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銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです欧州大戦その十五 生生世世
「おー!頑張れ!頑張れ!」
「アメリカンボーイズならもっと気張れ!気張れ!」
「てやー!」
「わー!負けた!」
国も生まれも違う幼子同士の拙い力比べ。
賢明にされど笑いながら取る相撲を肴に大人たちの顔は自然と笑顔になる。
戦争で失われつつあった彼ら(兵士)が守るべき光景がそこにあった。
勝った幼子も負けた幼子も笑い合う総当り戦がどんどん進む、最後に残ったのは以外にも少女。
ジェーナスの艦体に最初に突っ込んだ英国生まれの少女であった。
これで終わりと思う少女、対し秀郷はまだ相撲を取る相手が残っているぞと言った。
訝しげに秀郷を見る面々であるが誰かが気づく。
少女のいる東側と反対の西側、とある神話で言えば死者の国である方より土俵に上がる人影に。
その人影の大きさは大人程、人影と言ったが光で影になっているのではなく影そのものが人の形を取った様に見える。
その異様な様子に兵達は酒気も吹き飛びざわつきだす。
「あ…ああ…ああ…。」
人影の姿をその両目で捉えた少女の両目から涙が溢れ出す。
七つ前は神の内という加え少女は死に触れすぎた、故に分かったのだ目の前の存在が何なのか。
「お父さん…お母さん…。」
少女は父と母と声を零す。
他の幼子らも同様に父母と目の前の影を呼び軍人たちを混乱させる。
その人影は毒の竜、呪いを願われある種の神と成り果てた呪いに取り込まれた幼子らの父母と蠱毒に使われた者ら。
神事をする我が子に惹かれて出てきたのだ
相撲とは祭りである。宴とは祭りである。祭りとは神事、神を呼ぶ儀式。
遥か神代、岩戸に隠れた大御神を呼ぶために行われたのが起源とされる。
故に目の前の存在を毒竜の内より引っ張り出す為に行われたのだ。この神事は。
「さ、父母と相撲を取れ…思う存分。そして勝ちその業から解放してやれ。」
「え?」
「お主の親、そして蠱毒に使われた者らは呪いという鎖に囚われておる。
そしてお主や子供、家族など心残りも多い。
そのままでは浄土へ渡れぬ。輪廻の輪へ戻れぬ。妖精にも深海棲艦にすらも成れぬ。
故に力を、意志を示しもう大丈夫だと諭してやれ。そして罪咎をお主が祓えお主が救え。」
秀郷は少女の両親を救えという。
だがと少女は自分に両親を救える、そんな特別な力などないと言うと涙を流す。
その少女を秀郷は暫し抱きしめ離すと少女の肩を掴み快活に笑う。
「何を言うか!お主はこの神事の場で相撲を勝ち残った者、横綱。
それも日ノ本一の怪異殺しこの俵藤太が認め、八百万の神が認め、多くの者らが認めた大横綱ぞ。
その力も資格もあるに決まっておるだろう!それにな…死者を救うのはいつだって生者の役目よ…。」
その言葉に少女は涙を己の腕で拭い父母でもある影に自らの足で土俵の上で対峙する。
たった一人の戦場、しかしその幼心は震え小さな勇気が湧く、それは背後より送られる援護射撃故に。
土俵に立つ少女の姿に負けた幼子らは声援を送る、つられ軍人達も声援を送る。
勝て、勝って父母を、己が守れなかった者達を救ってくれと。
それは硫黄島に散った日本兵や海兵隊からも届く、
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この場は神事の場、上代よりも古い神代に近き言霊の活きる場。
言葉は力となる、言葉は心を震わせる、言葉が心を繋ぐ。
本来ならば七つにも満たぬ子一人に戦場なぞ立つこと能わず、心折れ戦うことなど出来ないだろう。
されどこの戦場(土俵)に立つ幼子は独りではない皆が共にありその心支える少女の心が折れることなし。
父母を、蠱毒に取り込まれ戦に使われた者達を救わんとしていた。
武士の棟梁に送り出された少女はその時戈を止めるつわもの、まことの武士(もののふ)であった。
少女が己の足で一人立ち人の業に呑まれた親に相対するその姿、少女の幼年の終わり。
その姿に王妃の隣に佇む世を見そなはす者は満足気に見つめていた。
「はっきょい、のこった!!」
ジェーナスの言葉と共に少女は父母でもある影へと突進する。
幼い少女に戦術など知らない、ただ己の全てと皆から貰った想い全てを乗せて影にぶつかって行く。
影が呪いならば抵抗するだろう声援を送りながらも苦戦も止むなしと誰もが思った。
だが、
「え…?」
少女の驚きの声が漏れその場の誰もが呆然とする。
呆気ない程容易く、驚く程の軽さで蠱毒が作った筈の影は土俵の外に押し出された。
少女とこの場の者らの想いが勝ったのだ。
そして影は己を負かせた少女を抱きしめる。少女に回した腕は最早影ではなく大人の男性の腕だった。
影…いや少女に良く似た男性が笑い掛ける。
「僕が負けちゃうとは大きくなったなあ…。」
「本当に…誰かを助けようと自分からするようになるなんて…。」
いつの間にか男性の隣に立つ少女に似た女性が笑いながら抱きしめられている少女の頭を撫でる。
その二人を瞳に映すとお涙を浮かべ二人に抱きつく
「お父さん…お母さん…!」
「あらあら甘えん坊さんね…。」
「しょうがないよ。この子を生きて欲しいからと残してしまったのだから…。」
男性と女性、いや少女の両親は少女をあやす。
その様を見つつ軍人らは困惑する。
気づけば幼子らの側にはその子に似た男女が立ち、甲板にはこの場の軍人ではない者らがいた。
軍人達は呟く。
「まさか…。」
「呪いから解放されたのか…?」
誓いで縛り呪いに打ち勝つとは古今問わず神話にあること、そう少女が影に勝ったことで蠱毒から彼ら、彼女らは解放された。
しかし毒の竜は未だそこにあった。蠱毒に使われた者達が解放されただけで呪いはそこにあるのだ。
その時秀郷が叫ぶ。
「聖女殿、今ぞ!!」
「はい!」
聖女ジャンヌ・ダルクはマリー・アントワネットの傍らより跳躍する竜に手に持っていた祝福された水を駆け土俵の中央に降り、ジャンヌは歌いだす。
『再び会う日まで、主と共にあらんことを…主の導きが貴方を支えるでしょう…。』
ジャンヌの歌声が甲板に響き場を浄化する。
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「これは……?」
海兵隊司令が自分が知る歌、死者を送る葬送の歌に困惑し王妃は言う。
「彼女は【フランスの聖女】よ…フランスには竜を鎮め退治した【聖女】がいるでしょう。
彼女は救世主には会っていないけど主には会っているのよ?」
そして近くにいた日本の軍人、米軍が最も苦戦したと言われる…が日本の古い昔話だがとした上で言う。
「ジャンヌ・ダルクとやらは徳の高い坊様なのだろう?
古く日本では毒吐く竜を徳の高い坊様が仏法を説きその竜を鎮め守護神にしたという…つまりはそういうことだろう。」
再度目を向けると聖女が歌い終えていた所だった。
「竜よ!人を呪い人に呪いを託されし、されど愛を知る故に最後の最後で思い留まった竜よ!」
歌い終えた聖女は竜に問う。
人を呪うことを願われたが蠱毒に使われた親の子への愛故、取り込まれた者を救う祭りを前に際で留まったのが眼前の竜、それに問う。
このままでいいのかとそのまま終わりで満足かと。
この場にいる者の力ならば残った竜を容易く殺すことが出来るだが願われたのだ竜を殺さないでと。
『アア…アアア…生キタイ……愛シ……愛サレ……守リタイ。』
知性無き筈の呪いが、世を呪う筈の竜が口を開く。願望を口にしその場の者らは驚く。
蠱毒は人であり人を取り込んだ呪いである故に人でもある。故に人が解放されても蠱毒は知性を得たのだろう。
取り込まれた者らは人を呪う呪いに使われ呪った。
だが最後の最後で愛と子を守りたいが故に荒ぶることを止めた、それが竜の願いとなる。
竜の願いは言葉となった。ならばと聖女は膝を折り御旗を掲げ祈る。
「広く愛注ぐ主よ、そして未練残し水底に沈むものらを救い上げる異教の神よ。
破滅ではなく守護を、憎悪ではなく愛を望む彼の竜の願い聞き届け給え!」
聖女の言葉と共に蛭子命が鳩が夜空に羽を羽ばたかせその羽より光を降り注ぐ。
それと共に竜はその姿を転じる。
竜の身体だけではないこの海に沈んだ望まぬ使われ方をした兵器も共に人を世を呪う竜から人の未練を果たし人を愛し守る竜へと。
竜は変化し続ける。
身を覆う百足の甲殻は如何なる厄災からも人を守る鎧となる。
竜の身体は人の身体を成しその尾をしならせる。
特攻兵器にされた全てはあるべき姿に戻る。
F-16や菊花、零式艦上戦闘機らは航空機へと戻り竜の周りを飛び、
桜花は対艦誘導弾へと転じ艤装の各所へと配置される。
そう竜は姫となる。深海に棲まう艦の。
「対州要塞姫、彼女に導きを!」
「うむ!」
聖女が叫び対州要塞姫の名を呼ぶ。
伊邪那美命とティアマトの子であり呪いを超えた最も新しい深海の姫。ならば【彼女】を導ける。
「汝が名は【英仏海峡棲姫】。海峡に棲まいこの海をこの地の子らを守るものなり!」
竜の身体光が満ちるとプロペラの音がイオー・ジマの甲板に響く。
それは歓喜の歌の様なそれは竜の傍らに生まれたそれは新生した巨人の名を冠する航空機の声。
呪いを跳ね除け深海の色に染まり今度は人を救うために空を駆けるもの名。
アルビオンはその誕生を祝福する。
「ハッピーバースデー!新たなる守護竜の誕生だ!」
289:635:2022/10/09(日) 11:01:46 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。
本日夜投下の一話でSUMOUは終わりです。
最終更新:2022年11月14日 22:53