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銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです欧州大戦その十四 SUMOUとはMATSURIである


海峡はただただ静かだった。
完全に日が落ち、夜の帳の降りた海峡に煌々と明かりを照らす艦が一隻。
日米の将兵の英霊達とアルビオンと戦っていた筈の毒竜もソレが完全に始まると共に静かに佇みその艦の甲板を見つめ、
その姿と艦をアルビオンと対州要塞姫、そして蛭子命がモスラにも例えられた姿で見守っている。

その艦の飛行甲板に集められた各国海軍の将兵はその状況を戦々恐々かつ困惑した表情で見つめる。
自分たち戦っていた筈なのになんでこんな状況になっているのかと。

甲板にはシートが引かれ座布団が置かれた席が幾つも設けられ各国艦艇乗員、硫黄島で戦った日米の将兵の英霊らそして特攻機に乗せられていた幼子達。
一段と高い席には海兵隊司令官たる将と王妃マリー・アントワネット傍らにはジャンヌ・ダルクが控える。
その側には鳩がおり司令官が凄く緊張している。

そして人々が集められた人集りの中央、強襲揚陸艦イオージマの飛行甲板にはジャービスら艦娘やバタビア沖棲姫達深海棲艦達が車座に座り、
その車座の中央には甲板を南北に分ける様に並行する二つの線が設けられていた。神事の場の証、即ちこの場は土俵である。
木同士を打ち付ける音が甲板に響き渡る。
ブルードレスを纏う海兵隊員が現れ甲板を手に持つ拍子木を打ち鳴らし一行を先導してきた。

一行の先頭を行くのは翼を生やし鎧を纏う世界を分ける神の名を与えられた艦娘ジェーナス。その手には蛭子命より賜った軍配を掲げる。
元の姿と余り変わらないが何故か見事なハクトウワシの描かれた化粧廻しを締め露払いを務めるのはギリシャ神話の狩人オリオン、
その腕力はケルベロスの顎すら砕くという。
最後尾は鞘に入れた九偉人が一人ヘクトールの槍でもある聖剣デュランダルを持ち此度ヘクトールとの魂継ぎを行ったイゼイラ人アインビル、
その片腕は呪いの影響で切断されサイボーグ化されている彼はエリア51という文字とサマルカ人の描かれた化粧廻し締めている。
そしてオリオンとアインビルの間には旭日旗と星条旗が描かれていた廻しをした日ノ本が怪異殺しの日下開山、
藤原秀郷…伝説に語られる名を俵藤太!

その三人が化粧廻し(私物)をしているのを見て満足そうに司令官は頷く。
ちなみに提供元の欄にはU.S.Marinesの文字が刺繍されている。
なお流石に綱はなかったので艦内に保管されていた未使用の係留ロープを使用したがこれは繋ぎ止めるという意味で意味があると秀郷は笑っていた。


土俵の際に立つ秀郷の両脇には露払いのオリオンと太刀持ちのアインビルを控えさせジェーナスが土俵中央より退くと前に出る。
そして神々や司令官、王妃を前に柏を二度打つと四股を三度踏む。
四股を踏む度に観客よりよいしょお!と掛け声が飛ぶ。
柏手を打つ度、四股を踏む度に艦が揺れ五度に渡り穢が祓われる。
それだけで甲板の者らの精神が昂ぶってくる。
それもそうだろう相撲とは神事であり神事とは祭祀とは即ち祭り。
そして祭りとはRiteだけでなくCarnivalでもある。老若男女皆騒ぎ楽しむものだ。

彼は示す、驕り高ぶらずされど威風堂々と。天よ、神々よ御照覧あれ。これぞ俵藤太の土俵入り、と。
俵藤太により見届けた八百万百の神々と将軍と貴き青き血の方に示された。今よりこの場は神事の場、神天上覧相撲英仏海峡場所。




「ひがあしいいオリぃぃオンんんんん…!にいしいぃぃアインビルううぅぅぅ…!」


日本駐留時代に覚えたのであろう日本語で海兵隊員が扇を持ち名を呼ぶ。


「うっし!行くか、手加減はしねえぜ?」

「創造主オリオン、胸をお借りします!ですが…。」

「ああ…。」


最初の対戦はオリオンとアインビルという英雄同士の対決。
しかし両人とも相撲の作法(ルール)は知らずせいぜいテレビの大相撲を見たくらいでちらりと土俵の外で胡座をかく秀郷に目をやる。

239:635:2022/10/05(水) 17:28:33 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp


「急所撃ちなし、足裏以外を付くか外に出れば負け…力比べを披露する場だ。その程度で良かろう。礼を忘れなければ良し!
我ら武士はもとより古き神々の相撲までもルール無用の力比べだぞ?なあに土俵を穢さなければ良い良い。」


豪快に笑いながらそんなことを言うのは土俵脇に陣取る秀衡、その傍らには童子達を侍らせている。
その声に頷き相対する二人、互いに地面に両手をつけ睨み合う。


「はっけよい!のこった!!」


ジェーナスのその声と同時に僅かに早く突進するオリオンであったがアインビルがイゼイラ人特有の身の軽さで馬跳びの要領でオリオンを躱した結果


「のわわわわぁぁぁぁ!?」


その勢いのまま土俵から飛び出てしまい観客の中に突っ込むという事態になった。


「アインビルの勝ちぃぃぃぃぃ。」

「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!」」」」


伝説の英雄を異星人とはいえ現代の人間が下した。
その事実にやんややんやの大喝采。
それを見て秀郷は捲し立てる。


「はっはっはっ!天晴である!さあさあ次々!次は誰が立つ?アインビルに挑戦でも、誰かと戦いたいでも良いぞ、ん?」


その言葉に一人の日本兵が秀郷に歩み申し出る、ただ一言「再戦を…」と。
指名するは硫黄島で死闘を演じた相手であるアーリントンより来た米海兵隊の者。
あの時と同じ鉄と物量で全てを焼き尽くした一方的であり互いが血みどろの戦いではなく、
兵(つわもの)同士の力比べで雪辱を果たさんと口少ないその背が何よりも雄弁に物語っていた。
そしてその言葉に応じ海兵隊員が歩み出る。


「ハハハ因縁の対決という訳か。」


秀郷は面白そうに笑うがその脇よりぐ~~っとたくさんの大きな音が重なる。
全員が振り向けば顔を赤くした童達が栄養失調から細くなった腕で腹を抑えていた。
王妃、海兵隊司令始めその場の全員が痛ましい顔をするが秀郷は笑いその空気を吹き飛ばす。


「腹が減ったか?海兵隊の将軍殿、この船の料理人達をお借りしたい。この童達にたらふく旨いもんを食わせてやりたい。
何、材料はこちらで提供するし宴も祭祀の様なもんだ。ああ、他の者らも料理の腕に覚えがあれば申し出てくれ。」




海兵隊員が山程のデカい肉の塊を焼き始め、美食で知られるフランスやイタリア艦の乗員らが無限に出る海山の幸に挑み、
イギリス艦の乗員達は菓子やフル・ブレックファストを作り始め甲板は屋台の並ぶ夜祭の様相を呈してきた。
材料は秀郷が龍神より賜った無限に米の出るわ海の幸山の幸の出るわの俵と鍋。
しかしその実態は兵士達の戦場、挑む敵は全世界共通の厄災である飢餓。
それより幼子達を救うための戦いだ。


「慌てるな!全員分あるから好きなだけ食え!」

「こっち焼けたぞ!テメー野菜も食え!野菜も!」


幼子らは我先にとそれらを腹に収め食材に込められた神秘でどんどん血色が良くなっていく。
しかし、その間も幼子らは土俵に声援を送るのを欠かさない、その姿に秀郷は顔を綻ばせる。。


「日本の勝ちぃ~!」

「これで何回目?」

「海兵隊しっかりしろー!」

240:635:2022/10/05(水) 17:29:24 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp


わぁぁぁっと歓声が上がる。
やはり相撲は日本の独壇場。
ここまで英仏海峡場所、このイオージマの戦場で米海兵隊相手に帝国陸軍は連戦連勝、我が方の圧倒的戦果である。(大本営発表)
それに我慢できず今を生きる海兵隊の、強襲揚陸艦イオージマの乗員が前に出る。


「祖父さんをコケにされたままでなるものか!俺が行く!」

「行けー!」

「父祖の仇取ってくれ!!」


現役海兵隊員の登場にアーリントン・生者含め海兵隊員がやんややんやの大喝采、皆のその手にはしっかりと肉の塊とアルコールが握られている。
全員アルコールが頭を回っている。それを見てそれもまた良しと笑う秀郷。


「でやー!」

「海兵隊の勝ちぃ!」

「おお!勝ったぞ!」


生者達が戦場に出ると途端に戦況は変わる。
一方的だった戦いは五分まで戻され歓声が上がり祭りの熱狂は更に増し酒の量が増え皆気分が緩んでくる。
すると他国の艦の乗員らも状況を忘れ参戦する。


「いけえ!レスリングで鍛えたジョンブル魂見せてやれ!」

「パリジャンならライミー共に負けんじゃねえぞ!!」


日本が英国と、米国が仏国と、国の違う者らが純粋に力を競い合い笑い合う。
その光景を見て満足気に頷く秀郷であったが難しい顎をさする。


「良き良きこれぞ祭りぞ。しかし天津日の故事に習ったが【出てくる】には些かまだ足りぬか。」


その視線の先には総当りで最後まで残った半裸の英国軍人の姿、英国紳士魂が秘訣らしい。


『あのお姫様…。』

『どうかしたのかしら?』


そんな中、秀郷が上座を見ればマリー・アントワネットの下へおずおずと近寄る幼子らがあった。
子供の一人がマリーに耳打ちしふむふむと頷くマリーは隣の司令官と話をするが司令官は難しい顔をしている。
そこでマリーは上座を降りると秀郷の下へと降りてくると秀郷に頼み事をする。
幼子達が相撲を取りたいと言っていると、その後ろでは幼子達が秀郷に頭を下げる。


「「「お侍さん!お願いします!」」」


美味いもの食って気力が充実し祭りの熱気に当てられたのだろう。
その瞳は力強くここ来た時よりも生気に溢れ顔色も良い。


「競え!競え!大いに競え!これなるは祭りぞ。女、童関係なし!」


秀郷は笑う、童の相撲もまた神事である。
それに惹かれ【出てくる】だろう。己が子なのだから。
そして横綱とならば祓えるだろう。人の業を。

241:635:2022/10/05(水) 17:29:54 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。

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最終更新:2022年11月14日 22:52