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銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです欧州大戦その十八 英雄総進撃二、伝説達の帰還
「お父さんは……皆を守った…すごい…すごい騎士様…なのです。」
燃えるロンドンの片隅、炎で焼けた灰の側で泣く母の側で涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら幼子は助けに来た兵士に訴える。
炎で焼けた灰は父である。
幼子は知っていた。父は騎士などない会社員で騎士道被れで騎士道趣味なだけの人間なだけだということを。
騎士の血筋ともいうが祖先が片田舎の領地守り続けた田舎騎士だというくらいな人間だ。。
だけど休みに趣味の仲間と馬上槍試合やアーマードバトルをするくらいだが余りの熱中振りから親しみ込めてドン・キホーテ(騎士オタク)と呼ばれるくらいには周囲から愛されていた。
「お父さんはみんなを守ったのです…この後、お城で王様から騎士様に叙勲されるんです。それくらい凄い騎士様なのです…。」
誰かに誇るではなく自分に言い聞かせる様に、そうしなければ幼子は己を保てなかった。
家族や友人らに襲いかかるロンドンを襲ったゾンビや吸血鬼達、それを相手に父は戦った。
例え手も足も出ずとも大切な者達を守るために戦った。
兵士は幼子を抱きしめる。
父は救援の者達が到着するまで持ち堪え…そして事切れた。
殉じた立派な人物だ。騎士爵(サー)に叙勲されるだろうと兵士は言う。
だが幼子はいやいやと兵士の腕の中で首を振る。
父には夢だった騎士になって欲しかった。だけど死んでまで騎士になって欲しかった訳では無い。
ただの優しい父で生きていて欲しかった…それに。
「サーは本当の騎士じゃないのです…。」
父の夢見た騎士は制度の騎士爵(サー)じゃない。
正義の為に戦うとか、巨大な悪を倒すとか、弱き者を守るとかもしたかったがそれ以上に父が夢見たのは父の祖先だ。
周りの人とか自分の故郷とかを盗賊だとか災害だとかから守って王様から認められた田舎騎士、その程度で良いと父は笑っていた。
それが本当の騎士なのだと言っていた。泣きながら幼子は訴え、兵は困った顔をする。
その時パカラパカラ、と父に連れられた馬上槍の試合で良く耳にした馬の蹄の音が近づいてくる音を聞いた。
「騎士様…?」
幼子は涙で濡らした顔を上げるとそこには童話から出てきた様な白馬に乗った王様みたいな立派な騎士。
何があったのかと問う騎士に兵士はことのあらましを語ると白馬から降り幼子に近づき屈むと幼子の頭を撫で兜を外す。
豊かな金の髪が流れ落ち目が眩む程の美貌に見惚れる。
「貴方のお父上は立派な騎士だったのですね…わが騎士として抱えたい程に…。」
立派な騎士にそう言われ涙を流し幼子は頷き語る。
父がどれ程勇敢に戦ったのか、どれ程に人々に愛されていたのか騎士はそれを真剣に聞き、幼子が語り終えるまでそこに居た。
そして幼子が語り終えるtp然らばと騎士は虚空に問うた。
「立つ勇気はありますか?このブリテンの、子の危機に天に昇れずになろうとも立つ勇気は…然らば貴方を騎士として迎えましょう。」
虚空に問い騎士は頷く。不思議な顔をする幼子。
騎士は幼子の頭をクシャクシャと撫でる兵士に幼子と母のことを頼むと立ち上がり兜を再び被り金の髪は再び隠れた。
馬に跨りその場を後にし、その立ち去る背の向こうに幼子は見た。
多くの軍勢があった。
良く見る英国の兵士や警察官の姿…だけではない。
ロボットスーツを着た者や日の丸を付けた斑の迷彩着た軍人。
極東の武士や異星の騎士、騎馬に乗る騎兵。
古い軍服を着た軍人達、昆虫や動物を模した人の様な存在。
人ではないものもいる。
ジャック・オ・ランタンやケット・シーに狼男にデュラハンにケルピーまで人が今まで忘れた妖精達。
ワイルドハント…そんな言葉が浮かぶがこれはそれだけのものじゃない。アレらは人に災いを齎すものではない。
それらは人々を守り戦い続けている、父が憧れた故郷を守る騎士が如く。
697:635:2022/11/05(土) 15:41:58 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
聞こえる砲声は騎士の名乗りだった。
飛ぶ火線は騎士の槍だった。
馬に乗った騎士達が戦場を駆け抜けた。
兵士が白馬の騎士の名を告げる。
「あれは新生した円卓の騎士達、そしてそれを率いるあの人はアーサー王だよ。」
ブリテンの危機に戻ってきて下さったのだと兵士は言う。
幼子は嬉しかった…そんな人物に騎士に迎えたいと言われたのだ。自分の父は…。
その時、白馬の騎士の…アーサー王の傍らに馬に乗る一人の人物がすうっと浮かび上がり白馬の騎士に付き従う。
鎧を着て馬上槍を構えこちらをちらりと向くと笑顔でこちらに手を振る。
子供はその名を呼んだ。
「…!お父さん…!」
父は本当の、英雄の王様に仕える騎士になったのだ。
幼い少女が人形を抱き小太りな男に背負われ燃える街並みを駆け抜ける。
少女の動けぬ祖父母から逃してくれと頼まれここまで来た。
小太りな男は所謂ギーグとかキモオタとか呼ばれる類の人間であった。
小児愛者(ロリコン)だが熱中するのはアニメやマンガの二次元の少女だけリアルはノーセンキュー、リアル少女に欲情なぞしない。…それもそれでどうかと思うが。
だが、人々を見捨てて逃げ出した自称人権活動家や平和活動家とは違い男は人としての吟次があり恥を知っていた。
少女だけでもという老夫婦の嘆願を見捨てることなど出来ず、何よりもその男は燃えオタでもあった。
ココで少女を見捨てれば二次元の向こうから出てきた己の英雄達(ヒーロー)に恥ずかしくて顔向けて寝れない。
ただそれだけで男は少女を助けようとしていた。好きだけでは足りないけれど頑張れてしまうものなのだ。
その少女の手の中で人形…この地に残っていた数少ない妖精の一体だった小人は溜息を吐く、この国ももう終わりかと。
神代の如く悪しき巨人や吸血鬼などの人の勝てぬ化け物がいるのだ。
科学の力に頼り過ぎた人に勝ち目はあるまい。
神代が終わりを告げ、人の世となり十字の教えが広がり彼らは追いやられ、その十字の教えすら追いやられるこの世である。
既に神代よる二千年以上、妖精らは妖精郷等の異界に渡ったものも多い。
遥か昔人と共に在った良き巨人も良き竜も悪にされ或いは人に世を譲り既にこの地を去って幾星霜過ぎ去ったか。
しかし少数は渡る機を逸して人の世の隅で細々と生きる続けていた。
この妖精もそんな一人、人形に化けることで生き永らえてきたがこれで終わりかと思う。
その妖精の胸の内を支配するのは諦め。
追いやられ最初の五百年は人を信じた。かつては共にあったのだから再び共に歩めると。
次の五百年は人を憎んだ。かつては共にあった我らを何故追いやったのかと。
最後の五百年はもう諦めた。人を憎むにも信じるにも疲れた。
まだ心の残っていた妖精達は遥か遠き妖精達の国に渡ったと風の噂で聞いたがこの世にそんなものあるものか。
「ヒィッ!!」
「ハハハ流石にココで終わりかなあ…。」
少女が悲鳴を上げ、小太りな男が引きつった声を出す。
目の前の建物の上から巨人がこちらを見下ろす。
ああこれで終わりかと小人が思う次の瞬間。
『サセン!!』
『どけやぁぁぁぁ!!』
「あれは…旭龍!!」
声が響き巨人が打倒され土煙が周囲を覆う。
暫くして煙が晴れ始め小人の瞳にソレが映る。
音にすればピコピコウィーンという小人が聞いたこともない音を響かせ。ソレはそこ在った。
小人の瞼の裏に刻まれた古い古い記憶の馴染み深い者のその姿でソレは居た。
手足と背に翼の合わせ六肢と蜥蜴の如き尾。
698:635:2022/11/05(土) 15:42:55 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
「(竜(ドラゴン)…竜だと…!)」
人形に化けてる小人妖精の口が動く。
かつてと同じ、小人の知る竜の様にソレは人を守り戦っていた。
良き竜、かつて人と共にあった人の守り神。
人の時代になりこの地を去った存在がここに在る。
それはその背で小人に何をしているのだと叱咤し語ってるかのように小人は感じた。
小人の瞳に涙が浮かぶ。
彼らは…良き竜は幻想の彼方から子供たちを守るために舞い戻ってきたのだ。
機械の様な金属の様なよく分からん身体をしているがあれは自身の知る竜の一種に間違いないと小人は思う。
何より人を守り戦っているのだ。
そして自嘲する。去った者達ですら舞い戻ったのにこの地に残った自分は何をしているのかと。
小人は人形に化けるのをやめ己が頬を叩き気合を入れる。数百年ぶりに心に火が付いた。
戻ってきたのはあの竜一体だけかもしれない。
だが一体でも戦い続けようとする者がいるのならば共に戦わねば小人妖精の名折れ。
「死ねやあああ!」
「吸血鬼!?」
物陰から吸血鬼が小太りな男と少女を狙う。
小太りな男は少女を背負い逃げられないそれでも少女を守ろうとする。
大人が子供を守る。そこは今も昔も変わっていないのだなと小人は思う。
いや変わったと思いこんでいたのは己か。
少女の懐からするりと抜けると小人は吸血鬼の眼の前に踊り出る。
「人形が出てき「どりゃあ!」ゴフッ!?」
一撃、小人とはいえ幻想たる妖精の拳とんでもない怪力である。
吸血鬼はその上半身を消し飛ばされた上に妖精の攻撃は幻想そのものつまりは再生出来ずそのまま相手は死ぬ。
「に、人形が…!?」
「動いて吸血鬼倒した!?」
驚愕する少女と小太りの男。
そこへドタドタと集団が走ってくる。
『おいこっちで悲鳴があったぞ!』
『急げ!吸血鬼って声聞こえたぞ。』
それに警戒する小人妖精。すると路地裏から色取り取りな種族的統一性のない集団が出てきた。
小人は呆然とする。
ウィル・オ・ウィスプやクー・シーにスプリガンにバンシーからシルキーまでまで押し寄せて来た。
「あ、妖精さん!!」
「話には聞いてたけどマジか…。」
それを見て呆然とする小太りな男と少女。
その集団の内の犬妖精のクー・シーに乗って鎧着ている小人の妖精が小人を見て何か考える。
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「あん?おめえ…ちょっと待て確か会ったこと…エズ=シャイア庄に嫁いだ姪の倅じゃねえか!まだ生きてたんか!!」
に乗る小人は破顔する。
「あんたは…母ちゃんの叔父の…。」
「おうそうだ!色々あってこの国守るために戻ってきたんだよ。今じゃアーサー王に仕える騎士の一人だぜ!」
大叔父な小人妖精はエッヘンと胸を張り鎧に付けた勲章を見せる。
少女が小人妖精に問う。
「アーサー王様に仕えるって円卓の騎士なの?」
「いや円卓の騎士じゃねえが…。」
「じゃあ何の騎士なの?」
「あーいや…えーとだな…大英雄のだ。大英雄アーサー王の騎士なのだ!!」
そっかーと何か納得した様子の少女。
「ハハ、ハハ。アハハハハ!」
「何がおかしい!?」
それが妙に可笑しくて人形であった小人は笑い大叔父は顔を真っ赤にして怒鳴った。
竜だけではない…他の良き幻想達も戻ってきたのだ。小人は千年以上振りに心から笑った。
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以上になります。転載はご自由にどうぞ
最終更新:2022年11月14日 23:08