544:635:2022/10/29(土) 16:22:27 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの向こうには(ry・超大陸日本クロス 神崎島おウマさんVS日本ウマ娘 第三話「ウマと馬は出走準備するようです」
超大陸となった日本の総理官邸危機管理センターは混乱に包まれていた。
「何が起きた!!」
「正体不明飛翔体が大気圏外から落下!西ノ島付近に落下した模様!」
「落下!?ヤルバーンや軌道上の艦隊は探知出来なかったのか!?」
「突如として軌道上に出現、重力子魚雷による破壊を試みましたが失敗した模様!」
「どっかの文明がワープでもさせた隕石か…?兎に角Jアラート流せ!兎に角太平洋沿岸部に津波警報発令!」
気象庁や防衛省の職員が慌ただしく動き出す。
「特危の偵察機が落下地点の西ノ島付近へ到着!映像流します!」
「センサーに感!これは落下じゃない降着だ!!何かが動いてる。」
その言葉に全員がモニターに目をやる。
立ち昇る土煙の中蠢く影、ソレは立ち上がる。
なんだアレは…モニターを通して感じる威圧感、怒気。
背筋がゾワゾワする。
Ah―――!(ヒメちゃああああああん!?どこぉぉぉぉぉぉ!?)
実際はシリアルである。
馬とウマ娘のレースが開催される様になって以降トレセン学園に配備された馬とウマ娘両方が入ることの出来るゲート、通称発馬バ機。
それがコース上にウマ娘達の手で設置される。
なお馬が先かウマ娘が先かで野党が政府糾弾したとか良く分からんことがあったり。
その間、武勇と竹内は騎乗し併せ馬を行い馬の癖を見ていた。
「しかしこの子こっちの指示をちゃんと聞きますね。安定感もある」
「…ああ。」
竹内は名も知らぬ馬(ライスシャワー)の操縦性と安定性に驚いていたが武勇はそれどころでなかった。
自身の騎乗する栗毛の馬の癖も走り方も武勇は知っていた。
容姿含め似通り過ぎというレベルではない武勇の知るあの【彼】そのもの、いや【彼】がその後順当に歩み続けた頂点こそがこの馬なのではないかと錯覚する。
そんなことは騎乗する馬にも【彼】にも失礼であったが武勇の脳と情緒はグチャグチャにされていた。
なおそのおウマさんの正体…。
「武勇さん。」
そしてそんな武勇の目に入るのは自身があの日纏っていたものに似た勝負服を纏う少女、サイレンススズカ。
これ程の皮肉もあるまい。
【彼】の魂と名を継いだ少女の前で全く関係のない馬に【彼】を感じるなんて。
「貴方もお互いに頑張りましょうね。」
サイレンススズカは目の前の彼女にとっての大切な人の一人の乗る【自身にそっくりな】栗毛の馬を撫でる。
気持ちよさそうに撫でられながらその馬はとても深い優しい、安心した様な瞳でスズカを見ていた。
何に安心しているのかは分からない、だがスズカは目の前の馬が他人の様な気がしない。
ウマソウルが同じ血筋、腹違いの兄弟であり無念を晴らしたスペシャルウィーク、
ウマソウルがライバルであったエアグルーヴやマチカネフクキタルとは違う。
もっと深い関係だと自分の心…いやウマソウルが訴え叫ぶ。
眼前の馬の前で走れと大欅を乗り越えたサイレンススズカの走りを見せるのだとどうしようもない程に。
そしてスズカは思う、この馬と、騎手のあの人の乗るこの子と共に走った先頭の景色は違うものが見えるのではないかと。
545:635:2022/10/29(土) 16:23:28 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
「着いていく…着いていく…。」
並走する片方の黒鹿毛の馬の後ろを黒いドレス(勝負服)を纏うライスシャワーはただひたすらに追っていた。
何故か着いていかなければ、ここに馬が居ること確認しなければという使命感にライスシャワーは襲われたいた。
すると馬が突然こちらを向く。
「ひゅい!?」
それに驚き変な声が出て尻餅をつく。
「あーあんまり走ってる馬の後ろに着いてきちゃ駄目だよ。馬が驚いて蹴られる恐れがあるからね。」
「ご、ごめんなさい。ライスはやっぱり悪い子だ。」
ライスシャワーのその声に気づいた鞍上の竹内がライスシャワーを諫める。
するとライスシャワーの大きな耳はへにょへにょと萎れ自身を責める。
幾分緩和されたとはいえあのミホノブルボンの三冠阻止での大ブーイングで負ったトラウマというのは容易く克服出来るものではない。
彼女の走る理由がみんなに幸せを届けたいというだったのだからなおさらだ。
そんなライスに馬が近づくと。
「あ、くすぐったい…!」
頬寄せ慰める様にライスの顔に頬ずりをする。
擽ったさに笑顔になるライスの姿を確認するとその顔を戻した。
ライスはその黒い馬の瞳を見つめる。
自身に似た黒い鹿毛に黒い瞳は無言の問いを放つのがライスには分かった。
もう大丈夫?淀の坂も超えて走る理由は見つけの?ライスシャワー?
「うん、もうライスは大丈夫だよ。ブルボンさんや応援してくれる人達の為に走るって決めたから…!
全国のお兄様やお姉様とかっていう人達は良く分からないけど…。」
お兄様、お姉様いるの…。
「うん居るんだよ。」
どけ!俺が(私が)お兄様(お姉様)だぞ?
「うん、良くなんか叫んでる。」
「会話成り立ってる…!?」
アドマイヤベガは目の前の馬から目を離せなかった。
銀の髪の艦娘が軽快に走らせる馬、自身のウマソウルの大本"アドマイヤベガ号に良く似た"馬の姿。
心配さが心を支配する、怪我などしないか病気ではないかとまるで家族の心配でもするように。
「どうして…?」
目の前の馬を見るのは初めてだ。間違いない。
だけど目の前の元気な馬の軽快な足取りを、銀の艦娘に撫でられ嘶く姿を見るとひどく泣きそうになる。
無くしたものが戻ってきた様な不思議な感覚。
そして艦娘に撫でられ嬉しそうな馬を見てギリッ!と奥歯を強く噛む。
馬に嬉しそうに嘶かれる銀の艦娘に嫉妬を覚える。
(何故お前がそこにいる。そこは私の場所だ。どけ!私はお姉様だぞ!!)
そこでハットする。あれが妹な訳ないじゃないかと自身に言い聞かせる様に。
「何を思ってるのアドマイヤベガ…。あれは名も知らぬ馬、あの子な訳ないじゃない…馬のあの子もウマ娘のあの子はもう…。」
そうきっと思い違いだ。あの馬がアドマイヤベガ号に似すぎているのが原因だ。
後、あのモフモフ。そうあのモフモフが原因なのだ。手触りの良さそうなあの毛並みが自分を狂わせたのだ。
「そう気の迷い。あのモフモフが私を迷わせているのよ…。」
546:635:2022/10/29(土) 16:24:37 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
「スペチャン!!ドウシタノサ!?」
「スペ先輩!?」
「スペ大丈夫か!!」
心配するスピカの面々の言葉も耳に入らない。
紫色の勝負服を纏うスペシャルウィークはただその瞳よりだくだくと涙を流し続けていた。
スペシャルウィークの視線の先にはじっとこちらを見つめ続ける背に鹿毛の艦娘乗せた馬の姿。
既視感を感じ一目見た時から視線を離せなかった。
係留場のその馬の隣にいた自身の髪同じ黒鹿毛と流星持つ馬に嫉妬すら覚えた。
分からない、全てが分からない。何でそんな感情を抱いたのか、何故既視感を抱いたのか。
その馬は今、ただ静かに自分を見つめる。ただそれだけで感情が爆発しそうだ。
心の中はグチャグチャだ。
悲しくて切なくて嬉しくて楽しくて目の前の馬に抱きつきたい。
自分の成長を見て欲しい、目一杯甘えたいという感情が生まれる。
その様子を見て鞍上の艦娘はフゥと溜息を吐く。
「スペシャルウィークさん。」
「……。」
「スペシャルウィークさん?」
鞍上の艦娘の声に反応しないスペシャルウィークにトレーナーの沖野は肩を揺さぶった。
「おいスペ!」
「ふぇ…は、はい!」
そこで漸く正気に戻る。
「心ここに非ずといった様子なのです…スペシャルウィークさんは出走取りやめるべきなのかもです…。」
「そうかもなあ。これじゃレースにならんかもしれん。こんな状態じゃ怪我の元にもなっちまうだろうし。」
出走取りやめ、その艦娘の言葉にひどく動揺する。
走れない。何よりも眼前の馬と走れないという事実に何よりも感情が動き膝と手をつき号泣する。
「い"や"て"す"!は"し"ら"せ"て"く"だ"さ"い"!!」
スペシャルウィークは泣きべそをかきならが訴える。
ただただ走らせて欲しいと涙を流すスペシャルウィークにどうしたもんかと頭を掻く沖野やスピカの面々。
その時鞍上の艦娘はふわりと地面に降りるとスペシャルウィークに近づくと…そのまま抱き上げた。
「ふえ?」
「はい!?」
「まあ…!」
ウマ娘でない、ヒト娘にしか見えずスペシャルウィークより一回り小さい、にも関わらずスペシャルウィーク一人を軽々と持ち上げた。
沖野は呟く。
「そういや艦娘ってのは見た目ニシノフラワーくらいのカイボウカンって艦娘でも2500バ力(りき)出せるって話だったな…。」
「「「2500バ力(りき)!!?」」」
「あー、私だと駆逐艦という艦種に分類されて5万馬力なのです。」
「「「ご、ごまん…。」」」」
そして艦娘はスペシャルウィークを抱えたまま馬に乗るとそのまま鞍に座らせ手綱を握らせると自身は馬のから離れる。
547:635:2022/10/29(土) 16:25:18 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
「そのまま少し走ってくるといいのです。」
「ふえ…?」
「おい!スペは馬に乗ったことなんて!」
「大丈夫なのです。さ、行ってくるのです。」
艦娘が促すと馬は嘶きスペシャルウィークを乗せたまま駆け出す。
「あのおウマさんなら大丈夫なのです。ボソッ(お母さんですし)。」
艦娘の呟きに眉を動かす沖野。
「(オカアサン…おかあさん…お母さん!?)」
走る馬と鞍上のスペシャルウィーク、その姿を見たスピカの面々は呆然とする。
「なあスペ先輩って…。」
「馬に乗ったことはないはずよ…。」
「何故初めてでああも乗れますの…?」
おっかなびっくりで手綱を握り固まっていたスペシャルウィークであったが数分もしない内に馬の走りになれ速歩で走っていた。
そんなスペシャルウィークを見ながら艦娘は呟く。
「それに多分ウマ娘としては知らなくても覚えているのですよ。」
「何を…。」
「ウマソウルが…人を乗せターフを駆け抜けた記憶と経験を。」
私達艦娘の様に…意図せず溢れた言葉を沖野は聞いた。
そしていつの間にかスペシャルウィークは泣き止みその顔には満面の笑顔を浮かべる。
「あれなら大丈夫なのです。」
「…だな。」
沖野は自分の髪をワシャワシャと掻いた。
548:635:2022/10/29(土) 16:25:54 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。
残弾はこれにて打ち止めです。
最終更新:2022年11月14日 23:01