊下を駆け抜け曲がると祭神を祀り、鎮める為に設けられた祭壇が見えた。
しかしその場の光景は壮絶の一言に尽きる。
聖女ジャンヌ・ダルクは倒れ口端より血を流す王妃マリー・アントワネットに抱えられ、
リシュリューはその手を穴の方へ向け指で何かを掴むような仕草をし脂汗を流し歯を強く噛み締めていた。


「ファーダ!!」

「アインビル!?何故ここに!?」

「リシュリュー、貴女が心配でここまで来たのよ…。」


驚くリシュリューにローマがため息つきながら理由を話す。
理由を聞き納得したリシュリューは言う。


「アインビル、先に行ったトトロットとパーシヴァルに続きブリテンに向かいなさい。」


憂国騎士団より回収しこの裁きの宮に一時保管した神器を持ち王妃と聖女を連れてブリテンへ向かえと。
それに反対の声を上げるアインビルをリシュリューは諭す。


「何故です!?ファーダ!」

「今ここで貴方に出来ることは何もないわ。英国で乱痴気騒ぎしてるキャベツ共を大人しくさせて呪い怨嗟の連鎖を止めなさい。
それこそが貴方のすべき事であり私の助けになるわ。
その為には彼女らと貴方の、デュランダルと七賢人の力が必要だと【私(彼女)】が言ってるのよ。
ここは私一人で十分、貴方や他の人間は足手纏いですらある。」


リシュリューはノートルダムの穴をちらりと見る。
そこにはトトロット達が見た時より多くの呪いの灰を身より吹き出し続けるケルヌンノスの姿があった。



ク"オ"オ"オ"オオオオオオオォォォォォォォ!!!



ケルヌンノスの声が巴里の街に響き渡る。祭神は嘆く様に怒る様に叫ぶ。
ケルヌンノスに伝わって来るのだ。
この瞬間も生まれ続けるヒトであることを踏みにじられた人々の悲嘆と怨嗟が。


「私とセーヌの女神のセクアナの全力で結界を維持し呪詛と穢を祓い続けているけどもう現状維持すらもう出来ないわ…。
地に降りた主の加護得た聖女の祈りも王権を神授した王妃の嘆願も既に通じない。
今はケルヌンノスが祟り神として目覚めるのを遅らせるのが精一杯…。
だから行きなさい…!自分の役目を果たしなさい!!
だって貴方はこの戦艦リシュリューの副官でしょう!!?」


その言葉を聞きアインビルは口端か血が流れるのも気にせず唇を強く噛むとリシュリューに敬礼をしその場を走り去る。
リシュリューはローマに声をかける。


「ローマあの子のこと、お願いするわ。」


その言葉はひどく優しかった。それは仔を見守る神の如く、子を見守る母の如く。


「はぁ…分かったわ。ま、出来ることをするだけよ。軍神もアレの相手するよりは楽って言ってるしね。」

「ケルヌンノスを汚染する神の蠱毒、神すらも蝕む呪詛。流石のオリュンポス十二機神も分が悪いか…。」

「モノがモノだけにね。それじゃあまた。」

「また後で…。」


ローマは踵を返し、王妃が聖女を支えその場を後にする。
リシュリューは一人になった祭壇の間、孤独な空間でリシュリューは空を見上げる。
スラスターの駆動音が巴里の街に響き渡り空に赤い機体が浮かび上がりスラスターを吹かすとブリテンの方へと飛び去っていった。
その巨体をリシュリューは、巴里に残る最後の人は最後まで見送った。

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短いですが以上になります。転載はご自由にどうぞ

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最終更新:2022年11月14日 22:43